保存療法とは
保存療法とは、外科的な手術を行わない治療法のことです。運動療法や鎮痛薬の服用、注射による治療や生活習慣の改善のことを指します。
メリット
外科的な手術を行わないため、手術に関わるリスクや合併症を防ぐことができます。また、痛みや炎症が初期段階であれば、保存療法に取り組むことで症状の進行を遅らせたり、痛みを軽減したりすることができます。
デメリット
症状が進行し、損傷が激しい場合は他の治療が必要なこともあります。また、保存療法は継続的な取り組みが必要で、効果が現れるまで時間がかかることもあります。
変形性足関節症の保存療法
薬物療法
薬物療法とは、炎症や痛みを軽減するために薬を使って治療することです。痛みが軽度であれば外用薬や内服薬で様子を見ますが、痛みが強い場合は関節内注射で炎症を抑えます。注射の種類は大きく分けて2つあり、鎮痛と炎症抑制効果のあるステロイド注射と、関節の動きを滑らかにするヒアルロン酸注射の2種類です。それぞれ患部に直接注射します。どちらもあくまで一時的な痛み軽減のために使用される場合がほとんどです。
運動療法
運動療法とは、トレーニングやストレッチによって関節の柔軟性や筋力を高めることです。足関節の周りを鍛えることで安定性を高め、関節にかかる負担を軽減します。運動不足による筋力低下はさらに足を痛める原因にもなってしまうため、日頃から定期的に行うことが大切です。ただし、運動のし過ぎや自己判断での運動は逆効果になることもあるので、行う際は必ず医療機関の指示に従いましょう。
装具療法
足関節への負担を軽減させるために、足底板(そくていばん)を使用することがあります。足底板とは靴の中に入れる中敷きのことで、足底板を使う治療方法をインソール療法ともいいます。歩行時のふらつきや体重のかけ方のクセを矯正し、バランスの良い状態に導きます。バランスが整うことで足裏や足首に均等に体重がかかり、足関節への負担軽減につながります。
サポーターを使用するのも足関節の痛みを和らげるのに効果的です。足関節を保護しながら安定させることで負担を軽減します。サポーターと同様にテーピングも足関節を保護するものですが、専門知識が必要なく簡単に装着できて繰り返し使えるサポーターの方が初心者にはおすすめです。
生活習慣の見直し
症状が進行していて痛みがあるときは、運動を控えた方が効果的な場合があります。動かすことで患部が炎症し、痛みを引き起こす可能性があるからです。定期的に運動を行っている人は、あえて体を動かさないことで痛みがやわらぐこともあります。
また、適正な体重をキープすることも大切です。足関節は体重による影響を受けやすいため、急激に体重が増加したりすると足関節に負担がかかり、痛みを感じるようになります。適正体重をキープすることで余計な負担をかけずに、症状の進行を遅らせることができます。
関節リウマチの保存療法
薬物療法
関節リウマチの治療薬は大きく分けて3種類あります。炎症を抑えて腫れをやわらげる「非ステロイド性抗炎症薬」と、急速に痛みと腫れの緩和ができる「ステロイド薬」、免疫異常に働きかけて症状の進行を防ぐ「抗リウマチ薬」の3つです。
以前は薬で関節リウマチの進行を抑えることは難しいと考えられていましたが、抗リウマチ薬の開発により関節リウマチの治療は寛解(かんかい:一時的あるいは永続的に症状が消失している状態のこと)を目指すものへと変わっていきました。医療機関の診察のもと、これらの薬を組み合わせて服用することで効果が期待できます。
生物学的製剤(せいぶつがくてきせいざい)
生物学的製剤(せいぶつがくてきせいざい)とは、バイオテクノロジー技術を応用し、生物から産生されるタンパク質を利用した新しい製剤のことです。炎症を引き起こす原因となるサイトカインという物質の働きを妨げ、関節の炎症を抑えます。
皮下注射もしくは点滴での投与で、効果が発揮するまでは数週間ほどかかります。しかし、生物学的製剤を投与した人の中には、炎症や痛みから解放され、薬を使用しなくても生活できるようになった人がいるなど、その効果はかなり高いと言われています。ただし、生物学的製剤は免疫の働きを抑える効果があるため、肺炎や結核などの感染症に注意が必要です。
運動療法
適度に体を動かすことは、筋肉のこわばりを取ったり柔軟性を高めたりするために重要です。また、体を動かすことでストレス発散にもなり、全身運動をすることで免疫力の向上も見込めます。ただし、無理やり動かしまうと体を痛めてしまうため、調子が悪い日は運動を控え、ゆっくり無理のない範囲から運動習慣を身に付けていきましょう。
温熱療法
患部に腫れや痛みがある場合は、温めることで痛みやこわばりをやわらげることができます。温めたタオルを当てたり、ゆっくりと湯舟に浸かったりすることで全身を温めるのがおすすめです。
ただし、炎症が起きている場合は冷やす方が適切なこともあります。必ず医師の指導のもと行ってください。