医師・専門家インタビュー

再生医療にサウナや酵素風呂を組み合わせ、関節痛やスポーツ傷害に悩む方を支える

吉岡 直樹

京都府京丹後市にあるよしおかクリニックは、スポーツ整形外科の診療に力を入れている。地域の方々のため、再生医療に温浴療法や低酸素トレーニングを組み合わせた治療も行っている。同クリニックの吉岡直樹院長に、再生医療や温浴療法、それらを組み合わせた治療などについて話を伺った。

子どもたちの野球肩、野球肘のケアに取り組むために開業

――クリニックを開業した背景についてお教えください。

開業前、京丹後市やその近隣の公立病院に勤務していたとき、学童を対象とした野球肩肘検診を行っていました。この検診で治療が必要と判断したお子さんに対して、院内で診察やリハビリテーションを行っていた中で、大きな課題に直面します。

それが、お子さんの診療希望時間と病院の開院時間が一致しないという課題です。お子さんたちが診療できる時間帯は、どうしても平日に学校が終わったあとの夕方や夜間に集中します。しかし、公立病院ではその時間帯のリハビリテーションの提供が容易ではありません。さらに利益性の低さという問題も重なり、病院側からの申し出で診療を断念せざるを得なくなってしまったのです。

それでも、未来がある子どもたちのケガをしっかりと治療できる環境を整えたいという想いは消えませんでした。それならば、「自身で理想のリハビリテーション治療を行えるクリニックを作ろう」と決意したことから、クリニック開業に至りました。

――とくに、どのような疾患の患者さまが多く来院しますか?

当院は、時間帯によって来院する患者さまの年齢層がはっきりと分かれています。午前は、身体に痛みや違和感を抱えるご年配の方が中心です。一方、午後はスポーツに熱中する小学生から高校生までの患者さまが増えます。

なお、2016年の開業当時に比べると、野球に起因する傷害で来院する患者さまは減少傾向です。これは、私たちが長年続けてきた野球肩肘検診や、それと連動した指導者への啓発活動を通じて、野球肩や野球肘を未然に防ぐための文化が地域に根付いてきた証だと自負しています。

最近では、野球よりもサッカーやバレーボール、バスケットボール、陸上などでスポーツ傷害を負う子どもたちの来院数ほうが増えたと感じています。

北近畿エリアで再生医療を希望される方のための受け皿に

――どのような患者さまに再生医療をおすすめしていますか?

当院では、患者さまに対して積極的に再生医療を勧めているわけではありません。再生医療は自費診療になるため、保険診療と比べるとどうしても治療費が高額になります。この点を気にされる方も多いため、院内ではポスター掲示やサイネージ紹介の情報提供にとどめています。

実際に再生医療を提案するのは、当院で治療を続けていても症状に変化を感じられない患者さまから「手術以外の選択肢はないか」と相談を受けた際が中心です。

ただし、最近は問診票に「再生医療に関心がある」と記載する方も少なくありません。そうした患者さまに対しては、診察時に再生医療のメリットとデメリットの両方をしっかり説明するようにしています。

――これまで再生医療の治療実績数はどれくらいでしょうか? また、その中でとくに治療実績が多い症状は何ですか?

当院で再生医療を開始した2021年11月から現在(2026年4月時点)までで、250件程度の治療実績があります。その中で、とくに治療実績が多い疾患は、変形性膝関節症と半月板損傷です。

また、当院はスポーツ整形外科に注力しているため、中学生や高校生の野球肘(肘内側側副靭帯損傷)に対して再生医療を行った実績もあります。この場合、効果に個人差があるものの、リハビリテーションのみで治療を続けるよりも、再生医療を併用したことで比較的早期に競技に復帰できたという例もありました。

――再生医療を受けるために、遠方から来院する患者さまはいらっしゃいますか?

