【整形外科医監修】「ひざの痛みが消えない…」その原因、偽関節(ぎかんせつ)かも?|後遺障害認定や最新ケアまでをわかりやすく解説

転倒やケガのあとにどれだけ時間が経っても一向に膝の痛みが引かない、あるいは歩くときに骨が妙にズレるような、グラグラとした奇妙な違和感がある場合、それは「加齢による関節痛」や「打撲の後遺症」ではない可能性があります。その原因として疑われるのが、「偽関節(ぎかんせつ)」と呼ばれる病態です。

本記事では、膝痛の裏に隠された偽関節の基礎知識や放置するリスクのほか、シニア世代の膝痛と偽関節の意外な共通点、万が一の後遺障害認定や最新の治療ケアまで、わかりやすく解説します。

この記事でわかること
✅「偽関節(ぎかんせつ)」の定義と、ひざに激痛やグラつきが生じる理由
✅骨移植・プレート固定手術から先進医療「超音波(LIPUS)・体外衝撃波」までの治療法
✅偽関節が引き起こす「ロコモ」のリスク
✅交通事故などで偽関節が残った際の後遺障害等級(第7級・第8級)と認定獲得のポイント
✅骨粗鬆症がある場合の治療法やリハビリ期間など、よくある疑問に答えるQ&A

医師からのコメント

偽関節とは、骨折した骨が本来の期間を過ぎても十分につながらず、骨折部に痛みや不安定感が残る状態のことをいいます。膝周辺では、大腿骨、脛骨、膝蓋骨などの骨折後に生じることがあり、荷重時の痛み、腫れ、ぐらつき、歩きにくさとして気づかれる場合があります。単なる治りが遅い状態とは異なり、骨の自然修復が止まっているため、症状を放置していると根本的には治らない可能性もあります。痛みが長引く、変形や不安定感がある、以前より歩行が困難になったと感じる場合は、早めに整形外科を受診し、レントゲンやCTなどで状態を確認しましょう。

この記事の監修医師:眞鍋 憲正(整形外科医)

骨折が治らない「偽関節(ぎかんせつ)」とは?定義とメカニズム

本来、骨が折れたりヒビが入ったりすると、人間の身体は自然治癒力によって新しい骨(仮骨)を作り、元の強固な一本の骨へと修復していきます。しかし、何らかの要因によって骨が修復されず、6ヶ月以上経過しても骨がくっつかず、本来動かないはずの場所が関節のように動くようになってしまった状態のことを「偽関節(ぎかんせつ)」と呼びます1)。 

偽関節という名前の由来は、本来あるはずのない場所に「偽」の関節ができてしまうことにあります。

偽関節が発生すると骨と骨の隙間が、本来の関節のように線維性組織や軟骨のようなもので満たされてしまい、偽りの可動性(異常可動性)を持ってしまうのです。一本の支柱として体重を支えなければならない骨が、歩くたびにその異常な場所でしなったりズレたりするため、内部の神経を激しく刺激し、強烈な痛みや不安定感を生みます。

偽関節が起こる3つの主な原因

偽関節は、どんな骨折でも等しく起こるわけではありません。とくに以下の3つの要因が重なったときに発生リスクが跳ね上がります。

  1. 高齢(シニア世代の生理的変化): 加齢に伴い、骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きや、骨の再生能力そのものが低下します2)
  2. 骨折部位の血流不足: 骨の修復には、豊富な血液(酸素と栄養)が必要です。大腿骨のネック部分(大腿骨頸部)や脛骨の下3分の1など、もともと血管が乏しい部位の骨折は、血流不足から偽関節になりやすいことで知られています3)
  3. 初期の固定不足・過度の早期運動: 骨折した直後にギプスや手術による固定が不十分で、骨の断端同士が常に微細に動き続けてしまうと、身体は「ここはくっつけてはいけない場所だ」と判断し、修復を諦めてしまいます4)

「ただの打撲」と放置した結果、膝の激痛につながる理由

偽関節を発症するケースのなかでもとくに恐ろしいのは、シニア世代に見られる「自分が骨折していた(ヒビが入っていた)ことにすら気づかず、偽関節になるケース」です。 

気づきにくい「不全骨折(ヒビ)」

骨折というと、骨が完全にポッキリと折れて激痛で一歩も動けない状態を想像するでしょう。しかし骨折にも種類があり、骨の表面に薄く亀裂が入るだけの「不全骨折」や、骨の内部がスポンジのように潰れる「骨挫傷(こつざしょう)」なども骨折に該当します。これらを発症した場合、直後は「ひどい打撲」程度の痛みとして自覚される傾向があります5)

