記事監修者:眞鍋 憲正 先生
整形外科で診察・治療を受ける前に、まずはどの病院・クリニックにかかるかを決めなくてはなりません。本記事では、整形外科の選び方のポイントをご紹介しますので、ぜひ医療機関選びの際に参考にしてください。
整形外科とは?
整形外科は、運動器の疾病や外傷の診療を行う科1)です。運動器とは、身体運動に関わる骨や軟骨、筋肉、靭帯、神経などの総称です。それぞれの運動器は連携しているため、ひとつの運動器が障害されただけでも体がうまく動かなくなります。また、同時に複数の運動器が障害されることも少なくありません2)。
整形外科の主な対象部位は、背骨と骨盤、そして四肢です。骨や関節はもちろん、そのまわりの筋肉などの軟部組織や、それらを司る神経系まで対象としているため、診療対象は広範囲に及びます。そのため、整形外科には次のような多くの専門分野があります3)。
- 脊椎・脊髄外科
- 手の外科
- 肩関節外科
- 股関節外科
- 膝関節外科
- 足の外科
- スポーツ医学(整形)
- リウマチ外科
- 骨・軟部腫瘍外科
- 骨代謝外来
また、整形外科の特徴として、患者の年齢層が広く、患者数が多い1)ことも挙げられます。さらに、昨今の高齢化にともない、より需要は高まる科である4)と考えられています。
なお、整形外科と間違えられやすい診療科として、「形成外科」や「美容整形外科」があります。
形成外科は先天性の異常や病気・外傷による見た目の変化を改善する外科です。治療対象部位は全身で、先天性の変形やあざ、手術痕などに対する手術を行っています5)。
形成外科について詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
▶形成外科との違い
美容整形外科は前述した形成外科の一分野です。一重まぶたを二重にする手術、余分な脂肪を取る脂肪吸引など、容姿を整えることを目的にした施術を行います6)。
美容整形外科について詳しく知りたい方は、こちらもお読みください。
▶美容整形(美容外科)との違い
整形外科が運動器を対象とした診療科であるのに対し、形成外科や美容整形外科は見た目の治療・改善を行う科です。病院選びの際は、標榜科にご注意ください。
整形外科の選び方のポイント5つ
いざ整形外科を受診しようと思っても、どの病院やクリニックを選べばよいかわからず、悩まれる方も多いでしょう。
整形外科を選ぶ際のポイントは次の5つです。
- 通いやすさ
- 施設設備
- 医師の専門分野
- 治療の選択肢
- 評判や口コミ
それぞれについて詳しく解説します。
通いやすさ
整形外科にかかったとしても、たった1回の通院で症状が改善することはあまりありません。治療や症状の経過の観察のために、繰り返しの通院が必要になることがほとんど7)です。
そのため、整形外科選びの際は、自宅や職場・学校からのアクセスの良さの確認が欠かせません8)。また、学校や仕事を休まずに通い続けられるよう、診療時間や土日の診療対応についてもあわせてチェックしておきましょう。車や自転車、バイクなどでの移動が多い方は、駐車場や駐輪場の有無も調べておく9)ことをおすすめします。
また、ストレスなく通院を続けるためにも、予約対応の有無や予約の取りやすさ、待ち時間の長さなど7)も事前に確認しておくと安心です。
施設設備
整形外科では、入院や手術が必要になることも少なくありません。ただし、整形外科のなかには入院設備や手術室がない医院も存在します。入院・手術のために別の病院へ行かなければならなくなるため、あらかじめ医療機関の設備については確認しておくことをおすすめします。
医師の専門分野
整形外科を標榜している医療機関であれば、基本的には一般的な整形外科の診察を受けられます。ただし、それぞれの医師や病院によって得意とする専門分野があることがあります。「膝が痛い」「肩が上がらない」など、症状が限定されており専門の診察を求める場合やセカンドオピニオンを考える場合には、整形外科医の専門分野を調べてみると、より的確な診察や治療が受けられるでしょう。
たとえば、「膝が痛い」場合は膝関節外科、「肩が上がらない」場合は肩関節外科を専門としている整形外科医を受診するということです。
整形外科の医療機関の公式ホームページなどに所属学会や専門医・認定医など、医師の情報が記載されていることが多いので、ぜひ確認してみましょう9)。
治療の選択肢
現在、保存治療と手術治療をつなぐ新しい治療として「再生医療」が注目されています。
再生医療は患者自身の細胞や血液を利用した治療法で、拒絶反応が起こりにくいとされています。ただし、再生医療は限られた医療機関でしか受けられません。
再生医療を提供できるのは、「再生医療等提供計画」を作成し、「再生医療等委員会」の意見を聴いたうえで地方厚生局に提出した医療機関のみ10)です。また、再生医療は安全上のリスクに応じて第一種~第三種まで分類されており、区分によって手続きが異なります11)。
再生医療を検討している場合は、お近くの医療機関が再生医療を提供できるかどうか、そして受けたい再生医療の区分について手続きを行っているかどうかについても必ず確認しておきましょう。
評判や口コミ
インターネットで医療機関を検索した際に、実際にその医療機関にかかった人々の評判や口コミを目にすることも多いでしょう。このような生の声は医療機関選びの際にも参考になります。
ただし、なかには悪意を持って書き込んでいる人もいます。ネット上の意見はすべてうのみにするのではなく、あくまでも参考程度に留めておきましょう。
整形外科にかかる際の注意点
続いて、整形外科にかかる際の注意点を3つご紹介します。
- いきなり大病院に行かない
- 夜間・受付時間外に行かない
- セカンドオピニオンを検討する
