【理学療法士監修】変形性膝関節症を抱えながらも旅行やお出かけを楽しみたい方向けの「季節別サポーターの選び方ガイド」

変形性膝関節症を患っている方の中には、外出に不安を感じる方もいるはずです。とくに旅行やお出かけを計画する中で、「ひざに違和感があるけれど旅行に行きたい」「ひざの痛みがあるから、長時間の外出に不安がある」というお悩みを抱えていませんか。このような方は、ひざへの負担を軽減するためにサポーターを身につけると良いでしょう。

本記事では季節別のサポーターの選び方や、計画時の不安を軽減しながら旅行を楽しむための正しい使い方に加えて、日常的にひざをケアするためのポイントを理学療法士の観点から解説します。

この記事でわかること
✅変形性膝関節症に対するサポーターの3つの基本効果
✅春夏秋冬の気候に合わせたサポーターの選び方と使い方
✅長時間にわたって着用する際のリスク(エコノミークラス症候群など)とその対策
✅サポーターに頼りきらない、ひざをケアするための運動療法の重要性

監修理学療法士からのコメント

私は整形外科クリニックで4年間、多くの変形性膝関節症の患者さまのリハビリテーションを担当し、現在も整体院でひざの痛みに悩む方々を日々サポートしています。これまでの経験から感じるのは、「痛みがあるから外出を諦める」のではなく、「適切な準備をすることで行動の選択肢を広げられる」ということです。

サポーターはひざへの負担を軽減し、安心して歩くための有効なサポートとなりますが、それを装着するだけで症状が改善するわけではありません。そのため、ひざの痛みでお悩みの方は、旅行を楽しみ続けるために自身のひざの状態に合ったサポーターを選ぶことに加え、筋力維持や柔軟性の向上、歩き方の見直しなど、日頃からのケアも欠かせません。本記事が、自身に合ったひざとの付き合い方を見つけ、安心して旅行やお出かけを楽しむきっかけになると幸いです。

この記事の監修理学療法士:中川 利右司(理学療法士)

季節を問わず旅行を楽しむために!変形性膝関節症におけるサポーターの役割

変形性膝関節症の患者さまは、サポーターを活用することでさまざまな効果を得られます。変形性膝関節症のため、旅行やお出かけを楽しめるかお悩みの方はサポーターを活用すると良いでしょう。ここでは、サポーターの基本的な役割を3つ解説します。

ひざ痛の緩和効果が期待できる

変形性膝関節症の患者さまがサポーターを活用することで、ひざ痛の緩和が期待できます。ただし、サポーターはひざ関節への過度な負担を防ぐためのものであり、完全に症状を治すためのものではない点に注意が必要です。とくに旅行では長時間にわたって立ったり歩いたりするため、この負担を軽減することがひざの痛みを誘発させないカギになるでしょう。なお、ひざに水が溜まっているなどの症状もある場合、サポーターだけに頼らず、早めに医療機関に相談することが大切です。

膝関節のぐらつきを抑えられる

旅行やお出かけの目的地に坂道や石畳、階段などが多い場合、ひざへの負担が大きくなりがちです。変形性膝関節症に加えて、大腿四頭筋など膝関節を支える筋力が低下していると、ひざがぐらつくことで軟骨のすり減りが進行し痛みも悪化してしまいます。そのため、サポーターを身につけてひざを固定すれば、旅行先や外出先で長く歩く際も膝関節のぐらつきを減らせるでしょう1)

心理的な安心感を得られる

変形性膝関節症を抱えていると、「歩いている途中にひざの痛みが出たらどうしよう」という不安から、外出そのものを躊躇しがちです。しかし、サポーターを着用することでひざが支えられている感覚を得られるため、その痛みへの不安が和らぐでしょう。立つ、座る、歩くといった運動にも心理的に前向きになると言われており2)、旅行や外出の計画に乗り出しやすくなります。

【春夏秋冬】季節で変えたいサポーターの選び方・使い方

変形性膝関節症の患者さまがサポーターを活用する場合、季節によって求める機能が変わります。それは気温や湿度の変化に伴い、血流や筋肉の緊張だけでなく、ひざの痛み具合にも影響を及ぼすためです。まずは、季節ごとに適切なサポーターや選び方を確認してみましょう。