とくに痛みに強い方や、「これくらいで病院に行くのは大袈裟だ」と考えてしまうシニア層は、そのまま日常生活を送り、悪化してしまうケースがあります。

周辺の膝関節や筋肉への異常な負担

骨にヒビが入ったまま体重をかけ続けると、骨の亀裂が修復されるどころか、動くたびに擦れ合って隙間が広がっていきます。骨が本来の強度を失ってグラグラしているため、身体はその不安定さをカバーしようとして、周囲の膝関節や太ももの筋肉(大腿四頭筋など)を異常に緊張させます。

その結果、骨折部位そのものだけでなく、連動する膝関節の軟骨に不自然なねじれや摩擦が加わり、最終的に「膝全体の激しい痛み」や「大量の水が溜まる(関節水腫)」といった症状として自覚されるようになります。痛む場所が膝の周辺であるため、多くの患者様が「変形性膝関節症が悪化した」と勘違いし、骨の未癒合という根本原因に気づけないのです。

偽関節の放置はロコモティブシンドロームにつながる要因に

偽関節を放置すると骨のズレは大きくなり、最終的には激痛と支持性の低下(体重を支えたり、姿勢をまっすぐに保ったりする機能が低下した状態)によって自分の足で立つことすら困難になります。日常生活に支障をきたすため、シニア世代では筋肉の衰えや認知機能の低下が急速に進行し、そのまま寝たきり状態になってしまうリスクが極めて高いと言えます6)

偽関節に対する最新の治療法

「骨がくっつかない偽関節になってしまったら、一生そのままなのか」と諦める必要はありません。整形外科で受けられる治療法をご紹介します。

1. 手術療法

偽関節ができてしまった場合、まずは手術が検討されます。偽関節となっている部分の不良組織をかき出し、自分の骨(骨盤などから採取した骨)や人工骨を移植する「骨移植術」を行います。その上で、チタン製プレートや髄内釘(ずいないてい)を用いて、骨を再固定します。

しかし、偽関節になるような方は手術をしても骨折部が治癒しにくい可能性があるため、後療法として以下のような治療法がとられることがあります。

2. 超音波骨折治療法(LIPUS:ライパス)

微弱な超音波を骨折部に毎日一定時間あてることで、骨を作る細胞を刺激し、骨癒合を大幅に促進させる先進的な治療法です。非常に安全で痛みを伴わず、自宅でも治療を受けられる場合があります。難治性骨折や偽関節に対して健康保険が適用されるケースも多く、手術をせずになんとか骨をくっつけたいシニア世代にとって第一選択となる最新ケアです7)

3. 体外衝撃波療法(ESWT)

体外衝撃波療法(ESWT : Extracorporeal Shock Wave Therapy)は、もともとは尿路結石を砕くために用いられる、高出力の衝撃波を照射する治療法です。1991年に、偽関節にも有効と報告されました。衝撃波を照射することで、骨癒合を促進する作用があるとされています8)

偽関節が引き起こす「後遺障害認定」について

万が一、交通事故や労働災害、あるいは深刻な転倒事故によって偽関節となってしまい、最善の治療を尽くしても骨がくっつかなかった場合、法的に「後遺障害(後遺症)」としての認定を受けられる可能性があります。

自賠責保険における後遺障害等級

偽関節は、骨の変形や支持性の低下が著しいため、後遺障害等級表において比較的重い等級が割り当てられています9)

後遺障害認定を受けるための重要なポイント

適切な認定と補償(後遺障害慰謝料や逸失利益)を受け、将来的な治療費や生活の原資(自費診療での継続的なケアやサプリメント購入費など)を確保するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 「症状固定」の判断: 医師が「これ以上治療を続けても、骨の癒合や症状の改善が見込めない」と判断した段階(通常、事故や骨折から6ヶ月以上経過後)で症状固定となります10)
  2. 客観的な医学的証拠: レントゲン写真や、より精密な3D-CT、MRI画像によって、「骨折線の残存」や「仮骨形成の停止」が明確に証明されている必要があります1)
  3. 医師による後遺障害診断書: 整形外科の専門医に、異常可動性の有無や硬性装具の必要性について、詳細かつ正確に記入してもらうことが認定の鍵となります11)

よくある質問Q&A

整形外科の専門外来で、患者様からとくによく寄せられる偽関節の疑問についてお答えします。

Q1.ヒビ(不全骨折)でも放置すると本当に偽関節になってしまうのですか?

