【整形外科医監修】ひざのお皿「膝蓋骨」の役割とは?ひざのお皿の周辺が痛む原因と対策について解説

「膝蓋骨(しつがいこつ)」は膝の動きを支えるうえで不可欠な骨で、「膝の皿」とも呼ばれています。「階段の昇り降りで膝の前面が痛む」「膝の皿のあたりからポキポキという音が聞こえる」といったお悩みを抱えている方は、膝蓋骨に関連した障害や炎症の可能性があるため、整形外科医に相談しましょう。

本記事では、整形外科医から監修を受けて、膝蓋骨の位置や構造、役割に加えて、滑走障害(トラッキング障害)や膝まわりの痛みの原因とその治療法、自身でできるセルフケアなどについて解説しています。

この記事でわかること
✅膝蓋骨の位置や構造と、「膝を伸ばす滑車」としての重要な役割
✅膝蓋骨の滑走障害が起こる仕組みと主な関連疾患
✅年齢層や生活スタイル別(加齢型・スポーツ型)の症状の違い
✅運動療法を中心とした正しいセルフケアと整形外科を受診すべきタイミング

監修整形外科医からのコメント

膝のお皿である「膝蓋骨」は、歩行や階段の昇降など、私たちが日常的に足を動かす際に、太ももの筋力を効率良く脛(すね)に伝えるための重要な役割を担っています。

膝の痛みというと「大腿骨と脛骨の間にある軟骨のすり減り」を想像されがちですが、実は膝蓋骨の裏側(膝蓋大腿関節)の摩擦やズレが原因のケースも散見されます。とくに、階段の昇り降りやしゃがむ動作の際、膝の前側に痛みや引っかかりを感じる場合は要注意です。

膝の痛みを我慢、放置してしまうと軟骨の損傷につながる恐れもありますので、痛みが続く場合は早めに整形外科を受診し、正確な診断と適切なリハビリテーションを受けるようにしてください。

この記事の監修医師:出田 聡志(整形外科医)

膝蓋骨とは?位置・構造・役割をわかりやすく解説

膝蓋骨は「膝のお皿」とも呼ばれる小さな骨で、膝の動きを支えるうえで欠かせない存在です。ここでは、その位置や形状、そして役割について見ていきましょう。

膝蓋骨の位置と形状|膝のどこにある骨か

膝関節は、太ももの大腿骨、すねの脛骨、そして大腿骨の前面に位置する膝蓋骨が組み合わさってできているものです。膝蓋骨は三角形に近い形状をしており、大腿骨とつながりながら膝の前面を保護する構造になっています。また、人体にある種子骨(腱の中に形成される骨)の中で、もっとも大きなサイズと言われており、その丸みを帯びた形状から「お皿」の愛称で呼ばれています。

膝蓋骨の役割|大腿四頭筋と膝を伸ばす仕組み

膝蓋骨は、太ももの前面にある大腿四頭筋の腱の中に埋め込まれるように存在しています。大腿四頭筋が収縮すると、そこで生まれた力が膝蓋骨を介して脛骨へと伝わり、膝を伸ばすという仕組みです。膝蓋骨は筋肉の収縮をうまく脛骨に伝えるための滑車のような役割を担っているとされます1)。つまり、膝蓋骨は力の伝達効率を高める部品といえるでしょう。仮に、この骨が存在しなければ、大腿四頭筋の収縮が安定せず、膝を伸ばす動作そのものにも影響が及んでしまいます。

膝蓋骨と膝蓋大腿関節の関係

膝には「大腿骨と脛骨の関節(大腿脛骨関節)」だけでなく、膝蓋骨と大腿骨から構成される「膝蓋大腿関節」という関節も存在します。膝を曲げ伸ばしする際、膝蓋骨は大腿骨前面にある溝(滑車溝)のうえをスムーズに上下しながら滑走しており、この動きが正常に保たれていることが膝の動作を快適にするための前提条件です。

通常、膝にかかわる情報では大腿脛骨関節を重点的に説明されがちですが、実は膝前面に痛みがある場合、その原因の多くは膝蓋大腿関節側のトラブルに由来します。そのため、膝蓋骨単体の構造だけでなく、もうひとつの関節である膝蓋大腿関節についても理解しておくことが、これから説明する滑走障害や炎症を把握するうえでの土台になるでしょう。

