【整形外科医監修】大谷翔平が受けたことでも話題の関節注射「オルソビスク」とは?|整形外科で受けられる関節温存の注射治療を比較解説

メジャーリーグで活躍を続ける大谷翔平選手。そのパフォーマンスを陰で支えるコンディショニングや医療サポートは、常に多くの関心を集めています。そうしたなか、大谷選手が過去に左膝のケアのために受けた治療のひとつとして話題になったのが、ヒアルロン酸注射「オルソビスク(Orthovisc)」です。

「メジャーリーガーが受けるような注射は特別では?」「日本の整形外科で受けるヒアルロン酸注射やPRP療法とは何が違うの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。実は、オルソビスクは特別な薬ではなく、基本的には日本の保険診療で用いられている「アルツ」「スベニール」などのヒアルロン酸製剤と類似したメカニズムを持つ医療用ヒアルロン酸です。

本記事では、大谷翔平選手の左膝治療の経緯を交えつつ、オルソビスクを含むヒアルロン酸注射の特徴や投与方法、PRP療法との違い、そして整形外科で行われる関節温存治療の選択肢について解説します。

この記事でわかること
✅大谷翔平選手が左ひざのケアで受けた「オルソビスク」の正体
✅効果・費用・頻度を徹底比較!ヒアルロン酸・オルソビスク・PRP療法の違い
✅手術を避けて自分の膝を長く保つ「関節温存治療」の考え方
✅注射を受けた当日の注意点や、ひざに水が溜まっている場合の正しい治療法
✅「日本の整形外科で打てる?」「軟骨は再生する?」など、よくある疑問に答えるQ&A

医師からのコメント

大谷選手が徹底した関節のケアを行うのは、選手生活を守るためです。ですが、これは一般の方にも通じる考え方があります。 一般の方にとっても日常動作の中で関節のケアを行うことは、自身の自立した生活を守っていくために非常に重要になります。トップアスリートの治療と聞くと特別なものに感じられますが、実は日本の整形外科で広く行われているヒアルロン酸注射と基本的なメカニズムは同じです。ひざや肩の痛みは年齢のせいと放置されがちですが、軟骨が大きくすり減ってしまう前にケアを始める関節温存の考え方が非常に大切になります。少しでも関節に違和感や痛みがあれば、我慢せずに早めにお近くの整形外科へご相談ください。

この記事の監修医師:眞鍋 憲正(整形外科医)

大谷選手と「膝関節のコンディショニング」

二刀流でプレーする大谷選手は、投球・打撃・走塁のいずれにおいても膝関節に非常に大きな負担がかかります。

左膝のトラブルと治療の背景

大谷選手は過去に左膝の二分膝蓋骨に対する手術を受けた経緯があるほか、過密日程による負荷から関節内に炎症が起きたり、痛みを抱えたりする時期がありました1)2)

競技パフォーマンスを維持し、さらなる悪化を防ぐためには、関節内の炎症を速やかに抑え、滑らかな動きを維持することが重要になります。その一環として選択された治療のひとつが、高分子ヒアルロン酸製剤であるオルソビスクの投与でした。

オルソビスク注射とは?

オルソビスクは、アメリカのFDA(食品医薬品局)などで承認されている関節内注射用のヒアルロン酸製剤です。節内に注射することで、関節液が本来持つ衝撃吸収作用や潤滑性を補い、関節の動きをサポートすることを目的としています。 

「海外の特別な治療」というイメージを持たれがちですが、日本の保険診療で広く使用されている「アルツ」「スベニール」などのヒアルロン酸製剤も同様の原理に基づいています。オルソビスクもこれらと同じくヒアルロン酸であり、メカニズム自体が大きく異なるわけではありません。

主な注射治療(ヒアルロン酸、PRP療法)の比較

膝関節や肩関節の痛みに用いられる代表的な注射治療の特徴や違いを見てみましょう3)4)

比較項目日本の標準的なヒアルロン酸注射(アルツ、スベニール等含む)オルソビスク注射(海外承認のヒアルロン酸注射)PRP療法(多血小板血漿療法)
主な対象・目的変形性膝関節症や肩関節周囲炎による痛みの軽減変形性膝関節症などの関節機能の維持、症状緩和自身の組織成分を用いた痛みの緩和・炎症抑制
治療のメカニズム保水・潤滑性を補い、関節内の摩擦軽減や炎症抑制を促す保水・潤滑性を補い、関節内の摩擦軽減や炎症抑制を促す自身の血液から抽出した成長因子を活用し、組織の環境改善・炎症抑制を促す
標準的な用法・頻度週1回を5回程度連続投与(その後は状態に応じて定期投与)週1回間隔で3~4回の連続投与1~3回程度(施設やプロトコルによる)
保険適用の有無公的保険適用(3割負担で数百~1,000円程度)自由診療(日本国内未承認のため全額自己負担)自由診療(再生医療安全確保法に基づき実施/制度上の先進医療ではない)