A.はい、完全に折れていなくても、条件が悪ければ偽関節になります。「骨がズレていないから大丈夫」と自己判断して歩き続けると、ヒビの隙間に微細な動き(マイクロモーション)が加わります。これが骨を治そうとする細胞の結合をズタズタに引き裂いてしまうため、結果として修復プロセスが停止し、骨折が治癒せず、偽関節化してしまう可能性があります。ヒビであっても、初期の適切な治療は絶対に必要です。

Q2.骨折から何ヶ月経ったら「偽関節」と診断されるのでしょうか?

A.偽関節は骨折部の修復・骨癒合過程が停止し、異常可動性を伴う状態となることを指します。通常半年を経過すると、骨癒合が停止してしまうため、6ヶ月以上のことが多いですが、それ以前にも修復が見込めなくなれば診断されることもしばしばあります。 

Q3.偽関節の治療にかかる費用は保険適用されますか?

A.通常の整形外科における診察、手術、そして特定の条件を満たした「超音波骨折治療法(LIPUS)」などには、健康保険が適用されます12)。ただし、交通事故が原因の場合は自賠責保険や任意保険の枠組みになります。また、関節の保護や機能回復を目的として、より高濃度な栄養補給(再生医療やオーダーメイドの自費サプリメントなど)を取り入れる場合は自費診療となることがあります。

Q4. 偽関節の手術をしたあと、リハビリはどのくらい必要ですか?

A.手術の規模や固定の強度、本人の状態にもよりますが、一般的には数ヶ月〜半年程度のリハビリ期間が必要です手術によって骨が金属で固定されれば、比較的早い段階から体重をかける訓練を始められます。

Q5.歳のせいで骨がもろい(骨粗鬆症)と言われていますが、それでも偽関節は治せますか?

A.十分に治せる可能性はあります。ただし、骨粗鬆症の治療を同時並行で行うことが重要です。骨がスカスカの状態だと、手術で金属を入れても固定が効きにくく、再固定が失敗するリスクがあります。そのため、偽関節の治療と同時に骨を作る力を高める骨粗鬆症の治療薬(骨形成促進薬の注射など)を導入することがあります。これにより、骨粗鬆症であっても骨の再生能力を高め、骨癒合を成功させることが可能です。

【まとめ】痛みの本当の原因を特定し、専門医と一緒に正しい一歩を

長引く膝の痛みを「歳のせい」「軟骨が減ったせい」と決めつけてしまうと、その裏に隠された偽関節という重大な病態を見落とす原因になります。もし、過去に転倒などがきっかけで、半年を過ぎても一向に痛みが引かないのであれば、それは偽関節かもしれません。

「膝の様子がおかしい」と感じたら、すぐに整形外科を受診し、レントゲンやMRI、CT検査を受けてください。専門医とともに痛みの「本当の原因」を特定し、正しい治療と日常の筋肉・軟骨ケアを始めることが重要です。まずは、お近くの優良な整形外科クリニックをこちらで検索してみてください。

【参考】

1)「舟状骨骨折」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる

2)科学技術振興機構(JST)共同発表:「骨の『形成』と『破壊』を同時にコントロール — 骨粗しょう症や骨折、関節リウマチの新たな治療法へ」

3)日本整形外科学会:症状・病気をしらべる「高齢者の大腿骨頸部骨折」

4)豪徳寺整形外科:遷延癒合・偽関節とは?骨折が治らない原因と治療法 

5)骨挫傷の原因や症状について|茨木市の大島整形外科

6)もっと知ろう!「ロコモティブシンドローム」|公益社団法人 日本整形外科学会

7)超音波骨折治療法(LIPUS) | Medeco Pro

8)骨へのESWT (関節外科 基礎と臨床 39巻9号) | 医書.jp

9)限度額と補償内容|国土交通省

10)日本損害保険協会 | SONPO | そんぽのホント

11)偽関節の異議申し立てを成功させるポイント|交通事故の後遺障害認定 - メディカルコンサルティング合同会社

12)超音波骨折治療法の保険適用(診療報酬点数・算定基準) | 日本シグマックス整形外科領域 総合情報サイト SIGMAX MEDICAL

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