【医師監修】化膿性関節炎(感染性関節炎)とは?ひざ関節にも起こる?症状や治療法をご紹介

膝の痛みとともに、発熱や腫れなどの症状が現れて悩んでいる方もいるのではないでしょうか。この症状が現れる場合、化膿性関節炎を発症している可能性があります。化膿性関節炎は、関節内で感染が起こることで生じる疾患であり、発症後は速やかな対処が必要です。

この記事では、化膿性関節炎の特徴や治療法、予防法をご紹介します。どのような対処をすべきかを知ることで、早期からの改善につながるでしょう。

化膿性関節炎とは?

化膿性関節炎とは、関節内に細菌が侵入することで発症する疾患です。なんらかの原因で細菌が関節内に侵入すると、内部で感染が起きて化膿してしまいます。これが化膿性関節炎の特徴であり、「感染性関節炎」とも呼ばれています1)

化膿性関節炎は、放置すると関節の破壊につながるおそれがある疾患です。健康な方でも発症する可能性があり、とくに高齢者や糖尿病などの免疫力が低下している方は注意が必要です。

化膿性関節炎以外の関節炎についても知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:【医師監修】関節の炎症で考えられる疾患は?治療法や予防法も解説
【医師監修】関節炎とは?関節炎を引き起こす病気や具体的な治療法をご紹介

化膿性関節炎の症状

化膿性関節炎のおもな症状は、以下のとおりです2)

これらの症状は、関節内で細菌が増殖して炎症反応が起こることで現れます。細菌感染により関節内が化膿して内部の圧力が高まると、さらに強い痛みを引き起こすこともあるでしょう。

また、感染に対する身体の防御反応として、腫れや免疫システムの活性化による発熱が起こります。化膿性関節炎になると高熱が続くことも多く、関節の動きも制限されるので、日常生活に大きな支障をきたします。これらの症状が現れた場合は、なるべく速やかに整形外科のある医療機関に受診しましょう。

化膿性関節炎の原因

先述したように、化膿性関節炎のおもな原因は細菌が関節内に侵入することです。とくに原因として多いのが、人の皮膚に広く常在している「黄色ブドウ球菌」による感染とされています。感染経路は、おもに以下のパターンがあげられます1)

まず血液を介した感染では、身体のほかの部位で起きた感染症がきっかけで、細菌が血液に乗って関節に運ばれます。外部による感染では、転倒やケガでできた傷口から細菌が関節に侵入することが多いです。そのほかにも、注射や手術などの医療処置の際に細菌が侵入し、そこから感染して化膿性関節炎を引き起こすケースもあります。

化膿性関節炎は膝関節に起こりやすい?

成人の化膿性関節炎を引き起こす関節としてもっとも多いのが、膝関節とされています。小児においては股関節がもっとも多く、次いで膝関節が2番目に多い発症部位とされています3)

膝関節周辺は血流が豊富なので、ほかの部位で発生した感染症から細菌が運ばれやすい構造と言えるでしょう。そのため、膝関節の痛みとともに、発熱などの症状がある場合は、化膿性関節炎を疑う必要があります。この疾患を放置するとさらに症状が悪化するおそれがあるため、早期からの対処が重要です。

化膿性関節炎以外で考えられる膝の疾患については、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:【医師監修】膝関節が痛い原因は?セルフケア方法や病院での治療法を紹介

化膿性関節炎の診断方法

化膿性関節炎の診断では、複数の検査を組み合わせて行われます2)。診断においてもっとも重要なのが、関節穿刺(かんせつせんし)による関節液検査です。関節穿刺とは、細い針を使って関節内の液体を採取する方法で、その中に細菌が含まれているかを確認します。この検査では細菌の種類も特定できるため、より効果的な抗生物質の選択につながるのです。

血液検査では、炎症反応を示す指標であるCRP(たんぱく質の1種)や白血球数を調べます。画像検査ではX線やMRI検査が行われ、発症部位や重症度の程度などを確認します。

化膿性関節炎の治療方法

化膿性関節炎と診断されたあとは、どのような治療が行われるのでしょうか。ここでは、具体的な治療方法について解説します。

関節の安静

化膿性関節炎の治療において、患部の関節を安静に保つことは、症状改善のために欠かせない要素です1)。関節を安静にすることで関節内の炎症を抑制し、感染によって傷ついた組織の修復を促します。具体的には、患部の関節を動かさないように固定し、体重をかけたり負荷をかけたりすることを避けます。

膝関節の場合は、松葉杖や車椅子を使用して歩行時の負担軽減を図ることもあるでしょう。適切な安静を維持すれば、関節内の感染の拡大も防げ、後述する薬物治療の効果を最大限に引き出せます。

薬物療法

化膿性関節炎に対する薬物療法では、おもに抗生物質が用いられています1)。抗生物質によって関節内に侵入した細菌を効果的に殺菌し、炎症の進行を止めることで症状の改善を図ります。治療を行う際は、抗生剤の効果を高めるために点滴投与が行われることが一般的です。