各注射治療のメリットと留意点

ご自身の膝の状態や予算に合わせて最適な注射治療を選択することが大切です。

ヒアルロン酸注射

日本の多くの整形外科クリニックで受けることができる基本的な治療法です。3)

オルソビスク注射

日本の「スベニール」と同程度の高分子ヒアルロン酸注射です。

PRP療法

患者様自身の血液を採取し、遠心分離機で濃縮した血小板(成長因子を多く含む)を関節内に注射する治療法です4)

手術を避けるための「関節温存治療」という考え方

かつては、「軟骨がすり減ったら人工関節の手術をするしかない」と考えられがちでした。しかし現在では、自身の関節をできる限り長く保つ「関節温存治療」が重視されています。

適切な注射治療・薬物療法:ヒアルロン酸注射やPRP療法などで炎症・痛みをコントロールする。

水(関節液)の処置: 関節内に不要な水が溜まっている場合は、注射前に穿刺排液(水を抜く処置)を行って関節内環境を整えることがあります。

運動療法・リハビリテーション:膝まわりや肩まわりの筋力(大腿四頭筋やローテーターカフ)を維持・補強し、関節への負担を分散させる。

日常のセルフケア: 適切な体重管理や生活習慣の見直しを行う。

よくある質問Q&A

整形外科医が、よく寄せられる質問にお答えします。

Q1.大谷翔平選手が受けたオルソビスク注射は、日本の一般的な整形外科でも受けられますか?

A.日本国内では薬事承認されていない製剤のため、通常の保険診療で購入・使用することはできません。個人輸入等を取り扱っている一部のスポーツ整形外科や自由診療のクリニックで実施されている場合があります。ただし、国内でも同等の効果を目的としたヒアルロン酸製剤(アルツ、スベニールなど)が保険診療で広く使用されています。

Q2.オルソビスク注射やヒアルロン酸注射に副作用やリスクはありますか?

A.一般的な注射治療と同様に、注射部位の一時的な痛み、腫れ、内出血、まれに関節内感染やアレルギー反応などが生じるリスクがあります。副作用がまったくないわけではありませんが、医師の管理のもとで適切に行われ、依存性(クセになること)などはありません。

Q3.オルソビスク注射やヒアルロン酸注射を打てば、すり減った軟骨は元どおりに再生しますか?

A.減ってしまった軟骨そのものを元の状態に再生・復元させる効果はありません。オルソビスク注射やを含むヒアルロン酸注射の主な役割は、関節内の滑らかさを補うことや、炎症を鎮めて痛みを緩和することです。

Q4.注射を受けた当日の注意点はありますか?

A.感染防止のため、注射部位を清潔に保つ必要があります。また、血流が増加して痛みや腫れが強まるのを防ぐため、当日の長風呂、激しい運動、過度の飲酒は避け、医師の指示に従って静かに過ごしてください。

Q5.膝に水が溜まっている状態でも、オルソビスクなどの注射は打てますか?

A.関節内に大量の水が溜まっている場合、そのまま注射を受けても薬剤が薄まってしまい、本来の処置効果が得られにくくなります。そのため、まずは注射針で不要な水を抜き取ってからオルソビスク注射を含むやヒアルロン酸注射を注入するのが一般的な手順です。

【まとめ】早めの相談と適切な治療選択で「健やかな関節」を維持しよう

大谷選手がコンディショニングに取り入れたオルソビスクも、基本的なメカニズムは日本で広く普及している高分子ヒアルロン酸注射と同じです 通じるものがあります。

膝や肩の痛みを「加齢が原因だから仕方ない」「我慢できるから湿布でごまかそう」と放置してしまうと、症状が悪化する恐れがあります。保険診療によるヒアルロン酸注射から、効果の持続性が期待できるオルソビスク注射、そして自由診療のPRP療法まで、症状やライフスタイルに合わせた治療法があります。

膝や肩に痛み痛みを感じたら自己判断で放置せず、早い段階で整形外科を受診しましょう。信頼できる整形外科医をお探しの方は、こちらからお近くのクリニックを検索できます。

【参考】

1)日刊スポーツ:大谷翔平が左膝に打った関節注射「オルソビスク」とは(メジャーでの治療事例)

2) YouTube Shorts:大谷翔平の左膝治療とオルソビスク解説

3)松戸飯田整形外科:四十肩・五十肩・関節症に対するヒアルロン酸注射の特徴

4)ペインケアクリニック:変形性膝関節症の新しい治療法を比較|PRP注射・再生医療と従来治療の違い

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