【医師監修】膝関節が痛い原因は?セルフケア方法や病院での治療法を紹介

膝関節が痛い原因は、加齢による変形性膝関節症だけとは限りません。外傷や炎症、全身性の病気が隠れているケースもあるのです。本記事では、膝関節の痛みを生じる原因や疾患について解説し、自分でできる対処法と病院での治療について紹介します。

膝関節とは?

膝関節は、大腿骨(だいたいこつ)・脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)・膝蓋骨(しつがいこつ)の4つの骨からなる関節です。

大腿骨・脛骨・膝蓋骨の表面には関節軟骨があり、なめらかな関節運動のサポートをしています。外側と内側には半月板(はんげつばん)という円板状の軟骨が存在し、体重の分散や衝撃の吸収などの役割を担っています。さらに、外側側副靭帯・内側側副靭帯・前十字靭帯・後十字靭帯・膝蓋腱といった靭帯や腱も膝関節の動きに深く関係しています1)

膝関節全体は滑液(関節液)で満たされた滑膜で覆われています。滑液は滑膜で作られた、ヒアルロン酸などを含む液体です。滑液は関節のスムーズな動きをサポートし、滑膜は膝関節と他の構造との摩擦を減らす役割を持っています2)

膝関節は日常生活において重要な役割を果たす関節の1つですが、同時にダメージを受けやすい部分でもあります。歩行中、膝関節にかかる負荷は体重のおよそ2倍といわれており、外傷や加齢による変形なども多く見られます3)

膝関節に痛みを生じる病気

膝関節に痛みを生じる原因は、さまざまです。膝関節に痛みを生じさせる代表的な病気を紹介します。

外傷

膝の外傷の代表的なものは、骨折・靭帯断裂・半月板損傷の3つです。

膝関節はスポーツ時に外傷を受けやすい部分です。外傷は年齢に関係なく起きますが、膝関節の外傷に関してはアスリートや日常的に激しいスポーツをする方、若年層によく見られます。

膝関節に関わる骨を骨折すると、多くの場合歩行困難となります。関節に接している面を骨折すると、関節内に血がたまって腫れあがってしまうケースも。

靭帯断裂では、ダメージを受けた靭帯によって治療方法や治療にかかる期間が異なります。外側側副靭帯や内側側副靭帯では、大きな断裂でなければギブスやサポーターによる固定で、3週間ほどで治ります。しかし、前十字靭帯や後十字靭帯の断裂の場合、多くは手術療法が選択されます4)

半月板損傷は、強い衝撃や膝のねじれが原因で起こる外傷です。靭帯断裂をともなうケースも多く、内側半月板・前十字靭帯・内装側副靭帯を同時に損傷した場合は、年単位の治療が必要であることから「不幸の3兆候」と呼ばれます5)

変形性膝関節症

中高年の膝の痛みの原因としては最も多く、加齢により膝の軟骨がすり減って変形し、激しい痛みを生じる病気です1)

変形性膝関節症はその原因によって、一次性・二次性の2つに分けられます。

一次性変形性膝関節症は、加齢による軟骨の摩耗に加え、筋肉の衰えや肥満、O脚やX脚などの脚の変形が関わっているとされています。二次性変形性膝関節症は、過去のものを含む膝関節の外傷や関節リウマチなど、他の病気が原因となって起こるものです6)

その他の膝の病気

膝関節に痛みを生じる代表的な膝の病気を紹介します。

ランナーズニーとは、膝の曲げ伸ばしを繰り返し行う人によく見られる膝の炎症です。アスリートやランナーに多く見られ、膝頭に痛みが生じます3)

膝蓋腱炎は、膝を伸ばす際に必要な膝蓋腱に繰り返し負担をかけたことにより生じる病気です。繰り返しの負担により、膝蓋腱の微細な断裂も繰り返され、修復が追い付かなくなり、腱自体が炎症を起こしてしまっている状態です7)

滑液包炎は、慢性的な刺激の繰り返しや膝関節の使い過ぎが原因であることがほとんどです。見た目はこぶ状で、急性滑液包炎では痛みや赤み、腫れなどが生じるケースもあります8)

痛風に似た激しい痛みを生じることで知られる、偽痛風という病気が膝の痛みの原因となっていることも。ピロリン酸カルシウムの結晶が関節内に沈着して起こるもので、加齢や脱水などが原因とされています9)

全身性の病気

全身性の病気が膝関節の痛みの原因となっている場合もあります。膝の痛みの原因となりうる代表的な疾患を紹介します。

痛風はその名の通り「風が吹くだけでも痛い」といわれるほど、激しい痛みを生じる病気です。一般的に痛風発作の痛みは足の親指に多いとされていますが、膝関節に痛みを引き起こすケースもあります10)

関節リウマチは免疫異常によって起こると考えられている病気です。中高年の女性に多く見られ、手足の指の腫れや朝のこわばりの他、滑膜増殖による膝関節炎を起こすこともあります11)

また、膝関節以外での場所の感染も、膝の痛みを引き起こす原因となるケースがあります。細菌が血流にのって膝に到達し、化膿性膝関節炎や化膿性滑液包炎などを引き起こします。速やかな治療を行わなければ関節軟骨がとけてしまったり、骨髄炎を起こしてしまったりするおそれも。熱があり、膝が腫れて痛む場合は速やかに医療機関を受診しましょう9)

