【整形外科医監修】外反母趾の受診は何科?整形外科が選択肢になる理由と整骨院・フットケアサロンとの違いを解説

「足の親指が小指のほうに向かって、『くの字』に曲がっている」「親指のつけ根が靴に当たって辛い」というお悩みがある場合、外反母趾という疾患の可能性があります。

外反母趾は成人女性に多く、約3~4人に1人の割合でみられる身近な足のトラブルです。このような症状を抱えている方は、「病院の何科を受診すれば良いか分からない」「整形外科で治療を受けたいけど、整骨院とフットケアサロンの違いは何?」と迷われることもあるのではないでしょうか。

そんな方が診断、治療を受けるべき診療科は整形外科です。本記事では、その理由を医学的な根拠とともに解説します。

この記事でわかること
✅外反母趾の診断基準と整形外科を受診すべき理由
✅整形外科と整骨院、フットケアサロンなどとの役割の違い
✅外反母趾を放置した場合のひざ、股関節、腰への悪影響
✅整形外科で受けられる保存療法と手術療法、新しい治療

監修整形外科医からのコメント

外反母趾は成人女性の3~4人に1人にみられるほど身近な症状ですが、「病院に行くほどではない」「まずは市販のインソールで様子を見よう」と自己判断される方も少なくありません。当院にも「靴に親指が当たって痛い」と来院される方が多くおり、レントゲンで確認すると、ご本人が思っていた以上に変形が進行しているケースも珍しくありません。そのまま放置すると徐々に症状が進行することが多い疾患だからこそ、外反母趾で悩まれている方は、早めに整形外科で相談してほしいと思います。

この記事の監修医師:出田 聡志(整形外科医)

外反母趾とは

外反母趾は、幅の狭い靴などを履き続けた際、親指が圧迫されて起こる足の変形疾患です。近年日本でも急速にその患者数が増加していると言われています1)。実際、1984年から2011年にかけて、外反母趾の患者数が増加傾向にあると報告されており2)、決して他人事とは言えない疾患になっています。

外反母趾の中でも代表的なのが、足の親指のつけ根の関節が変形し、親指から小指側へ「くの字」に曲がる症状です。医学的には、この曲がる角度が20度以上になった際に外反母趾と診断されます3)

この角度を正確に計測するためには、骨や関節などを専門とする整形外科への受診が必要です。そこでのレントゲン(X線)検査を通じて、客観的な診断を受けられます。外反母趾の兆候や症状が疑われる場合、足の痛みの有無にかかわらず、骨格そのものの状態を整形外科医に診てもらうことが、正しい対処を行ううえでの第一歩になります。

なぜ通院するのは整形外科で、整骨院やフットケアサロンではないのか

外反母趾でお悩みの方は、整形外科で診療を受けることが大切です。ここでは、整形外科で受けられる医学的な診断と検査、治療や、整骨院やフットケアサロンで診断、治療を受けられない理由、受診先を誤った際のリスクなどについて紹介します。

整形外科では医学的な検査、診断、治療を受けられる

整形外科では、まずレントゲン検査で足の骨格を撮影し、その写真から足の親指が小指側に曲がっている角度(外反母趾角)や、第一中足骨と第二中足骨の長軸が交わる角度(中足骨間角)を計測した結果にもとづいた診断を受けられます。整形外科医から外反母趾と診断された場合、以下のような選択肢が提示されるでしょう。

医療用インソールをはじめとする装具治療を選択した場合、変形そのものの矯正効果が大きくないものの、足の痛みを軽減する効果を期待できるとされています。重症度や進行具合に応じて治療法を組み合わせられる点も整形外科を受診するメリットです。

整骨院やフットケアサロンでは医療行為を受けられない

整骨院やフットケアサロンでは、施術やマッサージによって一時的な痛みの緩和を期待できます。しかし、整骨院が柔道整復師法にもとづいた施術所に、フットケアサロンが民間施術になるため、レントゲン検査や薬の処方、医療用装具の作製サポート、手術など医療行為を受けられるわけではありません。

整形外科と整骨院・フットケアサロンで受けられる施術の違いなどを下部の表組からご覧ください。

項目整形外科整骨院・フットケアサロン
診断受けられる受けられない
薬の処方受けられる受けられない
装具医療用インソール(装具)を作製できる市販品の提案なら受けられる
手術医療機関の設備によって、その場で手術を受けられる受けられない
アプローチ医学的根拠にもとづいた治療施術やマッサージなどによる一時的な緩和

このように、整骨院やフットケアサロンでは診断も治療も受けられないため、症状の改善を目指すのであれば、整形外科医から診療を受けられる医療機関を選択しましょう。

皮膚科や内科では骨や関節に対する診療を受けられない

外反母趾をきっかけとしたタコ(胼胝)や皮膚の炎症が発症し、皮膚科を受診する場合もあるかもしれません。しかし、皮膚科が皮膚表面のトラブルを専門とするため、その原因になっている骨格の変形自体に対する診療を受けられません。内科も同様で、骨や関節の構造的な問題について相談しても専門外のため、納得を得られる回答が期待できないでしょう。

