1993年、日本医科大学医学部を卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科学教室に入局。その後、慶應義塾大学病院、済生会神奈川県病院、川崎市立川崎病院などを経て、2005年に田園調布 長田整形外科を開院。現在は、日本スポーツビジョン協会の理事長、国際生命意識協会と予防医学療法研究会の顧問なども務める。
医師・専門家インタビュー
身体に不具合がある患者さまに、その回復力を引き出すためのリハビリテーションを

身体の痛みや違和感がある患者さまに対して、身体だけでなく脳の機能にも着目したリハビリテーションを行っている田園調布 長田整形外科。同院の長田夏哉院長に、このアプローチの背景やリハビリプログラム、MRIの特長、そして自費診療で行っている再生医療の取り組みについて詳しく話を伺った。
目次
病気やケガを治すのではなく、身体の回復力を引き出すためのサポートが医師の役割

――まずは、長田先生が整形外科医を志した理由からお聞かせください。
理由は大きく2つあります。ひとつは、整形外科が「予防」を促す診療科目としてもっとも適していると感じたからです。例えば、肩こりや腰痛、膝の痛みなどをきっかけに来院された患者さまに、それらの治療だけでなく生活習慣やライフスタイルの見直しも提案することで、将来的に生命にかかわるような大きな病気を防ぐお手伝いができると考えました。
もうひとつは、対象となる患者さまの幅広さです。整形外科には性別だけでなく、乳児からご年配の方まで年齢を問わず患者さまが来院します。医師として、より大勢の方々をサポートできる点に魅力を感じ、整形外科医を志しました。
――長田先生が考える医師の役割について詳しくお教えいただけますか?
私は、医師の役割とは病気やケガを治すことではなく、それらをきっかけに脳と身体を整えながら身体の回復力を高めるためのサポートをすることだと捉えています。
そのため、私は「治す」という言葉をほとんど使いません。この言葉には「病気やケガがなかった際の状態に戻す」というニュアンスが含まれているように感じており、人間が生から死へと向かうプロセスの中で、細胞の破壊と再生を繰り返して生命を維持している点からするとナンセンスだと考えているからです。
――正確な診断のために、貴院ではMRIが完備されていますね。MRIの特長をどのように捉えていますか?
MRIの特長は、レントゲンでは正確に把握しにくい筋肉、神経、靭帯などの軟部組織の状態を詳しく診断できることです。
整形外科医は画像検査を通じて、患者さまの身体の中で何が起きているかを正しく把握することが求められます。患者さまも医師から言葉だけでなく画像も交えて説明を受けることで、自身の容体を正しく理解できます。これらから、当院ではMRIが欠かせないツールになっていると言えるでしょう。
――貴院のMRIは、オープン型を採用されていますね。
はい、その通りです。オープン型MRIは寝台と投影機が分離している構造のため、閉所恐怖症の方でも圧迫感を感じることが少なく、安心して検査を受けていただけます。実際、他の病院・クリニックからの紹介で、こうした方々が当院で検査を受けることも少なくありません。
一方で、画像の解像度には限界があります。そのため、小関節の疾患をはじめ、病態によってはドーム型MRIでの画像検査のほうが有効です。こうした患者さまがいる場合、近隣のドーム型MRIを完備するクリニックをご案内し、的確に診断できるようにしています。

