【医師監修】ヘバーデン結節の治療法は?症状・原因、治療費用を解説

手の指の関節の変形や痛みの原因は、ヘバーデン結節やブシャール結節かもしれません。この記事では、ヘバーデン結節とブシャール結節について、その違いや症状・原因をわかりやすく解説します。併せて、治療法や治療にかかる費用の目安についてもご紹介します。指の変形や痛みが気になる方は、ぜひ参考にしてください。

ヘバーデン結節・ブシャール結節とは?

ヘバーデン結節とブシャール結節は、どちらも手の指の関節に起こる変形性関節症の一種です。40代以降の女性に多く見られ1)、連続して発症する2)こともあります。ここでは、それぞれの症状や原因、間違えられやすい疾患について解説します。

症状

ヘバーデン結節とブシャール結節では、以下のような症状1)が現れます。

ヘバーデン結節とブシャール結節は似たような症状を呈しますが、発症する部位が異なります。ヘバーデン結節は指の第1関節(DIP関節)、ブシャール結節は指の第2関節(PIP関節)に生じます2)

原因

ヘバーデン結節・ブシャール結節ともに、はっきりとした原因は解明されていません。しかし、以下のような要因が関係していると考えられています。

加齢や指への負担によって関節の軟骨がすり減り、関節に炎症が生じることが、ヘバーデン結節やブシャール結節のおもな病態2)と考えられています。

40代以降の女性に多く見られることから、女性ホルモンの一種「エストロゲン」(卵胞ホルモン)」の分泌低下と深い関わりがある3)ことが指摘されています。また、遺伝性は明確に証明されているわけではありませんが、母親や祖母がヘバーデン結節になっている場合、体質的に似ている可能性があるため、予防的に指先への過剰な負担を避けることが望ましい1)とされています。

間違えられやすい病気

ヘバーデン結節・ブシャール結節はほかの手指の疾患と似た症状が現れる可能性があるため、以下の病気との鑑別が必要4)です。

とくに注意が必要なのは、関節リウマチです。関節リウマチは自己免疫疾患の一種で、30~40代の女性に多く発症5)します。ヘバーデン結節は指の第1関節、ブシャール結節は指の第2関節に発症します。関節リウマチの場合は指の第2関節から発症しやすいのですが、全身のどの関節でも炎症を起こす可能性があります。左右対称に症状が現れやすい点、午前中に関節のこわばりが続きやすい点も関節リウマチの特徴です。鑑別にはX線検査(レントゲン)や血液検査が有用6)です。

いずれの病気も自己判断は難しいため、手指に違和感や痛みをおぼえたら早めに医療機関を受診しましょう。

ヘバーデン結節・ブシャール結節のセルフチェック

ヘバーデン結節・ブシャール結節の初期では、違和感や軽度の腫れしか自覚できない場合があります。しかし、早期発見と適切な対処で、進行を遅らせたり、症状の悪化を防いだりすることが可能になります。

以下のような症状1) 7) 8)に当てはまっていないか、まずはご自身の指の状態をチェックしてみましょう。

該当する項目があれば、ヘバーデン結節・ブシャール結節かもしれません。整形外科での診察を受けましょう。

ヘバーデン結節・ブシャール結節の治療法

ヘバーデン結節・ブシャール結節に対しては、まず保存療法が選択されます。炎症の抑制を目的として、患部の安静や消炎鎮痛剤の処方、テーピングによる関節の保護などが行われます。痛みの強い急性期には、少量の関節内ステロイド注射も検討されます1)

保存療法で改善が見られない場合には、関節固定術や人工指関節置換術などの手術療法9)が考慮されます。

ヘバーデン結節とブシャール結節に対する新たなアプローチ法として、「動注治療」と「再生医療」も注目されています。

動注治療とは、抗生物質として用いられる「チエナム」を直接腕の動脈に注入して、痛みを生じている部分にできる異常な血管(モヤモヤ血管)を減少させる治療法です。正常な血管の血流改善による症状改善が期待されます。

動注治療の場合、チエナムは少量の液体と混ぜて使用します。非常に溶けにくい薬剤であるチエナムが液体の中で小さな粒子となり、その粒子が異常血管を選択的に閉塞させ、血流を妨げます。ヘバーデン結節・ブシャール結節以外に、慢性痛をきたす指の疾患に対しても行われます10)

