【理学療法士監修】足首の捻挫をしたときの治し方は?捻挫の症状や治療内容を解説

足首の捻挫

足首の捻挫が起きたときに、どのような対処をすればよいのか知りたい方はいませんか? 捻挫は関節をひねることで起こり、とくに足首に起こりやすいケガといえます。足首の捻挫が起きた際は、まずは安静や患部の冷却などの対処を行い、症状の悪化を防ぐことが重要です。

この記事では、理学療法士の資格保有者が足首の捻挫の症状や、発症後のセルフケアとその後の治療内容をご紹介します。捻挫の治し方を知ることで、実際に発症した際に早期から対処できるでしょう。

足首に起こりやすい捻挫とは?

捻挫とは、関節に力が加わることで起こるケガで、骨折や脱臼に当てはまらないものを指します1)。捻挫はさまざまな関節で起こりますが、とくに足首に多くみられます。ここでは、捻挫による症状や原因についてみていきましょう。

捻挫の症状

捻挫のおもな症状は、関節周辺の組織の損傷による痛みや内出血による腫れです。関節を動かしたときや患部を触った際に痛みを感じやすく、腫れは受傷した部分を中心に徐々に広がっていきます。損傷の程度によって捻挫の重症度は異なり、運動時に痛みが現れることもあれば、安静時でもうまく足首を動かせなくなることもあるでしょう。

捻挫の多くは時間が経過すると痛みがやわらぎ、次第に日常生活への悪影響も少なくなります。ただし、もともと痛みが軽い場合でも靭帯が損傷しているケースもあります。軽症だからといって放置すると症状が再発する恐れがあるため、捻挫を発症したら適切な対処をすることが重要です1)

捻挫が起こる原因

捻挫が起こる原因として、関節に急激な力が加わることがあげられます。足首の捻挫の場合、おもに2つのパターンが考えられます。1つ目は接触による捻挫で、具体的には他人や障害物とぶつかって足首をひねってしまう場合です2)

2つ目は非接触による捻挫で、ジャンプの着地時やスポーツ中の急な方向転換などで足首をひねることで発症します。そのほかにも、足場の悪さによって捻挫が起こるケースもあるでしょう。捻挫はスポーツで起こりやすいケガのため、若い方でも運動中は十分に注意する必要があります。

足首に起こる捻挫の特徴

足首に起こる捻挫には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、足首の捻挫で損傷しやすい組織や、重症度について解説します。

足首では内反(内側)捻挫が起こりやすい

足首の捻挫でもっとも頻度として多いとされているのが、内反捻挫です2)。これは、足首が内側にひねることで起こる捻挫です。内反捻挫を起こした場合、同時に靭帯が損傷されるケースも珍しくありません。

内反捻挫によって損傷されやすい靭帯は、以下のとおりです3)

これらの靭帯は足の外側についており、内反捻挫によって引き伸ばされやすいのが特徴です。時間が経過しても足首の痛みが長引いたり、生活に支障をきたしていたりする場合、これらの靭帯が損傷している可能性があります。

内反捻挫の程度による分類

内反捻挫は、靭帯の損傷具合によって3段階の重症度に分類されます。具体的な分類は、以下のとおりです2)

靭帯が完全に損傷している場合、症状が強く現れて日常生活に大きな支障をきたす恐れがあります。靭帯が損傷している状態が続くと足首の痛みが悪化しやすくなるので、たとえ軽度でも早期から治療を進めていきましょう。

捻挫が起こった際の診断方法

捻挫が起こった際は整形外科のある医療機関へ受診し、適切な診断を受けることが重要です。捻挫の診断では、まず受傷時の状況を医師に詳しく説明しましょう。ケガをしたときの状態を具体的に伝えることで、より正確な診断につながるからです。

医師による診察では、まず触診が行われ、痛みの場所や関節に力を加えたときの状態を確認します。その後に、以下のような画像検査が行われます4)

X線検査では骨折の有無を、MRI検査では靭帯や軟骨の損傷を評価できるのが特徴です。超音波検査は、靭帯の損傷状態や治癒過程を評価するために行われます。これらの検査結果と診察所見を総合的に判断して、最終的な診断が下されます。

足首の捻挫が起こった際の治し方

足首の捻挫が起こった場合、どのような治療が行われるのでしょうか。ここでは、具体的な治し方について解説します。

受傷直後の応急処置の「RICE」

ケガをした直後の応急処置では、まず「RICE」が行われます。RICEとは、以下の頭文字をとった言葉です5)

ここでは、それぞれの処置についてみていきましょう。

Rest(安静)

捻挫を起こした場合、まずは安静にすることが重要です。できるだけ足首に負担をかけないようにして、腫れや痛みの悪化を予防します。安静期間は捻挫の程度によって異なりますが、痛みが強い場合は松葉杖を使用して体重をかけないようにすることもあります。

ただし、長期の安静は筋肉の衰えや柔軟性の低下につながる恐れがあるため、痛みが落ち着いたら無理のない範囲で足を動かすことも大切です6)