膝蓋骨の滑走障害とは?正常な動きとのズレを理解

膝蓋骨に関連した障害のひとつとして、滑走障害があります。ここでは、その仕組みと原因、関連する疾患を認識できます。

滑走障害の仕組み

正常な状態であれば、膝蓋骨は大腿骨に形成された溝にはまり、その溝に沿って滑るように移動します2)。この軌道から外側などにズレて動いてしまう状態が「滑走障害(トラッキング障害)」です。滑走障害は、関節面が完全に外れる「脱臼」や、外れかけた状態の「亜脱臼」とは異なり、より軽度で慢性的な動きの偏りを指します。以下の表で、脱臼と亜脱臼、滑走障害の違いをチェックしてみましょう。

状態関節面のずれ方特徴
滑走障害(トラッキング障害)大腿骨の溝に沿った正常な軌道からズレて動く慢性的な痛みや違和感が現れやすい
亜脱臼関節面が部分的に外れかける一時的な不安定感やガクッとした感覚がある
脱臼関節面が完全に外れる強い痛みと変形が生じ、治療の緊急性が高い

滑走障害を放置すると関節面の摩擦が増えるとともに軟骨への負担も蓄積し、亜脱臼や脱臼など重症化することもあるため、早期に整形外科を受診することが大切です。

滑走障害が起こる主な原因

膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)の分野では、滑走障害の主な原因として膝蓋骨のトラッキング不足による関節への過度な圧力が指摘されています3)。荷重がかかった際、いわゆる「ニーイン(膝が内側に入る不良動作)」などによって大腿骨が過度に内旋することで膝蓋骨も相対的に外側へずれる現象のほか、股関節の外転筋・外旋筋の筋力低下が関与すると言われています。このように、膝だけでなく股関節や足を含め全身のバランスが影響する点を理解しておきましょう。

膝蓋骨周辺の痛みを引き起こす主な疾患

滑走障害がいくつもの疾患と結びついているため、代表的なものを把握しておくと良いでしょう。

これらの疾患が滑走障害に関連していることを記憶しておくことで、自身に同様の症状が起きた際に整形外科で説明しやすくなります。

膝蓋骨周囲に炎症が起こるとどうなる?症状とセルフチェック

滑走障害が続くと、膝蓋骨まわりの組織に炎症が生じ、さまざまな症状が現れます。ここでは代表的な症状と、年代や活動レベルによる違い、受診の目安を解説します。

膝蓋骨まわりの炎症で現れる代表的な症状

膝蓋骨まわりに炎症が起きると、次のような症状が現れやすくなります。

こうした症状に加え、腫れや熱感を伴う場合、より強い炎症が起きているサインと捉えましょう。

年齢層や生活スタイルから発症しやすいケース

膝蓋骨のトラブルが起きた場合、年齢層や生活スタイルによって原因が異なります。中高年層とスポーツを行う若年~中年層での原因のほか、進行の仕方や背景にある要因について、以下から確認してみましょう。

項目中高年層(加齢型)若年〜中年層(スポーツ型)
主な原因加齢による関節軟骨のすり減り2)ジャンプ動作後の着地や、ランニングの繰り返しによる負荷
進行の仕方日常生活の中でゆっくりと進行運動や特定動作の積み重ね
背景にある要因長期にわたる体重増加や姿勢の崩れ大腿四頭筋の筋力不足やフォームの崩れ

膝蓋骨まわりの痛みといっても、その原因や対処の優先順位が異なります。そのため、膝蓋骨のトラブルには中高年層(加齢型)と若年〜中年層(スポーツ型)の2つのタイプがあることをあらかじめ把握しておけば、仮にその症状が起きた場合でも適切なセルフケアや受診判断ができます。

なお、成長期の子どもで膝蓋骨まわりの痛みがある場合、オスグッド病など成長期特有の疾患も想定されます。オスグッド病については、こちらの記事で詳しく解説しています。

整形外科の受診目安となるサイン

セルフケアで様子を見てよいか、整形外科医院を受診すべきか迷ったとき、次のようなサインがないか確認してみましょう。

これらのサインが見られる場合、滑走障害の慢性化によって亜脱臼や脱臼に近い状態になっている可能性があります。また、亜脱臼や脱臼を繰り返すと軟骨の摩耗が進むことで、骨にまで影響が及ぶことがあるとされています2)。こうしたサインが見られる場合、早めに整形外科を受診し、画像検査などで状態を確認してもらうことが望ましいでしょう。

膝蓋骨のトラブルへの対処法とセルフケア

膝蓋骨の滑走障害や炎症がある場合、その治療法として基本的に保存療法から始めます。ここでは代表的なセルフケアの方法と、その際の注意すべきポイントを確認してみましょう。

