【医師監修】股関節が筋肉痛になる原因は?股関節痛の対処法や受診タイミングも解説

股関節の痛みや動きにくさを感じるなら、股関節の筋肉痛が原因かもしれません。筋肉痛は股関節の使いすぎにより起こるものですが、痛みが悪化する場合や長引く場合は他の原因が考えられることも。本記事では、股関節で起こる筋肉痛について解説しながら、他に疑われる病気や痛みの対処法、病院を受診する目安について解説します。

股関節の役割

股関節には、立つ、歩く、しゃがむ、体重を支えるといった、さまざまな役割があります。

股関節は、胴体と両脚をつないでいる身体の中でもっとも大きな関節であり、大腿骨(太ももの骨)と骨盤で構成されています。

大腿骨の先端には球状の大腿骨頭があり、骨盤の寛骨臼というくぼみにはまり込む形状が特徴的です。その周りを筋肉や靭帯などが覆っています。

股関節には体重の3~4倍の負荷がかかるといわれており、日常的に使うことから、痛みが生じると生活に支障をきたす場合もあります。

股関節で起こる筋肉痛とは?

股関節の筋肉痛は、腸腰筋という筋肉に痛みが生じて起こります。

腸腰筋には脚を上げる働きがあり、日常生活では下記の動きで使われます。

また、腸腰筋の働きは脚を上げることにとどまりません。

腰の骨や骨盤にもついており、座り姿勢や立ち姿勢を整えて、真っすぐに保つ役割もあります。

そのため、日常生活の中で負荷がかかりやすく、痛みが発生しやすい筋肉です。

以下で、股関節で起こる筋肉痛の主な症状や原因を見ていきましょう。

主な症状

股関節で筋肉痛が起きているときに見られる主な症状は、下記のとおりです。

これらの動きでは、股関節を深く曲げたり開いたりするため、関節の動きに伴い腸腰筋が伸び縮みします。

しかし腸腰筋には痛みが生じているため、動かしにくく、関節に違和感を覚えます。

筋肉痛になる原因

股関節で筋肉痛が起こる原因は、下記のとおりです。

日頃からあまり歩かない方や、デスクワークで椅子に座る時間が長い方などは、姿勢が悪くなって股関節に負担がかかります。

また、柔軟性が悪く筋肉の硬い方も、動いたときに負担がかかって痛みが出ます。

筋肉の使いすぎにも注意が必要です。

特にスポーツをする方は、股関節へ長期的に負荷がかかりやすく、疲労がたまって痛みが出ます。

他に考えられる股関節痛の原因

股関節は、筋肉痛以外の原因でも痛むことがあります。

痛みが悪化したり長引いたりする場合は、筋肉痛以外の原因が隠れているかもしれません。

考えられる原因は下記のとおりです。

それぞれ見ていきましょう。

筋肉や靭帯の損傷           

股関節への長期的な負荷は、筋肉や靭帯を損傷する原因になり、痛みを生じます。

股関節の周りには腸腰筋の他、多くの筋肉があります。

股関節がなめらかに動くためには、それぞれの筋肉がバランスよく働くことが大切です。

しかし筋力や柔軟性が低下している筋肉があると、バランスが崩れて一部分に負担がかかり、筋肉の損傷を起こしてしまう可能性があります。

靭帯は骨と骨をつなげて安定させ、関節が動きすぎないように支える働きがあります。

しかし、スポーツで無理に動いて股関節に急激な負荷がかかると、靭帯が引き伸ばされて損傷してしまうことも。

筋肉や靭帯の損傷は、強い痛みと関節の動きづらさが現れるため、筋肉痛と判別はしやすいでしょう。

変形性股関節症

変形性股関節症は、股関節の痛みの原因としてもっとも多い病気です。

日本の人口全体の1.0~4.3%がかかっている1)といわれ、約120~510万人もの方が痛みを抱えています。

変形性股関節症は、加齢が原因です。

加齢によって軟骨がすり減ったり筋力が低下したりすると、股関節の骨同士がこすれて炎症が起きます。

長い期間負担をかけていると、徐々に股関節の骨が変形してしまいます。

手術が必要な場合もあるため、進行を止めるためには、運動したり負担がかからない生活をしたりすることが大切です。

先天的な場合

先天的な要因によって、成人後に股関節が痛くなることもあります。
たとえば、発育性股関節形成不全が代表的です。
赤ちゃんのおむつの当て方や抱っこの仕方が原因で、生まれてしばらくしてから股関節の脱臼が発見されることがあります2)

