2007年、自治医科大学医学部を卒業後、長崎医療センターに勤務。その後、長崎県上五島病院や長崎県対馬病院で離島医療に携わったほか、福岡大学病院整形外科や長崎県島原病院で経験を積んだうえで、2020年いでた整形外科クリニックを開院。日本DMAT隊員や長崎県難病指定医などを務め、地域医療への貢献意欲も高い。
医師・専門家インタビュー
長崎・島原の健康を支える「整形外科医×理学療法士」。いでた整形外科クリニックが挑むチーム医療の最前線

長崎県島原市で理学療法士や医療機器を充実させてリハビリテーションに注力している、いでた整形外科クリニック。骨粗しょう症の診療に加えて、MRIやエコー(超音波診断装置)を通じた精密検査も行っている。同クリニックの出田聡志院長に、日本DMAT隊員になった経緯や大勢の理学療法士を在籍させている理由、再生医療を検討されている方に向けた無料カウンセリングなどについて話を伺った。
目次
生まれ育った島原の医療に貢献するために、治療や機器を充実させたクリニックを開業

――開業の理由のひとつとして挙げている「島原の皆さまへの恩返し」について、詳しくお教えください。
私は生まれも育ちも島原市で、大学進学を機に関東へと移り住みました。在学中、勉強だけでなく部活動にも注力していたため、地元に帰省するのは年1回、または2回程度でした。そのときに、両親や親族の優しさが身に染みたことや、島原の食べ物や景色の素晴らしさを再認識したことで、私を育ててくれた地域のために力になりたいという気持ちが芽生え、大学で学んでいた医療を通じて恩返しをしたいと思ったのです。
――島原市にある整形外科クリニックの中で、先生はどのような役割を担っていきたいでしょうか?
医療環境を充実させて、島原市にお住まいの方々の健康を支えるための受け皿になりたいと考えています。
開業前、島原市の中核病院に勤めていました。そこで地域医療の現場を見る中で、この地域にはリハビリテーションに力を入れている整形外科クリニックが少ないことに気づきます。加えて、骨粗しょう症を原因とした脆弱性骨折が疑われる患者さまが多い地域であるにも関わらず、その予防から診療までを行っている整形外科クリニックもほとんどありませんでした。
そのため、島原市ではこれらの診療をしっかりと行える場所が必要だと強く感じ、当クリニックを開業することにしました。開業に際しては、MRIやエコーも導入し、精密な検査や治療を可能にする環境を整えています。
――先生のプロフィールの中で、とくに「日本DMAT隊員」が目にとまりました。この隊員になろうと思ったのはなぜでしょうか?
ありがとうございます。まず日本DMAT隊員とは、大規模な災害が起きた際に被災地の最前線に向かい、初期対応にあたる専門医療チームのことです。医師や看護師、業務調整員などでひとつのチームを構成し、関係機関と連携しながら現地で活動します。
日本DMAT隊員に加入しようと思ったのは、長崎県で離島医療に携わっていた際、先輩医師から打診があったことが理由でした。その先輩からは、東日本大震災の際に日本DMAT隊員として現場に出動した経験をもとに、被災地での初動対応の重要性や活動内容について共有を受けました。
そこから、自らの危険を顧みず被災地に向かう医師たちがいるからこそ、現場で救われる命があると感じ、この意義のある活動に自身も携わりたいと思ったことから、日本DMAT隊員になることを決意しました。
――日本DMAT隊員としての経験がクリニック運営に生きていることは何でしょうか?
診療時間中の災害対応です。災害大国と言われるように、日本ではいつどこで災害が起こるか分かりません。私たちの地域でも、1991年に雲仙普賢岳が噴火し、大きな被害を受けました。
災害に向けて事前に備えておくべきことを理解しているものの、実際にそれが起きた場合に何をすべきかを把握している方は少ないのが現状です。その中で、日本DMAT隊員として学んだことを生かし、災害発生時の初動マニュアルを作成するほか、地域の消防署と連携しながら、実際の災害現場を想定した訓練を行うことで、スタッフ全員の防災対応への解像度が高まっています。

