【整形外科医監修】ひざ痛に対する電気治療「マイクロカレント」と「TENS」の効果と治療法の違いをわかりやすく解説

膝痛に対する治療方法として、マイクロカレントやTENS(経皮的電気神経刺激療法)などの電気療法があります。どちらも皮膚のうえから電気刺激を加える方法ですが、電流の強さや刺激の感じ方、主な目的が異なります。

そのため、マイクロカレントやTENSでの治療を検討する場合、膝痛の原因や状態、使用機器、併用する治療などを踏まえて、整形外科医と相談することが大切です。

本記事では、整形外科医による監修のもと、マイクロカレントとTENSの特徴、膝痛に対して期待される効果、使用時の注意点について解説します。

この記事でわかること
✅マイクロカレントとTENSの特徴や主な目的
✅マイクロカレントやTENSで膝痛に対して期待される作用
✅症状や目的に応じた電気治療の検討方法
✅マイクロカレントとTENSを併用する際の注意点

監修整形外科医からのコメント

膝の痛みを和らげることを目指し、電気治療に興味を持つ方は多くいらっしゃいます。電気治療は手軽に受けやすい反面、「どの機器が自分に合っているのか」と悩む声もよく聞かれます。本記事で解説しているように、マイクロカレントとTENSは目的や刺激の感じ方が大きく異なります。痛みの原因が加齢による変形性膝関節症なのか、あるいはケガによる損傷なのかによっても適切な選択肢は変わります。まずはご自身の膝の状態を正しく把握することが治療の第一歩です。自己判断で機器を使用する前に、整形外科で診断を受けることをお勧めします。

この記事の監修医師:出田 聡志(整形外科医)

マイクロカレントとTENSとは?それぞれの違いを比較

膝痛の際に整形外科医から提案される電気治療として、マイクロカレントやTENSなどがあります。ここでは、それぞれの特徴や違いについて解説します。

マイクロカレントとは?

マイクロカレントは、マイクロアンペア(μA)レベルの微弱な電流を用いる電気治療です1) 2)。使用する機器や設定によって異なりますが、治療では電気刺激をほとんど感じないレベルで行われることがあります3)

マイクロカレントは、細胞の活動を促したり組織の修復に関わったりする作用について研究されています。しかし、こうした作用が実際に膝の痛みの改善にどの程度つながるのかは、まだ十分に明らかになっていません。そのため、期待できる効果は、疾患の種類や症状、電流の強さ、周波数などによって異なります。

TENSとは?

TENSは、Transcutaneous Electrical Nerve Stimulationの略称で、日本語では「経皮的電気神経刺激療法」などと呼ばれます。皮膚に電極を貼り、神経に電気刺激を加えることで、痛みの緩和を目指す治療法です。

TENSでは、神経に電気刺激を加えるため、ピリピリとした感覚を覚えることがあります。ただし、刺激の感じ方や適切な強さには個人差があるため、痛みや不快感があれば、医師や理学療法士に伝えて設定を調整してもらいましょう。

家庭用低周波治療器の中には、TENSに相当する疼痛緩和を目的とした機能を備えたものもあります。一方で、筋肉の収縮を主体とする場合もあり、すべての機器がTENSと同じとは限りません。そのため、使用前に機器の説明書から自身の希望する機能があるかを確認しましょう。

マイクロカレントとTENSの主な違い

以下の図表を通じて、マイクロカレントとTENSの違いを理解しておきましょう。

項目マイクロカレントTENS
主な位置づけ微弱な電流による生体への影響が研究されている痛みの緩和を目指す
刺激の感じ方ほとんど感じない場合があるピリピリとした刺激を感じることがある
ひざ痛への効果効果が疾患や機器によって異なり、十分に確立していない短期的に痛みが軽減される可能性がある
使用時の判断急性期に一律に適しているわけではない急性期、慢性期のいずれにも用いられる場合がある
注意点機器の適応や使用の方法に注意する植込み型医療機器や電極を貼る部位などに注意する

マイクロカレントとTENSのどちらを使用するかは、ひざ痛の原因や患部の状態によって判断が変わるため、整形外科医や理学療法士に相談しましょう。

マイクロカレントの特徴と膝痛への使用

マイクロカレントは、整形外科医院やスポーツの現場などで使用されることがある電気治療です。ここでは、マイクロカレントの特徴をはじめ、検討時の考え方や使用時に相談すべき人について紹介します。

期待される作用

人の体内に流れている生体電気と、細胞活動や組織修復との関係性について、基礎研究を含め分析、検証が進んでいます。同時に、マイクロカレントが細胞活動などに影響を及ぼす可能性も検討されています。

一方で、こうした作用からひざ痛の改善にどれほどつながるかは、現時点で十分に確立されていないのが実情です。血流や炎症、組織修復への影響についても、使用機器や刺激条件、対象疾患によって異なるとされています。

