【医師監修】膝を曲げると痛い!原因や対処方法をわかりやすく解説


「突然起こる膝の痛みがつらい」
「膝を曲げると痛む原因として考えられる病気は?」
「少しでも膝の痛みを和らげる対処方法が知りたい」


中高年になり、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
膝の痛みを改善するには、痛みの原因を把握し適切な対処をおこなっていくのが必要です。


そこで本記事では、中高年の膝痛が生じるメカニズムや、膝を曲げると痛いときに考えられる疾患について解説し、痛みを和らげるためのおすすめ対処方法も合わせてお伝えします。


記事の最後には、膝の痛みにいち早く対処すべき理由についてもくわしく解説しています。
ぜひ最後までお読みください。


そもそもなぜ膝の痛みは起こるの?

膝関節は大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝のお皿)の 3つの骨から成り立っています。

それぞれの骨には、表面を覆っている「関節軟骨」という組織や、関節自体を包み込んでいる「関節包」という組織が存在しています。
これらの組織の担う役割は、衝撃吸収や関節の安定性を高めることです。


しかし何かしらの原因が生じて、関節軟骨が弾力性を失ってすり減ると、関節包の内側に位置する「滑膜」と呼ばれる組織に炎症が起こります。
その結果、痛みの悪化やこわばり、腫れなどさまざまな症状を引き起こし、ひどくなると関節自体が固まってしまったり骨がすり減って変形したりしてしまいます。


中高年の方の膝の痛みが起こる主な原因として考えられるのが、加齢による筋肉量の低下、骨量の減少1)です。

また加齢以外にも、身体活動量低下や乱れた食生活、肥満2)といった要素も大きく関与するため、普段の生活から気をつけるべきといえるでしょう。


膝を曲げると痛いときに考えられる疾患



膝を曲げると痛みが生じる原因として、考えられる主な疾患を4つ紹介します。



それぞれの疾患の特徴や症状など、くわしく見ていきましょう。


変形性膝関節症


膝を曲げると痛いときは、まず変形性膝関節症が考えられます。

変形性膝関節症とは、軟骨の摩耗により関節内に炎症が起きたり関節自体が変形したりすることで、痛みが生じる疾患です。


初期では膝の違和感を覚えるだけで、痛みを強く感じるケースは多くありません。

しかし進行によって痛みは強くなり、日常生活に影響が出始めるようになります。さらに進行すると、関節自体の変形も強くなり、自立した生活が送れなくなりかねません。


変形性膝関節症は男性とくらべて女性に発症しやすいとされています。そのほかにも、肥満(過体重)、高齢、膝の怪我に関する既往歴、膝に負荷をかける職業といった要素との関連性が明らかになっています3)


半月板損傷

半月板は膝関節にあるC型の形をした軟骨で、内側と外側にそれぞれあります。

役割は関節自体にかかる体重の負荷を分散や吸収することです。


半月板は加齢にともない変性しやすく、40歳以上ではちょっとした外傷でも半月板が起こりやすくなります4)


半月板が損傷すると痛みとともに、膝の曲げ伸ばしする際に引っかかりを感じるようになります。

さらに損傷度合いが進行すると、膝の曲げ伸ばしが困難となるロッキングという現象が生じ、立つや歩くといった生活に支障をきたしかねません。


関節リウマチ


関節リウマチとは、免疫細胞が異常をきたし、誤って自分の骨を攻撃することで痛みや腫れなどの炎症を引き起こす自己免疫疾患です。


発症初期では起床時の手や足といった関節のこわばりや動かしにくさを覚えやすいです。進行すると関節の強い変形や強い痛みなど、日常生活に支障をきたしてしまいます。

どの年代でも起こりますが、とくに30〜40代の女性に多く発症します5)


また関節リウマチは、遺伝的要因や細菌・ウイルス感染が原因と考えられていますが、くわしい原因はまだ解明されていません。


膝特発性骨壊死(大腿骨内顆骨壊死)


膝特発性骨壊死(大腿骨内顆骨壊死)とは、内顆と呼ばれる大腿骨の内側部分に骨壊死が生じる病気です。


症状の特徴は、歩行時や夜間時などに起こる急な激痛です。

初期では痛み止めの内服や、膝の負担を減らすために杖や装具を用いる治療が選択されますが、疾患の進行度合いに応じて、人工関節などの手術適応になります。


60歳以上の女性に多く発症し、高齢で骨が弱くなっているところに軽微な力が加わりつづけるのが原因と考えられています。しかし、くわしい原因はまだわかっていないのが現状です6)


膝を曲げると痛いときに自宅で行える対処法



膝を膝を曲げると痛いときに、痛みを和らげるための自宅で行える対処法を3つ紹介します。



それぞれ解説します。


膝への負担が強い動作を控える


痛みを和らげたいときは、日常生活で膝にかかる負担を減らすのを考えましょう。
日常生活で膝に負担がかかりやすい代表的な動作は、以下のものです。



負担の強い動作や痛みが生じる場面を把握し、なるべく動作を控えるように意識しましょう。

日常的に痛みが生じる動作をよく行う必要のある方は、膝にかかる体重を分散させたり膝を保護したりするために、サポーターや杖を使用するのもおすすめです。


痛み止め薬を使用する


痛みを和らげたいときに、痛み止め薬を服用するのも対処法の1つです。

一般的に痛み止めの内服で多く用いられるのは「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
」です。NSAIDsによる関節痛への治療効果は、痛みのもとになる物質の発生を抑制できる7)といわれています。


