【医師監修】変形性膝関節症とO脚の関係性とは?おもな治療法や生活上の注意点を解説

変形性膝関節症とO脚について、どのような関係性があるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。変形性膝関節症とO脚はどちらも同じ意味で使用される場面もあり、深い関係性にあるといえます。

この記事では、変形性膝関節症とO脚がどのような状態なのか、どのような治療が行われているのかについてご紹介します。それぞれの関係性を知ったうえで対策を知ることで、症状悪化の予防につながるでしょう。

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨がすり減って変形が生じ、機能的な障害が現れている状態のことです。60歳以上の方の約8割が変形性膝関節症の疑いがあるとされており、その頻度は上昇傾向にあります1)

ここでは、変形性膝関節症の症状や原因などについて詳しく解説します。

変形性膝関節症の症状

変形性膝関節症の代表的な症状として、膝の痛みやむくみなどがあげられます。発症初期の段階では歩く、立つなどの動作時に膝の痛みが現れますが、安静になるとおさまりやすい傾向にあります。症状が進行すると痛みや可動域制限(動かしにくさ)の程度が強くなり、階段の昇り降りや正座が難しくなることもあるでしょう。末期になるとさらに関節の変形が強くなり、安静時でも膝が痛む、膝が伸びなくなるなどの症状が現れます2)

このように、変形性膝関節症は症状が進行するたびに、日常生活に悪影響をおよぼしやすくなります。

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症は、原因がはっきりとわかっていない「1次性」と、明確なきっかけがある「2次性」に分けられます。割合としてはほとんどが1次性とされており、以下の要素が影響していると考えられています。

2次性では、感染や外傷などがおもな原因です。また、変形性膝関節症は男性よりも女性に多く発症しやすく、その比率は「1:4」とされています2)

O脚とは?

O脚とは、両膝が外側に広がり、足が「O字」のようになった状態のことです。O脚の原因は先天的なものもあれば、後天的に発症する場合もあります。後天的な原因としては、正常に異常をきたす疾患や外傷などが代表的です3)

初期の段階では痛みはなく、外見上の異常のみ現れるのが特徴です。しかし、O脚は関節の内側にかかる負担が大きいため、次第に変形性膝関節症に派生することもあります4)

また、変形性膝関節症によってO脚をきたすことも珍しくありません。O脚と変形性膝関節症は定義こそ異なるものの、どちらも類似した状態なので、同じ意味合いとして使用されることもあります。

O脚や変形性膝関節症に対する治療法

O脚や変形性膝関節症に対して行われる治療法は、以下のとおりです。

ここでは、それぞれの治療法について詳しく解説します。

保存療法

症状が軽い場合、まずは以下のような手段を用いた保存療法が行われます1)

これらの治療を進めていき、症状の悪化予防を図ります。保存療法は変形性膝関節症の治療の第一選択ですが、これで根本的な問題を解決できるわけではありません。膝関節の変形が進行し、保存療法でも痛みのコントロールができない場合は、後述する手術療法を検討する必要があります。

手術療法

変形性膝関節症の症状が進行し、保存療法では対応できない場合は手術による治療が行われます。手術の内容は変形性膝関節症の状態によっても異なり、代表的な内容は以下のとおりです。

ここでは、それぞれの手術内容について詳しく解説します。

骨切り術

骨切り術とは、膝関節を作っている大腿骨と脛骨(けいこつ)の一部を切り取り、足の角度を変える手術法です。足の角度を変えることで膝関節の向きが矯正され、正しい位置で荷重できます。骨切り術は痛みの軽減が期待できるだけでなく、膝関節を構成している組織を温存できるメリットがあります。そのため、後述する人工関節置換術を行うタイミングを遅らせることが可能です5)

一方で、骨切り術は術後の回復が比較的遅い傾向にあり、症状が進行していると手術の対象外となるケースもあります。

関節鏡

関節鏡とは、カメラを使用した内視鏡手術のことです。手術器具を関節内に挿入し、カメラで膝の状態を確認しながら擦り切れた組織の切除や洗浄をします。他の手術よりも傷が小さいため、術後の翌日から歩くことも可能です。

