記事監修者:中原 義人 先生
辛い肩こりや四十肩・五十肩にお悩みではありませんか?肩の痛みは可動域を狭め、生活の質を低下させることにもつながります。そこで、本記事では肩関節のストレッチをご紹介します。肩の痛みの改善だけでなく、肩こりや五十肩の予防にもつながりますので、ぜひ試してみてください。
肩こりと五十肩の違い
そもそも、肩関節(肩甲上腕関節)は、主に上腕骨と肩甲骨からなる関節です。ほかの関節よりも接触面が浅く不安定なため、まわりの多くの筋肉や靭帯、軟骨組織によって支えられています。
肩関節の仕組みについて詳しく知りたい方は、次の記事もご覧ください。
▶肩関節の仕組み
肩に痛みを生じさせる病気として、代表的な肩こりと四十肩・五十肩。肩に痛みが出る点は共通していますが、その原因は異なるところにあります。
肩こりは主に僧帽筋と呼ばれる筋肉のコリや血行不良からくるもので、どの年代でも起こります。長時間同じ姿勢の継続やストレス、冷房などによる冷えが原因といわれており、悪化すると頭痛や吐き気をともなうこともあります1)。
一方、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)はその名の通り、中年以降に多く見られる病気です。関節を構成する骨や軟骨、靭帯、腱などが老化し、肩関節周囲の組織に炎症が起きて痛みを生じます。五十肩では運動制限(可動域制限)をきたしますが、肩こりではほとんど見られません2)。
五十肩について詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
▶【医師監修】五十肩とは?肩の痛みの原因となる病気や自分でできる予防法もあわせて解説
肩こりも五十肩も、どちらも生活の質(QOL)を下げることに変わりはありません。まずは予防が重要なことをおさえておきましょう。
おすすめの肩関節のストレッチ5選
ここからは、肩こりや四十肩・五十肩の予防・改善にもつながる肩関節のストレッチを5つご紹介します。入浴後など、肩まわりが温まっている状態で行うのがおすすめです。
ただし、痛みがある場合は無理にストレッチを行わないようにしましょう。また、ストレッチの最中に痛みが生じた場合はただちに中止してください3)。
肩甲骨ストレッチ
肩こりの予防・改善を目的に、肩甲挙筋と菱形筋を意識的に動かすストレッチです。
- 腕がV字になるよう、両ひじを曲げて肩より上げます。手は軽く握って鎖骨のあたりに置きましょう。
- 5秒かけて息を吐きながら、両ひじをゆっくりと後ろに引いていきます。ひじの位置はできるだけ下がらないように注意しましょう。
- 肩甲骨を寄せたまま、両ひじを下げて、力を抜きます。
手順1~3を5回ほど繰り返してください。肩甲骨を肋骨からはがすイメージで動かしましょう。
入浴後以外にも、起床時や就寝前、デスクワークの合間などにもぜひ行ってください。猫背や冷えの改善も期待できます4)。
振り子体操(Codman体操)
肩関節の可動域を広げるストレッチです。
- 片方の手をテーブルなどにつき、上半身を少し前かがみにします。
- もう片方の腕を脱力し、そのまま小さな円を描くように10~20回程度小さく振りましょう。
痛みが強い場合は、前後左右に軽く振るだけでも構いません。痛みがない場合は、円の直径を大きくしたり、振るほうの手にボールや水の入ったペットボトルなど、軽いおもりを持ったりして負荷を上げてみましょう5) 6)。
タオルを利用したストレッチ
肩関節の可動域を広げるストレッチです。
- タオルを両手で持ち、無理のない範囲で両腕を高く上げます。
- 腕を上げた状態をキープしたまま、左右に振りましょう。
痛みのある腕が上がらない場合は、もう片方の手で補助しながら上げていきましょう。痛みが出る手前で止めて、左右に振ってください。可動域が狭い場合は、タオルの代わりにゴムチューブなど伸縮性のあるものをお使いください5)。
四つ這いで行うストレッチ
肩甲骨まわりの筋肉を動かすストレッチです。
- 手と膝をマットなどについて、四つ這いになります。このときに手首が肩の真下にくるように注意しましょう。
- 肘が曲がらないように気を付けながら、首をすくめるようにして肩甲骨を頭のほうへゆっくりと引き寄せていきます。
- 背骨を伸ばしていくようなイメージで、肩甲骨をおしりのほうにゆっくりと戻していきましょう。
- 2.~3.を5~10回ほど繰り返します。
手首が痛い場合は、じゃんけんのグーを作って床につくか、手の下などに柔らかいタオルなどを敷きましょう。肩甲骨を頭のほうへ近づける時は、頭・背骨・骨盤を動かさないようにするのがポイントです6)。
横になって行うストレッチ(スリーパーストレッチ)
肩関節の可動域を改善するストレッチです。
