【医師監修】股関節に力が入らない原因とは?検査や治療についても紹介

股関節は日常生活動作のほぼすべてに関わっている大切な関節です。股関節に力が入らないと、QOL(Quality of Life)に支障をきたし、寝たきりになってしまう恐れも。本記事では股関節に力が入らないときの原因と、検査や治療についてご紹介します。

股関節とは?

股関節は人体において最も大きな関節で、上半身の体重を支え、胴体と下半身をつないでいます。立位・座位時の姿勢の保持のほか、歩行など、多くの日常動作に深く関わっており、とても重要な関節です。

股関節は多くの靭帯や筋肉により、安定性や機能を保っています。股関節についてより詳しく知りたい方は、「股関節の仕組み」もあわせてご覧ください。

股関節に力が入らないのは女性に多い?

股関節のずれや違和感、外れるような感覚は、女性に多くみられるといわれています。その理由は、男女の骨盤の構造の差にあります。

小児期では、骨盤の形に大きな性差はありません。思春期を迎えると、女性の骨盤は男性の骨盤よりも高さが低く、幅広くなります。横から見ると、女性の骨盤では仙骨や尾骨が男性の骨盤よりも後ろに出ています。

女性の骨盤では上の腸骨・仙骨の部分、下の恥骨・坐骨の部分がともに横に開いたような形になっています。さらに女性の骨盤では、恥骨下角も男性より広い点も特徴です。この変化は妊娠・出産に適応するためといわれています1)

このように、女性は成長過程で骨盤に大きな変化を生じるため、歪みが起こりやすくなり、股関節のずれや違和感をきたしやすいと考えられているのです2)

股関節に力が入らない原因

股関節の脱力が起きる原因として、外傷以外では次のような疾患が考えられます。

ひとつずつ詳しく解説します。

変形性股関節症

変形性股関節症の主な症状は脚の付け根にあたる股関節部分の痛みですが、下半身の違和感や痺れ、股関節が外れるような感覚を訴える方もいます。悪化すると「持続痛」や「夜間痛」に悩まされるだけでなく、靴下が履きづらい、長時間立ったり歩いたりすることが辛い、など、日常生活に支障をきたします。

変形性股関節症の患者の多くは女性であり、全体のうち80%ほどは発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の後遺症や股関節の形成不全などが原因だといわれています3)

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアの場合、股関節の脱力の原因は股関節ではなく、腰椎の間にある椎間板が神経を圧迫していることにあります。通常、椎間板は椎骨と椎骨のクッションとしての役割を果たしています。しかし、外傷や加齢などによって椎間板破損すると、内部の核が椎間板の外側に飛び出して「ヘルニア」を生じ、腰部神経を圧迫して下半身の痛みやしびれ、筋力低下などさまざまな神経症状をもたらすのです。

腰椎椎間板ヘルニアのリスクとして、悪い姿勢で長時間座っていることや、腰に負担のかかる作業をすることが挙げられます4)

臼蓋形成不全

臼蓋形成不全は、股関節の寛骨臼(臼蓋)と呼ばれる骨盤のくぼみが浅く、大腿骨頭を十分に覆えていない状態を指します。患者の8割は女性で、原因として遺伝的要因や子宮内での胎位などが考えられています5)

臼蓋形成不全は主に乳児期の画像検査で診断される病気で、脱臼しない限り、日常生活に支障をきたす症状はほとんどみられません。しかし、成人の臼蓋形成不全は前述した変形性股関節症のリスクがあるため、注意が必要です6)

離断性骨軟骨炎

関節の軟骨が、骨ごと剥がれてくる病気です。膝関節や肘関節に多くみられますが、足関節や股関節に生じるケースもあります。明らかな原因はわかっていません。

病気の進行度によって、症状は異なります。関節軟骨と骨が周囲の組織と完全に分離していない初期では、違和感や脱力感が主な症状です。軟骨と骨が剥離して不安定になると、痛みや可動域制限などの症状がみられるようになります7)

鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)

スポーツやダンスなどをしている人に多くみられる病気です。体幹から股関節周辺の稼働性・安定性・協調性に問題が生じたまま、無理して活動を続けると痛みが生じます。とくに、体のバランスを崩しやすい、片脚で立ってキックをする動作の多いサッカー選手や、鼠径部や骨盤の外傷や手術歴がある人が発症しやすいといわれています8) 9)

その他全身疾患

股関節や脚に力が入らなくなる原因として、次のような全身疾患も考えられます。

そのほか、交通事故などで大きな外力を受け、硬膜外血種・脳挫傷・脊髄損傷などをきたした場合にも、股関節に力が入らないという症状が生じるケースがあります10)