ヘバーデン結節・ブシャール結節に対する再生医療としては、患者さまご自身の血液から抽出した血小板を用いる「PRP(多血小板血漿)療法」が挙げられます。血小板に含まれる成長因子による痛みの緩和や組織の修復を目的に行われており11)、拒絶反応が少ないことがメリットです。

動注治療も再生治療も、保存療法と手術療法の間をつなぐ新たな治療法として注目されていますが、実施できる病院は限られています。またその効果には個人差があるため、担当の医師とよく相談したうえで検討するようにしましょう。

治療費用の目安

ヘバーデン結節・ブシャール結節の治療法ごとの費用目安12)を表でご紹介します。

治療内容費用目安(3割負担の場合)
初診¥2,000~
関節内注射(1ヶ所)¥800~
手術¥30,000~100,000

動注治療や再生医療(PRP療法)は自由診療であり、医療機関によって治療費用が変動します。高額となる場合もあるため、事前に費用について確認しておきましょう。

ヘバーデン結節・ブシャール結節の予防法

指関節に痛みや違和感をおぼえたら、手や指を休ませることが大切です。どうしても使わなければならないときは、テーピングなどで関節をサポートしましょう1)

ヘバーデン結節・ブシャール結節の予防には、食生活の見直しも欠かせません。とくにおすすめなのが大豆製品です。大豆に含まれるイソフラボンという成分は、女性ホルモンであるエストロゲンとよく似た働きをします。エストロゲンが減少する40代以降にイソフラボンを積極的に摂取することで、ヘバーデン結節・ブシャール結節の予防や更年期症状の緩和が期待できます13)

指の変形や痛みは放置厳禁!早めに専門医に相談を

ヘバーデン結節・ブシャール結節は、痛みや腫れ、不可逆的な変形を起こす関節症の一種です。指の症状に気づいたら、早めに整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。

【医師からのコメント】
へバーデン結節もブシャール結節も非常にありふれた病気であり、この指の痛みを経験された、もしくは周りの人がそうだという方は多くいるのではないでしょうか。痛みの強さには個人差がありますが、痛みがとれるのに時間がかかりやすいという点も覚えておきましょう。なかなか痛みがとれなくても、ほとんどの方はテーピングや注射などの保存治療だけで改善していくものなのです。

ただそれでも痛みがとれずに困る場合は、手術をするケースもあります。一般的な整形外科ではそれほど行われることがないため、「手の外科」といわれる手の症状を専門にみている整形外科を受診して相談するのがいいでしょう。昔は関節固定術が多かったですが、最近は人工指関節置換術といった手術をおこなっている病院もあります。本来は第2関節用の手術でしたが、第1関節でも行うこともあり担当の先生と相談してみましょう。

関節固定術は痛みはよくなるものの、手術をした関節が動かなくなるというデメリットがあります。繊細な作業をする人や音楽家などは人工指関節置換術などの方がいいかもしれません。一方で人工指関節置換術は、インプラントの耐用性があまり長くなく、5年、10年後に再手術が必要となることもあるようです。メリット、デメリットを医師とよく相談したうえで検討するようにしましょう。

【参考】
1)公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「ヘバーデン結節」
2)オクノクリニック 慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A ヘバーデン結節
3)倉石整形外科クリニック 美しい指を保つために知っておきたい「ヘバーデン結節」の治療法
4)倉石整形外科クリニック ヘバーデン結節・ブシャール結節に似た手指の病気
5)公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「関節リウマチ」
6)倉石整形外科クリニック 関節リウマチとへバーデン結節の見分け方
7)天王寺 整形外科クリニック N へバーデン結節・ブシャール結節
8)豊田土橋リウマチクリニック ヘバーデン結節の症状を早期に発見するために
9)医療法人 南川整形外科 ヘバーデン結節
10)孔明寺整形外科リハビリテーションクリニック もやもや血管
11)まえだ整形外科・手のクリニック 手の変形性関節症(ヘバーデン結節・母指CM関節症など)に対するPRP療法
12)株式会社日立保険サービス ヘバーデン結節
13)倉石整形外科クリニック ヘバーデン結節以外にも効果が期待できる、大豆とエクオールについて

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