【整形外科医監修】肩が上がらないのは四十肩ではなく「ローテーターカフ(腱板)」の損傷?放置厳禁な理由と最新治療法

「腕を上げると激痛が走る」「肩を下にして寝ると激痛で目が覚めてしまう」など、50代〜70代以降の世代でこのような症状が現れたとき、多くの方は四十肩・五十肩になったと思い込み、「そのうち治るだろう」と放っておいたり、痛みを我慢して自己流のストレッチや運動を続けたりしていませんか?

肩が上がらないのは、肩関節のまわりの腱板が損傷する腱板断裂の可能性があります。

本記事では、ローテーターカフの役割から腱板断裂の原因、四十肩との医学的な見分け方、そして整形外科で行うべき精密検査と最新治療法までを解説します。

この記事でわかること
✅「ローテーターカフ(腱板)」の役割と損傷する3大原因
✅「四十肩・五十肩」と「腱板損傷」の決定的な違い
✅レントゲンだけでは見抜けない理由と、MRI・エコーによる最新精密検査
✅「脂肪変性」のリスクと保存療法・手術療法の選択肢
✅気になる疑問を解決するQ&A

医師からのコメント

肩の痛みや腕の上がりにくさを感じたとき、「ただの四十肩だろう」と自己判断して放置したり、無理に動かしたりしていませんか?本記事でも解説している通り、痛みの原因が腱板断裂(ローテーターカフの損傷)であった場合、不適切な対処は症状の悪化や、手術でも修復困難な状態(脂肪変性など)を招く恐れがあります。 四十肩・五十肩と腱板断裂は初期症状が似ており、患者様ご自身で見分けるのは非常に困難です。痛みが2〜3週間続く場合や、自力で腕が上がらなくなった場合は、超音波(エコー)やMRI検査ができる整形外科を早めに受診し、正しい診断と治療を受けるようにしてください。

この記事の監修医師:出田 聡志(整形外科医)

ローテーターカフとは?

ローテーターカフは回旋筋腱板と呼ばれるインナーマッスルのことで、以下の4つの筋から構成されています。肩関節をすっぽりと覆うカフ(袖口)のようになっている組織です1)

肩関節は、人体の中で最も可動域が広く、全方向に回すことができる特殊な構造をしています。例えるなら、「丸いボウリングの球(上腕骨頭)」を「小さな浅いお皿(肩甲骨の関節唇)」の上に乗せている状態です。

そのままでは球がすぐにお皿から落ちて(脱臼して)しまうため、上腕骨頭をお皿の中心にぐっと引き寄せて固定しているのがローテーターカフです。

ローテーターカフが損傷する3大原因

ローテーターカフは、加齢と身体の変化によって損傷が増えてきます。ここでは、とくに40~50代以降の方に多く見られる損傷の3つの原因について見ていきましょう。

加齢による腱の質の低下

年齢とともに腱の柔軟性が失われ、血流も低下していきます。50代以降になると長年の日常生活の摩擦だけで腱が擦り減り、雑巾が擦り切れるように自然とほつれて断裂することがあります2)

転倒・衝突などの軽微な外傷

「滑って転んで手をついた」「自転車で転倒して肩を強く打った」「急に重い荷物を持ち上げた」など、一瞬の強い衝撃によってローテーターカフに負荷がかかり、部分的な損傷が起きてしまいます。

肩の使いすぎ・構造的な摩擦

屋根の塗装作業、ゴルフやテニスのスイングなど、腕を肩より高く上げる動作を長年繰り返すと、肩の一番高い場所にある肩峰(肩甲骨の一部)と上腕骨の間の空間が狭くなります。これによって、肩関節の骨や組織同士がこすれることで炎症が起こり、インピンジメント症候群を発症します。症状が悪化すると、寝ていても痛みが現れやすくなります3)

「四十肩・五十肩」と「ローテーターカフ損傷」の決定的な違い

四十肩・五十肩とローテーターカフ損傷は、見た目の症状こそ似ていますが、病態も治療法もまったく異なります。四十肩だと思って放置したり、無理に腕を振り回すリハビリを続けたりすると、傷付いたローテーターカフの断裂が広がり、最悪の場合、二度と元に戻らなくなるリスクがあります。

