【理学療法士監修】突然ぎっくり腰になる原因とは?自分でできる応急処置も紹介

ぎっくり腰は、突然発生する激しい腰痛のことです。本記事ではぎっくり腰の原因と応急処置を解説します。ぎっくり腰に隠れているほかの病気についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ぎっくり腰とは?

ぎっくり腰は、正式名を「急性腰痛症」1)または「腰椎捻挫症」2)といい、ヨーロッパでは「魔女の一撃」とも呼ばれています3)

物を持ち上げようとしたときや、腰をねじったときなどに突然起きることがほとんどです。しかし、起床直後や何もしていないときに起こることもあるため、気をつけていてもぎっくり腰になってしまう可能性はあります4)

痛みを生じる原因は関節や軟骨の捻挫・損傷、腱や靭帯などの軟部組織の損傷など、さまざまです。急激に強い痛みが発生することが特徴で、まったく動けなくなってしまうことも。通常は1~2週間程度で自然に回復していきますが、別の病気が隠れているケースもある4)ので注意が必要です。

ぎっくり腰に隠れている病気

ぎっくり腰と間違えられやすい、急性の腰痛をきたす主な病気をご紹介します。

腰椎椎間板ヘルニアは、腰椎の衝撃を和らげる椎間板の内容物が押し出されたことにより生じる病気です。腰やおしりの痛みのほか、下肢のしびれや痛みが生じる5)ことがあります。

腰部脊柱管狭窄症は、腰椎部分の神経の通る部分(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることによって起きる病気です。下肢の痛みやしびれのほか、脱力、残尿感、便秘などが生じます。また、特徴的な症状として、長時間歩くことができずに「歩く」「休む」を繰り返す「間欠跛行」6)がみられます。

がんの骨転移がある場合や、骨や椎間板への感染、骨粗鬆症などで骨がもろくなっている場合は、軽い力がかかるだけで容易に骨折し、腰の痛みをきたす7)ことがあります。また、骨への感染による化膿も、腰痛を引き起こす一因4)です。

腰の骨や軟部組織以外の部分が原因で、腰痛が起きることもあります。

急性膵炎では、お腹から背中に突き抜けるような、立っていられないほどの激痛に突然襲われることがあります。吐き気や嘔吐などをともなうケースも。アルコールや脂質の多い食事の過剰摂取が原因8)といわれています。

腹部大動脈瘤は小さければ下記のような症状に留まることがほとんど9)です。

しかし、腹部大動脈瘤が破裂すると、激しい腹痛や腰痛をきたします。大量の出血からショック状態に陥ることもある10)ため、緊急性の高い病気です。

ぎっくり腰の応急処置方法

ここからは、ぎっくり腰になってしまった場合の応急処置方法をご紹介します。

安静にする

ぎっくり腰は、急激な激痛が腰に生じる病気です。動くことも立ち上がることもままならないことが多いため、痛みが強い間は安静にすることに徹しましょう。無理に動くと炎症が悪化して、痛みが長引くおそれがあります。

安静にする際も、腰に負担のかからない姿勢を心がけることが重要です。仰向けで寝る場合は、膝が直角に曲がるように膝の後ろに毛布やクッションを入れましょう。横向きで寝る場合は、痛いほうを上にして横になり、膝の間に毛布やクッションを挟んでください1)

患部を冷やす

一般的に、炎症による強い痛みが起きている場合は冷やし、慢性的な痛みは温めた方がよいとされています。しかし、ぎっくり腰の強い痛みの原因はさまざまであり、人によっては温めることで痛みが和らぐことも。患部に腫れや熱感がなければ、無理のない範囲で入浴してもかまいません。ただし、入浴中に痛みが強くなった場合は、すぐにお風呂を出ましょう1)

市販薬を使う

ぎっくり腰の痛みが強い場合は、薬局やドラッグストアで購入できる市販薬の使用も検討しましょう。消炎鎮痛剤を含む冷たい塗り薬や外用薬、そして消炎鎮痛剤の内服も効果的11)です。

ぎっくり腰の強い痛みは通常1~2週間程度で落ち着きます。痛みが改善したら、様子を見ながらできるだけ普段の生活に戻しましょう。いつまでも安静にしていると、筋肉などが衰えてしまい、ロコモティブシンドロームやほかの疾患を招く可能性があります。

もしも2週間以上痛みが続く場合や、ほかの症状がある場合などは、ぎっくり腰ではない可能性があります。すぐに医療機関を受診してください。

ぎっくり腰になってしまったらまずは安静に!

ぎっくり腰は突然の強い痛みが特徴的な病気です。痛みのある間は無理に動こうとせず、安静に努めてください。もしもほかの疾患が疑われる場合や、痛みがなかなか治まらない場合は、医療機関の受診を検討しましょう。

【理学療法士からのコメント】
ぎっくり腰は急に強い痛みが生じるため不安になってしまうことも多いですが、基本的には予後良好な疾患と言われています。近年の国内外のガイドラインでは、あまり不安にならずに通常の日常生活を継続することで回復が早まるとされており、過度の安静は逆効果とも言われています。

あくまで私の印象ですが、運動不足で腰周りや太ももの裏、お尻の筋肉が慢性的に硬くなると、動作に伴う関節の可動域が低下し、ぎっくり腰を起こしやすい原因の一つになると考えられます。そこで、お仕事の合間などに簡単に行えるストレッチを2つご紹介します。

(1)ヒップストレッチ
椅子に座った状態で片方の足を、あぐらをかくように反対の太ももの上にのせて、そのまま上体を前に倒します。10~20秒ゆっくりと深呼吸をしながらお尻の筋肉を伸ばします。

(2)ハムストリングスストレッチ
椅子に座った状態で片方の足を前に出して、膝を伸ばした形にします。そのまま上体を前に倒して、10~20秒深呼吸をしながら太ももの裏側の筋肉を伸ばします。

デスクワークや運転など同じ姿勢を続けていると、体の動きが少なくなり筋肉が固まりやすくなってしまいます。日々の生活にストレッチを取り入れてぎっくり腰の予防に努めましょう。

【参考】
1) 大正製薬 大正健康ナビ ぎっくり腰(急性腰痛症)
2) 医療応身メディカルフロンティア 突然来るぎっくり腰、もしかしたら重篤な疾患の可能性も!?原因や予防、応急処置の方法をご紹介
3) オムロン ヘルスケア vol.33 ぎっくり腰の原因と治し方、予防方法について
4) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「ぎっくり腰」
5) 公益社団法人 日本整形外科学会 整形外科シリーズ2 腰椎椎間板ヘルニア
6) 公益社団法人 日本整形外科学会 整形外科シリーズ8 腰部脊柱管狭窄症
7) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「脊椎椎体骨折」
8) 公益社団法人 日本医師会 日医ニュース 平成23年12月5日 (11)第1206号 健康ぷらざ No.353 おなかから背中が痛い ―もしかしたら膵臓の病気?―
9) 慶応義塾大学医学部外科 血管班 腹部大動脈瘤
10) 医療法人 植谷医院 腹部大動脈瘤
11) 第一三共ヘルスケア くすりと健康の情報局 腰痛の対策

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