【医師監修】肩関節の筋肉痛になったら?原因や対処法について解説

肩関節の筋肉痛になったときに、どうすれば良くなるのか気になる方はいるのではないでしょうか。筋肉痛は筋肉が損傷したときに起こるものなので、まずは痛みが落ち着くまで休息をとることが大切です。また肩関節の痛みが続く場合、何かしらの疾患を疑う必要があるでしょう。
この記事では、肩関節が筋肉痛になる原因や対処法などをご紹介します。筋肉痛に関する知識を深めることで、早期の対処や予防を実践できるでしょう。

肩関節の筋肉痛はどこに起こりやすい?

肩関節は、深い位置で筋肉痛になりやすいといえます。筋肉痛とは、負荷によって筋肉が損傷することで現れる痛みです。肩関節は「上腕骨」と「肩甲骨」から成り立っている関節です。

そして、以下の4つの筋肉が上腕骨頭と肩甲骨を覆っており、肩関節の動きをサポートしています。 

  1. 棘上筋(きょくじょうきん)
  2. 棘下筋(きょくかきん)
  3. 小円筋(しょうえんきん)
  4. 肩甲下筋(けんこうかきん)

このような深い位置にある筋肉を「インナーマッスル」と呼びます。インナーマッスルは比較的小さな筋肉なので、肩関節のなかでも痛めやすく、筋肉痛が起きやすいといえるでしょう1)

肩関節の筋肉痛を引き起こす原因は?

肩関節の筋肉痛を引き起こす原因として、慣れていない運動をする、久しぶりに身体を動かすなどがあげられます2)

具体的な場面としては、以下のとおりです。

このような場面は、普段よりも必要以上に筋肉を使いがちなので、筋肉痛を引き起こしやすくなります。とくに普段から運動不足の方は筋肉痛になりやすいため、注意が必要です。筋肉痛が起こると身体がうまく動かず、力も入りにくくなり、さらなるケガにつながる恐れもあります。

肩関節が筋肉痛になったときの対処法

肩関節が筋肉痛になった場合、どのような対処をすれば良いのでしょうか。ここでは筋肉痛を悪化させないための方法を解説します。

痛みが治るまで休息する

筋肉痛が現れている場合は、痛みが治るまで休息して、ムリに身体を動かさないようにしましょう。筋肉痛は筋肉が損傷して炎症反応が出ている状態です。そして、痛みとは一般的に「生体の異常を知らせる危険信号」でもあるからです2)
また、筋肉痛が出ている筋肉に負担をかけると「超回復」を阻害する恐れもあります。超回復とは、損傷した筋肉が修復され、以前よりも太い状態になることです。筋肉が修復されるまでは2〜3日かかるとされているので、それまではなるべく安静を優先しましょう3)

ストレッチやマッサージをする

ストレッチやマッサージをするのもおすすめです。ストレッチやマッサージには筋肉の柔軟性を高める働きが期待できます。筋肉痛になると筋肉が緊張しやすくなるので、柔軟性を高めて固まらないようにケアしましょう。
また、ストレッチやマッサージには疲労回復を促す働きもあるとされています4)

アイシングをする

筋肉痛のある部分をアイシングするのも1つの手段です。アイシングすることで、損傷した筋肉の再生が促進されるといわれています。これはアイシングで筋肉の炎症反応がおさえられ、損傷の拡大を防止するからとされています5)

ただし、ひどい筋肉痛に対してのアイシングは、むしろ筋肉の再生を邪魔してしまうという報告もあるため注意が必要です。アイシングをしても筋肉痛に変化がない場合は、別の方法を検討してみましょう。

肩関節の筋肉痛を防ぐための方法

肩関節の筋肉痛になった場合の対処だけでなく、予防するための方法を取り入れることも大切です。ここでは筋肉痛を防ぐための方法について解説します。

普段から運動習慣をつけておく

普段から運動習慣をつけておくと、筋肉痛を防ぎやすくなります。先ほど解説したように、筋肉痛の原因の1つには久しぶりに運動することがあげられます2)。あらかじめ運動習慣をつけておけば肩の筋肉が鍛えられて、ある程度の負荷にも耐えられるでしょう。

うまく習慣づけられない場合は、肩を回す、腕を上げるなどの気軽にできる運動からでも問題ありません。軽い運動でもインナーマッスルは効きやすいので、まずは肩を動かすことが大切です。

運動前のウォーミングアップをする

運動する前は、ウォーミングアップをしておくと筋肉痛の予防につながります6)。肩関節を軽く動かしたり、ストレッチをしたりすることで筋肉の柔軟性が高まります。ウォーミングアップをしていないと筋肉が固くなった状態のままなので、運動によるケガを引き起こしやすくなるでしょう。必ず肩の筋肉を動かしてから、運動することを心がけてください。

たんぱく質を積極的に摂取する

肩関節の筋肉量を維持するために、たんぱく質を積極的に摂取しましょう。たんぱく質とは、筋肉を作る重要な栄養素です7)。たんぱく質が不足して筋肉をうまく作れないと、力が衰えて筋肉痛が起きやすくなる恐れがあります。

たんぱく質が豊富に含まれている食べ物は、以下のとおりです。

普段の食事では不足しがちなので、上記の食べ物はできるだけ取り入れることが重要です。とくに運動後にたんぱく質を摂取することで、筋肉量が増えやすくなるとされています8)。なかなか食事に取り入れられない場合は、プロテインで補うのもおすすめです。