受診先を誤ると変形が進行してしまうリスクがある

整形外科を選択せずに、整骨院やフットケアサロンで対症的なケアを続けていると、その間に足の変形が進む恐れがあります。症状が悪化してから整形外科を受診しても治療方法が限られるうえ、その効果も得られないリスクがあるのです。そのため、骨や関節の状態にもとづいた適切な診断を受けられるだけでなく、幅広い選択肢の中から治療方針を決められるためにも、外反母趾の疑いが考えられる段階で、整形外科を受診先の第一候補にしましょう。

監修整形外科医からのコメント

整形外科と整骨院やフットケアサロンとの一番の違いは、レントゲンで撮影しながら骨の角度を測定し、その数値を客観的に把握できる点にあります。当院でも外反母趾角や中足骨間角を計測したうえで、痛みの程度や日常生活での困りごと、ご自身の希望も踏まえながら、インソールや運動療法、場合によっては手術まで、いくつかの選択肢を提示し、いっしょに治療方針を決めるようにしています。まずは客観的な診断を受けることが、ご自身に合った治療への一番の近道になるはずです。

この記事の監修医師:出田 聡志(整形外科医)

外反母趾を放置すると招く、ひざや股関節の痛みの連鎖

外反母趾を放置してしまうと、ひざや股関節、腰に違和感を引き起こす原因にもなるため、その疑いがあるなら早めに整形外科で診療を受けることが肝心です。ここでは、外反母趾をそのまま放っておいた際に起こりうる事態を紹介します。

外反母趾が歩行時や身体全体のバランスを崩すきっかけになる

本来、人間は歩行時に足の親指でしっかりと地面を蹴り出すことで、身体を前方へと移動させます。しかし、外反母趾を患っている方は、この蹴り出す力が親指の変形から弱くなるため、足のアーチ構造を崩す恐れがあります。

足の健康は足底から膝関節、股関節、脊椎まで含めトータルのバランスが重要であると説明されており4)、足元の変形が身体全体のバランスを乱す原因になると言えるでしょう。

足の痛みを放置すると、ひざや股関節、腰に負担がかかりやすくなる

外反母趾で足に痛みがあると、痛みをかばいながら歩く癖がつき、ひざや股関節に負担がかかります。こうした状態が続いた場合に発症しやすくなるのが変形性膝関節症です4)

変形性膝関節症を患ってしまうと、ひざの痛みから姿勢全体を崩す可能性があり、それによって股関節の痛みも引き起こしかねません。ひざや股関節に痛みを抱えた場合、腰にも影響が波及しやすいため、結果として全身のトラブルへと連鎖していく恐れがあります。単なる外反母趾を原因とした足の痛みと軽視せず、身体全体に影響が及ぶ可能性ががあることを見据えて、早期に整形外科で診療を受けることが大切です。

早期診療で、身体や心理面、治療費の負担を抑えられやすくなる

ひざや股関節、腰にまで痛みや違和感が生じてから整形外科を受診すると、複数の箇所を同時にケアをする必要があるため、心理面や治療費の負担も大きくなりがちです。一方、外反母趾の段階で整形外科を受診し、適切な診断にもとづいてインソールの作製や運動療法の実施などを始めれば、全身へのトラブルを防ぎやすくなります。また、費用負担も最小限に抑えられるでしょう。外反母趾からの足の痛みが軽いうちに整形外科へ相談することが、将来的なひざ、股関節のトラブル予防にもつながります。

整形外科で受けられる外反母趾の基本と新しい治療法

整形外科を受診すると、医師から自身の症状やその進行度に応じてさまざまな治療の選択肢が提示されます。ここでは、整形外科で受けられる治療法について説明します。

保存療法(消炎鎮痛剤、運動療法、医療用装具)

外反母趾のレベルが軽度から中程度であれば、保存療法から取り組むのが通常です。具体的には、以下のような助言や治療を受けることになります。

医師による診断にもとづいて、これらを組み合わせた治療を受けることになるでしょう。

手術療法

保存療法を続けても痛みが改善しない場合や、変形の角度が大きく日常生活に支障をきたしている場合、手術療法を検討することになります。手術療法の魅力は、骨格そのものの変形を修正できること。変形を正すことで、長年悩んでいた靴選びの制約が緩和されたり、歩行時の痛みが軽減されたりすることが期待できます。

一方で、手術療法を受けるうえで事前に理解しておくべきこともあります。例えば、骨切り術の場合、骨がつながるまでに一定の期間を要するため、術後に松葉つえを用いたり、患部に体重をかけないようにしたりしながら日常生活を過ごす必要があります。さらに、手術の方法や症状のレベルによって回復までの期間が異なるため、事前に入院期間や職場への復帰時期について整形外科医から説明を受けておくことが大事です。

