【医師監修】肩関節が痛いときの原因は?疑われる疾患や生活上の注意点を解説

肩関節の痛みが続いているとき、何かしらの疾患が現れているのか不安になる方はいるのではないでしょうか。肩関節は筋肉や靭帯などで構成されており、それらの組織が傷つくと痛みが生じます。場合によっては、明確なきっかけもなく痛みが現れるケースもあるでしょう。

 

この記事では、肩関節が痛む原因や考えられる疾患、治療法などについてご紹介します。肩の痛みが現れたときの対処法を知ることで、改善につながりやすくなるでしょう。

 

肩関節の仕組みと痛みが現れる原因

まずは肩関節とはどのような仕組みなのかをみていきましょう。

肩関節とは、以下の3つの骨からできている関節です1)

 

  1. 上腕骨
  2. 肩甲骨
  3. 鎖骨

 

肩関節は他の関節よりも動かせる範囲が広い傾向にあり、その理由として骨と骨が接する面積が少ないことがあげられます。関節面が少ない分、構造的に不安定となりやすいため、関節包や腱板(筋肉の腱の集まり)などによって安定性を高めています。

 

このような肩関節を作っている組織がケガや酷使などによって損傷すると、痛みが現れるのです。また、加齢によって組織が衰えると、明確なきっかけがなくとも痛みが現れることも少なくありません。

 

肩関節が痛いときに考えられる疾患は?

肩関節の痛みが続く場合は、何かしらの疾患を発症している可能性があります。ここでは肩関節の痛みに関係している疾患についてご紹介します。

 

肩関節周囲炎(五十肩)

肩関節周囲炎とは、肩関節に痛みや硬さが現れ、腕が上がりにくくなっている状態のことです。肩関節周囲炎は「五十肩」とも呼ばれており、50〜60代の方を中心とした世代に起こりやすい疾患とされています。肩関節周囲炎は生涯に2〜5%の方が発症すると考えられているため、決して珍しい疾患ではありません2)

 

初期の段階では肩の痛みが目立ちますが、徐々に落ち着いていく傾向にあります。反対に、肩の硬さは残りやすいとされているのが肩関節周囲炎の特徴です。また、肩関節周囲炎は肩への負担が繰り返しかかって発症することもあれば、明確な原因がないまま発症するケースもあります1)

 

腱板断裂

腱板断裂とは、肩関節を支えている筋肉の腱である腱板が断裂した状態のことです。

腱板は以下の4つの筋肉からできています3)

 

  1. 棘上筋
  2. 棘下筋
  3. 小円筋
  4. 肩甲下筋

 

このいずれかの腱が断裂することで、腱板断裂が発症します。腱板断裂では、肩を上げるときに痛みが現れる動作時痛がおもな症状です。その他にも、傷ついた腱板に関節が接触することで、引っかかりを感じるケースもあります。

 

腱板断裂の原因には外傷によるものが多いとされていますが、加齢によって腱板が弱くなることがきっかけで発症する場合もあります。

 

インピンジメント症候群

インピンジメント症候群とは、肩を上げたときに引っかかりや痛みが現れ、それ以上上げられなくなる状態のことです。

 

肩の痛みは安静にすれば軽快しやすくなりますが、肩を上げる動作を繰り返し行うことで症状が慢性化する場合もあります。これは肩関節を作っている骨と骨の距離が近いため、肩を動かすときに組織がこすれやすいことが原因とされています4)

 

インピンジメント症候群は、加齢によって骨が変形した方や、腕をよく動かすスポーツ選手の方に発症しやすいのが特徴です。

 

変形性肩関節症

変形性肩関節症とは、肩関節を支えている軟骨が変性した状態のことです。関節面が変形してしまうため、肩の痛みや運動障害、関節の腫れなどの症状が現れます。

 

変形性肩関節症は、腱板断裂や関節リウマチ、上腕骨の骨折などがきっかけで発症するとされています5)。明確な原因がわからない場合もありますが、変形性膝関節症や変形性股関節症などの疾患と比べると頻度は多くありません。

 

また、変形性肩関節症は人種によって発生頻度に差があり、日本では増加傾向にあるとされています5)

 

肩こり

肩こりによって肩の痛みが現れる場合もあるでしょう。肩こりは厳密には疾患ではなく、「首から肩にかけて筋肉のこりや重さ、痛みなどの総称」という扱いとなっています6)。肩こりは明確な原因はわかっていないものの、筋肉の血行障害や交感神経の緊張などがきっかけで起こるとされています。

