【理学療法士監修】坐骨神経痛とは?セルフチェックのやり方と症状、原因、治療方法

「お尻から脚にかけて、痛みやしびれが続いている……」という症状に心当たりがある方は、坐骨神経痛の可能性があります。この記事では、はじめに坐骨神経痛のセルフチェック方法をお伝えし、症状・原因、治療法、予防法までを詳しく解説します。

坐骨神経痛のセルフチェック

まずは、以下のような症状1)に当てはまっていないかをチェックしてみましょう。

複数当てはまる場合や、日常生活に支障をきたしている場合は、整形外科で診療を受けましょう。

なお、上記に加えて、「排便・排尿がうまくできない」という症状が見られる場合には、すぐに医療機関を受診してください。脳や脊髄の疾患が原因で膀胱直腸障害が起きている可能性があります2)

ここからは、医療機関でも用いられる4つの徒手検査を簡略化したものをご紹介します。ただし、ここではご紹介するものはあくまでセルフチェックであり、確定診断には医療機関での診察・検査が必要です。

スランプテスト

椅子やベッドなどに腰かけ、前かがみになり、片脚の膝を伸ばして上に上げるテスト3)です。腰を丸めると痛みが出たり、足にしびれが出たりした場合は、坐骨神経痛の可能性があります。

SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)

仰向けの状態で横になり、片脚を上げていくテストです。上げる脚の足首はできるだけ直角に、膝は真っ直ぐに伸ばした状態を保ちましょう。痛みやしびれが出た場合は、腰椎椎間板ヘルニア由来の坐骨神経痛が疑われます3)

FNSテスト(大腿骨伸展テスト)

うつぶせの状態で横になり、片脚の膝を曲げてそのまま太ももの付け根から上に持ち上げていくテスト4)です。腰が浮かないように注意しましょう。太ももの前側などに痛みが現れると、腰椎脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)由来5)または腰椎椎間板ヘルニア由来の坐骨神経痛4)が疑われます。

Kボンネットテスト

仰向けの状態で横になり、片方の足の膝を曲げてもう一方の脚の上を通るようにクロスさせます。左脚を曲げている場合は右手で、右脚を曲げている場合は左手で、斜め下に伸ばすイメージで押していきましょう。お尻から太ももにかけて広がるような痛みを感じた場合は、梨状筋症候群(りじょうきんしょうこうぐん)から来る坐骨神経痛が疑われます6)

坐骨神経痛とは?

坐骨神経痛は、腰から足にかけて走る「坐骨神経」に沿って生じる痛みなどの症状を指す、症候群の総称です。病名ではありません。ここからは、坐骨神経痛の症状と原因について詳しく解説します。

症状

坐骨神経痛の具体的な症状1) 2)は以下のとおりです。

放置すると悪化し、日常生活に支障をきたすおそれがあります。

原因

坐骨神経痛の原因は多岐にわたります。加齢や繰り返しの負荷の影響もありますが、以下のような疾患7)が原因で坐骨神経痛が起きているケースもあります。

なお、坐骨神経に障害が生じていない場合でも、坐骨神経痛のような症状があると「坐骨神経痛」という呼称が用いられる7)ことがあります。

坐骨神経痛の治療法

坐骨神経痛の治療は、原因となる疾患の有無や症状の程度によって異なります。多くの場合は保存療法からはじめ、改善が見られない場合に手術療法や再生医療を検討します。特定の疾患が原因である場合には、その疾患の治療が優先されます。

ここからは、坐骨神経痛の治療について具体的にみていきましょう。

保存療法

多くのケースでは、消炎鎮痛剤の服用などの薬物療法や理学療法士によるリハビリテーションをはじめとする保存療法が行われます。装具療法では、腰椎を安定させて痛みの緩和を目指すコルセットなどが用いられます。痛みが強い場合には、神経やその付近に局所麻酔薬を注射する「神経ブロック療法」も検討されます8)

手術療法

保存療法で改善が見られない場合は、神経を圧迫している椎間板を取り除く手術が検討されます。直接ヘルニアを切り取る切除術のほか、皮膚を切開することなく行えるレーザーや酵素薬を使用した椎間板手術もあります。近年では、内視鏡を使用したより低侵襲(ていしんしゅう)な手術3)も増加しています。