認知動作型トレーニング、ブレイン コンディショニング、脳と身体を連携させるためのリハビリテーション
――貴院には、屋内だけでなく屋外にもリハビリスペースがあるそうですね。なぜ屋外のスペースを設けたのでしょうか?
実は、たまたま借りられたことがきっかけでした。今ではリハビリテーションを行ううえで、屋外スペースの有効性を強く感じています。屋外は光や風、温度、香り、物音など揺らぎがある環境のため、身体を動かすことで患者さまの五感をより刺激し、心と身体のバランスを整えるサポートができます。
加えて、私たちの日常生活は屋内だけではなく屋外もあるため、雨の日に傘を持った際の歩き方や、風の強い日の前傾姿勢での歩き方など、より実践的なトレーニングを行うための場としても有効です。
――長田先生は、リハビリテーションのテーマとして「脳と身体の連携」を掲げていますね。
はい。身体は脳からの指令によって動くものです。そのため、脳と身体の両機能に対して治療を行うことが大切であるとともに、初めてリハビリテーションの語源でもある「再び適合」、つまり身体の回復力向上を実現できると考えています。
――脳の機能を高めるために、どのようなプログラムを用意しているのでしょうか?
ひとつは東京大学名誉教授の小林寛道氏が考案した「認知動作型トレーニング」で、もうひとつは「ブレイン コンディショニング」です。このトレーニング専用のマシンを用いて脳の神経回路を刺激したり、スマートフォンアプリを利用して脳波を整えたりすることで、身体機能の向上をサポートします。
――そのほかにも、リハビリテーションで取り入れていることがありましたら、お教えください。
リハビリテーションの補助的要素として、「龍村式指ヨガ」も取り入れています。患者さまに正しい呼吸法を身につけてもらったうえで、手や指を刺激することで、脳と身体のバランスを整えていきます。
整形外科疾患の患者さまに対するリハビリテーションの一環として、こうしたトレーニングやプログラムを組み込んでいるのが当院の方針です。

健康を維持するためには、身体からの些細なサインに敏感になることが大切
――貴院では治療のひとつとして再生医療を行っていますね。いつから始められたのでしょうか?
当院では2025年1月から開始しています。再生医療の導入の決め手になったのは、数年間にわたって再生医療を行っていた医学部時代の同期からの勧めがあったためです。
それまでは、再生医療に関する情報を論文上のデータからでしか得られなかったため、どこか机上の空論のように捉えていた節がありました。しかし、実際に治療を行っている彼から、これまでの実績を交えながら説明を受ける中で、再生医療の安全性と有用性を期待できるようになったことで当院での導入を決めました。
――安全性や確実性について、もう少し詳しくお教えください。
安全性については、再生医療が始まった当初必ずしも高いとは言い切れない面がありました。例えば、治療後に炎症を引き起こし、痛みや腫れも誘発するといった報告を聞いたことがあったためです。
しかし、現在は再生医療関連事業を手がける企業の努力から、患者さまの血液や細胞を加工する技術力が向上したことで、そういった問題が少なくなっており、患者さまの安全性を担保できるレベルに達していると言えます。
また、有用性についても一定的な治療の効果を期待できるようになっています。再生医療は自費診療で負担が大きくなる分、患者さまの期待値が高くなるものですが、それに応えられるだけの水準を満たしていると言えるでしょう。
――2026年3月時点までに、長田先生はどれくらいの患者さまに再生医療を行ったのでしょうか?
これまでに60名程度の治療実績があります。そのうち約8割が、変形性膝関節症の患者さまです。結果には個人差がありますが、再生医療を行った患者さまからは「日常生活の動作がしやすくなった」といったお声をいただくことがあり、私自身も治療の手ごたえを感じています。
余談ですが、当院が横浜・渋谷といった観光地や羽田空港からのアクセスが良いことも影響しているのか、最近では近隣にお住まいの方だけでなく、海外から来院された方に再生医療を実施したこともありました。
――最後に、関節痛でお悩みの方にメッセージをお願いします。
関節痛に限らず、肩こりや手足のしびれなどは、身体からの大切なサインです。そのサインを見逃さず、しっかりと向き合うことが、結果として健やかな状態につながっていきます。
皆さまにお伝えしたいのは、身体からのサインに敏感であってほしいということ。身体の小さな変化に気づく方ほど予防や対処への意識が高く、健康を維持されているケースが少なくありません。
当院では、身体からの些細なサインをキャッチし、来院された患者さまを全力でサポートします。
▼変形性膝関節症については、以下の記事で解説しています。
【医師監修】変形性膝関節症とO脚の関係性とは?おもな治療法や生活上の注意点を解説
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