 

肩こりが起こりやすい方の特徴としては、以下の通りです。

 

 

また、肩こりを訴える方の割合は非常に多く、日本人の90%は経験したことがあるといわれています7)

 

その他の疾患

その他の肩の痛みと関連する疾患は、以下の通りです8)

 

 

首・肩にかけて発症する疾患も、肩の痛みが現れる可能性があります。

 

このように、肩の痛みと関連する疾患は非常に多くあることがわかるでしょう。肩の痛みが継続しており、生活に支障が出ている場合は放置せずに医療機関に受診することをおすすめします。

 

肩関節が痛いときの治療法

肩関節に痛みが出ているときは以下のような治療法を行います。

 

 

ここではそれぞれの治療法について詳しく解説します。

 

保存療法

保存療法とは、手術以外の方法で痛みの改善・悪化予防をするための治療法です。

保存療法で行われるおもな内容としては、以下の通りです2)

 

 

これらの方法によって肩の痛みをおさえ、通常通り生活を送れるようにサポートします。肩の痛みが現れた場合は、基本的に保存療法から行って様子をみていきます。

 

ただし、保存療法では根本的な治療にはならないため、痛みが悪化する場合は手術療法を検討することとなるでしょう。

 

手術療法

保存療法を行っても肩の痛みが続く場合は、手術による治療を検討します。とくに腱板断裂をはじめとした組織の損傷がみられる疾患の場合、保存療法を行っても自然に治るわけではありません。そのため、手術によって根本的な治療を行う必要があるのです。

 

手術の内容は疾患によって大きく異なります。たとえば、腱板断裂の場合は腱板をつなぐための手術を行います9)。変形性肩関節症であれば、肩関節や上腕の上部を人工のものに取り替え、新しい関節を作る手術を行う場合もあるでしょう5)

 

再生医療

再生医療とは、人が持っている自然治癒力のある物質を利用して、症状の改善を図る治療法のことです。体内にある血液や脂肪には、傷ついた組織の修復を促したり、炎症をおさえたりする働きのある物質が含まれています10)。そのような物質を傷ついた関節内に注入することで、症状の改善が期待できるようになるのです。

 

再生医療の実施方法は1つではなく、「PRP(多血小板血漿)療法」や「APS(自己たんぱく質溶液)療法」などのさまざまな種類があります。このように、保存療法と手術療法以外の選択肢の1つとして、再生医療による治療も主流になりつつあります。

 

肩関節が痛いときに行いたいエクササイズ

ここでは肩の痛みが出た際のエクササイズについてご紹介します。

痛みが強くない段階のタイミングで行ってみましょう。

 

【肩を回す運動】

  1. 肘を曲げる
  2. 肩甲骨を大きく動かすイメージで肩を時計回りに10回回す
  3. 反時計回りに10回回す
  4. 計2セット行う

 

肩甲骨の動きをスムーズにする運動です。腕ではなく肩甲骨を中心に動かすイメージで行ってみましょう。痛みを避けるために、腕は肩の高さより上げないようにしてください。

 

【腕を上げる運動】

  1. 両手を持つ
  2. 痛みが出ない範囲で腕を上げる
  3. ゆっくり降ろす
  4. 10回×2セット行う

 

肩の可動域を広げるための運動です。痛みの出ていない腕でサポートしながら行っていきましょう。

 

【肩の振り子運動】

  1. 前にあるイスや机に軽く屈みながら手を置く
  2. 痛みのある方の腕を振り子のように前後に動かす
  3. 動きを止めて腕の揺れが自然におさまるのを待つ
  4. 5回×2セット行う

 

振り子運動は肩関節のインナーマッスルを使う運動です。振り子運動をする際は肩の力を抜いてください。痛みがない方は腕に1kg程度の重りをつけて行うのもおすすめです。

 

肩関節が痛いときの生活上の注意点

肩関節に痛みが現れているとき、生活ではどのような点に注意すべきなのでしょうか。ここでは注意しておきたいポイントについて解説します。

 

肩の痛みがある場合は無理に動かさない

まず、痛みが強い場合は無理して動かさないように注意してください。痛みが強い時期は、肩関節の組織が炎症している可能性があります11)。そのため、無理して動かすとさらに肩の状態が悪化する恐れがあります。腕を動かさなければいけないときは、肩甲骨を動かすことを意識して腕の負担を減らすようにしましょう。

