【セルフチェック付】急な運動で起こるひざの痛みを治療する方法とは

急な運動や久しぶりのスポーツで膝を痛めてしまう人は少なくありません。放っておくと日常生活にも支障が出ることも。

この記事では、セルフチェックできるチェックリストをご紹介し、急な運動で起こる膝の痛みの原因やその治療法をわかりやすく解説します。早めの対処で痛みを軽減し、快適な生活を取り戻しましょう。

急な運動で起こる膝の痛みのセルフチェック

運動中や運動後に膝の痛みが生じる原因には、さまざまなものがあります。まずは以下の図にそって、症状をセルフチェックしましょう。

上記に当てはまらない場合は、整形外科を受診してください。

急な運動後の膝の痛み――考えられる病気とその治療法

急な運動後に生じる膝の痛みの原因となる病気とその治療法について、それぞれ詳しく解説します。

膝関節捻挫

関節に過度な力が加わって起きるケガのうち、X線検査(レントゲン検査)で診断がつかないものの総称です。診察やMRIなどで靭帯や半月板、軟骨などの損傷部位を確認して、ほかの疾患との鑑別を行います。

症状としては、患部の痛みのほか、腫れが見られます。損傷部位や損傷の程度によって、保存的治療か外科手術のどちらかを選択します1)

靭帯損傷

おもな症状は膝の痛みと可動域制限ですが、腫れが見られることもあります。受傷後3週間ほど経つと、これらの症状は徐々に軽快していきますが、損傷した靭帯によっては膝のぐらつきや不安定感が目立ってくることがあります。放置すると、新たに半月板損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性痛や水腫に発展することもあります2)

運動時に損傷しやすい靭帯は、膝前十字靭帯損傷です。サッカーやラグビー、バレーボール、バスケットボール、スキーなどでとくに損傷しやすいとされています。ギプス固定などでは治らず、受傷後1ヶ月程度で炎症は軽快しますが、靭帯は切れたままです。スポーツを継続したい場合は、靭帯再建術という手術を検討することが一般的です3)

半月板損傷(半月損傷)

半月板は膝関節のクッションの役割をはたしている三日月形の組織です。ジャンプの着地や急な方向転換など体重が膝に乗った状態で強くひねる動作、ボールを蹴る動作やその反復で損傷します。靭帯の損傷をともなうこともあります。

半月板を損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりなどの症状が現れます。ひどい場合は膝に水が溜まったり、膝を動かせなくなるロッキングが生じたりすることがあります。

まずは保存的治療が選択されますが、症状が改善しない場合は関節鏡での外科手術が検討されます4)

ジャンパー膝(大腿四頭筋腱付着部炎・膝蓋靭帯炎)

サッカーやランニングなど、ジャンプやダッシュなどの動作が多く見られるスポーツで起こる障害で、膝蓋骨のすぐ下に痛みが生じます。軽症では動作後の痛みのみですが、中等症になると活動開始時と動作後の痛み、重症になると続行困難なほどの痛みがあります。

痛みを感じたら、安静にして患部への負担を減らすことが大切です。消炎鎮痛剤や塗り薬、湿布などの処方、超音波などの物理療法が検討されることもあります。腱に断裂がある場合などは、手術も検討されます5)

ランナー膝(腸脛靭帯炎)

マラソンなどの長距離ランナーによく見られるスポーツ障害です。膝の屈伸運動の繰り返しにより、腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)と骨の間の摩擦から炎症が生じます。運動中や運動後に膝の外側に痛みが見られます6)

膝の使いすぎが原因のため、保存的治療が選択されます7)。患部をアイシングしたり、塗り薬や湿布を貼って安静にすることをおすすめします8)

鵞足炎(がそくえん)

準備運動の不足や、無理なトレーニングにより起きるスポーツ障害です6)。歩行や階段昇降時に痛みを生じます。加齢にともなう変形性膝関節症でも見られることがあります。

安静や消炎鎮痛剤の内服、外用剤での保存的治療のほか、ステロイド局所注射などで治療を進めます9)

