2009年、日本医科大学医学部を卒業後、東京都済生会中央病院にて初期臨床医研修医として勤務。その後、日本医科大学付属病院整形外科・リウマチ外科、日本医科大学多摩永山病院、日本医科大学千葉北総病院などを経て、2021年に小石川整形外科を開院。専門領域は膝関節と股関節で、これらの疾患に対する手術経験も豊富。患者さまの治療の選択肢を増やすべく、先進医療の導入に努める。
医師・専門家インタビュー
再生医療、ラジオ波治療――。先進医療の力で、地域住民の健康を支える

近年、整形外科では再生医療やラジオ波治療といった新たな治療法が確立されている。小石川整形外科では、こうした先進医療が地域住民の健康を支える力になると考え、積極的に導入。同院の丸山剛院長に、運動療法を重視して開業された理由をはじめ、再生医療やラジオ波治療についてお話を伺った。
東京都文京区小石川で運動療法を当たり前の選択肢にする

――丸山先生が医師を志した理由は何ですか?
整形外科医の父を尊敬していたことが理由です。幼い頃、父と街を歩いていたときに、患者さまから「腰が良くなりました」など感謝の声を掛けられる場面によく遭遇しました。それを見て、父が地域の方たちの役に立っていることを肌で感じ、私も同じ道を歩みたいと考えるようになったのです。
――東京都文京区小石川に開業した背景についてお教えください。
私の兄も整形外科医のため、父のクリニックを継ぐ必要はありませんでした。そうした中で、文京区小石川に着目したのは、母校の日本医科大学が近くにあり、学生時代から10年以上も住み続けていたので、とても馴染みがある地域だったからです。
開業前、小石川にある整形外科クリニックを調べたところ、リハビリテーションで超音波治療器や牽引装置といった機械を用いた「物理療法」を行うクリニックはあるものの、理学療法士がマンツーマンで指導する「運動療法」を行うクリニックが少ないことに気づきます。
私はそれまでの診療経験から、リハビリテーションで原因治療を行うためには運動療法が不可欠だと考えていました。この地域の医療に貢献したいという思いも強かったことから、ご縁のあった医療モールに運動療法を重視した整形外科クリニックを開業しました。
――小石川整形外科には、とくにどのような症状の患者さまが来院されますか? また、その患者さまに対して、どのような治療を行っていますか?
もっとも多いのは腰痛を抱える患者さまです。これは、あらゆる規模のオフィスが集中するこの地域ならではかもしれません。そのほか、膝や股関節の痛み、肩こりといった症状を持つ患者さまも多く来院されます。
腰痛の中でもとくに多い疾患が、「筋・筋膜性腰痛」です。その患者さまからお話を伺うと、デスクワークを中心とした仕事スタイルで、日常生活では運動やストレッチをできていないという方が大半を占めます。そのため、身体の柔軟性に加えて筋肉の低下も重なって、腰痛を引き起こしていると判断できます。
このような患者さまに対しては、まず痛みの軽減を目指してコルセットや痛み止めの注射といった対処治療を行います。その後、患者さまの痛みが引いた段階で原因治療を実施。なぜ痛みが出たのかという原因を突き止めて、それを改善するために生活習慣や姿勢の見直しのほか、運動とストレッチの習慣化を指導します。患者さまの状況に合わせて、リハビリテーションのために通院を呼び掛けるケースもありますね。
再生医療は手術を回避するための選択肢になる
――小石川整形外科では再生医療を行っています。患者さまにとってその再生医療はどのようなメリットがあると考えていますか?
再生医療の最大のメリットは、組織の修復を促し、症状の進行を抑えられることです。これによって、患者さまは手術という選択肢を先延ばしにできたり、回避できたりする可能性があると考えています。
関節痛の患者さまに対して、リハビリテーションやヒアルロン酸といった保存療法で症状が変わらない場合、手術を提案することがありますが、「どうしても手術を受けたくない」という方が一定数います。そんな方たちの希望を叶えられる治療が、再生医療と言えるでしょう。
――再生医療の開始以来、どれくらいの治療実績がありますか? また、その中でとくに治療実績が多い疾患は何でしょうか?
当院では、2021年の開業から間もなく再生医療をスタートし、それから現時点(2026年2月)までの治療実績は約900例になります。この中で、とくに治療実績が多い疾患は「変形性膝関節症」です。ほかにも、変形性股関節症や肩の腱板損傷、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)といった疾患の治療実績があります。
これまでの変形性膝関節症の治療実績から実感しているのは、初期症状であれば再生医療に有効性が見られる一方、その重症度が高くなるほど症状の変化が見られない傾向が高いということです。こうした結果を踏まえて、当院は重症度が高い患者さまに対して、近隣の大学病院や総合病院を紹介しながら、手術を提案することもあります。
――重度の変形性膝関節症に対する手術では、患者さまにどのような影響がありますか?
たとえば、人工関節置換術で用いる人工関節には耐久年数があることから、通常15~20年程度でそれを入れ替えるための再手術が必要になります。加えて、患者さまの状態によって、手術後に激しい運動や動作を制限することも少なくありません。
また、大学病院やその関連病院で変形性膝関節症の手術を担当していた際、術後に痛みが残る患者さまも目にしてきました。そのため、手術は最終手段でありつつも、必ず痛みが消える治療ではないと考えています。
このような点を踏まえて、患者さまが手術を検討される場合、メリットはもちろん、デメリットもお伝えしながら慎重に判断するように促すことを心掛けています。