痛み止めは医療機関で処方される医療用医薬品のほかに、市販で販売されている一般用医薬品もあります。同じ有効成分が含まれているため8)、近くの薬局やドラッグストアでも購入可能です。

しかし、自分にどの薬が適切か判断するには、専門的な知識が必要です。


とくに持病のある方や妊娠中の方、過去に薬でアレルギーや喘息発作を起こした方は、服用に十分注意する必要があります。

そのため不安な場合は、医療機関を受診し、専門家の指示を仰ぎましょう。


患部を冷やすか温める


膝の痛い箇所を冷やすか温めるのも、痛みを和らげる対処法の1つです。
冷やすか温めるかの選択は、患部の状態や発症期間によって変わります。


冷やす


患部の急激な痛みや腫れ、熱といった炎症状態が見られている時期は、十分に冷やしましょう。


冷やすことで炎症時期に起きている血管の拡張や、血管外で起こる水分や栄養分などの物質の移動を抑えられ9)、痛みの改善が期待できます。

冷やす際は氷やアイスノンを使用するのが代表的な方法です。しかし、直接患部に当てると凍傷になる恐れもあるため、タオルで挟んで冷やしましょう。


温める


患部の炎症状態が治っているときは、温めるのが有効な場合があります。


温熱を与えると関節や筋緊張の改善のほか、痛みに対する神経の過敏性を改善する効果がある10)といわれています。

自宅で行える代表的な温め方は以下のものです。



日常的に浸かるものであり、リラックス効果や疲労改善効果も期待できる、風呂で温めるのがとくにおすすめです。

ただし、やけどや症状悪化の可能性も考えられるため、温めすぎには気をつけましょう。


膝の痛みを感じるときは早めの受診がおすすめ



膝の痛みを感じるときは、早めに医療機関への受診も検討しましょう。
加齢や疾患の進行にともない、治療の負担が増えたり、さまざまな合併症や症状の悪化を引き起こしたりする恐れがあるからです。


一般的に膝に対する外科的処置として、人工膝関節全置換術(TKA)という治療法が選択されます。
日本人工関節学会の統計を参照すると、50代から施行する人が顕著に増え始め、70代が最もピーク11)となっています。

加齢にともない治療負担は増えるといえるでしょう。


また変形性膝関節症は、活動性低下による高血圧や糖尿病の発症リスクや、心血管疾患の合併リスクが高くなることが指摘されています3)

そのほか関節リウマチは、進行すると指や手首といった関節の強い変形、さらには背骨の変形により脊髄が圧迫され、呼吸がしにくくなる恐れもあります5)


このように、膝の痛みは身体の健康そのものに、大きな影響を及ぼしてしまうリスクもあるため、



といった状態であれば、なるべく早めに受診し、専門家に診てもらうのがおすすめです。


まとめ



本記事では膝を曲げると痛いときに原因として考えられる疾患、痛みを和らげる対処方法を解説してきました。


膝は立つ、座る、歩く、階段を昇り降りするといった基本的な動作を支えているため、上手く機能しないと、日常生活に大きな影響を及ぼします。
今後も長く使用していく重要な部位だからこそ、膝の痛みに悩んでいる方は、後悔のないよう早めに専門家に診てもらうのも選択肢のひとつです。


そして運動不足や乱れた食生活といった要素も、痛みを引き起こす大きな要因となるため、普段の生活習慣から気をつけていきましょう。

医師からのコメント

膝の痛みは加齢とともに頻発するようになる症状の一つです。多くは記事にあるように膝の関節内部の軟骨や骨が変形してしまうことによって起こります。こうした痛みは膝周りの筋力の低下とも密接に関係しています。そのため、筋肉を衰えさせない運動習慣が大事になります。膝にそれほど負担をかけない運動方法として、座って自転車をこいだり、水中運動や水泳をするといったものがあります。こうした運動は膝への体重の負荷を軽減しながらも、筋力強化さらには心肺機能の強化にもつながるため積極的にとりいれるようにしましょう。


【参考】

1)渡辺博史、古賀良生:加齢による体組成変化と変形性膝関節症との関連

2)佐藤慎一郎、根本裕太、高橋将記、武田典子、松下宗洋、北畠義典、荒尾孝:地域在住高齢者における膝痛の関連要因:横断研究

3)変形性膝関節症診療ガイドライン2023

4)日本整形外科学会整形外科シリーズ11:半月板損傷

5)日本整形外科学会:関節リウマチ

6)順天堂大学医学部附属順天堂病院:大腿骨内顆骨壊死

7)鶴見介登:関節痛・関節炎治療薬の薬理

8)厚生労働省:市販の解熱鎮痛薬の選び方

9)渡辺正仁、早崎華、由留木裕子:痛みのメカニズムと鎮痛

10)早坂信哉:温泉と健康

11)日本人工関節学会:TKAレジストリー2021年度症例統計

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