【医師監修】半月板損傷とは?半月板の役割や治療法、予防法もあわせて紹介

半月板は膝関節の中にある軟骨組織で、関節の位置の安定や衝撃の吸収などの役割を担っています。本記事では、半月板の役割を紹介し、半月板損傷の病態と治療法、予防法まで詳しく解説します。

半月板とは?

半月板は、膝関節内の大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)の間、内側と外側に1つずつ存在する三日月形の板状の軟骨組織です1)

歩行中に膝関節にかかる負荷は体重のおよそ2倍といわれており2)、半月板はこの負荷を分散させる役割を担っています。そのほかに、膝関節の位置の安定1)や、衝撃の吸収3)などの働きもあります。

半月板損傷とは?

膝関節において重要な役割を果たす半月板ですが、日常生活やスポーツなどで負荷がかかるとダメージを受け、「半月板損傷」と呼ばれる状態になってしまいます。半月板損傷の病態について詳しく解説します。

半月板損傷の原因

半月板損傷の原因は、スポーツなどの怪我による外傷性、加齢による非外傷性、先天性の3つに分けられます。それぞれの原因について紹介します。

外傷性

ジャンプの着地時や方向転換など、体重がかかった状態で膝を強くひねる動作や、キックなど急激に膝を伸ばす動作、またはその繰り返しにより、半月板がダメージを受けてしまいます4)。バスケットボールやサッカー、ラグビーなどの激しいスポーツでの半月板損傷報告が多く挙がっています。

半月板損傷と同時に、膝の安定化に重要な前十字靭帯や内側側副靭帯を損傷するケースも。なかでも「不幸の3徴候」と呼ばれる内側半月板・前十字靭帯・内側側副靭帯の同時損傷は、競技復帰までに年単位の治療期間が必要であり、選手生命を脅かす怪我として知られています1)

加齢(非外傷性)

年を重ねるにつれ、半月板の水分量は減少していきます。弾力性を失った半月板は、衝撃を吸収するクッションとしての役割を十分に果たせません。そのため、高齢者ではささいな怪我や、立ち上がり時などの日常生活の動作で半月板を損傷してしまうこともあります5)。この場合の半月板損傷は、「変性断裂」とも呼ばれます6)

先天性

生まれつき半月板に異常があり、ダメージを受けやすくなっているケースも。通常、半月板は三日月形をしていますが、先天性異常では丸く、分厚くなっています。この「円板状半月板」はほとんどの場合、外側半月板に見られます。

大きな外傷はなくとも半月板や関節軟骨を損傷しやすい状態であり、多くの小児の半月板損傷は円板状半月板が原因といわれています7)

半月板損傷の症状

半月板損傷では、次のような症状が見られます4)6)8)

半月板損傷にともなう膝関節内の炎症により膝に水がたまったり、出血により血液が溜まったりすることもあります6)

また、普段は痛みがなくとも、運動をすると痛みが出たり、運動後に膝関節が腫れたりという症状が見られることもあります1)

半月板損傷の検査・診断

医療機関では、問診や徒手検査、画像検査、関節鏡検査による診断が行われます。

問診では膝を痛めたきっかけや、症状の程度や経過などをうかがいます9)。そのほか、膝の痛みや引っかかりなどの症状が出るタイミングも確認します10)

徒手検査とは、医師が患者さまの体に直接触れて行う検査です。半月板損傷の徒手検査では、マックマレーテスト・アプレー牽引テスト・アプレー圧迫テストなどが行われます11)。痛みの有無を確認するため、疼痛誘発検査と呼ばれることも。また、膝関節内に水や血液が溜まっていないかなどを視診・触診する場合もあります10)

半月板損傷の疑いがある場合、画像診断はMRIになります。レントゲンは骨折などの診断には役立ちますが、軟骨組織である半月板は写らないのです。ただし、MRIで判定できる半月板損傷は全体の8~9割程度ともいわれており10)、確定診断には関節鏡検査が用いられます9)

半月板損傷の治療法

半月板損傷の治療法としては、保存療法と手術療法、そして再生療法が挙げられます。以前は傷ついた半月板を切除する手術が一般的でしたが、術後に関節軟骨が傷み、膝関節の変形などの二次障害が起きうることから、現在は温存を目的とした保存療法が第一選択される傾向にあります6)

半月板は血流の乏しい組織であり、損傷の自然治癒はあまり期待できません。しかしながら、半月板には体重の分散や膝関節の安定など、重要な役割があります。半月板損傷後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ;生活の質)を低下させないためにも、適切な治療の選択が重要です1)

半月板損傷の治療法について、それぞれ詳しく解説します。

保存療法

半月板損傷の治療では、まず保存療法が検討されます。安静にするほか、抗炎症薬などの薬物療法、運動療法(リハビリテーション)などを行います3)。ヒアルロン酸の関節内注射や足底板(インソール)療法が検討されるケースもあります6)

手術療法

保存療法をしても症状が改善しない場合や、半月板の断裂部位の幅が1cmを超える場合などは手術療法が検討されます3)