保存療法の基本となる運動療法とストレッチ

2018年に発表された国際的なコンセンサスステートメントにおいて、膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)に対しては運動療法が推奨されています5)。運動療法で取り組むトレーニングには、主に次のようなものがあります。

膝だけでなく股関節から下肢全体までを鍛えるトレーニングによって、膝蓋大腿関節への負担軽減につながります。

テーピングやサポーターの活用と注意点

膝蓋骨を安定させるだけでなく、膝の痛みを抑えながら運動を行いやすくするための補助的な手段として、テーピングやサポーターを活用します。ただし、その痛みを緩和するメカニズムは、骨格を物理的に矯正しているというより、感覚的・神経的な作用による部分が大きいとも指摘されています5)

つまり、テーピングやサポーターはあくまで一時的なサポートであり、膝痛を緩和、改善するためには筋力強化との併用が欠かせないということです。しかも、それらの用具を締め付けすぎると血流を妨げる恐れがあるため、違和感やしびれがあるならすぐに緩める、外すといった対応も必要です。

セルフケアで避けたい行動

膝の痛みがある場合、「とにかく安静にする」という対応が必ずしも正解とは限りません。長期間にわたって身体を動かさないと、膝を支える大腿四頭筋がやせ細り、かえって膝蓋骨を安定させる力が弱まってしまうことがあります。実際、膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)の患者さまで、健常な人と比べて筋力が6〜12%程度低下していたと報告されているケースもあります5)

一方で、痛みを我慢しながら運動を続けることも症状を悪化させる原因のひとつです。「動かなさすぎ」「動かしすぎ」という極端なセルフケアを避けながら、痛みを感じない範囲内で適切な負荷をかけ続けることが回復への近道です。

膝蓋骨の痛みを繰り返さないために整形外科医へ相談

セルフケアに取り組んでも症状の改善が見られない、ある動作をすると痛みを感じる場合、整形外科医に相談する必要があります。ここでは整形外科の受診のタイミングや診療の流れ、長期的な視点でのケアを確認してみましょう。

整形外科を受診すべきタイミング

数週間、セルフケアを続けても症状の改善が見られない、同じ動作をするたびに痛みを感じるといった場合、すぐに整形外科を受診することが大切です。膝蓋大腿関節症のように加齢に関連した疾患だと、症状が徐々に進行するため、気づいたときには軟骨がすり減っているというケースも少なくないためです。症状の悪化を防ぎ、適切な治療方法も選べるよう、早期に整形外科医から診断を受けましょう。

整形外科での診療の流れ

整形外科を受診する場合、問診や視診、徒手検査によって痛みの部位や動きの特徴を確認するところから始まります。そのうえで必要に応じて、骨の変形レベルを確認するレントゲン撮影や、靭帯・軟骨など軟部組織の状態を調べるMRI検査を行います2)。この診断結果にもとづいて、薬物療法や理学療法の選択が可能です。それらの治療を続けても症状の改善が見られない場合、手術療法を検討することになるでしょう。

膝痛が再発しないための長期的なケア

治療を通じて痛みが引いたとしても、そこで気を緩めてしまうと再発のリスクがあります。とくに、膝蓋骨まわりのトラブルが筋力低下や体重増加、姿勢の崩れなど生活習慣に関連した原因であることが多いため、症状が落ち着いた後も大腿四頭筋や股関節周囲筋の強化に向けたトレーニングを継続することが望ましいでしょう。

また、体重が増えるほど膝関節への負荷も大きくなるため、適正な体重を維持することも長期的な予防策のひとつです。「痛みが落ち着いたから終わり」ではなく、「痛みが出にくい膝にする」という視点を持つことが、快適な毎日を過ごすためのポイントになります。

監修整形外科医からのコメント

膝蓋骨周辺の痛みを改善しながら、その再発を防ぐことを目指すためには、症状が治まった後の長期的なケアが非常に重要です。湿布の貼付や安静で一時的に痛みが和らいでも、原因となる「筋力のアンバランス」「関節の動かし方の癖」が改善されなければ、何度も痛みが発症してしまいます。とくに太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)や股関節周囲の筋肉を鍛えることは、膝のお皿の軌道を安定させるために効果的です。

ただし、痛みを伴う状態で自己流のトレーニングに取り組むと逆効果になることもあります。医師や理学療法士の指導を受けて、自身の年齢や生活背景に合わせた正しい運動療法を学び、無理のない範囲で日々の習慣として継続していきましょう。

この記事の監修医師:出田 聡志(整形外科医)

膝蓋骨についてよくある質問とその回答

ここでは膝蓋骨について多数寄せられる質問と、それに対する整形外科医からの回答を確かめられます。膝蓋骨まわりの痛みでお悩みの方は、参考となる情報になるでしょう。

Q1. 膝蓋骨が動く、グラグラする感じがするのは異常ですか?