ひざの状態の特徴おすすめのサポーター選び方のポイント
朝晩の寒暖差で血行が不安定になりやすい中厚手・メッシュ混タイプ保温性と通気性のバランス重視
蒸れによる皮膚トラブルが起きやすい薄手・接触冷感タイプ固定力を保ちながら通気孔のある素材を選ぶ
気温低下で夏の間おさまっていた痛みが再燃しやすい保温重視の中厚手タイプ坂道の多い行楽地では固定力を優先
冷えと血行不良で痛みが悪化しやすい厚手・保温タイプ室内外の温度差に対応できる着脱しやすさを重視

以下では、季節別のサポーターの選び方を詳しく解説します。

春におすすめのサポーター

春は朝晩と日中の寒暖差が大きく、血行が不安定になりやすい季節です。変形性膝関節症の患者さまは、身体の冷えから血行不良、そしてひざの痛みを起こす場合があるため、サポーターを着用して固定と保温を兼ねることで血行が促進され、痛みがやわらぐこともあります3)

一方、日中の暖かさから花見や行楽で外出機会が増える時期でもあるため、保温性と動きやすさのバランスが良い中厚手タイプが適切でしょう。厚みがありすぎないメッシュ素材なら、長時間の歩行でも蒸れを感じにくく快適に過ごせます。

夏におすすめのサポーター

夏は高温多湿の環境のため、厚手のサポートを選ぶと汗による皮膚トラブルやかゆみを誘発しかねません。そのため、通気性の高いメッシュ素材や、接触冷感機能を備えた薄手タイプを選ぶと良いでしょう。

とくに、通気性と固定力を保っている製品を利用すれば、蒸れの軽減だけでなく、痛みの軽減や関節の安定も期待できます。また、汗をかきやすい季節だからこそ速乾性のある素材を選ぶことで、こまめな着替えや皮膚疾患を避けられます。

秋におすすめのサポーター

秋は気温の低下に伴い血流が悪くなりやすいことから、夏に比べてひざの痛みが起きやすくなる季節です。そのため、保温性のあるサポーターへの切り替えが必要になります。

夏用の薄手タイプからやや厚みのある保温性を重視したタイプに切り替えることで、朝晩の冷え込みに対応できるようになり、ひざの痛みを防ぎやすくなります。また、紅葉狩りや果物狩りといった坂道の多いスポットへ出かける場合、固定力の高いタイプを選ぶと安心です。

冬におすすめのサポーター

冬は身体の冷えと血行不良からひざの痛みの悪化がもっとも懸念される季節です。厚手で保温性の高い素材をベースにマジックテープタイプを選ぶことで、温度差のある室内外で着脱がしやすくなります。

屋外の寒さから厚着になり、動きが制限されがちな季節だからこそ、ひざを圧迫しすぎないサイズのサポーターを選ぶと良いでしょう。

楽しい旅行にするためのサポーター着用時の注意点

サポーターの効果を得るためには、正しく使用することが大切です。とくに旅行やお出かけの際、長時間にわたって着用することが考えられるため、正しい使い方を把握していないと身体に負担がかかってしまうことがあります。ここでは、安全に旅行を楽しむうえで確認しておきたい、サポーターの3つの注意点を解説します。

長時間の着用でエコノミークラス症候群になってしまう

エコノミークラス症候群とは、飛行機や電車、バスでの移動中に食事や水分を十分に取らないまま同じ姿勢でいることで、足の静脈に血のかたまり(血栓)ができる病気です。その状態を放置すると、血のかたまりが血管の中を流れて肺に詰まり、肺塞栓などを誘発する恐れがあります4)

長時間、サポーターを着用する見込みがある場合、強く締めつけた状態や同じ姿勢が続くとエコノミークラス症候群になる恐れがあるため、以下のような対策を取り入れるのが有効です。

これらはJAFや保険会社から推奨されている基本的な予防行動です。長時間、サポーターを着用する際には十分注意しながら、これらの対策を実践してみてはいかがでしょうか。

正しいサイズと装着位置でないと固定されず、血流を妨げてしまう

サポーターを身につける際、立ったまま足を伸ばした状態にし、ひざの裏にサポーターを当てながら、中心の穴がひざのお皿に収まるように装着します。もし正しくつけられていないと、ひざがしっかりと固定されないだけでなく、血流を妨げてしまう恐れもあります。そのため、必ず購入前に自身のひざの周径をしっかりと測り、そのサイズに適合するものを選びましょう。