脱臼が発見された場合は、治療が必要です。
はじめにサポーターをつけて整復しますが、約5%の赤ちゃんには手術が必要です。
そのため、幼少期にサポーターをつけたり、股関節の手術をしたりしたことがある方は、発育性股関節形成不全の可能性があります。
後遺症として、大人になってから変形性股関節症になり、痛くなる場合があります3)

股関節に起こる筋肉痛の対処法

股関節に起こる筋肉痛の対処法について、以下で3つ紹介します。

それぞれ見ていきましょう。

ストレッチを行う  

筋肉痛を改善するためには、筋肉組織の血流をよくすることが大切です。

ストレッチをして痛みのある筋肉を伸ばしましょう。

筋肉が温まっていると血行が促進しやすいため、お風呂上がりに行うとより効果的です。

以下で、腸腰筋の筋肉痛に対するストレッチの手順を紹介します。

  1. 片脚を前に出し、もう片方の脚は膝を床につけた姿勢になる
  2. 上体をまっすぐに起こす
  3. 腰を反らないように注意しながら、前に出ている脚に体重をかける
  4. 後ろ側の膝をついている脚の腸腰筋が伸びる

腸腰筋のストレッチは、前後に脚を開く形をとるためバランスが必要です。

横に机や椅子を用意し、手をついて安全に行いましょう。

また、ストレッチを行うときは、下記の点に注意してください4)

ストレッチは、筋肉痛の改善と柔軟性の向上による、関節の負担軽減の効果もあります。

そのため、普段から積極的に行うとよいでしょう。

適度な運動を行う

筋肉痛は、筋肉の繊維が傷ついて修復する過程で生じます。

治すためには運動が大切ですが、強い負荷をかけると筋肉の繊維がより傷ついてしまいます。

そのため、普段よりも軽く、適度な運動にとどめましょう。

また、筋肉痛の予防として、ジョギングやウォーキングなどの全身運動がおすすめです。

ただし、股関節以外の膝や足首などにも痛みが出ている方は、あまり負担をかけてはいけません。

距離を短くしたり、水中ウォーキングを行ったりしましょう。

股関節への負担を極力減らす

前述のとおり、股関節にかかる負担は体重の3~4倍です。

そのため、体重を減らすことが痛みを改善するために大切です。

体格指数であるBMIの値が25を超えると肥満といわれているため、ご自身の値と照らし合わせてみてください。

BMIは、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で計算できます。

また、日常生活の注意点としては、歩くときの負担を減らすことが大切です。

杖を使って歩いたり、エレベーターを利用したりして、股関節に負担をかけないようにします。

生活様式を見直し、和式から洋式へと変更することも大切です5)

和式の生活では股関節を深く曲げることが多く、立ち座りのときに負担がかかります。

畳から椅子の生活に変えたり、寝具を布団からベッドにしたりすることで、負担を減らす暮らし方をしましょう。

股関節痛が治らない!受診のタイミングは?