ただし、取り除いた組織は回復するわけではありません。関節鏡は膝の変形を遅らせることを目的とした手術なので、症状が悪化したら人工関節置換術が必要となるケースもあります6)

人工関節置換術

人工関節置換術とは、膝関節を人工物に入れ替える手術です。膝関節の変形が強く、他の手術では対応できない場合に人工関節置換術を行います。変形性膝関節症の問題が解消されるので、膝の痛みが改善されてQOL(生活の質)の向上が期待できるでしょう7)

人工関節置換術には、「人工膝関節全置換術」と「単顆人工膝置換術」の2種類に大きく分けられます。人工膝関節全置換術では、以下の膝関節を作っている部分をすべて人工物に入れ替える手術です。

膝関節の変形が強い場合は、こちらの方法で手術を行います。変形が小さい場合は、一部分の関節のみを人工物に入れ替える単顆人工膝置換術が行われます。

再生医療

再生医療とは、人が持っている再生力を活用した治療法です。人体には組織を修復する、炎症をおさえるなどの働きを持っている成分があります。それらを応用して治療に活かすことで、ケガや病気の改善が期待できるのです。再生医療が行われている医療機関も増えており、保存療法や手術療法とは異なる新しい治療の選択肢として取り入れられています。

再生医療にもさまざまな治療法があり、そのなかでも代表的なのが「多血小板血漿(PRP)療法」です。PRP療法とは、血液内に含まれている「血小板」という、組織を修復する働きがあるとされる成分を活用した治療法です。PRP療法では自身の血小板を抽出し、患部に注射することで損傷した組織の修復を図ります。

実際に、変形性膝関節症に対してPRP療法を行ったところ、投与を受けた患者さんの6〜7割が痛みの軽減がみられたとされています8)。ただし、再生医療には未知の部分も残っており、どんな方に対しても行えるわけではありません。

変形性膝関節症やO脚の悪化を予防するための運動

変形性膝関節症やO脚の悪化を防ぐためには、日頃からどのような運動を行うのが良いのでしょうか。ここでは、おすすめの運動について詳しく解説します。

筋力トレーニング

筋力トレーニングによって膝まわりの筋肉をつけることで、関節が安定して症状の改善が期待できます。膝関節に負担がかかると痛みが出やすくなるので、体重を乗せないようなトレーニングがおすすめです9)

具体的な筋トレ内容について、いくつかご紹介します。

【足を上げる運動】

  1. あお向けになって片膝を立てる
  2. 立てていないほうの足を伸ばして、ゆっくり上げる
  3. できるだけ上げたら、ゆっくりと元に戻る(床にはつかない)
  4. 2〜3の手順を左右で10回×2〜3セット行う

太ももの筋肉の「大腿四頭筋」や、股関節の前面についている「腸腰筋」を鍛えるトレーニングです。床につけずに行うのが難しい場合は、つけながら行ってもかまいません。

【足を横に広げる運動】

  1. 横向きになり、下側の膝は曲げておく
  2. 上側の足を伸ばして、ゆっくりと上げる
  3. できるだけ上げたら、ゆっくりと元に戻る
  4. 2〜3の手順を左右で10回×2〜3セット行う

お尻の横の筋肉の「中殿筋」を鍛えるトレーニングです。足を上げる際は股関節を曲げずに、中間位を意識しながら行ってください。

【ボールを潰す運動】

  1. イスに座って膝の間にボールを挟む
  2. 膝を閉じてボールを潰す
  3. 潰した状態を10秒キープしたら、元に戻る
  4. 2〜3の手順を5回×3セット行う 

太ももの内側にある「内転筋」を鍛えるトレーニングです。力を入れているときは、呼吸を止めないように注意しましょう。

ストレッチ

変形性膝関節症やO脚になると、姿勢が崩れることで股関節まわりの筋肉が固くなり、可動域制限が現れる可能性があります。可動域制限は生活に支障をきたしやすくなるため、ストレッチで筋肉の柔軟性を高めておくことが大切です9)