 

ただし、痛みが落ち着いた後も安静にしていると、関節の組織が固まってしまいます。痛みが落ち着いたら、無理のない範囲で少しずつ肩を動かすようにしてください。

 

夜間痛がある場合はクッションやタオルを敷く

夜間痛がある場合は、肩や腕の下にクッションやタオルなどを敷くようにしましょう。あお向けに寝ている状態では、重力の関係で肩甲骨が下がり、肩関節に負担がかかりやすくなります。

 

肩や腕の下にクッションやタオルを敷くことで関節の位置が正常に近づき、夜間痛の軽減につながります12)。また、痛みのある肩を下にして寝ることも関節に負担がかかる原因なので、避けるようにしてください。

 

肩関節が痛い状態が続く場合は医療機関に相談を

肩関節はさまざまな骨と組織から成り立っている自由度の高い関節です。何かしらの原因によって、肩関節を作っている組織が損傷すると痛みが現れます。肩の痛みが現れる疾患には多くの種類があり、その状態にあわせた治療を行っていきましょう。また、日常生活では肩の痛みを避けた動作を意識しつつ、無理のない範囲で運動を継続していくことも大切です。肩関節の痛みが続いた場合は、まずは医療機関に相談してみてください。

先生からのコメント

肩の痛みは、肩関節疾患を抱えた患者さんの自覚症状として最も多いと言われています。

肩が痛む患者さんを診察する際には、いつからどのような動作でどこが具体的に痛むかなどを中心に詳しく問診したうえで診察や検査が進められて、疼痛症状の原因となっている疾患の診断を付けて確実な治療に結び付けることが重要な観点となります。

一般的に肩の痛みを引き起こす整形外科関連疾患には色々なものが挙げられますが、広く知られている代表的な病気は、「肩関節周囲炎(別名:五十肩)」、「肩蜂下インピンジメント症候群」、「腱板断裂」の3つです。

肩関節周囲炎という疾患は、50~60歳代の中高年齢層によく経験されるいわゆる五十肩と呼ばれている状態のことを指しており、この病気は特に誘因になるような契機がないものの肩の痛み症状が出現して知らぬ間に肩を挙上できないといった可動域制限を認めます。次に、肩蜂下インピンジメント症候群では、日常生活で頻繁に肩関節を動作させることで肩甲骨の先端部に位置している肩峰と腱板の間に存在している肩峰下滑液包が炎症を引き起こすことによって強い肩の痛みを生じる状態を意味しています。

インピンジメント症候群には、肩峰と棘上筋間で肩峰下包が挟まれるエクスターナル型、あるいは棘上筋の関節包面が後上方関節唇と衝突するインターナル型の2種類があり、野球の投球動作やテニスのサーブ動作などオーバーハンドスポーツ競技者で多く認められます。腱板断裂という疾患は、中高年齢層の方に罹患率が高く、加齢と同時に喫煙、外傷、スポーツなどの要因によって発症することが知られており、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉腱から構成される腱板が断裂することで肩の痛みを引き起こします。万が一、「肩が痛い」、「肩が挙上できない」などの症状を自覚して日常生活においてお困りの方は、専門の医療機関などで早期的に診察や検査を受けて、保存療法や手術療法など様々な治療アプローチによって症状改善を図るように心がけましょう。

【参考】

1)東北大学整形外科学教室|わかりやすい五十肩・肩の痛み

2)霞ヶ浦医療センター|五十肩(ごじゅうかた)

3)腱板断裂|みんなの医療ガイド|兵庫医科大学病院

4)独立行政法人国立病院機構霞ヶ浦医療センター|インピンジメント症候群

5)慶應義塾大学病院|変形性肩関節症

6)久留米大学医療センター|肩こりを訴える疾患と原因

7)「日本人が訴える肩こりの特徴について」沓脱 正計、黒岩 誠 こころの健康 Vol.25 No.2

8)慶應義塾大学病院|頚部・肩の痛み

9)霞ヶ浦医療センター|腱板断裂(けんばんだんれつ

10)東京女子医科大学|関節再生医療|人工関節

11)埼玉県立大学|肩の痛み「そのうち治るは本当か?」

12)「肩関節疾患のリハビリテーション」千田 益生、堅山 佳美、兼田 大輔 Jpn J Rehabil Med Vol. 53 No. 12 2016

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