膝離断性骨軟骨炎(ひざりだんせいこつなんこつえん)

成長期のスポーツ選手にまれに見られるスポーツ障害です。男女比は2:1で男性に多く、10代が好発年齢です。軟骨片の遊離が見られない初期では、運動後の不快感や鈍痛を生じるのみですが、進行すると痛みが強くなり、血流障害によって骨軟骨片が遊離するとひっかかり感やズレ感を覚えることがあります。

成長期では安静や膝関節への負荷の軽減などで自然治癒することが多いため、早期診断が重要です。発育期を過ぎている場合は、関節鏡下で患部に数ヶ所穴を開けて、治癒を促進させることもあります。保存的治療で改善が見られない場合や、骨軟骨片が遊離している場合は、整復固定術や遊離骨軟骨片の摘出術、モザイク手術なども検討されます10)

オスグッド病

成長期の膝蓋骨の下の骨が徐々に出っ張り、痛みを生じる病気です。ジャンプやキック動作の繰り返しにより生じます。

成長期に特徴的な一過性の病気のため、症状が見られたらスポーツや運動を控えることが大切です。大腿四頭筋のストレッチやアイスマッサージが有効で、痛みが強い場合は消炎鎮痛剤の内服や湿布の使用を検討します11)

膝蓋骨脱臼

ジャンプの着地時など、大腿四頭筋が強く収縮したときに起こりやすい外傷です。外側に脱臼することが多いものの、すぐに自然に整復されることがほとんどです。膝蓋骨や大腿骨の形など、先天的な素因が大きく影響しています。

一度膝蓋骨脱臼を起こすと、反復して脱臼を起こすことがあります。また、脱臼や整復時に、膝蓋骨や大腿骨の関節面の一部の骨折をきたすことがあります。

治療としては、脱臼の整復後に痛みや腫れに対する外固定などを行うことが一般的です。先天的素因により反復性脱臼になる可能性が高い場合には、手術治療が検討されます12)

急な運動後の膝の痛みに対する応急処置

急な運動で膝の痛みが生じた場合は、RICE法で応急処置を行いましょう。

RICE法は応急処置であり、治療ではありません。処置後は可能な限り早く整形外科を受診しましょう13)

急な運動による膝の痛みを感じたら、早めに整形外科を受診しよう

急な運動によって膝に痛みを感じたときは、無理に我慢せず、できるだけ早く整形外科を受診することが大切です。原因となる疾患によっては、早期に適切な治療を始めることで、回復を早めたり、悪化を防いだりすることができます。自己判断で放置せず、専門医の診断を受けて、安心して運動を続けられる身体づくりを心掛けましょう。

【参考】
1) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「膝関節捻挫」
2) 公益社団法人 日本整形外科学会 「整形外科シリーズ14 膝靭帯損傷」
3) 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 スポーツ損傷シリーズ 「6.膝前十字靭帯損傷」
4) 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 スポーツ損傷シリーズ 「33.半月板損傷」
5) 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 運動器疾患とスポーツ外傷・障害 vol.1 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
6) ひざ関節症クリニック 膝が急に痛くなる原因は? よくある10の原因と解決法を医師が解説
7) 日本シグマックス株式会社 ZAMST ランナー膝 別名:腸脛靱帯炎
8) 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 スポーツ損傷シリーズ 「10.膝の慢性障害」
9) 一般社団法人 日本臨床整形外科学会 膝関節 膝の病気 <加齢に伴う疾患> 鵞足炎
10) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「膝離断性骨軟骨炎」
11) 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 スポーツ損傷シリーズ 「1.オスグッド病」
12) 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 スポーツ損傷シリーズ 「12.膝蓋骨脱臼」
13) オムロン ヘルスケア株式会社 痛みwith RICE(ライス)処置とは何か?肉離れ・打撲・捻挫の応急処置

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