四十肩・五十肩は関節包全体が固まるため自力で腕が上がらないのに対し、ローテーターカフ損傷・断裂は腱が切れているため自力では上がらないものの他人に支えてもらうとすっと上がるという違いがあります。

比較項目四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)4)ローテーターカフ損傷・断裂
痛みの根本原因関節包の炎症と癒着・拘縮筋肉の腱(ワイヤー)のすり減り・断裂
他人が腕を持ち上げたとき固まって上がらない(激痛が走る)他人が持ち上げれば(痛みを伴うこともあるが)上がる場合がある(※ただし、長期化して関節が固まると上がらなくなることもある)
力が入るか痛むが、力自体は入る途中で「力が入らずダランと落ちる」
夜間の痛み(夜間痛)炎症期に強く出やすい横になった時や寝返りで長期間強く出やすい

五十肩について詳しく知りたい方は、次の記事もあわせてご覧ください。

自分で確認できる自覚症状「ドロップアームサイン

ローテーターカフの損傷があるかを自身で確認できるテスト法が「ドロップアームサイン」です。以下の方法で、腱板の中でも損傷しやすい棘上筋に異常がないかをチェックできます5)

  1. 他人に痛む方の腕を持ち上げてもらい、90度の位置でキープします。
  2. その状態から、持っていた手をゆっくり離します。
  3. 自力でその腕の高さを維持できず、ガクンと腕が落ちてしまう場合、ローテーターカフが断裂している可能性が極めて高いと判断されます。

このテスト法はあくまでスクリーニング検査であって、腱板の損傷もしくは断裂を断定するものではありません。ローテーターカフの損傷かもしれないと思ったら、早めに医療機関を受診して医師に相談してみましょう。

整形外科での精密検査(MRI・エコー)と最新の治療法

ローテーターカフ損傷が疑われる場合、自己判断で湿布を貼って放置したり、整体に通ったりすることは推奨されません。必ず整形外科を受診し、診断してもらいましょう。

なぜ「レントゲン」だけではダメなのか?

レントゲン写真には骨しか写りません筋肉や腱は軟部組織であるため、レントゲンには完全に透過して写らないのです。そのため、骨折の有無や骨の変形を確認したうえで、以下の精密検査を行う必要があります。

切れた腱はどう治す?最新の治療アプローチ

ローテーターカフの損傷・断裂に対する治療法は、エコーやMRI検査を行ったうえで、年齢や断裂の有無や程度を判断し、保存療法か手術療法のいずれかのアプローチで回復を目指します6)

保存療法(断裂が小さい場合・高齢者の場合)

日常動作が可能な程度の痛みや部分断裂など慢性と判断される場合は、保存療法を行います。痛みを改善させ、腱板の機能回復を図るため、注射療法やリハビリといった運動療法を取り入れます。

手術療法(完全断裂の場合・若い方やスポーツを行う方)

保存療法を続けても痛みが残る、または完全断裂の症状が見られる場合は、手術を行います。関節鏡を使用する腱板断裂手術・上方関節包再建術などがありますが、高齢者で完全断裂の程度が重症の方には、リバース型人工肩関節置換術が行われるケースもあります7)

急性の腱板断裂を放置するリスク

「痛いけれどガマンできるから」「高齢だから手術は嫌だ」といってローテーターカフの断裂を放置することは極めて危険です。

放置が長期化すると、使われなくなった筋肉に脂肪が溜まり、カチカチに退化する「脂肪変性(しぼうへんせい)」を起こします。脂肪変性が進み切ってしまうと、いざ手術をしようとしても腱が固く縮んで骨まで届かないため、縫合手術自体が不可能になってしまうのです8)

最終的には、関節の骨同士が直接ぶつかり合って破壊される「腱板断裂性変形性肩関節症」へと進行し、リバース型人工肩関節置換術しか選択肢がなくなる場合もあります。

よくある質問Q&A

いでた整形外科クリニックの出田先生が、患者さまからよく寄せられる質問にお答えします。

Q1.ローテーターカフが部分断裂していても、自然に痛みが消えることはありますか?

A.炎症が治まることで、部分断裂していても痛みが一時的に消えるケースはあります。しかし、血流量の少ない腱組織が自力で再結合して治ることは基本的にありません。痛みが引いたからといって治ったと勘違いし、重いものを持つなどの負担をかけると、ある日突然、残っていた部分も完全に切れて完全断裂に移行する危険性があります。痛みが消えても専門医による定期的な経過観察が必要です。

Q2.四十肩と言われてリハビリをしていますが、腱板損傷だった場合は悪化しますか?

