【医師監修】膝に負担がかかる行動とは?痛みの部位別の原因も解説

膝に負担がかかり、痛みや違和感を覚える方は多いのではないでしょうか。日常生活のなかで膝に負担がかかるようなことを繰り返すと、疾患の発症につながることもあります。膝への負担を軽減して、痛みを予防するためには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。
この記事では、膝に負担がかかりやすい行動や痛みの原因についてご紹介します。膝の健康を維持するための正しい知識を身につけることで、快適な日常生活を送れるでしょう。

膝に負担がかかりやすい6つの行動1)

膝に負担がかかりやすいおもな行動には、以下の6つがあげられます。 

  1. 正座をする
  2. 深くしゃがみ込む
  3. 低いイスから立ち上がる
  4. 高い段差の昇り降りをする
  5. 食習慣が乱れている
  6. 激しい運動をする

 ここではそれぞれの行動について詳しく解説します。

1.正座をする

1つ目は、正座をすることです。正座は膝を深く曲げた状態になるため、関節や軟骨に負担がかかりやすい姿勢といえます。とくに和室の多い日本の住宅環境では、正座をする機会が多いです。また、正座から立ち上がりの際にも大きな力が必要なので、膝を痛めるきっかけになります。正座を続けると、膝の痛みや違和感を引き起こす可能性が高まるので、なるべく避けるようにしましょう。

2.深くしゃがみ込む

2つ目は、深くしゃがみ込むことです。しゃがみ込みも正座と同じように、体重が膝にかかりやすくなる姿勢です。日常生活でしゃがみ込む動作を頻繁に行うと、膝関節の軟骨がすり減ったり、痛みが強くなったりする可能性があります。膝に痛みや違和感がある人は、できるだけ深くしゃがみ込まないように注意しましょう。

3.低いイスから立ち上がる

3つ目は、低いイスから立ち上がることです。座面が低いほど立ち上がる際に力を要するので、その分膝にも負担がかかりやすくなります。また、低いイスからの立ち上がりは重心を大きく移動させる必要があるため、バランスを崩す原因にもなります。足腰が弱い高齢者の場合、転倒リスクにも注意しなければいけません。

4.高い段差の昇り降りをする

4つ目は、高い段差を昇り降りすることです。階段やステップなどの高い段差を昇り降りする際に、膝には体重の数倍もの力がかかるといわれています。段差の昇り降りを繰り返すと、次第に膝への負担が積み重なり、痛みや機能低下につながる恐れがあります。自宅内で段差が多かったり、階段を使う機会が多かったりする場合は、なにかしらの対策をする必要があるでしょう。

5.食習慣が乱れている

5つ目が、食習慣が乱れていることです。不規則な食事を続けていると、体重の増加につながります。体重が増えると、その分膝にかかる負担が大きくなるので、痛みの原因となります。肥満は変形性膝関節症をはじめとした、慢性的な膝の問題を引き起こす恐れもあるでしょう。膝の負担を軽減するには、普段の行動だけでなく食習慣の見直しも重要です。

6.激しい運動をする

6つ目は、激しい運動をすることです。ジャンプやダッシュなどを多用するスポーツは、膝への負担が大幅に増える原因となります。若い人でも、過度な運動や不適切なフォームによって膝を傷めてしまうことは珍しくありません2)。年齢に関係なく、スポーツする人は膝関節のケガを予防するために、ウォーミングアップやクールダウンを十分に行うことが大切です。

膝の痛みの場所でわかる原因

膝の痛みの場所によって、なにが原因なのかをある程度予測が可能です。ここでは、膝の痛みの場所に応じた原因について解説します。

膝の内側の痛み

ここでは、膝の内側の痛みが現れた場合の原因についてみていきましょう。

変形性膝関節症

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨がすり減ることで起こる疾患です。おもな原因は、加齢にともなって軟骨が老化することがあげられます。加齢以外にも肥満や過度の運動、外傷なども関係しています3)。変形性膝関節症の初期段階では膝の内側の軽い痛みや違和感程度ですが、進行すると歩行が困難になることもあるでしょう。また膝を曲げ伸ばしする際に「ゴリゴリ」という軋轢音がすることもあります。