肩関節の筋肉痛が続く場合に疑うべき疾患について

時間が経過しても筋肉痛が続く場合、肩関節の疾患を発症している可能性もゼロではありません。ここでは、肩関節の痛みが続いているときに疑うべき疾患をご紹介します。

腱板断裂

腱板断裂とは、先ほど解説した肩関節周囲にある動きをサポートする筋肉の一部がなんらかの原因によって損傷した状態のことです。腱板断裂には一部の腱板が切れた「不全断裂」と、完全に切れてしまった「完全断裂」に分かれています。

おもな症状は以下のとおりです。 

腱板断裂は外傷によって発症するケースもありますが、その多くは明確な原因がないとされています。これは肩の使い過ぎによって腱板に少しずつストレスがかかることで、知らないうちに発症しているからと考えられます。また40代以降の男性に起こりやすく、利き手の割合が多い右肩に好発しやすいのが特徴です9)

肩関節周囲炎(五十肩)

肩関節周囲炎とは、肩関節を作っている骨や筋肉などの衰えによって炎症が起きている状態のことで、「五十肩」とも呼ばれます。
おもな症状は、以下のとおりです。

腱板断裂と似ている症状ですが、肩関節周囲炎のほうが可動域制限が顕著にみられやすい特徴があります。五十肩という名称があることから、50代以降の方に発症しやすいとされています10)。痛みや可動域制限などは自然に治るケースもありますが、症状が進行して日常生活に支障をきたすことも珍しくありません。

変形性肩関節症

変形性肩関節症とは、肩関節を作っている肩甲骨と上腕骨頭(上腕骨の上部)の軟骨がすり減っている状態のことです。

関節の動きをスムーズにする軟骨がすり減ることで、以下のような症状が現れます。

病状が進行すると軟骨はさらに変形し、症状の悪化につながるでしょう。変形性肩関節症には原因がわかっている「一次性」のものと、明確なきっかけがある「二次性」のものがあります。
割合としては二次性によるものが多く、以下のような疾患から派生して発症する恐れがあります11)

肩インピンジメント症候群

肩インピンジメント症候群とは、腕を動かしたときに肩関節のなかに組織が挟み込まれる状態のことです。おもに腱板や関節包(関節を囲んでいる組織)などが挟み込まれ、以下のような症状が現れます。

肩の運動によって組織が頻繁に挟み込まれると、出血やむくみなどが起こるケースもあるでしょう。インピンジメント症候群は、加齢や疲労などで肩関節を作る組織が衰えることで発症するとされています12)。日常生活やスポーツで、腕を上げるような動きをよくする方に起こりやすい傾向にあります。

肩関節の疾患を発症した場合の治療法について

肩関節の疾患を発症した場合の代表的な治療法として、以下があげられます。

保存療法とは、運動や薬などによって症状をコントロールする方法です。疾患を発症した直後の段階では、保存療法を最初に行って様子をみるケースが基本です。

保存療法を行っても痛みや可動域の制限が悪化する場合は、手術療法を検討します。手術療法の内容は状態によって異なります。たとえば、変形性肩関節症の症状が悪化している場合、肩甲骨と上腕骨頭を人工物に取り替える「人工関節置換術」を行うことがあるでしょう13)

再生医療とは、人体が備わっている再生力を活用した治療法です14)。人体のなかにある組織の修復を促す細胞・成分を抽出し、患部に注入することで症状の改善を図ります。このように、疾患の状態にあわせた治療法を選択して、症状の改善を目指します。

肩関節の筋肉痛が続く場合は医療機関へ受診しよう

肩関節の筋肉痛は痛みや動きの制限がともなうので、まずは落ち着くまで休息することが大切です。筋肉痛を予防するためには、普段から運動習慣をつけて、ウォーミングアップを欠かさずに行いましょう。また筋肉痛が長期間続いているのであれば、肩の疾患を発症している可能性もあります。その場合は医療機関へ受診して、症状にあわせて適切な治療を受けてください。

 

医師からのコメント
肩関節痛の筋肉痛は、腰や首の痛みと共に非常に多くみられます。病院を受診してもはっきりとした原因がなかったり、何度も繰り返す方の場合は、普段の姿勢が原因となっている可能性があります。
特に最近はパソコンやスマホなどの使用時間が長くなり、首や肩周りの筋肉痛を訴える方が増えています。デスクワークなどで長時間同じ姿勢を保つ場合は、正しい座り方やデスクの高さを確認し、1時間に1度はストレッチや休憩を取るようにしましょう。
また痛みが悪化して、夜寝ていても痛くて起きてしまうなどの症状が出てくるようであれば、無理なストレッチや体操をすると逆に痛みが長引きやすくなることがあります。その際は、早めに病院を受診するようにしましょう。

【参考】
1)霞ヶ浦医療センター|腱板断裂(けんばんだんれつ)

2)「筋肉痛が生じている部位の運動を行ってもよいのか?」野坂 和則、坂本 啓 デサントスポーツ科学 Vol.17

3)厚生労働省|筋力・筋持久力 - e-ヘルスネット

4)「筋疲労回復にはどのような方法が最も効率的か?」石田 浩司、高石 鉄雄、宮村 実晴 デサントスポーツ科学 Vol.13

5)神戸大学|軽微な筋損傷に対するアイシングは筋損傷後の再生を促進する

6)厚生労働省|ストレッチング - e-ヘルスネット

7)農畜産業振興機構|骨格筋量の維持・増加に向けたたんぱく質摂取の重要性

8)日本整形外科学会「肩腱板断裂」

9)日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」

10)慶應義塾大学病院|変形性肩関節症

11)霞ヶ浦医療センター|インピンジメント症候群

12)慶應義塾大学病院|変形性肩関節症

13)北里大学|再生医療(PRP療法・APS療法)

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