A.四十肩・五十肩のリハビリは関節が固まってしまった場合(拘縮期)、ある程度の痛みを伴いながらも関節を動かすリハビリが必要になることがあります。しかし、ローテーターカフの損傷・断裂の場合、切れたワイヤー(腱)をさらに引っ張る行為になるため、リハビリによって断裂を自ら押し広げてしまう最悪の結果を招きます。「リハビリをするほど痛みが強くなる」と感じたら、直ちにリハビリを中止し、MRI検査を行っている整形外科を受診してください。

Q3.レントゲン検査だけでローテーターカフの損傷や断裂はわかりますか?

A.レントゲンには骨しか写らず、筋肉や腱は写りません。かなり断裂が進行して上腕骨が上方にズレ上がっているような末期症状であればレントゲンでも間接的に推測できますが、初期〜中期の損傷・断裂を見つけることは不可能です。確定診断には、必ずエコー検査やMRI検査が必要です。

Q4.腱板が完全に断裂してしまった場合、高齢(70代・80代)でも手術は可能ですか?

A.現代の「関節鏡下腱板修復術」は身体への負担が非常に少ないため、80代の患者さまでも安全に手術が行われています。ただし、年齢とともに筋肉の質が変化しやすいため、手術の難易度が上がることは事実です。手術を行うべきか、保存療法で様子を見るべきかは、日常での活動性とMRIの画像所見を照らし合わせて医師とじっくり相談してください。

Q5.日常生活でローテーターカフを痛めないために、気をつけるべき動作はありますか?

A.高所での作業や日常における急な動作に注意しましょう。例えば、高い場所からものを取るときは、脚立を使い、体を引き寄せてから持ちましょう。バスや電車に乗るとき、つり革を強く掴んだまま急ブレーキで腕を強く引っ張られないように体幹を使って、身体全体を支えることが大切です。また、ゴルフやテニスのウォーミングアップでは、肩のインナーマッスルを温めるチューブトレーニングなどを事前に行うよう心掛けましょう。

【まとめ】「四十肩」で片付ける前に専門医の診察を

「肩が上がらない」という症状は、日常生活のあらゆる質(QOL)を著しく低下させます。

単なる四十肩・五十肩であれば、適切な可動域訓練によって時間が解決してくれることもあります。しかし、それが「ローテーターカフの損傷・断裂」であった場合、放置や間違ったリハビリは一生ものの後遺症を引き起こす引き金となってしまいます。

早期に発見し、正しい保存療法やリハビリ、あるいは必要な時期に適切な手術を行うことで、再びスムーズに上がる肩を取り戻すことができます。肩が上がらない原因を知りたいなら、MRIやエコー設備がある整形外科を受診しましょう。お近くの優良な整形外科クリニックをこちらで検索してみてください。

【参考】

1)回旋筋腱板|骨と関節の痛みにお悩みの方をサポートするWebサイト|関節ライフ

2)腱板損傷とは - 腱板損傷の原因や治療について|埼玉県川口市 慶友川口駅前整形外科

3)インピンジメント症候群 - 独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター

4)「五十肩(肩関節周囲炎)」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる

5)ドロップアームテストとは何か|腱板断裂との関係と限界を吟味する

6)「肩腱板断裂」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる

7)腱板断裂(けんばんだんれつ) - 独立行政法人国立病院機構 霞ヶ浦医療センター

8)脂肪変性について解説|渋谷・大手町・みなとみらい・田町三田・新宿の内科ならMYメディカルクリニック

バナー広告募集中

記事監修者情報

出田 聡志 先生

2007年、自治医科大学医学部を卒業後、長崎医療センターに勤務。その後、長崎県上五島病院や長崎県対馬病院で離島医療に携わったほか、福岡大学病院整形外科や長崎県島原病院で経験を積んだうえで、2020年いでた整形外科クリニックを開院。日本DMAT隊員や長崎県難病指定医などを務め、地域医療への貢献意欲も高い。

相談できる
医療機関
を探す

日本全国からあなたに合った医療機関を探すことができます。

都道府県から探す

地図から探す

フリーワード検索

地域名や医療機関名など、お好きな単語で検索することができます。