【医師監修】股関節が痛いときの原因や考えられる病気とは?対処法や受診の目安を解説

「股関節が痛いときの原因や病気は何が考えられるのだろうか」

「痛みへの対処法や受診するタイミングを知りたい」

このような悩みを抱えている方はいるのではないでしょうか。

本記事では、股関節が痛いときに考えられる原因や病気について解説し、その対処法もあわせてお伝えします。

合わせて近年注目されている治療のひとつである「再生医療」についても紹介しています。

ご自身に合った治療法を見つけるためにも、ぜひ最後までお読みください。

股関節が痛いときに考えられる原因とは?

40歳や50歳を過ぎて股関節に痛みがある場合、変形性股関節症が原因の一つとして考えられます。

変形性股関節症の有病率は1.0~4.3%、好発年齢は40〜50歳1)といわれており、人口に換算すると約120~510万人もの方が患っていることがわかります。

股関節の痛みといえば、変形性股関節症である可能性が高いことが容易に想像できるでしょう。

また股関節の痛みの特徴として、初期は立ったり歩いたりといった動き出しの際に違和感や痛みを覚えます。

関節の変形が進行すると次第に痛みが強くなり、動き出した時だけでなく、夜寝ているだけでも痛む方もいます。 しゃがみ込みや正座はもちろん、長時間立ったり歩いたりすることが大変になるため、日常生活のさまざまな動きに支障をきたすのです。

股関節に痛みが生じるメカニズムとは?

股関節に痛みが生じるメカニズムには、加齢が大きく関わっています。

加齢によって股関節の軟骨が減ったり筋肉が衰えたりすると、関節にかかる負担が増えるためです。

股関節は、足の付け根にある大腿骨頭(太ももの骨の上端にある丸い部分)と寛骨臼(骨盤にあるくぼみ)によって形成されています。

大腿骨頭が寛骨臼にはまり込み、前後左右へと自由に動く構造になっています。 そして股関節をなめらかに、かつ負担があまりかからないように動かすためには、関節を覆う軟骨と、関節の周りにある筋肉の働きが重要です。

