【医師監修】膝の痛みは専門医にかかるべき?認定医や専攻医との違いも紹介

膝の痛みで医療機関にかかる場合、専門医にかかるべきではないかと考える方も多いでしょう。本記事では膝の専門医について詳しく解説し、認定医や専攻医との違いも紹介します。また、どのような医師に膝の症状を診てもらうべきかについてもお伝えします。

専門医とは?

専門医とは、基本領域の診療科において、適切な診断をして、その時点で科学的に最も効果の高い治療を提供できる医師のことです。医師国家試験に合格後、希望する領域の専門研修を修め、認定試験に合格しなければ、専門医を名乗ることはできません。

従来、専門医資格については学会ごとに認定や更新の基準が異なっていました。名称や診療内容が患者さまにわかりづらく、専門医の質の担保ができないことから、1980年ごろから専門医の統一された認定制度設立に向けて議論が進められてきたのです。

2018年からは基本領域間で統一された新専門医制度のもと専門医の養成が始まり、2021年には日本専門医機構認定専門医が誕生しました。それまでの学会ごとの専門医についても、新制度下での資格更新が進められています。

また、専門医資格は原則として5年ごとの更新が必要です。学会ごとに定められた基準をクリアしなければ、専門医の資格は喪失します1)

膝の専門医

膝の痛みがある場合、まず整形外科の受診を検討する方が多いでしょう。

整形外科とは、運動器官を構成する組織(骨・軟骨・筋肉・靭帯・神経など)の病気や外傷を対象としている専門領域です。脊椎や脊髄から、肩、肘、手・手指、股、膝、足・足指まで広範囲を対象に診療を行います2)

膝の痛みは整形外科領域にあたるため、専門医にかかりたいとお考えの場合は「整形外科専門医」の資格を持つ医師のいる医療機関を受診しましょう。

ちなみに、整形外科専門医の試験を受けるためには、下記条件をすべて満たさなければなりません。

このほかにも、日本整形外科学会の研修ガイドラインに沿って研修し、指導医から評価を受けていることや、整形外科のすべての分野における病気や外傷について学会で定められた基準を満たした診断・治療に携わっていること、整形外科関係の学会での発表や学術専門雑誌に論文として発表した経験のあることなどが求められます3)

なお、ほかの基本診療科同様、整形外科専門医資格も5年ごとに更新が求められます。整形外科専門医資格の更新には勤務実態の申告や診療実績の証明、更新単位の取得が必要です4) 5)

整形外科専門医になるまでの流れ

日本で医師になるためには、まず6年生の大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格してなくてはなりません。その後、基本的な診療知識を身に着けるため、研修医として2年間以上臨床研修へ進みます。

初期研修では、原則として下記が必修として定められています。

※1 麻酔科での研修期間を4週を上限として、救急の研修期間に振り替えることができる。
※2 8週以上の研修を行うことが望ましい6)

初期研修を終えると、特定の基本診療科についての専門性を高めるための「専門研修」に進めるようになります。この専門研修を受けている医師は「専攻医」と呼ばれます。
なお、2018年に新専門医制度が始まるまで「専攻医」という名称は一般的ではなく、「後期研修医」と呼ばれることがほとんどでした。
専攻医は定められた研修プログラムを修了し、専門医試験に合格することで「専門医」と名乗れるようになります1)
整形外科専門医になるためには、大学入学から最低でも12年間という長い期間が必要なのです。

専門医と認定医・専攻医の違い

専門医と混同されがちな言葉に、「認定医」や「専攻医」があります。それぞれの違いについて、解説します。

認定医とは?

一般的に、認定医とは学会ごとに定められている審査に合格し、知識と経験が基準に達していると認定された医師を指します7)

整形外科の場合は、整形外科専門医の資格を取得したうえで、さらに専門領域の研修を受けることでサブスペシャリティとして次のような「認定医」を名乗ることができます。

このように、専門医でなければ取れない認定医もあるため8)、専門医が認定医より優れているわけではありません。

専攻医とは?

専攻医とは、専門研修プログラム中の医師のことです。専攻医の段階では、希望する領域の専門医資格取得に向けて、専門的な知識や技術についてより深く学びます1)

膝の痛みを診てもらうべき医師とは?

膝の痛みを感じた場合、最初はかかりつけの病院の受診を検討することをおすすめします。
かかりつけの病院であれば、今までの病歴や飲んでいる薬などの情報があるため、初診よりもスムーズに診察を行えます。

整形外科領域の診察・診断推論・疾患の病態、疫学の理解、治療計画の立案などについては、すべての医学生が学ぶべき項目に指定されています9)。初期研修では整形外科は必修ではありませんが、必修である救急研修中に整形外科領域の疾患に触れる機会があるため6)、かかりつけの病院の医師が整形外科専門医ではないからと避ける必要はありません。

また、かかりつけの病院では整形外科や他の科での診察・検査・治療が必要かどうかもあわせて判断してもらえるでしょう。

ただし、生活に支障をきたしている場合や、セカンドオピニオンを聞きたい場合は、最初から整形外科専門医のいる医療機関にかかると安心です。なお、自己免疫疾患などの全身疾患による膝の痛みが疑われる場合は、整形外科から血液内科などに紹介される場合もあります。

膝の痛みが気になる場合は、整形外科専門医に相談を!

膝の痛みを感じたら、まずはかかりつけの病院を受診しましょう。より専門的な診察や治療が必要な場合は、整形外科を紹介してもらえます。しかし、痛みがひどい場合や不安な場合は、最初から整形外科専門医のいる医療機関を受診することも検討してください。

膝にかかわらず、病気は早期発見・早期治療が第一です。からだの不調を感じたら、早めに病院へ行きましょう!

【医師からのコメント】
専門医の存在は、医療の質を向上させる一方で、いくつかの課題も生じます。専門医は特定の分野に高度な知識と技術を持ち、専門的な治療を提供できるため、患者は正確な診断と効果的な治療を受けることができます。特に複雑な疾患や希少な病気の場合、専門医の存在は不可欠です。また、研究と教育の面でも専門医は重要な役割を果たしています。
しかし、一方で専門医の存在にはデメリットもあります。専門分野に特化することで、全体的な視点が欠ける場合があります。患者の症状が複数の分野にまたがる場合、専門医の間で連携が不足し、適切な診断や治療が遅れることもあります。また、専門医に頼りすぎることで、一般医療の提供が手薄になる可能性があります。さらに、専門医の長い待ち時間が問題となることもあります。
これらの問題を解決するためには、専門医と一般医の連携を強化し、患者中心の包括的な医療体制を整えることが重要です。

【参考】
1) 一般社団法人 日本専門医機構 一般の皆様へのお知らせ
2) 公益社団法人 日本整形外科学会 医学生・研修医の方へ 整形外科の特徴
3) 公益社団法人 日本整形外科学会 整形外科専門医パンフレット
4) 公益社団法人 日本整形外科学会 専門医をさがす
5) 公益社団法人 日本整形外科学会 日本専門医機構認定整形外科専門医更新基準
6) 厚生労働省 医師臨床研修指導ガイドライン ―2020年度版―
7) 社会福祉法人 恩賜財団済生会熊本病院 学会認定専門医
8) 公益社団法人 日本整形外科学会 認定医をさがす
9) 厚生労働省 モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会 医学教育モデル・コア・カリキュラム 令和4年度改訂版

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