【理学療法士監修】シンスプリントとは?症状やすねの内側が腫れる原因、治療方法を解説

運動時にすねの内側が腫れている場合、シンスプリントを疑う必要があります。シンスプリントは運動を良くする方に起こりやすい疾患で、足の痛みをはじめとした症状が現れます。これらの症状の悪化を防ぐためにも、早期からの治療が重要です。

この記事では、シンスプリントの具体的な症状や治療法をご紹介します。早期から対処することで、症状を悪化させずにスムーズな回復につながるでしょう。

シンスプリントとは?

シンスプリントとは、すねの内側に痛みが生じるスポーツ障害の1種です。スポーツをする方に良くみられ、とくに中学生や高校生などの成長期の学生に発症する傾向にあります1)

シンスプリントは、テニスやバスケットボールなどの球技をはじめとした、さまざまなスポーツで発症します。一度発症すると、適切な対処をしないと長期間にわたって症状が続く可能性があるため、早期の対処が重要です。

シンスプリントの段階による症状

シンスプリントを発症すると、どのような症状が現れるのでしょうか。ここでは、発症後の段階に応じた症状を解説します。

【初期】運動時の痛みや腫れが中心

シンスプリントの初期症状では、運動時にふくらはぎの広い部分で痛みが現れます1)。この段階では安静にすれば痛みが落ち着くため、多くの方が深刻な問題ではないと判断し、軽視しがちです。

そのため、「少し痛いけれど我慢できる」と思って練習を続けてしまう方も少なくありません。痛みが軽いからといって無理を続けると、次第に症状が悪化し、治療に時間がかかるおそれがあります。

【進行期】安静時にも痛みが出現

シンスプリントが進行すると、安静時にも痛みが現れるようになり、日常生活にも支障をきたしやすくなります2)。この時期になると、練習や試合への参加が難しくなるおそれがあるでしょう。

安静時にも痛みが出るようになったら、シンスプリントが進行している証拠なので、早めの対処が必要です。シンスプリントかもしれないと感じたら、早めに整形外科のある医療機関に受診し、診察を受けることが重要です。

シンスプリントの痛みや腫れが悪化する場合は疲労骨折の可能性も

シンスプリントの痛みや腫れが悪化している場合、疲労骨折を発症している可能性があります。疲労骨折は、骨に小さな負荷が繰り返しかかることで発生する骨折です。

特定の場所に強い痛みがある場合や、安静時でも持続的な痛みがある方は、疲労骨折の可能性を疑う必要があります1)。シンスプリントか疲労骨折かを見分けるためには、早期に医療機関を受診して適切な検査を受けることが大切です。

シンスプリントの5つの発症原因

シンスプリントのおもな発症原因として、以下の5つがあげられます。

  1. 運動のしすぎや運動内容の変化
  2. 下半身の筋力や柔軟性の低下
  3. 扁平足(へんぺいそく)によるもの
  4. 運動環境によるもの
  5. 自分に合わない靴の使用

ここでは、それぞれの原因について解説します。

1. 運動のしすぎや運動内容の変化

1つ目は、運動のしすぎや運動内容の変化によるものです1)。これまでの運動量を大幅に上回るトレーニングを急に始めると、負荷が大きくなって炎症を起こしやすくなります。

新しいスポーツを始める方や、急にハードなメニューをこなそうとする方も同様のリスクが高まります。とくに初心者や運動を久しぶりに再開した方は無理をしやすいため、注意が必要です。

2. 下半身の筋力や柔軟性の低下

2つ目は、下半身の筋力や柔軟性の低下によるものです1)。筋力が低下していると関節が不安定となり、柔軟性が不足することで筋肉に過度なストレスがかかりやすくなります。

このような状態で運動を続けると、すねの筋肉に負荷がかかってシンスプリントの発症につながります。筋力や柔軟性の低下を防ぐためには、日頃からストレッチや筋力トレーニングを行うことが重要です。

3. 扁平足(へんぺいそく)によるもの

3つ目は、扁平足によるものです。扁平足とは、土踏まず(足のアーチ)が低くなっている状態のことです。土踏まずのアーチは、足からの衝撃を吸収し、体重を効率的に分散させる役割があります3)

しかし、扁平足の方はこのアーチ機能が働かないため、衝撃をうまく分散できず、足の筋肉に負荷がかかりやすくなります。その状態で運動を続けると、やがてシンスプリントへとつながるのです4)

4. 運動環境によるもの

4つ目は、運動環境によるものです1)。コンクリートやアスファルトなどの硬い路面での練習は、着地時の衝撃が足部から下腿部に伝わりやすくなります。でこぼこした不整地や下り坂での練習も、足部の不安定性が高まり、バランスを保とうとして筋肉の過剰な働きを引き起こします。