はい、いらっしゃいます。具体的には、兵庫県北部や鳥取県、福井県などにお住まいの方です。そのような方々に当院を受診された理由を伺うと、「近隣に再生医療を行っているクリニックが少ないから」という回答でした。

北近畿エリアで再生医療を行っている整形外科クリニックが限られているからこそ、当院はこのエリアにお住まいの患者さまの受け皿となりたいと考えています。

▼再生医療については、以下の記事で解説しています。
【医師監修】膝の痛みに対する注射治療とは?再生医療についても紹介
【医師監修】「再生医療」はスポーツ外傷を治せる?ケガの種類やアスリートの成功事例を解説

フィンランド式サウナ、酵素風呂を取り入れた温浴療法も提案

――クリニックでは温浴施設を運営しています。その経緯についてお教えください。

コロナ禍のとき、これまでなら症状が変化するはずの期間で変化しない患者さまが増えました。とくに、もともと抑うつ状態が見られたり、自律神経が乱れたりしていた患者さまにその傾向が強く、当院として何かできることはないかと模索したことがきっかけでした。

調査を進める中で着目したのが、フィンランド発祥の入浴方法のひとつである「ロウリュのできるフィンランド式サウナ」。このフィンランド式サウナに関する研究で、自律神経を整える一助となる可能性があるという報告があったためです。

また、地域の野球チーム関係者から淡路島にある「酵素風呂」を紹介されたことも大きな転機になりました。ケガや痛みのあるプロスポーツ選手も訪れる場所で、私が酵素風呂について研究すれば、医学的なエビデンスを提示できるのではないかと考えたのです。

これらを踏まえて、自律神経が乱れている方だけでなく、スポーツ傷害でお悩みの方にも勧められるよう、サウナと酵素風呂の両方がある温浴施設を当院から車で約10分の場所に開設しました。

――温浴施設を利用される患者さまに対して、どのようなことを感じていますか?

サウナも酵素風呂も関節痛の変化を実感される患者さまが多い印象です。サウナは脳をリセットできるたり、酵素風呂では私たちの研究で、睡眠の質や腰背部の痛み、手足の血液循環の変化が認められたりしました。この研究成果は、日本サウナ学会の公式ホームページにも掲載されています。

▼酵素風呂の研究成果は、以下のページからご覧になれます。
『酵素風呂への入酵はヒトの身体にどのような反応を引き起こすのか?』

――再生医療と温浴療法を組み合わせた治療も提案されているそうですね。

はい、再生医療を行った患者さまにサウナや酵素風呂の利用をお勧めすることがあります。とくに、サウナでは温熱刺激によって体内に「ヒートショックプロテイン70」が分泌されることが知られている上、この物質が組織や軟骨に良い影響を及ぼすという研究結果が報告されているためです。

さらに、低酸素環境下での運動療法も提案することがあります。低酸素トレーニングを通じた軟骨に関する研究報告があるからです。このような治療提案の背景には個人差があるものの、再生医療単体よりも温浴療法や低酸素トレーニングを組み合わせたほうが効果を見込めるのではないか、という考えがあります。

――関節痛でお悩みの方にメッセージをお願いします。

当院がある京丹後市は、「2024美食都市アワード」に選出されるなど地域独自の食文化があります。京都府内でも有数の温泉地であることから、宿泊施設が少なくありません。この地域周辺には日本三景のひとつ「天橋立」や、日本のベネチアと呼ばれる「伊根の舟屋」といった観光名所も点在しています。

そのため、当院を受診する場合、診療の前後に観光を楽しめる上、ぬかとゆげ併設の宿泊施設や近隣の温泉宿などに滞在しながら、関節治療を行える「ヘルスツーリズム」が可能です。近隣の市町村や府県にお住まいで丹後エリアの旅行に関心があり、関節痛の診療も希望されている方は、ぜひ当院までご相談ください。

インタビューした医師・専門家

吉岡 直樹 先生

2002年、自治医科大学を卒業後、京都府立医科大学に勤務。その後、長野県立木曽病院や伊那中央病院、長野県立阿南病院、公立南丹病院(現 京都中部総合医療センター)、京丹後市立久美浜病院などを経て、2016年によしおかクリニックを開院。日本整形外科学会認定スポーツ医や日本スポーツ協会スポーツドクターの資格を所持し、スポーツ整形外科の診療も行う。2022年、サウナと酵素風呂を備えた「ぬかとゆげ」をオープンし、温浴施設も運営する。

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