股関節に力が入らないときの検査

痛みがなくとも、股関節の脱力や違和感をおぼえたら早めに医療機関へ行くことをおすすめします。

股関節は日常生活の動作に深く関わっているため、早期発見・早期治療が大切な関節です。股関節に力が入らない症状を放置していると、いつの間にか脱力感や違和感が痛みに変わってしまうことも。最悪の場合、人工股関節置換術などの手術が必要になってしまうケースもあります2)

股関節に力が入らないときに、医療機関で行われる主な検査は次の通りです。

エコー検査(超音波検査)は、筋肉や靭帯の損傷を診るための検査です2)

レントゲンとCTは骨を診るための画像診断です。CTではレントゲンよりも立体的に骨の形を把握できるため、診断だけでなく、手術前後の評価にも用いられます。

MRIは筋肉や靭帯、腱などの軟部組織を診るための画像検査です。レントゲンやCTではわからない部分を可視化して、より詳細に病態を把握できます11)

そのほか、場合によっては医師が実際に患者の体を動かして行う徒手検査を行うこともあります。

股関節に力が入らないときの治療

ここからは、股関節の脱力や違和感をきたしやすい変形性股関節症の治療方法について、詳しく解説します。

薬物療法

保存的治療のひとつです。変形性股関節症により、痛みが生じている場合は鎮痛剤を処方されます。また、軟骨の損傷がみられる場合は、鎮痛剤とともにヒアルロン酸を関節内に注射する治療法が選択されるケースもあります2)

運動療法・リハビリテーション

保存的治療のひとつです。痛みがあると動かなくなり、股関節や下肢の筋肉が衰えてしまうため、慎重に疼痛コントロールを行いながら開始します。平泳ぎを除く水泳や、水中でのウォーキングを週2~3回ほど行うのが理想とされています。

過体重の場合は、運動療法とあわせてダイエットのための生活指導が行われる場合もあります3)

手術療法

保存的治療で症状の改善が見られない場合は、手術が検討されます。初期段階の変形性股関節症では内反骨切り術や外板骨切り術が、股関節の変形が進んでいる場合は人工股関節置換術が選択される3) ケースが一般的ですが、施設によりできる手術が限られることもあるため、まずは主治医に相談してみてください。

再生療法

股関節の骨や軟骨、周囲の組織の損傷に対して、脂肪肝細胞治療という再生治療も選択できます。また痛みの緩和や早期の治癒を目的に、PRP療法やPFC-FD療法という再生医療を受けられる場合もあります2)

再生医療は自己由来の細胞を使用するため、免疫の拒絶反応が起こりにくい点がメリットとされています。しかし、保険適用外のため、全額自己負担となり、治療費は高額になります。また、症例数が少なく、どんなリスクがあるかわからない点まで踏まえて慎重に検討する必要があります。

股関節に力が入らないときは早めに整形外科へ!

股関節や下肢に力が入らない場合や、脱力感・違和感をおぼえた場合は、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。脱力感や違和感が痛みに変わると、日常生活に支障をきたしてしまいます。症状の進行度によっては、人工股関節置換術などの大がかりな手術が必要になってしまうこともあります。

また、脱力感の原因が股関節にあるとは限りません。早急な治療を要する全身疾患が原因であるケースもあるため、股関節に力が入らないと感じたらすぐに専門の医師の診察を受けましょう!

医師コメント
ここで紹介させていただいた病気は、力が入りづらいだけでなく、痛みを伴うことが一般的です。
全く痛みを伴わずに、股関節や脚に力が入らなくなった場合は、その他全身疾患で紹介している脳や脊髄が原因となることが多いです。
診断や根本的な治療が難しい病気であることもありますが、治療により進行を抑えることできるだけ早めに病院を受診した方がいいでしょう。なぜならば力が入らない症状が進行すると、改善が難しくなることが多いからです。
何科を受診すればいいかわからないこともあると思いますが、まず神経内科の受診をお勧めします。ただ近くに神経内科がない場合は、脳外科や整形外科をまず受診して、必要であれば専門の科を受診するのでもいいでしょう。
「少し力が入りづらくても、痛みがなくてそれほど困らないから」と放置をするのが一番危険です。もし股関節に力が入らないと思った場合は、すぐ病院を受診してください。

【参考】
1) WACOAL BODY BOOK 教えてドクター 美尻の土台「骨盤」を検証!
2) イノルト整形外科 痛みと骨粗鬆症クリニック 股関節が外れるような感覚やずれる原因は?|直し方や治療法を解説
3) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「変形性股関節症」
4) イノルト整形外科 脚全体の代表的な疾患・治療法
5) 社会福祉法人 恩賜財団 済生会 臼蓋形成不全
6) 公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「臼蓋形成不全」
7) 松田病院 膝・下肢 離断性骨軟骨炎
8) 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 スポーツ損傷シリーズ 11.鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)
9) オクノクリニック 慢性痛治療の専門医による痛みと身体のQ&A グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)
10) Doctors File 足に力が入らないの原因と考えられる病気一覧
11) 堀内整形外科 股関節の痛み

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