このような運動環境でストレスが継続的にかかると、シンスプリントの発症につながるのです。

5. 自分に合わない靴の使用

5つ目は、自分に合わない靴の使用です1)。靴のクッション性が低いと、足部への衝撃の吸収が不十分となり、その負担がすねの筋肉に伝わりやすくなります。

自分に合わない靴を使い続けることで、すね周辺の組織に慢性的なストレスがかかり、炎症による腫れや痛みが生じやすくなります。

シンスプリントを発症したときの治療

シンスプリントを発症した際は、どのような治療が行われるのでしょうか。ここでは、具体的な治療法を解説します。

安静・アイシング

シンスプリントの発症後は、まず安静とアイシングによる対応が重要です1)。安静にすることで患部へ負担を軽減し、炎症の悪化を防止します。運動を習慣的に行っている方は、腫れや痛みをおさえるために一時的に中止、または練習量を減らしましょう。

患部へのアイシングは、炎症による腫れや痛みをやわらげる効果が期待できます。氷やアイスパックを使用し、直接肌に当てずにタオルで包んで患部を冷やします。

下半身の筋肉のストレッチ

ふくらはぎの筋肉が硬くなると、脛骨(けいこつ:すねの骨)が引っ張られて炎症が起こりやすくなるため、ストレッチで柔軟性を高めます。ふくらはぎのストレッチ方法は、以下のとおりです1)

【ふくらはぎの筋肉のストレッチ方法】

  1. 壁や手すりの前に立つ
  2. 壁や手すりに手をつき、片方の脚をうしろに引く
  3. 重心を前方に移動させて、うしろに引いた脚のふくらはぎを伸ばす
  4. 20秒ほどキープする
  5. 反対の脚で行う

ふくらはぎの痛みが落ち着いたタイミングで、ストレッチを実施してみましょう。

下半身の筋力トレーニング

ストレッチとあわせて、下半身の筋力トレーニングも行います1)。足の筋力をつけることで運動時の負荷に耐えられるようになり、シンスプリントの症状悪化の防止につながります。下半身のトレーニングでおすすめの内容は、以下のとおりです。

痛みが落ち着いてからトレーニングを開始し、無理のない範囲で継続することが重要です。

インソールの使用

必要に応じてインソールの使用も検討します1)。インソールによって足部のアーチをサポートすることで、シンスプリントによる腫れや痛みをやわらげ、再発防止にも役立ちます。

とくに扁平足がある方はアーチが崩れている状態なので、インソールの使用がおすすめです。自分の足の形や症状に適したインソールを選び、安静やストレッチなどのほかの治療法と組み合わせることで、より効果的な改善が期待できるでしょう。

再生医療

シンスプリントの腫れや痛みに対する新しい治療として、再生医療が注目されています。再生医療とは、人が本来備わっている再生力を活用した治療法です。

代表的な再生医療として、「PRP療法」があげられます。PRP療法とは、自身の血液から「血小板(けっしょうばん)」と言う、組織の修復を促す成分を濃縮し、患部に注入する治療法です5)。再生医療は副作用を発症しにくく、身体への負担が少ないメリットがあります。

再生医療についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:再生医療 | ひざ関節の痛み解消ナビ

シンスプリントの再発予防のポイント

シンスプリントの治療後は、再発を防ぐための工夫を取り入れることが大切です。ここでは、再発予防のポイントについて解説します。

運動量を調節する

シンスプリントによる腫れを予防するには、運動量を適切に調節することが重要です1)。急に運動量を増やしたり、負荷の強いトレーニングを続けたりすると、足にストレスがかかって再発につながります。

運動を再開する際は、まずは軽い負荷から始めて、痛みや腫れが出ない範囲で少しずつ強度を上げていきましょう。練習と休息のバランスも考慮し、休む日をしっかりと設けることも大切です。

ストレッチ・筋力トレーニングを継続する

シンスプリントによる腫れを防ぐためには、治療後もストレッチと筋力トレーニングを継続しましょう。症状が改善したあとにケアを怠ると、筋肉の柔軟性や筋力が低下し、再び痛みが現れるリスクが高まります。

運動前後はストレッチを行いつつ、合間に無理のない範囲で筋力トレーニングを行うことが大切です。

自分に合った靴を使用する

シンスプリントによる腫れを予防するには、自分の足に適した靴を選びましょう。自分に合わない靴を使用すると、足部に余計な負荷がかかり、シンスプリントの再発につながります。

適切な靴選びのポイントとしては、まず足のサイズに合ったものを選び、靴底に十分な厚みとクッション性があることを確認してみてください。また、扁平足がある方は土踏まずをサポートするインソールを併用すると良いでしょう。

足の痛みや腫れが続く場合はシンスプリントを疑おう

シンスプリントは、すねの内側部分の腫れや痛みなどを生じる疾患で、運動を良くする若い方に起こりやすいです。シンスプリントを放置すると症状が悪化し、場合によっては疲労骨折につながるおそれもあります。この疾患を治療・予防するためには、痛みが強い時期は安静にしつつ、ストレッチや筋力トレーニングの継続が重要です。足の痛みや腫れが続く場合は整形外科のある医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

【参考】
1)日本スポーツ整形外科学会|15.シンスプリント
2)Mass General Brigham|Prevent and Treat Shin Splints
3)「足部内側縦アーチの違いが歩行周期,歩行中の足圧中心軌跡に与える影響」増川 武利、井上 茂樹ら, 理学療法科学 33(2)327–330, 2018
4)筑波大学 陸上競技研究室|シンスプリントの要因と処置・予防法の検討
5)北里大学|再生医療

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