Icing(冷却)

捻挫直後に起こる腫れや痛みなどの炎症反応をおさえるために、患部を冷やします。患部を冷やす際は、氷嚢(ひょうのう)やアイスパックなどを使用するのが一般的です。

ただし、冷やしすぎると凍傷を起こす恐れがあるため、長時間の冷却は避けましょう。15〜20分冷却したらやめて、痛みが出たら再び冷やすことを繰り返します。

また、捻挫直後の患部を温めることは控えましょう。温めると患部周囲の血流が増加し、炎症反応を悪化させる恐れがあります7)。痛みや腫れが強い時期は湯船に長時間浸かることを避け、可能であればシャワーで済ませることを推奨します。

Compression(圧迫・固定)

内出血や腫れをおさえるために、患部を圧迫固定して血流をコントロールします。足首の場合、包帯やサポーターを使って適度に圧力をかけます。包帯やサポーターがなければバンダナや手ぬぐいなどでも代用可能です。

重度の捻挫の場合は、ギプスによる固定をするケースもあるでしょう2)。圧迫が強すぎると血行障害を引き起こす可能性があるため、適度な圧をかけることがポイントです。

Elevation(挙上)

患部の腫れをおさえるために、足首を高い位置に上げます。足を心臓よりも高い位置にすることで、重力によって下半身に血液が流れにくくなり、内出血や腫れの抑制につながります。

横になった際は台に足を乗せる、吊り上げるなどの工夫をして高い位置をキープしましょう。長時間同じ姿勢をとると血行不良の原因になるため、ときどき足首を軽く動かすことも必要です。

リハビリ

足首の捻挫から回復するためには、早期からのリハビリも欠かせません。痛みがやわらぎ、ある程度足首を動かせる時期から以下のようなリハビリを開始して身体機能の維持・改善に努めます2)

痛みや状態にあわせてこれらのリハビリを行い、少しずつ強度を高めていきます。医療機関を受診した場合は、専門スタッフと一緒にリハビリをすることもあるでしょう。日常生活やスポーツへの復帰時期については、リハビリの進み具合によって個人差があります。焦って早期に復帰すると再発のリスクが高まるため、根気よくリハビリを行うことが大切です。

薬物療法

痛みによって動きに制限がある場合は、薬物療法による治療も行われます3)。薬によって痛みをコントロールすることで、リハビリも行いやすくなります。薬物療法として使用されるものとして、鎮痛剤や湿布などが代表的です。

湿布を使用する際は、急性期では炎症が起こっているため、冷感のものを選択するとよいでしょう8)。温感湿布を使用する際は、痛みのピークが過ぎた慢性期がおすすめです。

手術

これまで紹介した治療で改善がみられない場合や重度の靭帯損傷がある場合は、手術が検討されます。手術内容としては、損傷した靭帯をつなげる「修復術」や別の組織から靭帯を移植する「再建術」などがあげられます4)

皮膚の切開範囲が小さい手術が普及していることもあり、身体への負担が比較的少ないのも特徴です。そのため軽い損傷であれば、手術後も日常生活やスポーツへの早期の復帰が期待できます。手術後は早期からリハビリを開始し、身体機能の改善を目指します。

足首の捻挫の再発を防ぐための方法

足首の捻挫の治療後も、再発には十分に注意しましょう。捻挫の再発を防ぐためには、以下のような対策をする必要があります。

このように、捻挫を予防するためには、さまざまなポイントをおさえておくことが大切です。とくに運動によって捻挫が起きた場合、いきなり受傷前と同じレベルで身体を動かすと再発リスクが高くなります。スポーツ復帰をする際はリハビリを継続しつつ、少しずつ負荷を高めていきましょう1)

足首の捻挫が起こったら早めの対処を!

捻挫をした場合、まずは整形外科のある病院やクリニックを受診して適切な処置を受けましょう。とくに捻挫は足首に起こりやすく、発症すると痛みや腫れなどの症状が現れます。

足首の捻挫の治療では、RICEの処置をしたうえでリハビリや薬物療法を行うことが重要です。靭帯が強く損傷している場合は、手術による治療も検討する必要があります。ぜひ今回の記事を参考にして、足首の捻挫の対処法についておさえておきましょう。

【参考】

1)日本整形外科学会|「捻挫」
2)日本スポーツ整形外科学会|足関節捻挫
3)「関節捻挫の病態と治療」小林 匠 日本アスレティックトレーニング学会誌 第3巻 第2号 117-126(2018)
4)兵庫医科大学病院|足関節外側靭帯損傷
5)國學院大學|捻挫の応急処置(RICE)
6)明治国際医療大学|慢性痛患者のための セルフケアガイドブック
7)「物理療法、活かせていますか?─適応と禁忌を理解しよう─」植村弥希子、杉元雅晴ら 物理療法科学 第29巻 2022年

8)国立国際医療研究センター病院|よくある質問

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