内側半月板損傷

内側半月板損傷とは、膝の関節内にある「半月板」が傷つくことで起こる疾患です。半月板には膝の衝撃を吸収して、関節の安定性を保つ重要な役割があります。内側半月板損傷の原因は、大きく分けて急性的なものと慢性的なものの2つがあります4)。急性の場合は、スポーツ中の急な方向転換や着地の際に起こることが多いです。
一方で、慢性的なものは加齢による半月板の老化、長期間の過度な負担などが原因となります。おもな症状は、以下のとおりです。 

症状が進行すると、変形性膝関節症などの二次的な問題を引き起こす恐れもあります。

内側側副靱帯損傷

内側側副靱帯損傷は、膝の内側についている靱帯が損傷した状態のことです。内側側副靱帯は、膝の横方向の安定性を高める役割があります。内側側副靱帯損傷は、おもに膝の外側から強い力が加わることが原因で起こります。スポーツ中の相手との接触や、急な方向転換などがきっかけで発症するケースも少なくないです5)。症状としては、以下のとおりです。 

このように、内側側副靱帯は膝の安定性に大きく関わるため、損傷すると日常生活に支障をきたす可能性があります。

膝の外側の痛み

ここでは、膝の外側の痛みが現れた場合の原因についてみていきましょう。

ランナー膝(腸脛靭帯炎)

ランナー膝(腸脛靭帯炎)は、「腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)」と呼ばれる靭帯が炎症を起こす疾患です。腸脛靭帯は、骨盤から脛骨の外側にかけてついている長い靱帯です。この腸脛靭帯と大腿骨の突起部分が繰り返し接触することで、摩擦を起こして炎症が現れます。ランナー膝になると、歩行中や走行中に足が地面についたときに、膝の外側部分の痛みが現れます。
症状が悪化すると、走れなくなるくらい痛みが強くなることもあるでしょう。名前のとおり、ランニングのような膝を繰り返し曲げ伸ばしする動きが原因とされています6)

外側半月板損傷

外側半月板損傷は、半月板の外側が損傷する疾患です。外側半月板は内側半月板と比較すると損傷頻度は少ないですが、若い人に発症するケースがあります7)。おもな症状は、膝の外側部分の痛みや膝のひっかかりなどがあげられます。内側半月板損傷と同じように、以下のような動作が発症原因です。 

外側側副靱帯損傷

外側側副靱帯損傷は、膝の外側についている靱帯が損傷する疾患です8)。おもな症状としては、以下のとおりです。 

外側側副靱帯損傷の原因は、内側の側副靱帯と同じように、スポーツ中に生じる膝へのストレスがあげられます。また日常生活のなかでは、階段を踏み外して膝を捻ってしまうなどの事故でも起こることもあります。

膝の前側の痛み

膝の前側の痛みで考えられる代表的な疾患は、「ジャンパー膝(膝蓋腱炎)」があげられます。ジャンパー膝とは、膝のお皿である膝蓋骨についている「膝蓋腱」と呼ばれる腱が炎症を起こした状態です。ジャンプを繰り返し行うスポーツでよく見られることから、ジャンパー膝と呼ばれています。それ以外にも、蹴ったり走ったりするスポーツでも発症するとされています9)
膝蓋腱の炎症なので、膝の前面、とくに膝蓋骨の下部に痛みを感じることが多いです。発症初期では膝の動きだしで痛みを感じる程度ですが、症状が進行すると日常生活の些細な動作でも痛みが現れるようになります。

膝に負担をかけないようにするポイント1)

膝に負担をかけないようにするためには、どのようなことを意識すべきなのでしょうか。ここでは、日常生活でおさえておきたいポイントについて解説します。

環境整備をする

環境整備をすることで、膝の負担軽減につながります。具体的には、以下の方法があげられます。 

このような環境整備は、膝の痛みをやわらげるだけでなく、将来的な膝の健康維持が期待できるでしょう。自宅や職場など、日常的に過ごす場所を見直して、膝に配慮した環境整備を行ってみてください。

