再生医療について
再生医療とは
再生医療とはケガや病気などで失われた体の組織を、細胞・成分・人工材料などの技術により再生する治療です。組織の再生を考えた医療であるため、対症療法では症状の緩和が難しい場合も根本的な治療が目指せます。関節疾患では、痛みの緩和、症状の改善、進行を遅らせる手段として再生医療が用いられています。
再生医療が注目される背景
再生医療は、手術療法よりも体への負担が少なく、症状の改善が見込める治療法です。保存療法による対処や手術療法の実施が難しいような、中間的なケースの治療として注目を集めています。
従来の関節治療は、症状が軽度であれば運動や投薬などによる保存療法、症状が進行していれば手術療法というように2択に大きく分けられていました。しかし、手術には精神的・肉体的なハードルがあり、時には、体への負担を考えて手術を断念せざるを得ないこともあるかもしれません。
そのようなケースであっても、再生医療を行うことで症状の改善が期待できる可能性があります。従来までの治療法に加えて新たな選択肢として広く活用されることが見込まれています。
再生医療のメリット・デメリット
再生医療のメリット
関節の再生医療では、自身の血液や脂肪細胞から取った成分・細胞を使用します。自身の成分や細胞を使用するため、重篤な副作用のリスクが低い治療法です。
また、大きな切開をすることがなく、患部へ成分や細胞を注射するだけなので、手術療法よりも身体的な負担を抑えられます。
再生医療のデメリット
ほとんどの再生医療は保険適用外の自由診療です。治療費は全額自己負担となり、数十万~数百万円かかることも少なくありません。入院が必要なく通院回数も少なく済みますが、治療にかかる費用は大きなデメリットといえます。
関節の再生医療について
関節の再生医療で行われる主な方法として「幹細胞治療(第二種再生医療)」「PRP療法(第二種/第三種再生医療)」「PFC-FD™療法」「APS療法(自己たんぱく質溶液)」の4つが挙げられます。
幹細胞治療(第二種再生医療)
幹細胞治療とは、失われた細胞を補充してくれる幹細胞を患部に注入する治療法です。幹細胞を注入することで軟骨の再生を促し、痛みの緩和や症状の改善が期待できます。主に変形性膝関節症に対して行います。
注入する幹細胞は、少量の皮下脂肪を採取し培養するため、局所麻酔を使用した日帰り手術が可能です。治療の際も、培養した幹細胞を患部に注射するだけなので、入院の必要はありません。
PRP療法(第二種/第三種再生医療)
PRP療法とは、患者さまの血液から採取した成分を利用し、治癒反応を高める治療法です。PRPとは、血液中の中でも血小板が多く含まれる多血小板血漿を指します。PRPには組織の修復や炎症の抑制を促す成分が含まれており、症状の緩和・改善が期待できます。
PRP療法は、採取した血液を遠心分離して抽出したPRPを患部に注射するだけなので体への負担が少なく、日帰りでの治療が可能です。ほとんどの場合、通院も数回で完了します。
PFC-FD™療法
PFC-FD™療法とは、PRP内の余分な成分を取り除き、成長因子の純度を高めることで、より高い治療効果が期待できる治療法です。PFC-FD™療法で用いられる成分はフリーズドライ加工で保存されるため、計画的に治療を進められます。PFC-FD™療法は、変形性膝関節症の治療だけでなく、半月板の損傷、筋腱の損傷や炎症など、さまざまな疾患で採用されています。
PFC-FD™療法では、血液を厳格な管理下にある施設で加工しフリーズドライします。そのため、その場で処置ができるPRP療法よりも注入までに時間がかかります。
APS療法(自己たんぱく質溶液)
APS療法は、PFC-FD™療法と同じくPRP療法を応用した再生医療です。APSとは、PRPから抽出した高濃度の成長因子と高濃度の抗炎症物質を含んだ成分を指します。PRP療法の効果に加えて、炎症物質と抗炎症物質のバランスを整えてくれるため、炎症や痛みを軽減する効果も期待できます。
また、1回の処置で最大24カ月間効果が持続するとの報告もあり、長期間の効果持続が期待できます。APS療法は、PRP療法と同様に医療機関で精製できるため、日帰りでの処置が可能です。
新しい選択肢として期待される再生医療
再生医療は、関節の治療だけでなく糖尿病や心臓病、癌などのさまざまな疾患に対して実用化され始めています。ほとんどが保険適用外であるため費用は高額ですが、症状の改善が期待できるのはもちろん、安全性の高さや体への負担の少なさというメリットは非常に大きいと言えます。保存療法による対処や手術の実施が難しい方に対して、再生医療は新たな選択肢として期待ができる治療法です。