再生医療

坐骨神経痛に対して行われる再生医療は、患者さま自身の細胞を利用したものです。傷ついた坐骨神経周囲の組織の修復・再生を促す新たな選択肢8)として注目されています。

拒絶反応が出にくい点はメリットですが、費用は全額自己負担となります。受けられる医療機関は限定されており、未知の副作用のリスクもあるため、慎重な検討が必要です。

坐骨神経痛の予防法

坐骨神経痛は、日常生活における工夫や習慣の改善で予防・再発防止が可能な場合があります。ここからは、手軽に取り入れられる坐骨神経痛の予防法についてご紹介します。

ストレッチ・筋力トレーニング

腰やお尻、脚の柔軟性の維持と筋力強化は、坐骨神経痛の予防に欠かせません。ここでは、ストレッチ2種と筋力トレーニング1種をご紹介します。

腰のストレッチ

あおむけの状態で横になります。腰が反らないように気をつけながらゆっくり両腕を上げ、バンザイの姿勢を10秒ほどキープしましょう。その後、ゆっくりと腕を下ろします。3回ほど繰り返してください9)

お尻のストレッチ

うつぶせの状態で横になり、片方の膝を曲げます。膝を曲げた状態で、左右に下腿を倒しましょう。左右10回ずつに倒したら、反対側の脚でも同様に行います。1日3セットを目安に行ってください3)

スクワット

下半身の筋肉強化におすすめのトレーニングです。両足を軽く開き、身体の力を抜いて椅子に腰かけるようにゆっくりとお尻を下ろしていきましょう。膝が直角にならない位置で止め、2~3秒キープしてから元の体勢に戻ってください。1セット5~6回、1日に3セットほどを目安に行いましょう。転倒の不安がある場合は、画像のように椅子の前で行うと安心です10)

生活習慣の見直し

長時間同じ姿勢を続けることや、腰に負担をかける行動は坐骨神経痛のリスクを高めます。荷物は、腰を落としてから持ち上げるようにしましょう。かばんなどは左右のバランスを考えて持つことが大切です。

また、自分に合った靴選びも坐骨神経痛予防につながります。クッション性がよく、衝撃をしっかりと吸収してくれる靴を履いて、坐骨神経へのダメージを減らしましょう11)

禁煙

タバコに含まれるニコチンは、血流を悪化させて坐骨神経周囲や椎間板への栄養供給を妨げ、坐骨神経痛のリスクを高めます。禁煙することで、坐骨神経痛の予防はもちろん、症状の改善や再発予防にもつながります11)

つらい坐骨神経痛を長引かせないために、身体のサインを見逃さないで

坐骨神経痛は、初期の違和感を見逃さず、早めに対処することで悪化を防ぐことができます。まずはこの記事のセルフチェックを活用して、ご自身の症状についてチェックしてみてください。痛みやしびれが慢性化する前に、身体からのサインにきちんと向き合いましょう。

【医師からのコメント】
坐骨神経痛は、お尻から脚にかけての痛み・しびれという症状群であり、その背景には椎間板ヘルニアや狭窄症などの「原因疾患」が潜在しています。本文で紹介されているスランプ・SLRなどのセルフチェックは、症状の見極めには役立ちますが、あくまでスクリーニング目的であり、診断や治療方針の決定は専門医による画像検査と神経学的評価が必須です。
保存療法では、理学療法士による神経モビライゼーションや姿勢・歩行指導を組み合わせることで、疼痛緩和と機能改善が得られるというエビデンスがあります。一方、ESWTや再生医療は将来性があるものの、現時点では補助的選択肢と位置づけられ、保険適応外である点にも注意が必要です。

とくに、「長時間の立位や座位が困難」「間欠性跛行」「膀胱直腸障害」などの症状が見られる場合は、速やかに専門医による診察と検査を受けることをおすすめします。

【参考】
1) 表参道総合医療クリニック 坐骨神経痛の原因と予防方法を徹底解説!セルフチェック項目も
2) 医療法人メディカルフロンティア 首が痛い・腰が痛い・手足がしびれる、尿や便が出にくい(膀胱直腸障害)などの症状受診の基準
3) 医療法人蒼優会 野中腰痛クリニック 坐骨神経痛はどのような痛み?
4) 豊洲整形外科リハビリクリニック 腰椎椎間板ヘルニア
5) 東京脊椎・関節クリニック 羽田 腰部脊柱管狭窄症|手術など最新治療法と日常生活の注意
6) 医療法人社団 厚済会 【整形外科テスト 下半身編②】梨状筋症候群|腰痛・ぎっくり腰予防
7) 公益社団法人 日本整形外科学会 整形外科シリーズ29 坐骨神経痛
8) リペアセルクリニック 東京院 坐骨神経痛が死ぬほど痛いときはどうする?痛みの原因や治療法を医師が解説
9) 医療法人蒼優会 野中腰痛クリニック 坐骨神経痛に効くストレッチは?
10) オムロンヘルスケア株式会社 はじめよう!ヘルシーライフ vol.83 坐骨神経痛とは - 原因とストレッチや運動による予防方法
11) 株式会社日本薬師堂 坐骨神経痛とは? 原因、症状、治療法、日常生活のコツについて

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