A1. 膝蓋骨の構造上、力を抜いた状態であれば多少左右に動かせるようになっているため、わずかな可動性があるからといって必ずしも異常ではありません。ただし、日常動作の中で明らかにガクッとズレる、不安定な感覚がある場合、靭帯の緩みや滑走障害が関わっている可能性があることから、早めに整形外科を受診しましょう。

Q2. 膝蓋骨の痛みは自然に治ることがありますか?

A2. 軽度の炎症であれば、安静と軽い運動の組み合わせで自然に痛みが引くケースもあります。しかし、滑走障害や膝蓋大腿関節症のように構造的な要因が背景にある場合に放置しても改善しません。とくに加齢が原因の場合、軟骨のすり減りが進行していくものとされているため2)、「痛みが引いたから治った」と油断せず、その後も経過観察をすることが大切です。

Q3. 子どもや成長期でも膝蓋骨のトラブルは起こりますか?

A3. 成長期のお子さんの場合、膝蓋骨そのものよりも、膝蓋腱が付着する脛骨側で炎症が起こるオスグッド病など、成長期特有の疾患になるケースがあります。膝痛の原因は年齢層によって異なるため、成長期特有の疾患である可能性も念頭に置いて様子を見ることが望ましいでしょう。

Q4. 運動を続けながら治すことはできますか?

A4. 「痛いから運動はすべてダメ」と決めつけてしまう方が多いのですが、実際には運動を完全にストップすべきケースばかりではありません。運動療法そのものが膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)などの治療の第一選択とされているように、自身が我慢できる痛みの範囲内で強度や種目を調整しながら継続するほうが、筋力低下を防げるうえ、痛みの緩和につながりやすいこともあります。例えば、ジャンプ動作を一時的に控えつつ、痛みの出ない範囲で筋力トレーニングを継続するといった調整が現実的な選択肢です。

ただし、運動の継続を自身で判断してしまうと症状を悪化させるリスクがあるため、医師や理学療法士に運動の可否や強度を相談しながら行うことが大切です。

まとめ|膝蓋骨まわりに痛みや違和感があるなら整形外科へ

膝蓋骨は、大腿四頭筋の力を脛骨に伝える滑車のような役割を担う骨であり、大腿骨との間に膝蓋大腿関節という独自の関節を形成しています。この関節の動きにズレが生じる状態が滑走障害であり、膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)や膝棚障害(タナ障害)、膝蓋大腿関節症といった疾患を招きます。

膝蓋骨まわりに痛みや違和感があるなら、まず大腿四頭筋のストレッチや軽度の筋力トレーニングに取り組みながら数日~1週間ほど様子を見ましょう。もし痛みや腫れが続いたり、引っかかる感覚があったりする場合、すぐに整形外科を受診し、原因を突き止める必要があります。

すでに膝蓋骨まわりの痛みが慢性化しており、日常生活に支障をきたしている場合も、そのまま放置せず整形外科医に相談し、検査や治療を受けることが大切です。

膝蓋骨まわりの痛みや違和感でお悩みの方は、こちらから近隣の整形外科を探せます。
医療機関検索

【参考】
1)ひざ関節のしくみ|人工関節ドットコム
2)整形外科の病気:膝蓋大腿関節症|徳洲会グループ
3)膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)の女性に対する股関節外転・外旋筋力増強の短期効果:無作為化臨床比較試験|日本理学療法士協会
4)整形外科の病気:膝棚障害|徳洲会グループ
5)膝蓋大腿部痛症候群 フィジオのための診断と治療|physiotutors

バナー広告募集中

記事監修者情報

出田 聡志 先生

2007年、自治医科大学医学部を卒業後、長崎医療センターに勤務。その後、長崎県上五島病院や長崎県対馬病院で離島医療に携わったほか、福岡大学病院整形外科や長崎県島原病院で経験を積んだうえで、2020年いでた整形外科クリニックを開院。日本DMAT隊員や長崎県難病指定医などを務め、地域医療への貢献意欲も高い。

相談できる
医療機関
を探す

日本全国からあなたに合った医療機関を探すことができます。

都道府県から探す

地図から探す

フリーワード検索

地域名や医療機関名など、お好きな単語で検索することができます。