- 伸ばしたい方の肩を下にして横向きになり、腕を過多の高さに合わせて前に伸ばします。
- 下の腕のひじを直角に曲げて顔の高さまで上げ、反対の手で手首を軽く握ってください。
- 下の手のひらを下に向けて、そのままゆっくりと床に近づけていきましょう。反対の手で支えながら行ってください。
- 肩が伸びたのを感じたら、そのまま20秒キープします。
- ゆっくりと元の位置に戻しましょう。
横向きになったときに、枕などで首を支えられるようにしておきましょう。ひじが伸びたり、肩がすくんだりしないように行うのがポイントです5)。
肩関節のストレッチで期待できる効果
肩関節のストレッチを続けると、次のような効果が期待できます。
- 可動域改善
- 痛みの緩和
- 筋肉のコリ緩和
- 血流促進
肩関節は常に腕の重さを支えている関節です。腕を上げるなどの動作は、重力に抗う動きであるため、肩関節に大きな負荷がかかります。そのため、肩関節のストレッチは、肩関節に余計な負担や負荷をかけないように意識しながら、筋肉を動かすことが大切です。誤った方法でのストレッチは、痛みを悪化させる恐れもあるため、十分に注意しましょう6)。
肩関節が痛くて眠れないときの対処法
四十肩・五十肩などでは、夜間に眠れないほどの肩の痛みに襲われることもあります。そのようなときのために、肩関節が急に痛くなった時の対処法をご紹介します。ただし、今回ご紹介するのは対症療法であり、根本的な治療ではありません。できるだけ早く整形外科を受診して、適切な治療を受けることをおすすめします。
寝返りなどで姿勢を変えるときに肩に激痛が走る場合は、大きめの腹巻やタオルを使って肩関節を軽く固定します。腹巻を使う場合は、腹巻に胴体と痛むほうの腕を入れて、体に沿わせるようにしてください。タオルを使用する場合は、パジャマの肩の部分にタオルを入れましょう。
突然肩に痛みが生じ、さらに患部が熱を持っていたり、腫れていたりする場合は、氷やアイスパック、市販の冷湿布・消炎鎮痛剤の使用も検討しましょう7)。
肩関節のストレッチを取り入れて、肩こりや五十肩を予防しよう!
日ごろからストレッチや筋力トレーニング、適度な運動などを続けておくことで、肩こりや四十肩・五十肩の予防・改善が期待できます。ぜひ今回ご紹介したストレッチを実践して、肩の痛みとおさらばしましょう!
【理学療法士からのコメント】
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は肩関節周囲の組織(骨、軟骨、靭帯、腱など)に炎症が発生し、「痛み」と「可動域制限」が起こります。凍ったように固まって動かなくなることからFrozen Shoulder(凍結肩)とも呼ばれています。様々な原因がありますが、肩こりによる肩周囲の柔軟性や血流の低下もその一因と言えます。私の経験上も肩関節周囲炎の患者さんの多くに肩こりがみられ、それに伴い肩甲骨の可動範囲が減少していることが多いです。今回の記事内で紹介されているほかに、仕事の合間などに行いやすいエクササイズを2つほどご紹介します。
(1) シュラッグ:息を吸いながら肩をすくめるように上げて2~3秒止めます。次に息を吐きながら肩を脱力するようにストンと肩を落とします。5~10回繰り返します。
(2)ショルダーローテーション:両肘をまげて指先で肩に触れるようにします。そのまま肘先で円を描くように肩甲骨を回します。内回しと外回しそれぞれ10~20回行います。
肩こりには高血圧や頸椎疾患、眼疾患、耳鼻科疾患などが隠れている場合もあります。頑固な肩こりが続いている場合は一度受診することをおすすめします。
【参考】
1) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「肩こり」
2) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「五十肩(肩関節周囲炎)」
3) 医療法人社団 ヤマナ会 東広島整形外科クリニック 自宅でも出来る肩関節の7分ストレッチ
4) 沢井製薬 サワイ健康推進課 肩こりにおすすめ!肩甲骨ストレッチ
5) 日本シグマックス株式会社 ZAMST 五十肩(肩関節周囲炎)を和らげ、肩の動きをサポートするストレッチ
6) Kracie Kampoful Life by クラシエの漢方 四十肩で腕が上がらないのはなぜ?肩関節周囲炎の原因や症状、診断方法を知ろう!四十肩・五十肩の症状回復におすすめストレッチ体操【図解】
7) エーザイ株式会社 セルフケア製品情報 温シップと冷シップの使い方【肩こり改善法】
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