【医師監修】オスグッド病とは?症状や原因、再発予防のためのセルフケアを解説

スポーツ外傷で代表的なオスグッド病では、どのような症状が現れるのか知りたい方はいませんか? オスグッド病は成長期に発症しやすく、膝の痛みや炎症などの症状が現れます。オスグッド病の症状を改善するためには、早めの治療が重要です。

この記事では、オスグッド病の症状や原因、治療方法をご紹介します。発症後の適切な対応をおさえておくことで、早期の回復や再発予防につながるでしょう。

オスグッド病とは?

オスグッド病は、成長期の子どもに多くみられる膝の障害です。正式には「オスグッド・シュラッター病」と呼ばれ、膝蓋骨(膝のお皿の骨)の下あたりに痛みや腫れが生じます。オスグッド病は頻繁にスポーツをしている方に発症しやすいのが特徴です。そのため、部活動で熱心に練習している中学生や高校生によくみられます1)

オスグッド病は適切な対応をすれば改善しますが、放置すると症状が長引くこともあります。成長期に膝の痛みを感じたら早めの対処が大切です。

オスグッド病のおもな症状

オスグッド病を発症すると、どのような症状が現れるのでしょうか。ここでは、おもな症状について解説します。

骨の剥離による膝の隆起

オスグッド病の症状の1つとしてあげられるのが、膝の骨の剥離による隆起です。膝蓋骨の下にある骨が盛り上がり、これは「脛骨粗面(けいこつそめん)」と言う部分で軟骨が剥離することで生じます1)

太もも前面には「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」と呼ばれる筋肉があり、これが膝のお皿の骨を介して脛骨粗面につながっているのです。筋肉によって繰り返し引っ張られて、脛骨粗面の一部が剥がれることで、隆起が引き起こされます2)

膝の痛み・炎症

オスグッド病で多くみられる症状は、膝蓋骨の下あたりに生じる痛みと炎症です。これは先ほど解説した、脛骨の剥離にともなって発症するもので、とくに膝を曲げる動作や、ジャンプの着地時に痛みを感じやすい傾向にあります。

症状は人によって異なりますが、軽度の場合は運動後に違和感を覚える程度です。しかし、重度になると歩くだけでも痛みを感じ、階段の上り下りが困難になることもあるでしょう3)。炎症を放置すると慢性化し、運動を休んでも痛みが続くようになることも珍しくありません。

オスグッド病の原因

オスグッド病は、どのような原因で発症するのでしょうか。ここでは、おもな原因について解説します。

骨の急な成長による骨格のアンバランス化

オスグッド病の原因の1つは、成長期における骨の急激な成長と、それにともなう骨格のアンバランス化です。成長期の子どもは、短期間で急激に身長が伸びることがあり、骨に対して筋肉や腱の成長が追いつかない場合があります。

骨が急激に成長すると、大腿四頭筋が引き伸ばされた状態になるため、脛骨粗面が引っ張られやすくなるのです。その状態で膝に繰り返し負荷をかけると、やがてオスグッド病の発症につながります4)

運動による繰り返しの負荷

オスグッド病のもう1つの代表的な原因が、運動による膝への繰り返しの負荷です。バスケットボールやバレーボールのようなジャンプ動作が多いスポーツでは、着地のたびに大腿四頭筋が強く収縮します。

これらの動作を頻繁に繰り返すことで、脛骨粗面へのストレスが蓄積され、やがてオスグッド病の発症につながるのです2)。成長期の子どもは部活動やクラブで毎日のように練習を行うことも多いため、膝への負荷がかかりやすい傾向にあります。

オスグッド病を放置するとどうなる?

オスグッド病をそのままにすると、症状が慢性化して日常生活やスポーツ活動に大きな支障をきたす可能性があります。痛みを我慢してスポーツを続けると、さらに炎症が進行し、骨の一部が大きく剥離する場合もあります。このような状態になると痛みが強くなり、治療がさらに困難になるでしょう4)

成長期が終わっても、脛骨の隆起や痛みが残ることがあり、将来的にスポーツ活動に制限が生じる可能性もあります3)。膝に痛みを感じたら早めに整形外科のある医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

オスグッド病の診断方法

オスグッド病の診断では、まず脛骨粗面の隆起や、指で押して痛みがあるかを確認します。さらに、患部の腫れ具合や赤みなども同時にチェックします。

レントゲン検査では、脛骨の変化や剥離の有無を確認可能です。オスグッド病を発症している場合、脛骨に特徴的な骨の隆起や分離した骨のかけらが確認できます。場合によっては、より詳細な診断のためにMRI検査を行うこともあります4)。このような段階的な診断によってオスグッド病を判定し、適切な治療方針を決めるのです。

オスグッド病の発症時の治療方法

オスグッド病を発症した際は、どのような治療が行われるのでしょうか。ここでは、具体的な治療方法について解説します。

安静・患部のアイシング

痛みが強い時期は、まず安静にして患部をアイシングすることが重要です1)。この時期に運動を続けると症状が悪化するだけでなく、痛みをかばって反対側の足のケガにつながるおそれがあります。痛みを感じた時点で速やかに運動を中止し、患部の安静を心掛けましょう。

アイシングを行う際は、ビニール袋に氷を入れ、タオルで包んで患部に当てます。患部を冷やすことで炎症がおさえられ、痛みの軽減につながります。

膝まわりのストレッチ

痛みが落ち着いたら、膝まわりのストレッチで筋肉の柔軟性の改善を図りましょう。大腿四頭筋の柔軟性が低下すると、脛骨を引っ張る力が強くなり、炎症や痛みの原因となります。さらに、足首の柔軟性が低下していると、着地時の衝撃を膝で受けやすくなり、症状の悪化につながります。

