記事監修者:内藤かいせい 先生
関節リウマチの治療によって高額な医療費がかかり、経済的な負担に悩む方もいるのではないでしょうか。そんなときに役立つのが、医療費の負担を軽減できる公的制度です。関節リウマチの治療に利用できる公的制度にはさまざまな種類があります。
この記事では、関節リウマチの医療費や生活の負担を軽減できる制度をご紹介します。現在の症状に合った制度の利用によって、安心して治療に専念できるようになるでしょう。
関節リウマチの医療費の負担を減らす公的制度
関節リウマチの医療費の負担を軽減する公的制度について解説します。
医療費控除
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えている場合、所得税の負担を減らせる制度です。控除の対象となる額は、支払った医療費から一定の金額を差し引いて算出されます。
所得金額が200万円以上の場合、具体的な計算は以下のとおりです1)。
(1年間に支払った医療費の合計 − 保険金などで補填される金額)− 10万円
これらを差し引いた金額が所得控除の対象であり、上限は200万円です。例えば、年間50万円の医療費を支払い、保険金などの補填がなかった場合、40万円(50万円 − 10万円)が所得控除の対象額となります。
医療費控除を受けるためには、毎年2〜3月に行われる確定申告が必要です。申告の際には「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付します。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関や薬局で支払った医療費が月々で一定の上限額を超えた場合、その超えた分が払い戻される制度です2)。関節リウマチの治療では、医療費が高額になることがあるため、この制度の活用もおすすめです。
ここでは、高額療養費制度の詳細について詳しくみていきましょう。
年齢に応じた自己負担限度額
高額療養費制度における自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。自己負担限度額は、おもに「70歳以上75歳未満」と「70歳未満」で区分されています。
70歳未満の場合、所得に応じてさらに5つの区分(ア~オ)に分かれており、それぞれの上限額は以下のとおりです3)。
- 区分ア(年収約1,160万円〜):252,600円 +(医療費 − 842,000)× 1%
- 区分イ(年収約770〜1,160万円):167,400円 +(医療費 − 558,000)× 1%
- 区分ウ(年収約370〜770万円):80,100円 +(医療費 − 267,000)× 1%
- 区分エ(年収約〜370万円):57,600円
- 区分オ(住民税非課税者):35,400円
70歳以上75歳未満の方の場合は、以下の3つの区分に分けられています。
- 現役並み所得者(Ⅰ〜Ⅲ)
- 一般所得者
- 低所得者(Ⅰ〜Ⅱ)
それぞれの区分の上限額は、以下のとおりです3)。
【現役並み所得者(年収約370万円〜)】
- 現役並みⅢ:252,600円 +(医療費 − 842,000)× 1%
- 現役並みⅡ:167,400円 +(医療費 − 558,000)× 1%
- 現役並みⅠ:80,100円 +(医療費 − 267,000)× 1%
【一般所得者(年収約156〜370万円)】
- 個人ごと:18,000円
- 世帯:57,600円
【低所得者(住民税非課税世帯)】
- Ⅱ:24,600円
- Ⅰ:15,000円(個人はどちらも8,000円)
手続き方法は加入している健康保険の種類によって異なるため、対応した窓口で相談しましょう。
自己負担額は世帯で合算できる
高額療養費制度は、同じ世帯で同じ医療保険に加入している家族の医療費を合算可能です。合算した額が自己負担限度額を超えると、超えた分が高額療養費として支給されます。
例えば、関節リウマチの方とその配偶者の二人に医療費がかかっている場合、両方の医療費を合算して計算できます。ただし、70歳未満の方の場合は、合算できる自己負担額は「21,000円以上のもの」に限られる点に注意しましょう2)。
傷病手当金制度
傷病手当金制度とは、病気やケガで働けなくなった場合、最長で1年6ヶ月間の給付を受けられる制度です4)。傷病手当金を受給するためには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気やケガであること
- 療養のために仕事に就けないこと
- 連続する3日間を含む4日以上仕事に就けないこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
受け取れる支給額は、休業前に得た給与の約3分の2です。傷病手当金を申請するには、まず医師の診断を受けて仕事ができない証明をする必要があります。その後、申請書に必要事項を記入し、加入している健康保険組合や協会けんぽに提出し、申請が認められれば傷病手当金が支給されます。
そのほかに活用したい、関節リウマチの医療費負担を軽減できる制度
先ほど解説したもの以外にも、活用できる制度はあります。ここでは、そのほかの制度についても解説します。条件に適している方は、ぜひ積極的に活用を検討してみましょう。
介護保険制度
介護保険制度とは、高齢や病気などの理由で介護が必要な方が、さまざまなサービスを受けられる制度のことです。ここでは、介護保険制度の条件や申請方法、受けられるサービス内容について解説します。
介護保険を利用する条件
介護保険の被保険者は「第1号」と「第2号」に分けられており、それぞれ条件が異なります。まず、第1号被保険者の条件は「65歳以上」の方で、要介護(または要支援)状態になることです。一方で、第2号被保険者の条件は、「40歳から64歳」までの方で、特定の疾患によって要介護(または要支援)にある状態を指します5)。