したがって、マイクロカレントは細胞活動や組織修復への影響が研究されている治療法として位置づけるのが適切です。

使用を検討する際の考え方

マイクロカレントは、以下のような場合に整形外科医から提案されることがあります。

なお、これらに該当するからといって、マイクロカレントが必ず適しているとは限りません。とくに、ケガを負った直後に強い痛み、大きな腫れがある場合、骨折や靭帯損傷、半月板損傷などが考えられるため、まずその原因を突き止めることが最優先です。

使用前に相談が必要な人

以下のような方は、使用前に整形外科医や医療機器メーカーの担当者に相談しましょう。

中でも、ペースメーカーや植込み型除細動器などの植込み型医療機器を使用している場合、自己判断で使用しないようにしましょう。機器の種類、電極を貼る部位、刺激条件によって注意点が異なるため、担当医や医療機器メーカーへの確認が不可欠です。

TENSの特徴と膝痛への使用

TENSは、主に痛みの緩和を目指した電気治療です。変形性膝関節症などの膝痛に対して使用されることがありますが、症状の原因そのものを治療する方法とは限りません。

期待される作用

TENSは、皮膚のうえから電極を貼り、神経に電気刺激を加えることで、痛みの緩和を目指します。

TENSのメカニズムのひとつとして、触覚などの刺激から脊髄レベルで痛みの伝達を調整するという「ゲートコントロール理論」が挙げられます。ただし、TENSの鎮痛作用はこの理論だけで説明できるものではなく、複数の要因が関与すると考えられています。

膝痛の中でも変形性膝関節症の場合、TENSによって短期的に痛みが軽減される可能性があります。一方、日本整形外科学会の「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」では、TENSの推奨は弱く、エビデンスの確実性にも限界があります4)

そのため、TENSの効果には個人差がある点に注意が必要です。TENSだけに頼るのではなく、運動療法や薬物療法、生活習慣の改善などと組み合わせて検討することが重要です。

TENSでは膝の変形や損傷を治療できるか

TENSは関節の変形や軟骨のすり減り、靭帯損傷を修復する治療ではありません。しかし、痛みの軽減を目的とするため、運動療法や日常生活に取り組みやすくなる場合があります。TENSを使用する場合、膝痛の原因や状態に応じた治療と並行することが大切です。

実施方法には違いがある

TENSは、使用機器やその設定によって、次のような点が変わります。

このような点から、同じTENSであってもすべての整形外科医院で同じ方法が行われるわけではありません。そのため、整形外科医と相談しながら、自身の症状に合った刺激の強度、治療時間を調整しましょう。

変形性膝関節症に対するTENSについては、短期的な痛みの軽減が期待される一方、長期的な効果に関しては十分に検証されていない状況です。

膝痛にはマイクロカレントとTENSのどちらを検討するか

マイクロカレントやTENSを検討する場合、「どちらが優れているか」ではなく、「膝痛の原因に合っているか」という視点が重要です。

症状に応じた検討方法

症状検討の考え方
ケガの直後に大きい腫れがある骨折や靭帯損傷などを疑い、整形外科を受診する
慢性的な膝痛がある原因を確認したうえで、痛みの緩和を目指した選択肢としてTENSなどを検討する
変形性膝関節症と診断されている運動療法、体重管理、薬物療法などを基本として、電気治療の追加を相談する
痛みの原因がわからない電気治療を希望するだけでなく、整形外科で診断を受ける

膝痛の原因は、変形性膝関節症だけではありません。半月板損傷、靱帯損傷、骨折、関節リウマチなど、さまざまな疾患が考えられます。その原因を突き止めたうえで、整形外科医や理学療法士と適切な治療方法を検討しましょう。

併用時の注意点とセルフケア

医療機関では、膝の状態に応じてマイクロカレントとTENSを併用する場合があります。しかし、それらを併用しても、膝痛の原因が解消するとは限りません。とくに、変形性膝関節症では、次のような治療やセルフケアが検討されます。

電気治療は、症状の軽減を目指すための手段のひとつです。痛みが続いたり悪化したりする場合は、治療方法の見直しを含め整形外科医に相談してください。

監修整形外科医からのコメント

電気治療は、痛みを和らげるための「補助的な手段」として捉えることが大切です。機器によって一時的に痛みが軽くなったとしても、関節の変形やすり減った軟骨が元どおりに戻るわけではありません。痛みが軽減したタイミングに、太ももの筋肉を鍛える運動療法や、体重管理を並行して行うことが症状改善と進行予防には不可欠です。電気治療は、あくまでリハビリテーションを円滑に進めるためのサポート役です。痛みが長引く場合や悪化する場合、かかりつけの整形外科医に遠慮することなく相談し、治療方針を見直していきましょう。

この記事の監修医師:出田 聡志(整形外科医)

マイクロカレントとTENSに関するよくある質問とその回答

ここでは、マイクロカレントとTENSに関して頻繁に届く質問に対して、整形外科医からの回答を紹介します。マイクロカレントやTENSでの治療を検討されている方は、ぜひ参考情報としてご覧ください。

Q1. マイクロカレントとTENS、膝痛にはどちらが適していますか?