歩行補助具を使用する

歩行時に膝の痛みがある場合は、補助具の使用がおすすめです。とくに杖の使用は、膝への負担を軽減する有効な手段といえます10)。また歩行器やシルバーカーなど、状況に応じて選択することで、さらなる痛みの軽減や歩行の安定性向上につながるでしょう。
歩行補助具を使用する際は、医療専門家のアドバイスのもと行うことが望ましいです。歩行補助具を上手に活用して、痛みの軽減と活動性の維持を目指しましょう。

食事管理をする

食事管理をして体重をコントロールすることで、膝にかかる負担を効果的に減らせます。具体的な食事管理の方法としては、まずは栄養バランスを心がけることが大切です。脂肪や糖分の多い食品は控えめにして、野菜や果物を積極的に摂取することで、栄養バランスが整いやすくなります。
また食べ過ぎを避けて、カロリーの過剰摂取をおさえることも重要です。日々の食事を見直し、膝に優しい習慣を心がけましょう。

運動習慣をつける

膝の負担を軽減するためには、適切な運動習慣をつけることも重要です。膝を動かさないでいると筋力や柔軟性が低下し、かえって膝への負担が増えてしまいます。運動を行うことで膝まわりの筋肉が強化されて、関節の安定性向上につながります。おすすめの運動としては、以下のとおりです。 

毎日の生活に無理のない範囲で運動を取り入れて、健康的な膝を維持していきましょう。

膝の負担をやわらげて痛み予防につなげよう

膝への負担を軽減して痛みを予防するためには、日常生活での注意点を理解し、適切な対策を立てることが大切です。正座やしゃがみ込みなど、膝に負担がかかりやすい行動を避けつつ、環境整備や歩行補助具の使用を検討しましょう。また、適切な食事管理と運動習慣を身につけることで、膝の健康維持につながります。ぜひ今回の記事を参考にして、膝の負担を軽減する工夫してみてください。

医師コメント
高齢の膝変形性関節症の患者さんによく説明するのは「椅子生活」の重要性です。椅子を普段から使ういわゆる西洋式と日本の古くから床に座る「床生活」は、膝への負担が大きく異なります。椅子生活では、椅子に座ることで膝の関節にかかる圧力が軽減され、特に長時間の座位でも膝に負担をかけにくいです。また、立ち上がる際にも、椅子の支えを利用できるため、膝への急激な負荷が少なくなります。

一方、床生活では、座る、立ち上がる、膝を曲げている時間が長くなるため、膝にかかる圧力が増し、特に膝の関節や周囲の軟骨に負担がかかります。床から立ち上がる際には、膝を深く曲げる必要があり、これが繰り返されると膝の痛みやさらなる変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があります。よって高齢者や膝に問題を抱える人には、椅子生活が推奨されます。膝の健康を維持するためには、日常生活での動作や姿勢を見直し、適切なサポートやエクササイズを取り入れることが重要です。

【参考】

1)日本理学療法士協会|シリーズ 7 変形性膝関節症
2)日本スポーツ整形外科学会|10.膝の慢性障害
3)日本整形外科学会|変形性膝関節症
4)順天堂医院|膝半月板損傷
5)「前十字靭帯損傷、内側側副靱帯損傷、内側半月損傷保存例に対する理学療法 ースポーツ動作許可後にみられた再受傷の恐怖感に着目してー」大工谷 新一 関西理学 1:25-30 2001
6)東京山手メディカルセンター|腸脛靭帯炎(ランナー膝)
7)「若年者アスリートにおける外側半月板縫合術の治療成績」松田 匡弘、王寺 享弘ら 整形外科と災害外科 70 (4), 657-662, 2021
8)聖路加国際病院|膝複合靭帯損傷の診断と治療
9)東邦大学|膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
10)「変形性膝関節症例に対する免荷歩行の検討 一杖の長さと杖荷重量の違いによる免荷程度の比較一」安江 由美子、下野 俊哉ら 理学療法学 第23巻 第4号 184〜190 1996

記事監修者情報

相談できる
医療機関
を探す

日本全国からあなたに合った医療機関を探すことができます。

都道府県から探す

地図から探す

フリーワード検索

地域名や医療機関名など、お好きな単語で検索することができます。