医師・専門家インタビュー

ひざを専門領域とする院長の選択。再生医療に、滑膜由来の幹細胞を

磐田 振一郎

保存療法では症状が改善しない中で、手術以外の治療を希望される方は少なくありません。そのような患者さまに向き合う中で、自由診療の再生医療も始めるようになったのがリソークリニックの磐田振一郎院長です。磐田先生の診療方針をはじめ、滑膜由来の幹細胞を用いた再生医療や、手術と再生医療を融合させた治療法などについて話を伺った。

診断画像ではなく、患者さまの声に着目するクリニック

――「リソークリニック」は、とても耳に残るクリニック名ですね。その由来についてお教えください。

「リソー」は、私が大切にしている4つのコンセプトの頭文字を並べた際の「RISO」に由来しています。

「R」は「Responsibility(レスポンシビリティ)」を示し、日々の診療に責任を持つことを意味します。「I」は「Interaction(インタラクション)」で、患者さまやほかの医療機関との相互関係を大切にするということです。「S」は「Solution(ソリューション)」で、患者さまのお悩みを解決するための最良な方法を提案すること。そして「O」は「Origin(オリジン)」で、幹細胞を用いた再生医療を先導する存在でありたいという願いを込めています。

――磐田先生の診療方針は何でしょうか?

ひと言で言うと、「徹底した患者さま目線」です。画像診断を通じて「どこが壊れているか」という損傷部分を見極めることは重要ですが、それ以上に患者さま一人ひとりの「訴え」にこそ耳を傾けたいと考えています。

例えば、診断画像上ではそれほど大きな異常が見られなくても、患者さまが痛みを感じて悩まれているのであれば、必ず何かしらの解決策を提示するのが私のスタンスです。仮に当クリニックの知識や技術だけで不十分な場合には、他院だけでなくペインクリニックや鍼灸治療院などをご紹介することもあります。患者さまの症状を改善させることが第一優先であり、そのための治療を当クリニックで行わなければならない理由はまったくないからです。どこの医療機関であろうと、患者さまが快方に向かうことがもっとも大切だと考えています。

――クリニックには、どのような疾患の患者さまがとくに来院しているのでしょうか?

「変形性膝関節症」や「半月板損傷」で悩む患者さまが、群を抜いて多くいらっしゃいます。私がこれまで膝関節に特化して診療を続けてきたことと、「膝専門クリニック」として掲げていることが、それらの疾患を抱える方々からご相談をいただける要因のひとつだと捉えています。

半月板損傷の患者さまは、スポーツ中に受傷する10〜20代の方だけでなく、日常生活の中で発症する40代以上の方も少なくありません。40代以上の方は加齢にともない、半月板の内部に少しずつ亀裂が生じることがあります。日常生活の何気ない動作によって、その亀裂が表面に到達するほど広がってしまうことで発症するのです。

再生医療では、科学的根拠にもとづいて滑膜由来の幹細胞を採用

――再生医療を始められたのはいつからでしょうか? また、その経緯についてもお教えください。

2017年、当クリニックの開院と同時に、再生医療をスタートしました。

導入のきっかけは、過去に勤務していたクリニックで大勢の患者さまから「手術以外の治療方法はないですか?」という切実な声があがっていたことです。その想いに応えるべく解決策を模索した結果、再生医療という選択肢に辿り着きました。

そこで、当クリニックを開院する前、実際にその治療を実践している医師のもとで働きながら、実務を通じて知識や技術を身につけたうえで、当クリニックで再生医療を行うようにしました。

――クリニックでは、滑膜由来の幹細胞を用いた再生医療を行っています。その理由は何でしょうか?

もっとも大きな理由は、東京医科歯科大学(現 東京科学大学)で行われた研究によって、滑膜由来の幹細胞が半月板の再生に有用である可能性が報告されていたからです。

その研究では、人間の身体にある複数の幹細胞を用いて人工軟骨の形成を比較するための実験を行った結果、滑膜由来の幹細胞がとくに大きな軟骨を形成したと報告されています。この報告にもとづいて、私は再生医療において滑膜由来の幹細胞を用いるのが有望な選択肢になると考え、採用を決めました。

――クリニックには幹細胞の培養施設を併設しています。それによって、患者さまにどのようなメリットがありますか?