A1. どちらが適しているかは、膝痛の原因、症状、治療目的などによって異なります。マイクロカレントは、細胞活動や組織修復への影響が研究されていますが、膝痛に対する効果が確立しているとは言えません。TENSは主に疼痛の緩和を目的としており、とくに変形性膝関節症では短期的な痛みの軽減が期待できる可能性がありますが、その効果には個人差があります。いずれの電気治療も自己判断で選択せず、整形外科医や理学療法士に相談しましょう。

Q2. マイクロカレントやTENSでは痛みや刺激はありますか?

A2. マイクロカレントでは、刺激をほとんど感じない場合があります。一方、TENSではピリピリとした刺激を感じることがあります。どちらの電気治療も痛みが生じる、刺激が強いといった場合、すぐに使用を中止してその旨を整形外科医や理学療法士に伝えてください。

Q3. マイクロカレントやTENSは、ペースメーカーを使用していても受けられますか?

A3. ペースメーカーや植込み型除細動器などの植込み型医療機器を使用している方は、自己判断でマイクロカレントやTENSでの電気治療を受けないようにしましょう。電気刺激が植込み型医療機器に影響する可能性があるため、整形外科医や医療機器メーカーに確認が必要です。また、マイクロカレントやTENSを使用できるかどうかは、機器の種類、電極を貼る部位、刺激条件によって異なります。

Q4. マイクロカレントやTENSは保険が適用されますか?

A4. 必ずしも保険適用になるとは限りません。保険診療として実施できるかどうかは、治療内容、使用する機器、医療機関の運用、診療報酬上の扱いなどによって異なります。自由診療として行われる場合もあるため、受診する医療機関に、保険適用の有無、自己負担額、治療内容を事前に確認することが大切です。整骨院や整体院では、施術内容や負傷原因によって保険の扱いが異なります。利用前に料金体系や保険適用の条件を確認しましょう。

Q5. マイクロカレントやTENSは効果を目指せるまでどのくらい時間がかかりますか?1回当たりの治療時間は?

A5. TENSでは、治療中または治療直後に痛みが軽減するケースがあります。一方、マイクロカレントでは、効果を感じるまでの時間に個人差があります。1回当たりの治療時間については、医療機関の方針によって異なるため、治療を受ける前に整形外科医や理学療法士に確認することをおすすめします。

まとめ

マイクロカレントとTENSは、どちらも皮膚から電気刺激を加える方法ですが、刺激の強さや治療の目的が異なります。

マイクロカレントは、細胞活動や組織修復への影響が研究されていますが、膝痛に対する効果が確立しているとは限りません。損傷した軟骨や靱帯を修復する治療と断定できないため、あくまで症状に応じて検討される補助的な方法として位置付けられています。

TENSは、主に痛みの緩和を目的とする電気治療です。変形性膝関節症では短期的な疼痛の軽減を目指せる可能性がありますが、効果には個人差があり、TENSだけで膝痛の原因を解消できるわけではありません。日本整形外科学会の診療ガイドラインでも、変形性膝関節症に対するTENSの推奨度が低いものになっています4)

膝痛の原因は、変形性膝関節症、半月板損傷、靱帯損傷、関節リウマチなどさまざまです。電気治療を検討する場合、原因や症状、既往歴、使用する機器を踏まえ、整形外科医や理学療法士に相談しましょう。また、電気治療だけに頼らず、必要に応じて運動療法、薬物療法、体重管理、生活習慣の見直しなどを組み合わせることが大切です。

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【参考】
1)電気治療(マイクロカレント、TENS)による肉離れ・打撲・捻挫への対処|痛みwith  オムロン ヘルスケア
2)世界の舞台でアスリートを支える伊藤超短波の技術! ほぼ無感のマイクロカレント(微弱電流)があなたの身体をケア|伊藤超短波
3)マイクロカレントの効果と使用例|痛みwith オムロン ヘルスケア
4)変形性膝関節症診療ガイドライン2023|日本整形外科学会

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記事監修者情報

出田 聡志 先生

2007年、自治医科大学医学部を卒業後、長崎医療センターに勤務。その後、長崎県上五島病院や長崎県対馬病院で離島医療に携わったほか、福岡大学病院整形外科や長崎県島原病院で経験を積んだうえで、2020年いでた整形外科クリニックを開院。日本DMAT隊員や長崎県難病指定医などを務め、地域医療への貢献意欲も高い。

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