【理学療法士監修】ひざがポキポキ鳴るのはなぜ？原因となる病気や対処法もご紹介

膝の曲げ伸ばしをしたときに「ポキッ」「ゴリッ」などの音がしたことはありませんか？　膝に限らず、どの関節でも動かすたびにポキポキと音が鳴る可能性はあります。ただし、音が鳴るからといって、必ずしも関節に異常があるわけではありません。

痛みがない場合や、意図的に繰り返し鳴らしていなければ、過度に心配する必要はないでしょう。しかし、ポキポキ音が続く場合や痛みをともなう場合は、早めの受診が必要です。この記事では、膝がポキポキ鳴る原因を詳しく解説し、セルフケアの方法や医療機関を受診する目安についてご紹介します。

膝のポキポキ音のおもな原因

膝を曲げたり伸ばしたりしたときに鳴る音の原因は、さまざまです。痛みがなければ心配のいらないケースもありますが、音の種類や頻度、随伴する症状によっては病気のサインであることも。

ここからは、膝関節から音が出るおもな原因を3つに分けてご紹介します。

キャビテーション

膝に限らず、関節音の代表的な原因として知られているのが「キャビテーション」と呼ばれる現象です。

関節を構成する骨同士の間には「関節包（かんせつほう）」という袋状の組織があり、その内部は滑液と呼ばれる液体で満たされています。関節を動かした際に生じる圧力差でできた小さな気泡がはじけることで、「ポキッ」と音が鳴る¹⁾ケースがあります 。

痛みや炎症をともなわない生理的な音であるため、心配する必要はありません。ただし、日常的に音が鳴る場合は変形性膝関節症のリスクが高いというデータもあります²⁾。高頻度で膝の音が鳴る場合は、整形外科の受診をおすすめします。

靭帯や腱、骨・軟骨などの摩擦や引っかかり

膝関節を動かしたときに、靭帯や腱などの軟部組織が周囲の骨や軟骨、そのほかの組織に引っかかったり、こすれたりすると、「コキッ」「パキッ」「グリッ」といった音が出る³⁾ことがあります。また、膝のクッションの役割を果たす半月板や関節包の位置によっても音が鳴る⁴⁾ケースがあります。骨と軟骨とがこすれ合って「ググッ」という「握雪音（あくせつおん）」³⁾がすることも。これらの音についても、軽い一瞬の痛みのみであれば、とくに心配する必要はありません。

ただし、鋭い痛みを感じたり、違和感が続いたりしている場合は、炎症が起きている可能性があります。整形外科の受診をご検討ください。

関節の病変

関節音のほかに、痛みや腫れ、可動域の制限がある場合は、関節内部に病変が生じている可能性があります。

とくに、40代以降の方で、膝から以下のような音がする場合は注意が必要です^{5) 6)}。

• ポキポキ
• ゴリゴリ
• ジャリジャリ
• ミシミシ
• ギシギシ
• ゴリゴリ
• ガリガリ

上記のような音がする場合には、変形性膝関節症が疑われます。なかには、関節音に加えて膝関節に違和感やきしむような感じをおぼえるケールもあるでしょう。

変形性膝関節症は進行性の病気であるため、早期の診断・治療を検討することをおすすめします。

痛みをともなう膝のポキポキ音には要注意

関節音のほかに「歩くと痛い」「曲げ伸ばしがつらい」といった症状をともなう場合は、関節に炎症などが生じている可能性があるため、注意が必要です。ここからは、膝関節の音と痛みが同時に出現するケースで疑われるおもな疾患をご紹介します。

変形性膝関節症

加齢や膝への過剰な負担などが原因で、関節軟骨がすり減り、膝関節の変形をきたす疾患⁷⁾です。

半月板損傷

半月板とは、大腿骨と脛骨の間にある軟骨で膝関節を保護し、外傷などから守る枠割があります。

靭帯損傷

膝関節を構成する靭帯は、以下の4つです。

• 内側側副靭帯
• 外側側副靭帯
• 前十字靭帯
• 後十字靭帯

上記4つの中でもっとも損傷頻度の高い靭帯は、内側側副靭帯です。膝の外側から強い衝撃が加わることで起き、交通事故やサッカーなどのコンタクトスポーツでよく見られます。損傷の部位や程度によっても異なりますが、痛みや腫れのほか、関節の不安定感などをきたします。

「グキッ」という音とともに膝に激痛が走った場合は、RICE処置^10）をしたうえで速やかに医療機関を受診しましょう¹¹⁾。

膝がポキポキ鳴るときのセルフケア

膝のポキポキ音が気になる場合は、セルフケアを取り入れてみましょう。ここからは、自宅で取り組める簡単な対策法や、日常生活で意識すべきポイントをご紹介します。

適度な運動

ウォーキングや水泳など、膝への負担が少ない運動を積極的に取り入れましょう。運動前後のストレッチや、軽めのスクワットなどの筋トレも有効です。膝まわりの筋肉を鍛えることで、関節の安定性が高まり、音が鳴りにくくなります⁷⁾。