しかし、加齢によって軟骨が減ったり筋肉が衰えたりすると、関節を保護する機能が低下し、大腿骨頭と寛骨臼がこすれてしまい痛みが生じます。

これが加齢によって股関節に痛みが生じるメカニズムです。

変形性股関節症では、はじめは動き出しに痛む程度であっても、負担がかかる動きを繰り返していくと、関節の変形が進んだり炎症が起きたりします。

すると、持続的な痛みや夜間の痛みにもつながっていきます。

h2股関節の痛みがあるときに考えられる病気の種類

股関節が痛いときは、変形性股関節症が考えられると解説しました。

しかし、骨折や神経痛など他の要素が痛みの原因となっている場合もあります。

そこで、股関節の痛みがあるときに考えられる病気の種類について、ここまで解説した変形性股関節症も合わせて、以下で解説していきます。

主に考えられる他の病気は下記の5つです。

それぞれどのようなものなのか見ていきましょう。

変形性股関節症

前述したように変形性股関節症は、股関節の痛みを訴える原因の多くを占めています。

変形性股関節症の多くは小児期の股関節形成不全が原因であり、その割合は股関節症の方の約80%2)を占めています。

正常な股関節では、大腿骨頭の約4/5が寛骨臼に覆われていますが、股関節の形成不全では約1/2程度です。

大腿骨頭を覆う面積が狭いと、股関節にかかる負担が大きくなり、軟骨がすり減りやすくなってしまいます。

さらに、加齢によって筋肉が衰えると股関節にかかる負担はより大きくなり、変形や炎症が起こる場合もあります。

関節リウマチ

関節リウマチは自己免疫性疾患といって、身体の免疫細胞が自分自身を攻撃してしまう病気の一つです。

免疫細胞が複数の関節を攻撃し、関節の破壊や炎症を起こす病気です。

そして股関節に起きたリウマチを「リウマチ性股関節症」といいます。

リウマチ性股関節症では、関節リウマチによる炎症が起こるため、安静時でも激しく痛みます。

また、一日の中で痛みに変動があり、特に起床時の痛みやこわばりが大きな特徴です。 関節リウマチの好発年齢は30~40歳代3)で、女性に多い病気です。

大腿骨頭壊死

大腿骨頭壊死は、大腿骨頭の血流不足によって生じる病気です。

大腿骨頭はもともと血管が少ない部位であり、なんらかの理由で血流が不足すると、壊死してしまいます。

壊死しただけでは症状はみられませんが、壊死した大腿骨頭に体重がかかって負担が大きくなると、大腿骨頭がつぶれて痛みを生じます。

血流不足になる原因ははっきりしていませんが、ステロイドの全身投与や飲酒、喫煙などが危険因子とされるものです。 大腿骨頭壊死の年齢分布を見ると、男性で30~59歳の割合が高いものの、女性の場合は20~79歳4)と幅広い年齢層でみられています。

大腿骨頚部骨折

大腿骨頚部骨折とは、大腿骨頭のすぐ下にある細いくびれの部分の骨折を指します。 股関節の変形や炎症が原因で起こるわけではありませんが、股関節部に痛みを生じる原因の一つとして知っておくと良いでしょう。

受傷の原因は主に転倒であり、高齢者の寝たきりの理由として大きな割合を占めており、高齢化社会でより増加している骨折です。

加齢と共に足腰の筋力が低下するため転倒しやすくなり、加えて骨粗鬆症の方の場合、さらに骨折のリスクが増加します。 男性で85~89歳、女性で90~94歳5)の方に起きやすいといわれています。

変形した背骨や、背骨から飛び出した椎間板が、神経に触ることで痛みが生じる病気です。

これらの病気は股関節自体に異常がありませんが、痛んだ神経の場所によっては足の付け根に痛みが生じることもあります。

腰部脊柱管狭窄症は、腰痛や足の痛みがある方で、48歳以上では発症の可能性が高くなるといわれています6)。 腰椎椎間板ヘルニアは、平均的に40歳代7)で報告されている病気です。

股関節の痛みがある場合の病院受診の目安

前述の5つの病気について、症状と受診の目安を以下の表にまとめました。 どんな症状がある時に受診した方がいいのか分からない方は、下記を参考にしてください。

疾患名症状受診の目安
変形性股関節症初期は立ち上がったときや、歩きはじめのときなどに足の付け根に痛みを感じる
関節の変形が進み炎症が強くなると、常に痛みを感じたり夜間痛を生じたりすることもある
動きはじめの股関節痛を自覚したら初期の股関節症が疑われるため、すぐに受診する
問診やレントゲン画像などから判断しやすい
関節リウマチ朝起きたときに関節がこわばって動かしにくい
股関節以外の関節にも痛みが生じる
微熱、倦怠感、貧血症状などが出ることもある
朝のこわばりや身体の複数の関節に腫れや痛みがあれば受診する
大腿骨頭壊死大腿骨頭の壊死だけでは痛みを感じないことがある
壊死した部分が体重によってつぶれると、急に強い痛みと歩行障害が起こる
痛みを自覚した段階で症状が進行しているため、すぐに受診する
大腿骨頚部骨折転倒が原因であり、その直後に股関節が痛くて足が動かせない
立ったり歩いたりできない
痛みが強くてほとんど足を動かせない場合は骨折が疑われるため、すぐに受診する
腰部脊柱管狭窄症・腰椎椎間板ヘルニア腰痛や足の痺れ、痛みが生じる
背骨や腰骨から出ている神経の、どの部分で痛んでいるかによって症状の出る位置が異なる
痺れや痛みを感じたらすぐに受診する
腰椎椎間板ヘルニアは激痛で動けないこともあるため、自力で動けるようになるまで安静にしてから受診する