手術療法には、半月板の損傷した部分を取り除く「切除術」と、損傷した部分を縫い合わせる「縫合術」の2種類があり、どちらも通常は関節鏡下で行われます6)。関節鏡ならば基本的に1cm程度の小さな切開2つのみで手術を行えるため、比較的低侵襲といえるでしょう12)

切除術の場合は軟骨損傷が、縫合術の場合は再断裂のおそれがあるため、術後のリハビリテーションはとても重要です。リハビリテーションの内容や開始時期は損傷部位や手術方法などにより異なりますが、縫合術後は3~4週間程度、松葉杖の使用や装具による固定を行うのが一般的です。なお、断裂の形や範囲にもよりますが、スポーツ復帰までにかかる期間は切除術では約3か月、縫合術では約6か月といわれています3)

再生療法

近年、半月板損傷の治療法として注目を集めている再生療法。自己由来幹細胞による治療法で、半月板の温存・修復・再生を目指すものです。

また、半月板損傷による痛みや炎症を抑える再生療法として、PRP(多血小板血漿)療法もあります。患者さま自身の血液から血小板と成長因子を多く含む部分だけを分離し、患部へ注射する治療法です。ただし、PRP療法は幹細胞を含まないため、半月板の再生や修復は期待できません。

半月板損傷に対する再生療法は、いずれ保険適用外となるため、全額自費負担となります。しかし、患者さまご自身由来の細胞や血液を使うため、副作用が少なく、侵襲性も低いことからメリットの大きい治療法といえます13)

今日からできる!半月板損傷の予防法

半月板損傷は、膝に加わった外力が原因となるケースがほとんどです。膝にかかる負担を軽減できるよう、日ごろから足首や股関節など、下肢全体を柔軟にしておくことが半月板損傷の予防につながります14)

下肢全体を柔らかく保てるよう、ストレッチや筋力トレーニング、バランストレーニングなどを行いましょう15)。また、膝まわりの筋力強化には軽いウォーキングなども有用です。ただし、痛みがある場合は無理せず、患部に負担をかけないよう安静にしてください14)

半月板の役割を知って、怪我の予防に努めよう

半月板は体重や衝撃の分散、関節の位置の安定などの役割を果たす重要な組織です。しかし、加齢とともにそのクッション性は失われ、ささいなダメージでも損傷や断裂の原因に。日ごろから下肢全体の柔軟性や筋力の強化に努め、半月板損傷を予防しましょう。もしも膝関節の引っかかりやロッキングなどの症状が現れた場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。

【参考】

  1. 医療法人全医会 伊藤整形・内科 あいちスポーツ・人工関節クリニック 半月板損傷とは

https://www.itojoint.jp/meniscus_injury/

2) グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社 ボルタレン ひざの痛みについて

https://www.voltaren-ex.jp/pain-treatments/knee-pain/

3) ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカル カンパニー 病気と治療の知識 膝の痛みは、どのように治す?~Case2. 半月板損傷

https://www.jnj.co.jp/jjmkk/general/meniscus

4) 一般社団法人 日本スポーツ整形外科学会 スポーツ損傷シリーズ 33.半月板損傷

https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s33.pdf

5) ひざ関節症クリニック ひざ(膝)の痛みについて 半月板損傷

https://www.knee-joint.net/pain/tear-of-meniscus/

6) 順天堂大学医学部附属順天堂医院 整形外科・スポーツ診療科 膝半月板損傷

https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/seikei/disease/disease14.html

7) かわもと整形外科クリニック 円板状半月板https://kawamotoseikei.jp/%E5%86%86%E6%9D%BF%E7%8A%B6%E5%8D%8A%E6%9C%88%E6%9D%BF

8) からさわ整形外科クリニック 症状のご相談(半月板損傷の原因・治療)

https://www.karasawa.gr.jp/case/hangetsuban/

9) 川崎市 川崎市立川崎病院 半月板損傷について

https://www.city.kawasaki.jp/32/cmsfiles/contents/0000037/37856/kawasaki/shinryou/seikeigeka/seikeigeka_08.html

10) 医療法人幸鷺会 森整形外科リハビリクリニック 半月板損傷の症状と検査についてhttps://www.moriseikeigeka.com/disease/meniscus_exam/

11) 洛和会 丸太町リハビリテーションクリニック 半月板損傷

https://www.rakuwa.or.jp/clinic/marutareha/reha_shikkan/meniscus_damage.html

12) 医療法人ここの実会 嶋崎病院 ひたち人工関節・関節機能再建センター 関節鏡視下手術

https://www.shimazaki-hospital.com/publics/index/56/

13) 再生医療専門クリニック リペアセルクリニック 東京院 膝の痛みを知る 半月板損傷・半月板断裂に対する再生医療・幹細胞治療

https://fuelcells.org/treatment/meniscus/

14) かたの整形外科クリニック 半月板損傷

https://katano-seikei.com/blog/1212

15) 医療法人社団 瑞鳳会 松岡整形外科・内科 リハビリテーション 半月板損傷

https://matsuoka-seikei.jp/sym-hangetuban.php

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