体重管理

体重が増加すると、膝関節にはその数倍もの負荷がかかるといわれています。階段昇降などの動作時にはさらに負担がかかるため、膝の健康を保つためには体重管理が不可欠⁵⁾です。

過度な食事制限や激しい運動によるダイエットはなかなか続けられないもの。栄養バランスの良い食事と、日常的な活動量の増加を意識して、継続可能な体重管理を心掛けましょう。

補助具の活用

関節音だけでなく、膝の安定性に不安があるなら、サポーターなどの膝用の装具を活用することも検討してみましょう。とくに長時間の歩行や階段の昇降、スポーツ時など、負荷がかかりやすいタイミングでの使用が有効です。 補助具はご自身の膝の状態や使用シーンに合わせて選びましょう。サポーターをご検討の方は、次の記事も合わせてご覧ください。

>>ひざサポーターの選び方は？着用の注意点・おすすめブランド3選

膝がポキポキ鳴るときの受診目安

膝の関節音とともに、以下のような症状¹²⁾が生じている場合は早めに整形外科を受診しましょう。

• 鋭い痛み・激痛がある
• 痛みが続いている
• 腫れている
• 熱感がある
• 高頻度で関節音が鳴る
• 膝の曲げ伸ばしがつらい
• 歩行が困難である

膝の症状が原因で日常生活に支障をきたしている場合や、膝の違和感が続く場合なども、なるべく早めに整形外科を受診してください。

膝のポキポキ音が気になるときは早めの受診を

膝の関節音は、日常的に誰にでも起こりうる生理的な現象である場合が多く、ほかの症状をともなわなければ過度に心配する必要はありません。しかし、関節音以外に痛みや腫れ、可動域制限、膝の不安定感といった症状がある場合は、変形性膝関節症などの膝関節の病気が疑われます。気になる症状がある場合は、放置せず、整形外科専門医に相談しましょう。

【理学療法士からのコメント】
膝の「ポキポキ音」は、患者様からの相談でも非常に多いもののひとつです。特に中高年の方では「関節の寿命がきたのでは？」と心配されるケースもあります。しかし、痛みや腫れといった炎症の症状が伴っていなければ、関節内部の気泡が弾ける生理的な音（キャビテーション）であることが多く、心配はいりません。

反対に、「音＋痛み」や「違和感が続く」といった症状がある場合は、変形性膝関節症や半月板損傷などの可能性もあり、早期の受診が重要です。理学療法士としては、膝関節周囲の筋力低下や体重増加が関節への負荷を増やすリスクだと実感しており、日々の運動習慣や体重管理を患者様にお伝えしています。

音が気になる方も、まずは予防的な運動を生活に取り入れることが、将来の膝トラブルの予防にもつながります。

【参考】
1) 大宮ひざ関節症クリニック 膝が鳴るのはなぜ？
2) 「Subjective Crepitus as a Risk Factor for Incident Symptomatic Knee Osteoarthritis: Data From the Osteoarthritis Initiative」 Grace H Lo, Michael T Strayhorn, Jeffrey B Driban, Lori Lyn Price, Charles B Eaton, Timothy E Mcalindon Arthritis Care Res 2018 Jan;70(1):53-60.
3) 谷川整形外科クリニック Q&A よくあるご質問 関節がポキポキ鳴るけど大丈夫？
4) 井尻整形外科 本当に役立つ豆知識 関節は、なぜポキポキ鳴るのですか？
5) オムロン ヘルスケア株式会社 はじめよう！ヘルシーライフ vol.197 膝がポキポキ鳴る！　変形性膝関節症の始まりかも？
6) ひざ関節症クリニック しゃがんで膝からポキポキ音が鳴る原因は？見逃せない変形性膝関節症の兆候
7) シンセルクリニック 膝がポキポキ鳴る！原因から対策まで整形外科医が徹底解説！
8) やす整形外科クリニック 膝がぽきぽきと音が鳴るメカニズムと可能性のある疾患
9) シンセルクリニック 半月板損傷とは？原因から最新治療まで整形外科医が解説
10) オムロン ヘルスケア株式会社 痛みwith RICE（ライス）処置とは何か？肉離れ・打撲・捻挫の応急処置
11) シンセルクリニック 靭帯損傷を早く治す方法とは！医師が徹底解説！
12) 東京神田整形外科クリニック 膝の痛みとパキッと音には要注意！原因と受診の目安とは？