筋肉痛は2〜3日程度で治りますが、長引くこともあります。

別の原因が隠れていたり、先天的な病気の後遺症が悪化したりして、痛くなっている可能性もあります。

そのため、普段の筋肉痛よりも痛みが長引いていると感じたらすぐに受診しましょう。

その他、痛みが強くて日常生活に支障をきたしている場合も、受診する目安と考えてください。

たとえば、歩行や階段の昇り降り、ズボンの脱ぎ履きなどが大変になっていれば、明らかに支障をきたしている状態といえます。

股関節痛の治療法

股関節痛を治療するためには、痛みの原因を特定する必要があります。

医療機関を受診し、下記の検査を受けましょう。

これらの検査結果から、股関節痛の原因を特定し治療をしていきます。

股関節痛の原因として多い変形性股関節症について、治療法を下表にまとめました。

治療法 内容
保存療法 運動療法 脚の筋力をつける運動、柔軟性を改善させる運動などを行う
股関節に負担をかけない動き方や体重コントロールなどの生活指導を受ける
投薬・注射 内服薬による痛みの調整をする
注射によって鎮痛をはかる
手術 関節鏡手術 内視鏡を股関節に挿入して、関節内を治療する
炎症を起こしている部分を切除する
骨切り術 大腿骨、骨盤いずれかの骨を切り取り、関節の形状を整える
人工股関節置換術 大腿骨頭と寛骨臼を人工の関節に置き換える
再生医療 自身から採取した細胞を使って股関節に注射し、変形した部分の骨の再生を促す
高齢で手術が困難な方でも選択しやすい

病気の進行度合いや年齢などによって、適した治療法が異なります。

医師と相談し、ご自身によりよい治療法を選択してください。

筋肉痛以外が原因の場合も!股関節の違和感は早めの受診を

本記事では、股関節の筋肉痛について解説し、他に考えられる原因や対処法、受診の目安などについて解説しました。

筋肉痛の場合は2~3日程度で痛みが治まる一方で、他の病気の場合は長引くことがあります。違和感を覚えた場合は早めに受診し、原因を特定しましょう。

治療にはさまざまな方法があり、股関節の状態や年齢などにより選択します。

もし高齢で手術を受けることが心配な方は、ご自身の細胞を使った再生医療も治療の選択肢として検討してみてください。

医師からのコメント

変形性股関節症に対する保存療法では、第一に股関節への負担を軽減することを考えます。重い物を運ぶ仕事をしている場合には、関節への負担が少ない仕事の部署へ異動できないか職場に相談しましょう。若い人の場合、杖を使うことに抵抗があるかもしれませんが、可能であれば歩く時には杖を使用することをおすすめします。 この時、痛みが出る足と反対側の手で杖をつくようにしましょう。適度な運動も必要です。股関節の周りの筋肉が強くなることで、股関節が安定し、痛みが和らぐことが期待できます。 運動としておすすめなのが、有酸素運動・筋力トレーニング・水泳・水中歩行です。筋力トレーニングでは、おしりの横の筋肉や太ももの前面の筋肉を鍛えることを意識します。 横向きに寝て上側の足を伸ばしたまま天井に向けて上げたり、仰向けで足を延ばしたまま天井に向けて上げたりするとよいでしょう。
そして、保存療法でも痛みがよくならない場合や、発見が遅く股関節の損傷が重度の場合には手術が必要です。手術には、骨を切って股関節の形を整える骨切り術と呼ばれる方法と、股関節自体を人工関節に変えてしまう人工関節全置換術があります。
どちらの手術を行うかは、関節の損傷の程度で決まります。
骨切り術は若ければ若いほど術後成績が良く、痛みがよくなったり、関節損傷の進行を予防したりする効果がある手術であるため、発症年齢が若い場合にはまず骨切り術を考慮します。人工関節全置換術は、痛みを取る効果が高く、歩きやすくなることで生活の質が上がったと実感する方が多い手術です。骨切り術より優れているように感じるかもしれませんが、人工関節には寿命があるため若いうちに人工関節全置換術を行うと将来また手術をしなければならない可能性もあります。人工関節の寿命は10~15年といわれることが多いですが、医学の進歩とともに人工関節の寿命も伸びてきており、ばらつきはあるものの30~35年持久することもあります。

【参考】
1)変形性股関節症診療ガイドライン2016 改訂第2版

2)日本小児整形外科学会

3)日本整形外科学会:変形性股関節症

4)e-ヘルスネット:ストレッチングの実際

5)理学療法ハンドブック:シリーズ17変形性股関節症

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