変形性膝関節症を患っている場合、身体の状態や症状によってサポーターの選び方が変わるため、独断で購入するのではなく、整形外科医に相談しながら最適なものを選ぶことが推奨されています2)。旅行前などで整形外科を受診した際に、医師から装着位置やサイズについてアドバイスを受けておくと安心です。

就寝時に外さないと血流の悪化を招いてしまう

サポーターは、日中の活動時に患部を支えたり、負担を軽減したりすることを目的として使用されるものです。そのため、就寝中まで着用する必要はないとされています。

むしろ、長時間にわたってサポーターを装着し続けると、締めつけによって血流を悪化させるリスクが高まります。自宅だけでなく宿泊先でも、就寝時のサポーター着用は原則不要とされることが一般的です。ただし、症状の程度や医療機関からの治療方針によって例外があるため、医師や医療機関から指示を受けている場合は、それに従うようにしましょう。

監修理学療法士からのコメント

サポーターは「痛みを治す道具」ではなく、「安心して動ける環境をつくる道具」です。旅行や外出の際、歩行距離をはじめ、階段や坂道の利用などでひざへの負担が増えますが、自身の症状に合ったサポーターを適切に活用することで、その負担を軽減でき、活動の幅を広げられる方も少なくありません。

一方で、サポーターだけに頼るのではなく、日常からの筋力維持や体重管理、歩き方の見直しなどをすることも大切です。ひざの状態に合わせて医師や理学療法士などの専門家へ相談し、自身に合った対策を取り入れながら、旅行やお出かけを楽しんでいただければと思います。

この記事の監修理学療法士:中川 利右司(理学療法士)

サプリメントと運動による日常的なひざのケア

サポーターはあくまで外出時の一時的な補助にすぎません。旅行を繰り返し楽しむためには、日頃からひざそのものをケアすることが大切です。ここではサプリメントによる栄養面からのサポートと、運動療法による筋力維持という2つの観点から、ひざのケア方法を紹介します。

サプリメントから軟骨成分を補給する

グルコサミンやコンドロイチンは軟骨を構成する成分として知られており、どちらも体内で自然に生成されます。これらを配合したサプリメントは広く販売されているように、ひざの健康維持を目的として利用されることがあります。

ただしその効果について、グルコサミンやコンドロイチンの単独使用、または併用による効果については多くの研究が行われているものの、一貫した結果を得られていません。専門家によるエビデンスの評価も分かれており、変形性膝関節症への有効性が確証されていないのが実情です7)

そのため、グルコサミンやコンドロイチンを摂取すれば必ず症状が改善するとは断定できません。ただし、食生活を整えたり、必要に応じてサプリメントを活用したりしながら、軟骨の健康を意識した生活習慣を続けることは、ひざのケアを考えるうえで大切なことになります。

グルコサミンやコンドロイチンなどの特徴について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

筋力維持のために運動療法に取り組む

サポーターに頼りきりの生活を続けると、かえって筋力低下を招く恐れがあります。痛みの軽減や関節機能の維持のためには、ひざを支える筋肉を鍛えることが重要です。

日本整形外科学会によって作成された「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」では、変形性膝関節症患者に対する筋力増強運動が症状緩和や機能向上に有効とされており、推奨グレードAという高いエビデンスレベルが示されています。また、大腿四頭筋を中心とした下肢の筋力トレーニングは、安静時や動作時の痛みを軽減し、関節可動域や筋力、移動能力の向上に役立つことが報告されています8)

椅子に座ったままで行う足上げ運動など、自宅で無理なく続けられるトレーニングを日課にすることが、サポーターだけに頼らないひざのケアの第一歩です。

サポーターに関するよくある質問とその回答

こちらでは、サポーターに関して多く寄せられる質問と、それに対する理学療法士からの回答をご紹介します。サポーターの選び方や着用方法に不安がある方は、参考にしてください。

Q1. 夏用の薄手サポーターでも、ひざへの固定効果はありますか?