関節リウマチはこの特定の疾患に含まれているため、40歳以上であれば介護保険を利用できる可能性があります。また、症状の程度によって「要支援1・2」または「要介護1~5」のいずれかに認定され、それぞれの状態に応じたサービスを受けられます。
介護保険の申請方法
介護保険サービスを利用するには、まず要介護認定の申請が必要です。申請から認定までの流れは、以下のとおりです6)。
- お住まいの市区町村の介護保険窓口に行く
- 書類を受け取り、必要事項を記入して申請する
- 申請後、市区町村の調査員が自宅を訪問し、認定調査を受ける
- 主治医に依頼して意見書を作成する
- 調査結果と主治医の意見書をもとに、審査が行われる
- 要介護度の判定が行われ、その結果を通知される
申請の流れを知っておくことで、介護保険サービスをスムーズに利用できます。関節リウマチの症状で日常生活に支障を感じたら、早めに申請を検討しましょう。
介護保険の利用で受けられるサービス
介護保険では、関節リウマチの状態や生活スタイルに合わせてさまざまなサービスを選べます7)。介護保険のサービスは、おもに訪問型と通所型のサービスに分けられます。訪問型サービスは、自宅で生活しながら利用できるサービスです。
具体的には以下のようなサービスがあり、医療処置からリハビリまで幅広く利用できます。
- 訪問看護
- 訪問リハビリ
- 訪問介護
通所型サービスは、施設に通い、食事や運動などの支援を受けるサービスです。デイサービスや通所リハビリなどの種類があり、家族の負担も軽減しやすいのがメリットです。
これらのサービスは、介護認定の等級によって利用できる範囲が変わり、自己負担額は所得に応じて1〜3割の範囲で変動します8)。関節リウマチの症状に合わせて必要なサービスを組み合わせることで、より快適な生活を送れるでしょう。
身体障害者手帳
身体障害者手帳とは、身体に障害のある方が支援やサービスを受けるための証明書のことです。身体障害者手帳を取得すると、以下のようなメリットが得られます9)。
- 所得税や住民税などの税金の軽減
- 公共交通機関の運賃の割引
- 医療費の自己負担額の軽減
障害の程度や自治体によって受けられるサービスが異なるため、詳しくは市区町村の窓口に相談してみましょう。身体障害者手帳を取得するには、まず市区町村の福祉相談所に相談し、申請に必要な書類を入手します。市区町村の窓口へ申請後、審査を経て身体障害者手帳が交付されます10)。
関節リウマチの症状が進行して日常生活に支障をきたしている場合は、身体障害者手帳の申請も検討してみましょう。
難病医療費助成制度
難病医療費助成制度とは、指定難病と認定された病気に対する医療費の負担を軽減する制度です。ここでは、難病医療費助成制度の詳細について解説します。
難病医療費助成制度の対象者と自己負担上限額
難病医療費助成制度の対象となるのは、指定難病と診断され、一定の条件を満たす方です。通常の関節リウマチは対象外ですが、炎症が強く進行制の合併症をともなう「悪性関節リウマチ」は指定難病に含まれています。
この制度を利用するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります11)。
- 一定の症状が現れていること
- 軽症の症状であるものの、医療費の総額が33,330円を超える月が年間3ヶ月以上あること
自己負担額の上限は、所得状況に応じていくつかに区分されています。区分に応じた上限額は、以下のとおりです11)。
- 生活保護:0円
- 低所得I(市町村民税非課税世帯で年収〜80万円):2,500円
- 低所得II(市町村民税非課税世帯で年収80万円〜):5,000円
- 一般所得I(年収約160~370万円):10,000円
- 一般所得II(年収約370~約810万円):20,000円
- 上位所得(年収約810万円~):30,000円
難病医療費助成制度の申請方法
難病医療費助成制度を利用するには、まずは指定医療機関で難病指定医による診断を受けます。悪性関節リウマチの場合、その病気特有の症状について専門医の診断が必要です。診断後は申請書類を準備し、お住まいの地域の保健所や都道府県の担当窓口に提出します。
申請が認定されると「特定医療費(指定難病)受給者証」が交付され、指定医療機関を受診する際に提示することで医療費の助成を受けられます。受給者証の有効期間は原則1年間なので、継続して助成を受けるには更新手続きが必要な点に注意しましょう11)。
関節リウマチの医療費の負担を軽減できる制度を知っておこう
関節リウマチの医療費をおさえるための制度としては、医療費控除や高額療養費制度などがあげられます。介護保険や身体障害者手帳などの利用も、身体的・経済的な負担の軽減につながります。これらの制度をうまく活用するには、利用条件や申請方法についておさえておくことが重要です。ぜひ今回の記事を参考にして、各種制度の活用を検討してみましょう。
【参考】
1)国税庁|No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
2)全国健康保険協会|高額な医療費を支払ったとき
3)厚生労働省|高額療養費制度を利用される皆さまへ
4)全国健康保険協会|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
5)厚生労働省|介護保険制度について
6)厚生労働省|サービス利用までの流れ | 介護保険の解説
7)厚生労働省|公表されている介護サービスについて
8)厚生労働省|1.介護保険制度の概要
9)千葉県|障害者手帳のご案内
10)東京都福祉局|身体障害者手帳について
11)難病情報センター|指定難病患者への医療費助成制度のご案内
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