再生医療1)とは、事故や疾患などにより失われた機能の再生をはかるものです。本記事では再生医療の費用の相場、再生医療を受けることのメリット・デメリットを詳しく解説します。
再生医療とは?
再生医療とは何らかの原因により失われた身体機能の再生をはかるものです。再生医療の多くは標準治療とは異なり、有効性が保証されていません。そのため、「治療」ではなく、「研究」目的で行われることもあります。
再生医療は、リスクの大きさによって「第1種」「第2種」「第3種」に分類されています。2)
第1種はiPS細胞やES細胞、他人の幹細胞を利用したリスクが高く想定されるもの、第2種は本人の幹細胞を利用した中程度のリスクが想定されるもの、第3種はもともと細胞が持っている機能を利用し、比較的低リスクなものを指します。ただし、この分類は有効性の大小に基づいたものではありません。
再生医療等を実施する医療機関は、国が認定した認定再生医療等委員会で審査を受け、国への届出を行わなければなりません。第1種・第2種の再生医療は、特定認定再生医療等委員会でより高度な審査を受ける必要があります。また、再生医療に使われる細胞等を加工する事業者も、国への届出が必要です。このような安全性の確保を経て、再生治療が実施されるのです。
再生医療の費用相場
再生医療の費用は、受ける治療によって変動します、今回は、治療目的の再生医療、美容目的の再生医療に分けて、費用相場を紹介します。
治療目的の再生医療の費用相場
治療目的で再生医療を受ける場合、保険診療・自由診療・治験の3つがあります。
- 保険診療:健康保険に加入しているすべての患者が、どの医療機関であっても同じ内容の診療を同じ金額で受けられる
- 自由診療(自費診療):保険が適用されない診療で、治療費はすべて自己負担となる
- 治験:被験者の費用負担はない
保険診療
保険診療は1点あたり10円の点数制となっており、原則として自己負担は3割です。ただし、2023年現在、保険適用となる再生医療等製品は19種類1)のみとなっています。
保険適用となる再生医療の適応1)としては、「外傷性脊髄損傷」「膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)」「大細胞型B細胞リンパ腫」「多発性骨髄腫」「B細胞性急性リンパ芽球性白血病」などがあります。
再生医療等製品名 | 適応 | 薬価 | 3割負担 | 1割負担 |
ブレヤンジ静注3) | 大細胞型B細胞リンパ腫・濾胞性リンパ腫 | 32,647,761円 | 約980万円 | 約330万円 |
ステミラック注4) | 外傷性脊髄損傷 | 14,957,755円 | 約450万円 | 約150万円 |
ジャック(自家培養軟骨)5) | 膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎 | 2,080,000円 | 約60万円 | 約20万円 |
使用する再生医療等製品により、価格は大きく変動します。膝関節の軟骨欠損の修復ならば20~60万円ほどですが、外傷性脊髄損傷では150~450万円、一部のリンパ腫では1,000万円程度の自己負担となります。
自由診療(自費診療)
自由診療で再生医療を受ける場合、治療費は全額自己負担となります。日本では混合診療6)(保険診療と保険外診療の併用)は原則として禁止されているため、標準治療と共通する部分についても、すべて自己負担となる点には注意が必要です。
ただし、厚生労働省が「先進医療7)(公的医療保険の対象にするかを評価している段階の治療)」と認めた治療法の場合は、通常の治療と共通する部分のみ保険適用となります。
自由診療の再生医療として広く知られているのは、変形性膝関節症やスポーツ外傷などに対して行われるPRP療法(自己多血小板血漿)とAPS療法(自己タンパク質溶液)です。どちらも自分の血液を使用するため、体への負担や副作用が少ないと言われています。8)
自由診療の場合、価格設定は各医療機関に委ねられます。PRP療法では1回あたり3~5万円、APS療法では1回あたり30万円程度が相場9)と言われていますが、事前に医療機関に確認しておくとよいでしょう。
治験
治験とは、治療法や医薬品について国や厚生労働省から承認を得るために行われる臨床試験です。基本的に被験者の費用負担はありません。ただし、診察代や標準治療の部分に関しては、一部自己負担が発生します。
美容目的の再生医療の費用相場
治療目的とは異なり、美容目的で再生医療を受ける場合は、全額自己負担です。
美容分野では、自身の細胞や成長因子を取り出し、培養・増殖させて体内に戻すという再生医療が広く行われています。肌のリフトアップやシワ・くすみの改善、発毛・育毛、バストアップやヒップアップ10)など、目的は多岐にわたります。
費用は医療機関や施術内容によって大きく異なります。
再生医療の内容 | Aクリニック | Bクリニック | Cクリニック |
線維芽細胞移植術 | 100~200万円 | 180万円~ | 170~270万円 |
PRP皮膚再生療法 | 3~80万円 | 20~25万円 | 18万円~ |
PRP育毛療法 | 10~100万円 | 15~45万円 | 20~50万円 |
部位や注射・施術の回数によっては、費用が1,000万円を超えることもあるようです。