具体的なストレッチ方法について、いくつかご紹介します。

【股関節前面の筋肉のストレッチ】

  1. あお向けになる
  2. 両手で片方の膝裏を持ち、胸に引き寄せる
  3. 20秒ほどキープしたら元に戻る
  4. 2〜3の手順を反対の足で行う

腸腰筋を伸ばすストレッチ方法です。ストレッチ中は、股関節を曲げていないほうの足が浮かないように気をつけてください。

【膝裏の筋肉のストレッチ】

  1. 足を広げて床に座る
  2. 片方の膝を伸ばして、もう片方の膝を曲げる
  3. 伸ばしたほうの足に向かって上半身を倒し、体重をかける
  4. 20秒ほどキープしたら元に戻る
  5. 2〜3の手順を反対の足で行う

膝裏の「ハムストリングス」のストレッチ方法です。ストレッチ中は膝が曲がらないように注意してください。

変形性膝関節症やO脚の生活上の注意点

ここでは、変形性膝関節症やO脚を悪化させないための、生活上の注意点について解説します。

膝関節を曲げすぎない

膝の曲げすぎには注意してください。変形性膝関節症やO脚の方は可動域制限が起きやすいので、膝を曲げすぎると痛みが現れる恐れがあります2)。生活上で膝関節を曲げすぎてしまう原因として、正座や和式トイレの使用などがあげられます。 

膝の負担を下げるためにも、以下のような工夫をして生活様式を変えることが大切です。

体重減少に努める

なるべく体重減少に努めるようにしましょう。立っているときや、歩いているときなど、日常で行う動作は膝に体重がかかりやすいです。体重が増えると膝にかかる負担が高くなるため、症状が悪化する原因となります10)。減量するためには、運動習慣をつける、食事管理をするなどの工夫を取り入れることが大切です。

必要に応じて杖や使用する

必要に応じて杖を使用することもおすすめです。杖を使用することで体重の一部が肩代わりされて、膝にかかる負担の軽減につながります11)。それ以外にも、杖の使用によってバランスを取りやすくなり、転倒防止にも期待できます。歩くときにふらつきやすい方や、痛みが現れている方は、杖の使用を検討してみましょう。杖にもたくさんのデザインや種類があるので、自分にあったものを選択することが大切です。

変形性膝関節症とO脚の関係性について理解しておこう

変形性膝関節症とO脚は、どちらも密接な関係性にあります。意味合いは異なるものの、同じように使用されることも少なくありません。変形性膝関節症やO脚の改善を目指すには、医療機関へ受診して膝の状態にあわせた治療を行うことが大切です。また、普段の生活でも膝に負担がかからないように注意して、症状が悪化しないように配慮しましょう。

医師からのコメント
変形性膝関節症とO脚の関係性については、膝関節の負担不均衡が重要な要因です。O脚は膝の内側に負担がかかり、変形性膝関節症のリスクを増加させる可能性があります。
O脚は、脚の骨格構造や筋肉のバランスによって引き起こされます。特に、内転筋や内転筋群の弱さや伸展筋の緊張がO脚を悪化させることが知られています。アジア人の多くは、欧米人と比較してO脚の発生率が高いとされています。これは、遺伝的要因や文化的な生活スタイル、身体構造の違いによるものと考えられます。アジア人の場合、一般的に脚が直線的でなく、O脚や外反母趾などの問題がより一般的です。
また、肥満や運動不足も変形性膝関節症とO脚の関係に影響を与えます。過体重や筋力不足は、膝関節に余分な負荷をかけ、関節軟骨の劣化を促進します。そのため、予防や治療には体重管理や適切な運動が重要です。

【参考】
1)慶應義塾大学病院|変形性膝関節症
2)日本整形外科学会|「変形性膝関節症」
3)日本整形外科学会|「O脚・X脚」
4)「地域在住女性高齢者におけるO脚の有無と身体機能との関連」村田 伸、中野 英樹ら  Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy Vol. 12, No.2:51-56,2022
5)さいたま市|変形性膝関節症 骨切り術
6)玉造病院|変形性膝関節症に対する関節鏡治療
7)近畿大学病院|変形性膝関節症の治療
8)東京女子医科大学|関節再生医療|人工関節
9)「変形性膝関節症に対する運動療法」池田 浩 順天堂医学 54巻3号(2008)
10)熊本医療センター|変形性膝関節症
11)「杖を用いた歩行の特性」加茂野 有徳 バイオメカニズム学会誌,Vol. 44,No.3(2020)

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