具体的なストレッチのやり方は以下のとおりです1,2)

【大腿四頭筋のストレッチ】

  1. イスや手すりなどの支えがある場所の近くに立つ
  2. イスや手すりを支えにしながら片手で片方の足首を持ち、膝を曲げる
  3. 膝をできるだけ曲げた状態を20秒ほどキープする
  4. 反対の足で行う

【ふくらはぎの筋肉のストレッチ】

  1. 壁の前に立つ
  2. 両手を壁につけながら、片方の足をうしろに引く
  3. 壁に寄りかかりつつ、引いた側の膝を伸ばす
  4. 引いた側のふくらはぎを伸ばした状態を20秒ほどキープする
  5. 反対の足で行う

サポーター・テーピングによる固定

必要に応じて、サポーターやテーピングによって膝を固定させます。サポーターやテーピングによって膝蓋骨の周囲を固定することで、脛骨にかかる負荷の集中の軽減が期待できます1)

ただし、この方法は対症療法であり、あくまで固定によって痛みをおさえるための方法です。サポーターやテーピングによる患部の固定だけでなく、安静やストレッチなどの治療と併用することが重要です。

再生医療

オスグッド病の治療において、近年注目されているのが再生医療による治療法です。再生医療とは、人が本来持っている自然治癒力を活用して、損傷した組織の修復を促進する治療法です。

代表的な再生医療の治療として、患部に濃縮した「血小板(けっしょうばん)」を注射する「PRP(多血小板血漿)療法」があげられます5)。血小板は血液内にある成分で、組織の修復を促進する働きがあるとされています。

ただし、再生医療はまだ発展途上の治療法であり、すべての患者に効果があるわけではありません6)。医師と十分に相談し、従来の治療法と比較検討したうえで選択することが大切です。

再生医療について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。

関連記事:再生医療 | ひざ関節の痛み解消ナビ

オスグッド病を予防するためのセルフケア

オスグッド病の再発を予防するためには、治療後にどのようなセルフケアが必要なのでしょうか。ここでは、具体的なセルフケア方法をご紹介します。

運動前後にストレッチをする

オスグッド病を再発させないために、運動前後にストレッチをしましょう。運動前のストレッチは筋肉の柔軟性を高め、膝にかかる負担を分散させる効果が期待できます2)

ストレッチの内容は前述したように、大腿四頭筋やふくらはぎの筋肉を中心に行いましょう。運動後のストレッチは疲労した筋肉の緊張をやわらげ、血流改善によって回復の促進につながります。

下半身や体幹の筋力を強化する

ストレッチだけでなく、下半身や体幹の筋力トレーニングも行いましょう。下半身の筋肉を鍛えることで膝にかかる負担を軽減し、オスグッド病の発症リスクの低下につながります7)

体幹の筋肉はバランス能力に関わっており、運動時にかかる膝の衝撃を効率よく分散しやすくなります8)。スクワットや腹筋運動など、簡単なトレーニングでよいので無理のない範囲で継続的に行うことが大切です。

運動量を調節する

運動量を調節することも重要です。オスグッド病を治療したあと、すぐに激しい運動を繰り返すと再発につながります。痛みや状態にあわせて段階的に運動をすれば、膝の負担をおさえられるでしょう。

痛みが出た際は無理に運動を続けず、安静を優先しましょう。練習メニューの見直しや休息日の確保を心掛け、適切な運動量で活動することが長期的な再発予防につながります。

オスグッド病の症状が現れたら早期からの治療を

オスグッド病は、成長期の骨格のアンバランス化や運動による負荷が原因で発症する疾患です。オスグッドを放置すると、症状が悪化して治療が遅れる恐れがあるため、早期からの対応が重要です。オスグッドの治療では安静やストレッチなどが中心で、その後の再発予防も心掛ける必要があります。膝の痛みや隆起などの症状が現れたら、迷わずに整形外科のある医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

【医師からのコメント】
最近では、小学生や中学生でも野球やサッカーなどのクラブチームに所属し、ほぼ毎日練習を行うなど、スポーツを始める年齢が低年齢化しています。とくに日本では、一年を通じて同じスポーツを続けることが一般的であり、そのため成長期におけるスポーツの負荷が原因となる「オスグッド病」が増加傾向にあります。

オスグッド病は多くの場合、保存療法で回復する病気ですが、痛みによってスポーツ活動に支障が出る場合、成長期の子どもでは骨穿孔術(ドリリング)、骨の成長が終了した後であれば骨切除術など、手術が必要になるケースもあります。もちろん、子ども本人や保護者の病気に対する理解、日頃のストレッチやトレーニングなどによる身体のメンテナンスも重要です。しかし、スポーツ指導者の理解や、日々の指導方法への配慮も欠かせない要素であることは言うまでもありません。

【参考】
1)島根県|オスグッド秒の原因とその予防
2)日本スポーツ整形外科学会|1.オスグッド病
3)日本臨床整形外科学会|オスグッド病
4)新潟労災病院|成長期の膝痛-Osgood-Schlatter病(オスグッド病)
5)北里大学|再生医療
6)東京女子医科大学|関節再生医療|人工関節
7)「Osgood-Schlatter 病の病態と治療 発症から復帰までの現状と今後の課題」塩田 真史, 日本アスレティックトレーニング学会誌, 第4巻 第1号 29-34(2018)
8)「体幹と理学療法」藤本 鎮也、吉田 一也ら, 理学療法 臨床・研究・教育, 20:7-14 2013

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