再生医療のメリット・デメリット
再生医療を受ける前に、メリット・デメリット11)を把握しておきましょう。
再生医療を受けるメリット
- 副作用が少ない12)
- 入院の必要がない
- 新たな治療法にいち早くアクセスできる
- 医療界に貢献できる
第2種・第3種の再生医療では、自分の細胞を培養・増殖したものを用います。そのため、拒絶反応など、命にかかわる重大な副作用のリスクが極めて低いと言われています。また、多くの場合、外来診療のみで完結することもメリットです。診察や採血、注射のみで終わるため、家族への負担や患者自身の精神的負担も軽減されます。
標準治療では治しきれなかった疾患の治療や、美容目的での治療を受けられる点もメリットと言えるでしょう。さらに、再生医療の臨床試験の被験者となれば、医療界に貢献することにもつながります。
再生医療を受けるデメリット
- 費用が高額になるおそれがある
- 治療効果に個人差がある
再生医療は、全額自己負担となることがほとんどです。疾患の治療目的・美容目的のいずれでも、場合によっては1,000万円を超える金額を負担しなければならないこともあります。
また、自由診療範囲の再生医療は、治療効果が立証されていない部分もあります。費用と効果が見合わないこともあるため、事前に医療機関側と十分な話し合いをしたうえで治療するか否かを判断しましょう。
高額療養費制度の活用
保険適用となる再生医療を受ける場合に限り、「高額療養費制度13)」を活用できるケースがあります。
高額療養費制度とは、1か月あたりの医療費が上限額を超えた場合に、その超過分を支給する制度です。上限額は年齢や所得により異なります。ただし、この医療費に入院時の食費や差額ベッド代、自由診療・先進医療にかかる費用は含みません。
対象となる場合は、加入している公的医療保険に高額療養費の支給申請書を提出しましょう。
なお、医療費の支払い自体が困難な場合には、無利息の「高額医療費貸付制度」を利用できることもあります。制度の利用の可否や貸付金額については、加入する医療保険により異なります。
再生医療を受ける前には、しっかりと医療機関との話し合いを!
急速な発展を遂げている再生医療分野。多くの大学14)や医療機関が、ここ10年でさまざまな研究プロジェクトを行い、その成果を発表しています。2022年、大阪大学は15)iPS細胞から作った目の角膜細胞の移植に成功し、3~4年後の実用化を目指しています。そのほかの再生医療も着々と実用化に向けて進んでおり、再生医療が標準治療になる日もそう遠くはないかもしれません。
しかし、再生治療を受ける側からすると、やはりネックになるのは費用。高額な治療費を請求されるトラブルに発展しないよう、真摯な対応をしてくれるクリニックを選ぶことが大切です。事前にしっかりと説明し、患者側の理解を確かめたうえで治療を進めてくれる医療機関を選びましょう。
東京ひざ関節症クリニック 銀座院
全国に16拠点を構える「ひざ関節症クリニック」。手術でしか解決できなかった膝の痛みに、身体に低負担な再生医療を用いてアプローチします。
「MRIひざ即日診断」で治療効果を予測し、再生医療に関する疑問や不安を解消することに努めています。再生医療の許可を受けた施設で、補助的な治療やアフターケアも充実。包括的な治療を受けられます。
銀座院は銀座駅から徒歩1分。完全予約制で、待ち時間もありません。
医院名:東京ひざ関節症クリニック 銀座院 診療科目:整形外科 診療時間:9:00~18:00(年中無休) 電話番号:0120-013-712 ※完全予約制 駐車場:なし 専門医:日本整形外科学会認定専門医、日本リハビリテーション学会臨床専門医 |
リペアセルクリニック 大阪院
第2種・第3種再生医療等提供計画を提出し、厚生労働大臣から許可を受けている医療機関です。整形外科・脳神経内科領域のほか、美容や免疫分野の再生医療を受けられます。
患者本人の血液での細胞培養にこだわっており、国内トップクラスのCPC(細胞加工室)と提携。独自の細胞培養技術で、より副作用のリスクの少ない治療を提供しています。
大阪院はJR東西線「新福島駅」・阪神本線「福島駅」・京阪中之島線「中之島駅」から徒歩3分のところに位置する、ショッピングモール「堂島クロスウォーク」の4階にあります。プライベートに配慮し、個室の診察室を完備。緊張が和らぐような落ち着いた空間の中で診察・治療を受けられます。
理事長の坂本医師は、ブログやYouTubeで再生医療に関する情報を発信しています。再生医療について詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
医院名:リペアセルクリニック 大阪院 診療科目:整形外科・脳神経内科・美容皮膚科 など 診療時間:10:00~19:00(不定休) 電話番号:0120-706-313 ※完全予約制 駐車場:あり(堂島クロスウォーク内有料駐車場) 専門医:日本整形外科学会専門医 |
プルージュ美容クリニック
JR品川駅港南口から徒歩3分のビル4Fにある、美容クリニックです。2010年からPRP療法に着目し、患者さまそれぞれのニーズに合わせた治療を提供しています。
再生医療と外科治療を同時に行う「ハイブリッド整形」も可能。「患者さま第一主義」のスローガンを掲げ、良心的な料金設定で治療を提供しています。