A1. 素材が薄くても、編み方や生地の伸縮性が工夫された製品であれば、一定の固定効果が期待できます。ただし、製品によって固定力が異なるため、自身の症状やお出かけ先での活動量に合わせて選ぶことが大切です。サポーター選びが不安な場合、整形外科医に相談し、自身に適切なサポーターを提案してもらいましょう。

Q2. 旅行先で1日中歩く場合、サポーターを着けっぱなしで良いですか?

A2. 長時間にわたってサポーターを着用すること自体は問題ありません。しかし、サイズが合っていなかったり、締めつけが強すぎたりすると、違和感や皮膚トラブルの原因になるため、注意が必要です。旅行先で長時間歩く場合、適度に休憩を取ったり、足首を動かしたり、水分を補給したりしながら、身体やひざの状態を確認していくと安心です。

Q3. サポーターと圧迫感のある弾性ストッキングを併用しても大丈夫ですか?

A3. サポーターと弾性ストッキングを併用できる場合が多いですが、圧迫感が強くなったり、皮膚への負担が増えたりすることがあります。

弾性ストッキングを着用する際は、足首やふくらはぎの周径を測ったうえで、サイズと圧力が適切な製品を選ぶことが重要です。持病がある方や着用に不安がある方は、事前に医師へ相談することをおすすめします。

Q4. サポーターを着けると、かえってひざの筋肉が衰えると聞きました。それは本当ですか?

A4. サポーターを使用すること自体で筋力が低下するという明確な根拠はありません。一方で、ひざの痛みを理由に運動頻度を減らした場合、筋力が低下しやすくなります。そのため、外出時にひざに負担がかかる場面ではサポーターを着用し、並行して運動療法に取り組んで筋力を維持、強化することが大切です。サポーターの装着と筋力トレーニングの実施を両立させることが、ひざをケアすることにつながります。

Q5. サポーターのお手入れ方法や、買い替えの目安はありますか?

A5. サポーターのお手入れは基本的に手洗いが推奨されています。洗い終えたら、日陰で吊り干しすると良いでしょう。乾燥機やアイロンの使用は、生地や伸縮性を損なう原因となるため避けてください。

買い替えの目安としては、縫い目のほつれ、伸縮性の低下、面ファスナーの接着力の低下などが見られた場合が交換のサインです。旅行やお出かけの前には、フィット感や固定力が保たれているか一度確認しておきましょう。

まとめ

変形性膝関節症と診断された方でも、季節に合ったサポーターを選び、正しく使えば、旅行やお出かけを楽しめるようになります。春夏秋冬の気候に合わせた素材を選びながら、長時間の着けっぱなしや就寝中の装着を避けることで、より快適に過ごせるでしょう。

ただし、サポーターがあくまでも一時的な補助ツールであることを忘れず、筋力の維持、強化に向けた運動療法に取り組むなど日常的にひざをケアし続けることも大切です。

旅行前に、ひざの痛みやサポーター選びについて相談したい方は、お近くの整形外科をこちらから検索できます。
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【参考】

1)膝サポーターは変形性膝関節症にも効きますか?|札幌ひざ関節症クリニック
2)変形性膝関節症 膝サポーターの効果と選び方|医療法人社団康静会
3)高齢者の膝痛にサポーターは効果的?|北砂2丁目だい整形外科
4)エコノミークラス症候群の予防のために|厚生労働省
5)エコノミークラス症候群とは何ですか?|JAF
6)エコノミークラス症候群の予防法とは?|楽天保険の総合窓口
7)変形性関節症に対するグルコサミンとコンドロイチン|厚生労働省eJIM
8)変形性膝関節症の痛みと歩容の特徴|埼玉県立大学 金村尚彦

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記事監修者情報

中川 利右司 先生

2017年、神戸三宮のスポーツ整形外科病院(あんしんクリニック)に新卒入社。一般整形およびスポーツ整形、整形外科的手術の術後といった幅広いお客さまのリハビリに従事。園児から学生、ビジネスマン、アスリート、高齢者層までのべ3万人に理学療法を行った。臨床外ではバンコク解剖研修を修了、また身体に関する講演活動や全国学会での臨床研究発表も行う。2021年に株式会社GOAL-Bにて事業責任者、Mindset株式会社ではトレーナーを務める。2022年に御茶ノ水のB&Jクリニックにて非常勤理学療法士として従事したのち、渋谷にてLead off Health 整体院を開院。2023年7月に霞が関へ移転。

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