変形性膝関節症の患者さまにはラジオ波治療も提案
――小石川整形外科で行っているラジオ波治療についてお教えください。
ラジオ波治療とは、膝周りにある「感覚神経」の中でも、痛みを感じる3箇所に約60℃の熱を2分30秒ほど当てることで、それらの神経から伝達される痛みを遮断する治療法です。ラジオ波治療を題材とした論文の中には、膝の痛みに前向きな変化があった方が大勢いたというデータもあります。そのほか、ラジオ波治療の効果が長期間にわたって継続した事例もありました。
2023年4月より、ラジオ波治療は保険診療で行えるようになり、変形性膝関節症に対する新しい治療法として注目されています。両膝の治療を行っても1時間程度で完了するため、患者さまへの負担が少ないのが特徴です。膝の外部から熱を当てるだけのため、合併症のリスクも低くなります。これらの利点から変形性膝関節症の患者さまに提案すべき治療と判断して、当院では2025年10月からラジオ波治療を始めています。
――ラジオ波治療に対して、患者さまの関心度はいかがでしょうか?
とても高いですね。実際、1ヶ月半後までラジオ波治療の予約が埋まっている状況にも表れています。加えて、関東ではラジオ波治療を行っているクリニックが限られることもあり、東京都の多摩地域や千葉県といった遠方から来院される患者さまもいらっしゃいます。
――ラジオ波治療を行った患者さまには、どのような結果が見られていますか?
当院での治療実績はまだ十分ではありませんが、「歩く際に杖がいらなくなった」という方がいました。一方で、「痛みの度合いが変わっていない」という方も少なくありません。そういう意味では、個人差が大きい治療であると感じています。
――ラジオ波治療と再生医療を並行して行う患者さまもいるのでしょうか?
はい、そのような患者さまもいますね。再生医療の目的は、組織を修復したり、症状の進行を抑えたりすることです。一方、ラジオ波治療は痛みをとることを目指しています。これらの治療法の目的が異なる中で、長期的な効果を見据えるのであれば、両方の治療を並行して行うことは得策と言えます。
――最後に、関節痛にお悩みの方へメッセージをお願いします。
関節痛の緩和や、改善を目指して再生医療を検討する方は、注射を打つだけでは十分に効果を得られないことを理解していただきたいです。この治療によって組織が修復されても、その周囲にある筋肉が衰えたままであれば、再発する恐れがあります。こうした事態を避けるためにも、再生医療と運動療法をセットで受けられるクリニックを選ぶようにしていただければと思います。
インタビューした医師・専門家