来院前に、医師による無料オンラインカウンセリングを受けることもできます。費用の見積もりや医療ローン審査の相談も可能です。
医院名:プルージュ美容クリニック 診療科目:美容外科・美容皮膚科 診療時間:10:00~19:00(休診:水曜日) 電話番号:050-1780-1178 駐車場:なし 専門医:日本整形外科学会専門医、日本脈管学会脈管専門医 |
先生からのコメント
再生医療は今までと違った新しいアプローチでの治療になるため、今までの治療で効果がない方にとっては、お困りの症状を解決するための有効な手段となる可能性は十分にあります。ただ一方非常に高額になるというのも事実です。
患者さんによく聞かれて困るのは、その費用に見合った効果があるかどうかということです。保険医療になっているものは一定の効果が認められているものですが、美容目的以外の保険医療になっていない治療はそもそも効果に個人差があるものです。治療を受けられるかどうかは、担当の医師とも十分に相談されることをお勧めいたします。
【参考】
1)再生医療ポータル:再生医療について
2)再生医療ポータル:あなたが受けたい再生医療のためのしおり
https://saiseiiryo.jp/files/docs/saisei_leaflet.pdf
3)再生医療ポータル:再生医療等製品情報
https://saiseiiryo.jp/approval/
4)日経メディカル:処方薬事典
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/49/4900406X1029.html
5)厚生労働省:再生医療等製品の保険償還価格の算定について
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000481001.pdf
6)厚生労働省:対象品目について(各品目の概要)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000144415.pdf
7)株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC):自家培養軟骨ジャック
https://www.jpte.co.jp/customers/medical/JACC/index.html
8)厚生労働省:保険診療と保険外診療の併用について
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/heiyou.html
9)厚生労働省:先進医療の概要について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html
10)東京歯科大学 市川総合病院:再生医療PRP・APSについて
https://www.tdc.ac.jp/igh/tabid/852/Default.aspx
11)順天堂大学医学部附属順天堂医院:再生医療の取り組み
https://hosp.juntendo.ac.jp/about/attempt/prp.html
12)日本体育大学:再生医療:PRP(自己多血小板血漿注入療法)
https://www.nittai.ac.jp/about/facility/clinic/prp.html
13)名戸ヶ谷病院(千葉県柏市)
14)赤羽ウェルネスクリニック(東京):美容再生医療
https://akabane-clinic.jp/cosmetology-regenerative-medicine/
15)肌再生医療・幹細胞治療ならフォーシーズンズ肌再生美容クリニック:肌再生医療 料金表
https://www.fourseasons-saisei.com/15475228847983
16)渋谷美容外科クリニック:全施術の料金一覧
https://shibu-cli.com/price_all/
17)自由が丘クリニック:お悩み・施術から探す
https://jiyugaokaclinic.com/menu2/
18)表参道ヘレネクリニック(HELENE CLINIC):再生医療とは?幹細胞治療が効果的な疾患や副作用について解説
https://stemcells.jp/topics/stemcell/
19)厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ
https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf
20)京都大学iPS細胞研究所 CiRA(サイラ):iPS細胞のこれまでの10年とこれから
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/newsletter/230614-000001.html
21)産経ニュース:iPS角膜移植 3~4年後実用化へ 阪大が臨床研究完了
https://www.sankei.com/article/20220404-P4IJLC2OKNJ2RJWTTR3BYXQ4JY/
23)【公式】ひざ関節症クリニック|変形性膝関節症に再生医療を|医療法人社団活寿会
24)再生医療専門クリニック|大阪 リペアセルクリニック
25)プルージュ美容クリニック|PRP-美容再生医療専門|美容整形