保存療法とは?
保存療法とは、直接原因を取り除くのではなく、関節機能の温存を目指して行われる療法です。薬物療法や運動療法、装具療法などにより、痛みや炎症などの症状の改善・緩和が期待できます。
保存療法を行う際は、「変形性股関節症」「関節リウマチ」「大腿骨頭壊死」など、疾患の種類によって適切な治療方法が異なります。また、症状の程度を踏まえ、医師や理学療法士の指導に従い、保存療法を組み合わせる場合もあります。
各疾患に効果的な保存療法
変形性股関節症
運動療法
筋肉は関節にかかる負荷や衝撃を抑制する役割を持っているため、外転筋などの股関節周辺の筋肉を鍛えることで、痛みの緩和や症状の進行を遅らせることが可能です。
変形性股関節症の場合には、股関節に負荷がかかりやすいことから、臥位(がい)や座位(ざい)などの負荷の少ない姿勢で筋力強化を行います。炎症や痛みの程度に合わせたレベルで、大腿四頭筋や股関節周辺の筋肉を鍛えます。
特に変形性股関節症の患者さまには、プールでの歩行がおすすめです。浮力がかかるため、関節への負荷はあまりなく、高い効果を得ることができます。
装具療法
不安定になった股関節のサポートや、関節可動域の拡大を目的に、腰から太ももまでを固定するSスプリントなどの装具を装着します。
温熱療法
ホットパックや極超音波などを使用し、血流を良くすることで関節や筋肉の痛みを和らげます。入浴でも同様の効果を得られるため、自宅でも行うことができます。
薬物療法
消炎鎮痛剤を使用し、痛みを和らげます。ただし、薬物療法はあくまでも痛みを和らげる目的で行われ、病気の原因を取り除く効果はありません。他の保存療法との併用が原則です。
消炎鎮痛剤には、主に外用薬・内服薬・注射の3種類があり、患者さまの体質に合わせて最適な薬を用います。また、外用薬を使用する場合は、胃腸・腎臓障害、喘息発作などの副作用のリスクもあるため、薬物療養中は定期的な診察が必要です。
関節リウマチ
基礎療法
関節を労わろうとして、運動を控えるのは逆効果です。基礎療法では、適正体重を保ち、関節への負荷を軽減するため、バランスのとれた食事と適度な運動を行います。ウォーキングなどの軽い運動はもちろん、ストレッチなども積極的に行い、関節の柔軟性を高めましょう。
また、質のよい睡眠をとることも大切です。入浴時に湯船にしっかり浸かったり、足湯を行ったりすることも体を芯から温めることができ、睡眠の質が高まります。
体の状態と相談しながら、心身ともに負担がかからない程度に規則正しい生活を行ってください。
薬物療法
関節リウマチの薬物療法で使われる薬は、主に「従来型合成抗リウマチ薬」「生物学的製剤」「分子標的型合成抗リウマチ薬」の3種類があります。
従来型合成抗リウマチ薬(内服薬)
従来型合成抗リウマチ薬は、さらに「免疫調整薬」と「免疫抑制薬」の2種類に区別されます。関節リウマチは自己免疫疾患のひとつとの見方もあり、どちらの薬も免疫機能に働きかけて関節破壊を抑制します。
生物学的製剤(点滴もしくは注射)
生物学的製剤は、炎症をもたらす物質や、免疫異常をきたす物質に働きかけ、炎症や関節破壊を抑制します。
分子標的型合成抗リウマチ薬(飲み薬)
分子標的型合成抗リウマチ薬は、「JAK阻害薬」とも呼ばれます。JAK阻害薬とは、炎症をもたらすサイトカインという物質が、細胞を刺激しないように阻害する薬のことで、関節破壊を抑制します。
これら3種類の薬の他に、「非ステロイド性抗炎症薬」や「ステロイド」を用いて、痛みを抑制する方法もあります。
リハビリテーション
リハビリテーションでは、関節機能や筋力の維持・改善を目的とした「理学療法」、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)を回復する「作業療法」、痛みの抑制や変形予防のための「装具療法」が基本です。この他、「生活指導」も行われ、症状の改善を促します。
関節リウマチのリハビリテーションは、薬物療法と併用することで高い効果を発揮します。ただし、リハビリテーションを自己流で行うと、かえって関節破壊につながることもあるため、必ず理学療法士の指示に従うようにしましょう。
大腿骨頭壊死
壊死範囲が狭い場合や、体重負荷がかかりにくい患肢の場合は経過観察が行われます。通常の日常生活を送っても問題ありませんが、杖の使用や、患肢とは反対側で荷物を持つなどの配慮が必要です。ただし、安静にしてばかりだと筋力低下を招くため、適度な運動も行うようにしましょう。
運動を行う際は、大腿四頭筋や中殿筋などの筋肉を鍛えると効果的です。椅子に座ったまま片足ずつ上げるトレーニングや、ゴムバンドを付けて仰向けになり、足を横に開くなどのトレーニングであれば股関節への負荷も少なく行うことができます。