【医師監修】肩から肘にかけての痛みの原因は?代表的な疾患も紹介

本記事では、肩から肘にかけての痛みを生じる代表的な疾患を詳しく解説します。肩や肘の痛みにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

肩関節と肘関節の仕組み

肩関節(肩甲上腕関節)は、上腕骨と肩甲骨からなる関節です。球状になった上腕骨の先端が、肩甲骨のくぼみ(関節窩)にはまる構造になっています。骨同士の接触面が浅いため、ほかの関節よりも不安定です。

肩関節の仕組みについて詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
肩関節の仕組み

一方、肘関節は上腕骨と2本の前腕骨(橈骨・尺骨)からなる関節です。親指側にある骨が橈骨、小指側の骨が尺骨です。体重の負荷がかかりづらいため、加齢による変形はあまり見られませんが、外傷を受けやすく、使いすぎによる症状が起きやすいという特徴があります。

肘関節の仕組みについて詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
肘関節の仕組み

肩から肘にかけての痛みを生じる代表的な疾患

ここからは、肩から腕にかけての痛みと原因となる、代表的な疾患についてご紹介します。

肩こり

肩こりは、首すじや首の付け根から、肩や背中にかけて張りやコリ、痛みが生じた状態のことです。悪化すると、頭痛や吐き気などの症状をともなうことがあります。

長時間同じ姿勢でいることや、悪い姿勢、運動不足、ストレスなどが原因で、腕に痛みや痺れが及ぶことも。しかし、頚椎疾患や耳鼻咽喉疾患、消化器・循環器系の病気から肩こりが起こることもあるため、注意が必要です1) 2)

頚肩腕症候群

首・肩・腕にかけて痛みや痺れが生じる病気です2)。原因ははっきりとはわかっていませんが、姿勢やオーバーユース(使いすぎ)、運動不足、ストレスなどが考えられています。とくに、長時間のデスクワークや、同一作業の繰り返しを行う方は注意が必要とされています3)

肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)

40~50代以降に多く見られる、肩関節の炎症です。肩関節を構成する骨や、軟骨などの周囲組織が炎症を起こしている状態です。

初期の段階では動作時の痛みのみですが、悪化すると滑液包や関節包の癒着が起こり、拘縮(凍結肩)という状態になり、日常動作が困難になります。夜に眠れないほどの痛みが起きることも4)

肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)について詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
【医師監修】五十肩とは?肩の痛みの原因となる病気や自分でできる予防法もあわせて解説

肩腱板断裂

40歳以上の男性の右肩に起こりやすい病気です。原因は使いすぎなどで、肩の安定性を維持する腱板が損傷されることです。肩の運動障害や痛みが主な症状で、多くの患者さまは夜間に痛みで眠れないことをきっかけに受診されます。

肩関節周囲炎とは異なり、多くの患者さんで肩の挙上は可能です。しかし、上腕の筋力低下5)や、動作時のジョリジョリとした軋轢音など、特徴的な症状がみられる場合があります6)

石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)

腱板にリン酸カルシウム結晶が沈着して、急性の炎症が生じたことにより起きる疾患です。夜間に眠れないほどの激しい痛みが生じ、肩関節を動かすことができなくなります。

肩腱板断裂と異なり、40~50歳代の女性に多く見られる点が特徴です7)。腕を挙上する際に肩関節に痛みが生じ、腕の方にも痛みや違和感が起きます8)

胸郭出口症候群

腕を挙げる動作で、上肢の痺れや肩・腕・肩甲骨周囲の痛みが生じる病気です。うずくような痛みや刺すような痛み、痺れ、ビリビリ感などの感覚障害や、握力低下や細かい動作が困難などの運動麻痺の症状が見られます。

原因は腕神経叢や鎖骨下動脈の絞扼や圧迫です。絞扼・圧迫されている部位によって、症状は変動します。鎖骨下動脈が圧迫されると腕は白っぽくなりますが、鎖骨下静脈が圧迫されると青紫色を呈します9)

上腕骨顆上骨折

子どもによく見られる骨折です。転倒や転落で肘が反った状態で骨が折れ、肘の部分に激しい痛みと腫れを生じます。骨の破片で神経や血管が損傷されると、手や指のしびれや運動障害が起きることも10)

その他の病気

前述した病気のほかにも、肩関節・肘関節以外の部分が原因で肩から肘にかけての痛みが起きる場合があります。肩から肘にかけての痛みを起こす、代表的な疾患をご紹介します11) 12) 13)

肩の痛みが放散痛(関連痛)として起こっていることもあります。狭心症や心筋梗塞などの心疾患では左肩に、胆石症などの胆嚢疾患では右肩に痛みが生じます。もしも肩以外に胸痛や腹痛がある場合は、整形外科だけでなく、循環器内科や消化器内科・外科の受診もご検討ください14)

肩から肘にかけての痛みは整形外科に相談しよう

肩から肘にかけての痛みは、原因ごとに治療方法やリハビリテーションが異なります。しかし、いずれの病気も早期発見・早期治療がその後の経過に影響を及ぼすことは言うまでもありません。もしも肩や腕、肘に痛みが生じた場合は、お近くの整形外科にご相談ください。

【医師からのコメント】
今まで説明してきたように、肩から肘にかけての痛みにはいろいろな原因があります。もちろんそれほど心配しなくていい病気が多いのですが、早めに病院にかかった方がいいのは、外傷などのきっかけがある場合、手や肘などの力の入りにくさや感覚の感じにくさなどの症状がある場合、動かさなかったり夜間でも痛い場合などです。また長期間続く場合も一度病院で検査をしておくと安心です。

そういった症状がない場合は、首や肩、肘周りのストレッチや体操などをするようにしましょう。また普段の悪い姿勢が関係していることも多いため、普段の生活を見直してみてはどうでしょうか。デスクワークが多い人は、休憩を定期的にとって動くようにするのも効果的です。筋肉や関節からくる症状の場合は、少し楽になることが多いです。

【参考】
1) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「肩こり」
2) 望クリニック 肩こり【肩・肘・首・手首の痛み】
3) 新中野整形・リハビリテーションクリニック 頚肩腕症候群・肩こり
4) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「五十肩(肩関節周囲炎)」
5) オクノクリニック 慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A 腱板断裂(腱板損傷)
6) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「肩腱板断裂」
7) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「石灰沈着性腱板炎(石灰性腱炎)」
8) オクノクリニック 慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A 石灰沈着性腱板炎
9) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「胸郭出口症候群」
10) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「上腕骨顆上骨折」
11) ぱくペインクリニック 首から肩、腕にかけての痛み(しびれ)
12) ユビー 二の腕(肩から肘の間)が痛い
13) 第一三共ヘルスケア くすりと健康の情報局 肩こりの症状・原因
14) 井尻整形外科 部位別診療ガイド 左肩へ心疾患の痛みの放散

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