体外衝撃波療法、動注治療

一部の整形外科医院では足の痛みを和らげるために、衝撃波を用いた体外衝撃波治療や、血流に着目した動注治療の提案を受けられるケースもあります。これらの治療を希望する場合、自身が受けられるか、またその治療の効果が期待できるかについて医師から十分に説明を受けることが大切です。いずれの治療も自費診療になるため、保険診療に比べると治療費が高額になることも理解しておきましょう。

医師と相談し、治療を決める

「整形外科を受診すると、必ず手術を勧められるのではないか」と不安に思う方もいますが、基本的に保存療法から治療を始めます。手術を受けるのは、あくまで保存療法で改善が見られない場合や、足の変形が進行して日常生活に大きな支障をきたしている場合の選択肢のひとつです。

また、レントゲン検査の結果をはじめ、自身の生活スタイルや希望を交えて整形外科医と相談しながら、治療方法を決められるため、整形外科に受診したからといって一足飛びに手術を受けるわけではないと覚えておきましょう。

外反母趾に関するよくある質問とその回答

ここでは、外反母趾の受診を検討する際によく寄せられる質問と、それに対するいでた整形外科クリニックの出田聡志院長からの回答をご紹介します。外反母趾の診療で不安がある方は、こちらを参考にしてください。

Q1.  痛みはまだありませんが、親指が曲がっているだけでも整形外科を受診すべきですか?

A1. はい、外反母趾が進行性の疾患のため、痛みが出る前の段階から骨の状態を確認しておくことが大切です。早期に整形外科を受診すれば、レントゲン写真から足の変形度を計測しながら、それにもとづいたシューズ選びの指導や医療用インソースの作製などの提案も受けられます。足の痛みの有無だけを受診の判断基準にせず、足の変形に気づいた時点で整形外科医に相談するようにしましょう。

Q2.  整形外科を受診する際、靴やインソールを持参したほうが良いですか?

A2. 通勤や作業の際に履いている靴や、すでに利用しているインソールがあるなら、それらを持参すると診察がスムーズになります。靴底のすり減り具合が足への負担のかかり方を知る手がかりになるため、医師からそれにもとづいた適切な指導を受けられるでしょう。

Q3. 外反母趾の治療で、医療保険が適用されるものはありますか?

A3. 消炎鎮痛剤や運動療法といった保存療法、手術療法を受けるなら、基本的に医療保険が適用されます。一方で、医師から必要と判断されて医療用装具を作製する場合、医療保険の対象となることもあるため、その適用可否について整形外科医に確認しましょう。近年、新たな治療として選択肢のひとつになっている体外衝撃波治療や動注治療を受けるなら、自由診療になります。

Q4. 整形外科を受診すると、必ず手術を勧められますか?

A4. そうとは限りません。多くの場合、保存療法から治療を始めます。手術を検討することになるのは、保存療法で症状の改善が見られないとき、足の変形が進行して日常生活に支障をきたすときです。外反母趾の兆候が見られる際、現状をしっかりと把握するためのステップとして整形外科を受診しましょう。

Q5. 整形外科を選ぶ際、「足の外科認定医」がいるクリニックを重視すべきですか?

A5. はい、重視すべきポイントのひとつです。整形外科医の中には足からひざまでの「足の外科」を専門とする医師がおり、外反母趾の診療実績が豊富な傾向にあります。とくに重度の変形や痛みがあるなら、こうした認定表記を指標のひとつにして整形外科を選ぶことで、さまざまな治療法の提案を受けられるでしょう。

Q6. 症状が軽いうちに受診するメリットは何ですか?

A6. 軽度の段階で受診すれば、生活習慣や靴選びの改善指導だけで症状の進行を抑えられる可能性があります。足の状態に応じて整形外科医から治療が必要と判断された場合も、保存療法を行うことで症状の緩和が期待できます。重症になってから受診すると手術を検討することになり、心理的かつ金銭的な負担が大きくなるため、外反母趾の疑いがあるなら早期に整形外科を受診しましょう。

まとめ

外反母趾の患者さまは、日本の成人のおよそ30%にのぼるとされています。外反母趾の症状が見られる場合、整骨院やフットケアサロンに通院することで一時的な緩和が期待できますが、骨の変形そのものの診断、治療を受けられるわけではありません。そのため、レントゲン写真を通じて外反母趾角や中足骨間角を正確に計測でき、それにもとづいた適切な診療を受けられる整形外科に相談しましょう。

外反母趾について相談したい方は、お近くの整形外科をこちらから検索できます。
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【参考】
1)外反母趾:整形外科|上尾中央総合病院
2)外反母趾|貢川整形外科病院
3)ガイドラインに基づいた外反母趾の正しい知識と治し方|同友会メディカルニュース
4)外反母趾|所沢第一病院

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記事監修者情報

出田 聡志 先生

2007年、自治医科大学医学部を卒業後、長崎医療センターに勤務。その後、長崎県上五島病院や長崎県対馬病院で離島医療に携わったほか、福岡大学病院整形外科や長崎県島原病院で経験を積んだうえで、2020年いでた整形外科クリニックを開院。日本DMAT隊員や長崎県難病指定医などを務め、地域医療への貢献意欲も高い。

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