それぞれについて詳しく解説します。
いきなり大病院に行かない
「設備が充実している大病院のほうが安心する」といって、はじめから大病院へ行く方もいらっしゃるでしょう。しかし、急を要しない場合はほかの医療機関にかかることを検討してみてはいかがでしょうか。
紹介状なしで大病院を受診すると、治療費以外の費用がかかります。また、大病院に軽症の患者が集中することで、患者ひとりあたりの診察時間が短くなったり、医師の負担増加によって医療の質や安全性が低下したりするおそれがあります12)。
緊急性がない場合は、身近にあるかかりつけ医の受診もぜひご検討ください。
夜間・受付時間外に行かない
急を要しない場合は、夜間や休日の救急外来を受診することは控えましょう。治療費以外の費用が発生するだけでなく、本当に救急医療を必要とする患者に医療が行き届かなくなってしまうおそれがある12)ためです。患者にとっても、医療機関にとってもデメリットとなるため、不要不急の時間外受診は控えて、受付時間内にかかりつけ医を受診しましょう。
セカンドオピニオンを検討する
セカンドオピニオンとは、患者が納得したうえで治療法を選択できるように、現在の担当医とは別の医師に意見を求めることです。現在の担当医の意見(ファーストオピニオン)に納得がいかない場合や、別の治療法を探したい場合は、ぜひ検討してみましょう。
なお、セカンドオピニオンを受ける際は、現在の担当医からセカンドオピニオンを求められる医師への情報提供が必要になります。まずは現在の担当医にセカンドオピニオンを検討していることを伝えましょう。
また、セカンドオピニオン外来は、基本的に保険適用外となります。病院によって費用が異なる13)ため、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
整形外科のかかりつけ医を持つことの重要性
かかりつけ医とは、身体や健康に関することをなんでも相談でき、必要に応じて専門医や専門医療機関を紹介してくれる、身近な地域医療・保健・福祉を担う総合的な能力を持った医師14)のことです。内科や歯科などのかかりつけ医を決めている方は多いのではないでしょうか。
かかりつけ医を持つメリットとして、まず日ごろの健康状態や生活習慣、既往歴などを理解してもらえることが挙げられます。また、大病院と比べて受診のハードルが低く、「いつもとちょっと違う」ときにもすぐに相談できます15)。
整形外科のかかりつけ医を持つと、過去のデータとあわせてより的確な判断をしてもらえるでしょう。また、かかりつけ医での対処が難しい場合も、専門医や専門医療機関にスムーズに紹介が可能です。リハビリテーションのある医療機関ならば、症状の再発防止のための指導を継続的に受けられる可能性も高まります。
整形外科に限らず、病気は早期発見と早期治療が重要9)です。些細な変化や気になる症状を気兼ねなく相談できる、整形外科のかかりつけ医を見つけてみてはいかがでしょうか。
ポイントをおさえて自分に合ったかかりつけの整形外科を見つけよう!
整形外科は診療対象部位が広く、専門分野も多岐にわたる診療科です。緊急性のない病気の場合にいきなり大病院を受診すると、本当に救急医療が必要な患者に医療が行き渡らなくなってしまうおそれがあります。まずは本記事でご紹介した整形外科の選び方を参考に、地域のかかりつけ医を見つけ、気になる症状をいつでも相談できるようにしておきましょう。
【医師からのコメント】
整形外科を選ぶ際は、医師の専門性、経験、患者とのコミュニケーションの取り方などを重視しましょう。専門医資格の有無や、得意な分野、過去の症例数などは事前に調べておければ、よい希望に近い医師を受診できる可能性があります。また、実際に病院を訪れて清潔さやスタッフの対応や待ち時間などを確認することもおすすめです。
かかりつけ医を持つことは、疾患の早期発見・早期治療につながり、健康維持に大きく貢献します。特に整形外科では、慢性的な痛みやスポーツ障害など長期的な治療が必要なケースも多く、かかりつけ医がいれば、病歴や治療経過を把握してもらいながら安心して治療を受けることができます。専門的な治療が必要な場合でも、適切な医療機関に紹介してもらうことができスムーズに治療がすすむ可能性が高いです。
【参考】
1) 公益財団法人 日本整形外科学会 整形外科とは
2) 公益財団法人 日本整形外科学会 運動器のしくみ
3) 公益財団法人 日本整形外科学会 整形外科のかかりかた
4) 公益財団法人 日本整形外科学会 整形外科に対する社会的ニーズ
5) 公益財団法人 日本整形外科学会 整形外科と形成外科
6) 公益財団法人 日本整形外科学会 整形外科と美容外科
7) 中村AJペインクリニック 整形外科はどこがいいのか|評判の良い病院の選び方とおすすめ理由
8) 医療法人社団 松恵会 けやきトータルクリニック 新松戸で整形外科のかかりつけ医を選ぶポイント
9) 天6整形外科 【転職・転勤・新学期】新生活の季節!かかりつけの整形外科を見つけておくメリットや選び方
10) 厚生労働省 e-再生医療
11) 一般社団法人 日本再生医療学会 再生医療PORTAL 再生医療の分類、第一種・第二種・第三種とは、どのような違いがありますか?
12) 政府広報オンライン 上手に医療機関にかかるにはどうしたらよいのでしょうか?
13) 東京都 保健医療局 東京都がんポータルサイト セカンドオピニオンとは
14) 公益社団法人 日本医師会 国民の信頼に応えるかかりつけ医として
15) メドアグリケアグループ かかりつけ医の必要性を考えよう!メリットや選び方のポイントを紹介
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