大きなメリットは、患者さまの治療費を抑えられることです。外部の企業に幹細胞の培養を委託しないことで中間コストを低減でき、患者さまが再生医療を選択しやすい治療費になっていると自負しています。

また、培養スケジュールを柔軟に調整できる点もメリットです。院内に培養施設があることで、患者さまの治療日から逆算して、幹細胞の培養計画を立てやすくなります。

フレッシュな幹細胞と治療効果の相関性については、現時点で十分な科学的根拠があるわけではありませんが、医師として良好な状態の幹細胞を用いることを重視し、この体制にしています。

――再生医療を行ったあと、患者さまに勧めていることは何でしょうか?

変形性膝関節症の患者さまに幹細胞を投与した場合、1ヶ月程度、膝に過度な負荷をかけないようにお伝えしています。幹細胞にストレスを与えないようにすることで、患者さまの身体への定着が期待できると考えているからです。

実は再生医療を始めた当初、国内外の臨床研究にならって幹細胞を投与してから1ヶ月程度、患者さまに車いすを利用していただくほどの安静を勧めていました。しかし、まったく足を動かさない生活を1ヶ月間続けると、いざ立つ、歩くという動作を再開した際に、膝をはじめとした足のさまざまな箇所に痛みを感じる方が少なくありませんでした。そうした経験から、今は最低限の日常動作を許容するようにしています。

――クリニックで再生医療を受けるために、遠方から来院される患者さまもいますか?

はい、長野県や静岡県、さらには大阪府など、遠方からお越しになる患者さまもいらっしゃいます。

これは、当クリニックが開院当初からInstagramやFacebookなどのSNSを通じて、私たちの想いを発信し続けてきたことが、良いご縁につながっているのだと感じています。実際に、患者さまからも「SNSで見て受診しました」とよく言ってもらえます。このようなSNSでのPR効果もあってか、再生医療を行った患者さまの年齢比率が40~50代中心というのも、当院の特徴と言えるでしょう。

半月板損傷に対して、手術と再生医療を融合させた治療を実施

――クリニックでは、手術も行っていますね。

はい。ただし、当クリニック内には手術室を設けていません。そのため、手術が必要と判断した場合、当クリニックが提携する東京都の下北沢病院や、群馬県の石井病院にお越しいただくようお願いしています。もちろん、私が直接現地に向かい、責任を持って執刀します。

――手術にはデメリットもあるのでしょうか?

はい、デメリットもあります。ひとつは、術後に痛みを感じるケースがあることです。それは身体にメスを入れた箇所だけに限りません。残念ながら、私たち医師でさえ手術後の痛みの理由が分からないケースもあります。そのような場合、患者さまからの訴えに寄り添って適切なサポートをします。

もうひとつは、手術をしてもすぐに良くなるというわけでなく、症状の改善までに時間を要することです。術後は、当然リハビリテーションに取り組むことになるため、患者さまご自身の「治したい」という強い気持ちが症状の改善を目指すうえで大切になります。

――再生医療と関節鏡手術を融合させた治療も行っていますね。こちらについて詳しくお教えください。

主に、半月板損傷に対する治療法です。この方法は、東京医科歯科大学(現 東京科学大学)が滑膜由来の幹細胞を用いて、半月板の治癒促進や再生の可能性を検討する研究を参考に開始しました。

通常の手術では、半月板の割れた部分を糸で縫い合わせますが、組織の性質からなかなか癒合しにくいという課題がありました。そこで、手術から10日前後の時間を空けて培養した幹細胞を投与することで、半月板組織の癒合を目指します。これまでに、当クリニックでは20名以上の患者さまに対して、この融合治療を行いました。

――最後に、関節痛でお悩みの方に向けてメッセージをお願いします。

同じ動きをした際に同じ箇所が痛むという状態が2週間ほど続いたら、医療機関を受診することをおすすめします。とくにMRIを完備する医療機関であれば、画像診断を通じて痛みの原因を正確に突き止められるはずです。

また、同じクリニックで2ヶ月ほど治療を受けても症状に改善の余地が見られない場合は、ほかの医師から意見を聞くこともひとつの手段です。「今の先生に悪いから」と気を遣う必要はありません。ご自身の症状を早期に改善するためにも、ぜひセカンドオピニオンを検討してみてください。

インタビューした医師・専門家

磐田 振一郎 先生

1996年、慶應義塾大学医学部を卒業。足利赤十字病院、小田原市立病院、日野市立病院などの同大学関連病院での勤務のほか、スタンフォード大学工学部への留学経験もある。2009年にNPO法人腰痛・膝痛チーム医療研究所を設立。2017年よりリソークリニックの院長を務める。

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