膝の痛みに対するセルフケア方法

自分でできる、膝の痛みの緩和方法を紹介します。

膝の痛みは、筋力の低下や食生活の偏り、体重増加が原因となっているケースも。まずは生活習慣を見直し、適度な運動や肥満改善に取り組みましょう。

膝が痛む際のストレッチ方法は、痛む部位によって異なります。膝の内側が痛む場合は、立って壁に片手をついて片方の膝を曲げ、つまさきをつかんでお尻の方へ引き寄せます。太ももの前が伸びていることを感じながら、30秒ほどキープしましょう。反対側も同様に行ってください。

膝の外側が痛む場合は、床に座って両脚を伸ばし、すねとふくらはぎを交互に伸ばしましょう。つまさきを遠くに伸ばすとすねが伸び、手前に引き寄せるとふくらはぎを伸ばせます。10回ほどゆっくりと繰り返してください。いずれのストレッチも無理せず行い、痛みが強くなった場合は直ちに中止してください12)

内膝眼(ないしつがん)・外膝眼(がいしつがん)・委中(いちゅう)・梁丘(りょうきゅう)などのツボ押しは、膝の痛みに効果的だといわれています。ツボのあたりをカイロや湯たんぽで温めるだけでも、痛みの緩和が期待できるとされています13)

膝の痛みに対して、市販の消炎鎮痛剤を服用することも可能です。内服薬の他、湿布やローション、スプレーなどの外用薬もあります3)。使用前に添付文書をよく読み、用法用量を守って使用しましょう。

なお、外傷の場合や腫れや赤み、発熱など他の症状が見られる場合、市販の消炎鎮痛剤を服用しても痛みが改善しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。

変形性膝関節症の治療法

中高年層の膝の痛みの原因として、最も多い変形性膝関節症1)の病院での治療法を紹介します。

保存療法

症状が軽い場合は、まず鎮痛効果のある内服薬や外用薬の処方、膝関節内へのヒアルロン酸注射などの保存療法(対症療法)が選択されます。

同時に大腿四頭筋の筋力増加や関節可動域改善を目的としたリハビリテーションや、痛む部位を温める温熱療法を行います。さらに、足底板などの装具の作成を行うケースもあります14) 15)

手術療法

保存療法の効果がない場合や、症状が進行している場合は、手術療法が検討されます14)

変形性膝関節症の代表的な手術療法は、関節鏡手術・高位脛骨骨切り術・人工膝関節置換術の3つです。痛みや変形の程度が軽度~中程度の場合は関節鏡手術や高位脛骨骨切り術が選択されますが、軟骨だけでなく骨の破壊も見られる重度の場合は人工膝関節置換術となります15)

再生療法

保存療法と手術療法以外の新たな選択肢として、自分の細胞や血液を使った「再生療法」があります。

変形性膝関節症に対しては、自分の脂肪由来幹細胞を用いた幹細胞治療や、自己修復や抗炎症作用を目的とした多血小板血漿(PRP)によるPRP療法が行われています。

いずれの再生治療も保険適用ではないため、治療費は全額自己負担です。しかし、自己由来のものを治療に使用するため、副作用が起きづらいなどメリットも多く、注目の治療法となっています16)

膝の痛みの原因を知って、早めの対処を!

膝関節は、日常生活でも大きな負荷がかかり、ダメ―ジを受けやすい部分です。そのため、外傷だけでなく、加齢による軟骨のすり減りが原因となって痛みが生じることも。軽い痛みならばセルフケアで対処可能ですが、激しい痛みがある場合や発熱などの他の症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

医師からのコメント

一般的に、膝の代表的な疾患である変形性膝関節症とは体重や加齢などの影響から膝の軟骨がすり減り、膝に強い痛みを生じるようになる病気であり、女性に発生することが多いと伝えられています。通常、膝は体重負担が大きくかかる部位であり、肥満が変形性膝関節症の発症に関与していると考えられていることから変形性膝関節症の発症を防ぐためには体重を増やしすぎないようにコントロールすることが重要です。
特に、変形性膝関節症は加齢に伴って慢性的な機械的刺激が加わって発症する骨の変形性変化としても捉えられています。
変形性膝関節症に対する治療の第一選択は保存的治療であり、もし発症すれば膝周囲の筋力をしっかりと保持することも、膝への負担を軽減させるためには有効だと考えられていますが、治療目標の達成度が十分でない場合には手術治療や再生治療も検討されます。

【参考】
1) 日本赤十字社 相模原赤十字病院 ひざ関節のしくみ
2) 医療法人社団 裕正会 脇田整形外科 整形外科医の日常診療から 関節のお話 その2 関節液の役割(潤滑と栄養)
3) グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社 ボルタレン ひざの痛みについて
4) 吉田整形外科 膝の外傷(スポーツ障害)
5) 医療法人全医会 伊藤整形・内科 あいちスポーツ・人工関節クリニック 半月板損傷とは
6) オムロン ヘルスケア株式会社 痛みwith 変形性膝関節症の種類と原因
7) 東邦大学 医療センター 大橋病院 整形外科 スポーツ整形外科の主な疾患:膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
8) JR 仙台病院 JRほすぴたる 2023年9月 第268号 よく見かける手足のコブ:皮下の滑液包炎
9) 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 膝関節の痛みと治療について
10) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 痛風
11) 再生医療専門クリニック リペアセルクリニック 東京院 リウマチによる膝の関節炎とは?症状と治療について医師が解説
12) オムロン ヘルスケア株式会社 痛みwith 膝の痛み改善に効果的なストレッチ方法
13) オムロン ヘルスケア株式会社 痛みwith 膝の痛みを改善するツボを利用した血流改善
14) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 変形性膝関節症
15) オムロン ヘルスケア株式会社 痛みwith 変形性膝関節症の治し方 – 運動および薬、主述による治療法
16)オムロン ヘルスケア株式会社 痛みwith 膝の再生医療 – 期待できる効果と注意点

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