股関節の痛みへの対処法

股関節の痛みに対しては、変形の進行度合いに応じてさまざまな治療法が選択されます。 以下で代表的な治療方法を紹介していきます。

保存療法

保存療法とは手術以外の方法で行う治療であり、下記の2つがあります。

股関節の変形が軽度の場合や、高齢で手術が適応外の場合などに選択されます。

手術療法

手術療法では、股関節変形の進行度合いに応じて以下の術式が選択されます。 術式は、主に下記の2つです。

保存療法で痛みが改善されない場合は、手術療法が検討されます。

再生医療

再生医療とは、細胞や人工的な材料を使い、生体組織の再生を目的とした治療法のことです。

ご自身の採取した細胞を培養し、股関節の変形部分に注射して骨の再生を促します。

重症化の予防や、手術以外の方法で治療したいといったニーズに対して選択されます。

再生医療のメリットは、主に下記の3つです。

保存療法や手術療法に次ぐ、新しい治療の選択肢という位置づけになっています。

まとめ

股関節に痛みが生じる原因にはさまざまな病気が考えられますが、中でも変形性股関節症による痛みを抱える方が多い傾向です。

股関節の形成不全に加え、加齢によって変形が進んだり筋肉が衰えたりすることで、関節への負担が強くなり痛みが生じます。

治療法としては、変形の度合いに応じて保存療法や手術療法が選択されます。

また、近年は再生医療という新たな治療技術も発展しており、治療における選択肢が増えてきました。 股関節治療の選択肢として、再生医療も検討してみてはいかがでしょうか。

先生からのコメント

変形性股関節症は、股関節を構成する骨が変形し関節軟骨の減少などに伴って股関節部の痛みや動きに少なからず制限が生じて日常生活に支障が現れる病気です。加齢に従って、股関節部痛などの症状が少しずつ悪化することもあり、適切なタイミングで定期的に専門医に受診して経過を観察する、あるいは症状がひどい場合には確実に治療を受けることが重要な観点です。変形性股関節症における治療方針は、患者さん自身の発症時の年齢、原因となる背景、あるいは病状の進行度や症状の重症度によって選択されることが多く、通常では発症初期段階であれば基本的には保存療法が推奨されます。

発症して間もない頃は、疼痛症状を和らげるために比較的副作用の少ないと考えられている消炎鎮痛剤を服用する薬物療法を中心とした保存療法を行い、痛みが改善されれば運動やリハビリによる筋力増強、姿勢改善、適正体重の維持などを含めた指導が実践されます。病状が進行しているケースでは手術加療が考慮されることが多く、変形性股関節症に対する代表的な手術治療法としては骨切り術と人工股関節置換術が挙げられます。

骨切り術は股関節部近傍の骨組織を切って関節どうしのかみ合わせを良好にすることで更なる軟骨のすり減りを防いで病状が進行することを回避する目的で施行される術式です。

骨切り術には、自分自身の関節を残せるというメリットがある一方で、骨が癒合するまで負担がかかる動作を控える必要性が高いなどのデメリットもあるためにそれぞれの病状に応じて人工股関節置換術を検討されることも考えられます。

【参考】

1)変形性股関節症診療ガイドライン2016 改訂第2版

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/osteoarthritis-of-the-hip/osteoarthritis-of-the-hip.pdf

2) 日本整形外科学会:変形性股関節症

https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html

3) 日本整形外科学会:関節リウマチ

https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/rheumatoid_arthritis.html

4)特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001155/4/osteonecrosis_of_the_femoral_head.pdf

5)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021 改訂第3版

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001251/4/femoral_necktrochanteric_fracture.pdf

6)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001278/4/lumbar_spinal_stenosis.pdf

7) 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021 改訂第3版

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001277/4/lumbar_disc_herniation.pdf

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