使用される抗生物質の種類は、関節液検査や血液検査などの結果のもと、原因となる細菌に合わせたものを選択します。抗生剤によって症状の改善がみられた場合は、点滴から内服タイプの薬に切り替えることもあります。適切な薬物療法によって細菌感染をおさえられれば、関節機能の回復や合併症の予防につながるでしょう。

リハビリテーション

化膿性関節炎によって低下した身体機能の改善を図るために、状態に応じたリハビリを行います4)。リハビリによって筋力や関節の動きを向上させ、日常生活へのスムーズな復帰につなげることが目的です。入院中は、「理学療法士」や「作業療法士」などの専門職がサポートしながらリハビリを進めていきます。

初期段階では関節への負担を最小限におさえながら運動を行い、回復状況に応じて徐々に強度を高めていきます。医師や理学療法士と連携しながら、状態に合わせた適切なリハビリを実施することで、効率的な回復が期待できるでしょう。

手術

抗生物質による薬物療法では十分な効果が得られない場合や、関節内の化膿が進行している場合は、手術による処置が行われるケースがあります。手術の目的としては、関節内の膿を直接除去しつつ、感染した組織を取り除いて炎症の抑制を図ることです2)

手術は局所麻酔または全身麻酔のもとで実施され、術後は抗生物質の投与を継続し、段階的なリハビリへ移行して身体機能の改善を目指します。

化膿性関節炎の予防法

化膿性関節炎を予防するためには、どのようなことを意識すべきなのでしょうか。ここでは、具体的な予防法を解説します。

傷口を清潔にする

化膿性関節炎を予防するためには、傷口を清潔に保つことが重要です。傷口をそのままにすると細菌が関節内に侵入して感染を引き起こし、やがて化膿性関節炎につながります1)。とくに手術後や注射後は感染リスクが高いため、適切なケアが必要です。傷を負った際は、すぐに水でよく洗い流し、消毒液を用いて丁寧に処置しましょう。

包帯を使用する場合は定期的に新しいものへ交換し、医師の指示に従って傷口の管理を行います。日常生活でできる小さな傷でも軽視せず、清潔に保つ習慣を身につけることで、化膿性関節炎のリスクを減らせます。

関節に負担をかけない

化膿性関節炎を予防するには、関節に過度な負担をかけないようにしましょう。関節に負担がかかると周囲の組織が傷付き、化膿性関節炎につながるおそれがあります1)。また、化膿性関節炎だけでなく、変形性関節症や靭帯損傷など、ほかの疾患を発症する可能性もあります。とくに高齢者や関節に持病がある方は、無理のない範囲で活動することを心掛けてください。

日常生活では、長時間同じ姿勢を続けることを避け、適度に休憩をとりながら活動しましょう。過度な体重は膝関節への負担を大きく増加させるため、ダイエットも予防策のひとつです。軽い運動やストレッチで関節の柔軟性を保ちつつ、関節への負担を最小限におさえることで、化膿性関節炎のリスクを減らせます。

化膿性関節炎の兆候が現れたら速やかに医療機関を受診する

化膿性関節炎の兆候が現れた際は、速やかに医療機関を受診しましょう。再発の主な兆候として、以下のようなサインがあげられます2)

化膿性関節炎を放置すると、細菌感染により関節の軟骨や骨が徐々に傷つき、日常生活に大きな支障をきたすおそれがあります。再発の疑いがある場合は我慢せず、速やかに整形外科を受診してください。

膝関節の痛みや発熱がある場合は化膿性関節炎の可能性も

化膿性関節炎は関節に細菌が感染することで発症し、化膿するのが特徴です。化膿性関節炎を発症すると、関節の炎症や痛み、発熱などの症状が現れます。この疾患の発症に気付いたら速やかに整形外科のある医療機関へ受診し、適切な治療を受けることが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、化膿性関節炎を発症した際に適切な対応ができるように備えておきましょう。

【医師からのコメント】
化膿性関節炎は関節内に細菌が入り込む感染症で、理論的にはどの関節でも発症します。急激な痛み、腫れ、発熱などの症状がみられ、放置すると関節破壊や全身感染に至るおそれがあります。診断には血液検査や関節液の培養が有用で、画像検査も併用されます。治療では抗菌薬の投与が基本で、関節液の穿刺や洗浄が必要になる場合もあります。

適切な治療開始により予後は良好ですが、早期発見・治療が予後を左右するため、異変を感じたら速やかに専門医を受診してください。日ごろから関節の違和感や痛みを軽視せず、疑わしい症状があればすぐに医療機関に相談する姿勢が大切です。

【参考】
1)佐々木毅. 日本内科学会雑誌. 2010, 99(10), p.96-101.
2)滋賀県|化膿性股関節炎
3)松浦顕ほか. 日本小児整形外科学会雑誌. 2018, 27(1), p.66-69.
4)生田拓也. 整形外科と災害外科. 2020, 69(4), p.907-910.

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