肩関節疾患の保存療法
肩関節疾患における保存療法では、疾患別にアプローチが異なります。ここでは、代表的な肩関節疾患である「変形性股関節症」「関節リウマチ」「腱板断裂」に対する保存療法をそれぞれ紹介します。
変形性肩関節症
薬物療法
薬物療法では、主に非ステロイド性抗炎症薬が用いられ、症状により内服薬と外用剤が使い分けされます。痛みが強い場合は、炎症を抑えるステロイド薬やヒアルロン酸を関節内に注射し、痛みを緩和します。
運動療法
運動療法では、肩関節周囲の固まった筋肉をほぐし、 関節を柔らかくすることで肩関節を動きやすくします。痛みが軽度の場合や、薬物療法で症状が緩和された場合に行われます。
関節リウマチ
薬物療法
関節リウマチでは、主に以下の4つの薬が用いられます。いずれの薬も副作用のリスクがあるため、事前に医療機関に相談するようにしましょう。
抗リウマチ薬
免疫機能に働きかけ滑膜炎を押さえることで、症状の進行を緩やかにします。ただし、痛み止めではないため、疼痛緩和などの即効性はありません。
生物学的製剤
従来の抗リウマチ薬に比べて高価ではあるものの、関節破壊を抑える効果が期待できます。ただし副作用として、肺炎などの肺機能への感染が起こる場合もあります。
副腎皮質ステロイド剤(ステロイド)
炎症を抑え、痛みや腫れをやわらげます。
非ステロイド性抗炎症薬(消炎鎮痛剤:しょうえんちんつうざい)
炎症や腫れを抑えて痛みをやわらげます。
運動療法
適度な運動を行うことで血行を改善し、痛みの緩和やこわばった筋肉をほぐします。散歩やストレッチ、柔らかいボールを握るなどの軽い運動を行います。ただし、自己流で行うと症状を悪化させる恐れがあるため、医師の指導のもと行うことが大切です。
温熱療法
腫れや痛みが強い患部を温め、痛みやこわばりをやわらげます。病院ではホットパックや超音波機器を使用しますが、温めたタオルを患部に当てたり適度に温かいお風呂に浸かったりすることで自宅でも行えます。ただし、こちらも医師の指導のもと行うようにしましょう。
腱板断裂
薬物療法
腱板断裂における薬物療法では、非ステロイド性消炎鎮痛薬の内服薬や貼り薬を使用し、患部の炎症を抑えることで痛みをやわらげます。
就寝中も痛みが続く場合は、オピオイド系鎮痛薬の「トラマドール」や、神経障害が原因の痛みをやわらげる「プレガバリン」などが処方されることもあります。また、強い痛みを伴う場合は、ステロイド薬やヒアルロン酸を患部に注射します。
運動療法
肩を動かす簡単な運動を行い、肩の筋肉をほぐすことで痛みの緩和や可動域を広げます。
ただし、すでに腱板断裂がある場合や疑われる場合には、自己流で運動を行うとかえって症状を悪化させます。まずは医療機関を受診し、医師の指導のもとで行うようにしてください。また、肩を動かしていないのに痛む、肩が熱を持っているなどの症状がある場合、運動は控え、医療機関に早めに受診しましょう。