理学療法士もエコーを利用し、狙い通りの筋肉や組織にアプローチができるように
――貴院はリハビリテーションに力を入れていると伺いました。その中で、多くの理学療法士を在籍させている理由は何でしょうか?
理学療法士も医師と同様に、得意な分野が異なるためです。例えば、膝や肩などの身体の部位はもちろん、スポーツ障害や高齢者特有の慢性疾患といった症状のサポートに強いスタッフもいます。そういった多様なスタッフを在籍させることで、治療範囲の偏りをなくし、幅広い症状に対応できる体制を整えています。
また、当クリニックには11名の理学療法士が在籍しており、そのうち3名が女性スタッフです。患者さまの中には理学療法士の性別や施術の強さについてご希望をお持ちの方も少なくありません。このような多様なニーズに応えられるよう、理学療法士を充実させています。
――貴院の理学療法士は、エコーを利用していると伺いました。それは、いつから、どのような目的で利用するようになったのでしょうか?
リハビリ室にエコーを導入したのは、2024年頃です。理学療法士にもエコーを利用してもらうようになった目的は、大きく2つあります。
ひとつは、目当ての箇所にしっかりとアプローチができるようにするためです。リハビリテーションでは、理学療法士が触診で治療すべき筋肉や神経を確かめるのが通常ですが、それだけでは正確な位置を特定するのは困難です。医師が目視や触診から狙った箇所に注射を打つ場合も、その精度にはばらつきがあると報告されています。そのため、エコーを利用することで、より正確な箇所にアプローチができることを目指しています。
もうひとつは、医師と理学療法士との共通認識を高めるためです。医療現場では、医師の治療方針と、理学療法士の治療アプローチがズレてしまうことが少なくありません。そこで、両者がエコーからの映像を共有することで、お互いの認識を合わせた状態で治療を進められるうえ、患者さまにとっても適切な治療を受けられるようになるのです。
再生医療を検討、希望される方を対象とした無料カウンセリングを実施
――再生医療を始めたきっかけは何でしょうか?
ほかのクリニックの先生から紹介を受けたことがきっかけでした。それから、再生医療について調べたり、その関連事業を手がける企業から説明を受けたりするようになりました。
私たちが再生医療を導入したのは、2022年頃です。その決め手になったのは、農業に携わる患者さまの比率が高い中で、従来の保存療法では症状に変化が見られず、だからといって長期にわたって仕事を休めないことから手術に踏み切れない方が大勢いたこと。そんなお悩み解決を期待できる方法のひとつとして再生医療に着目し、当クリニックでもこの治療を始めることにしました。
――再生医療を検討されている方を対象とした無料カウンセリングを始めたのはなぜでしょうか?
再生医療は自費診療のため、患者さまにとって費用負担が大きい治療になります。だからこそ、私たちは再生医療の治療内容や費用、メリット、リスクを説明し、患者さまが理解、納得されたうえでこの治療の実施を決めていただきたいという思いから、無料カウンセリングを始めることにしました。
しかし、当クリニックには医師が私一人になるため、患者さま一人ひとりに丁寧に説明するための時間確保が難しい状況でした。そこで、伝達力に長けた看護師に協力を仰ぎ、プレゼンター役になってもらうことで、10~15分程度のカウンセリング時間を確保しました。
私たちは再生医療を検討もしくは、希望される方の全員を対象とした無料カウンセリングを実施しています。また、無料カウンセリングでは患者さまの理解度をより高められるよう、紙芝居形式で解説しているのが特徴です。
――再生医療を行った後、患者さまに必ず伝えていること、促していることがあれば、その理由と合わせてお教えください。
患者さまに必ずお伝えしているのは、投与後から3ヶ月ほどリハビリテーションによる治療を続けること。再生医療で連携する企業の調査データを確認したところ、投与後に運動療法を行った方と行わなかった方で症状の変化に差が見られたケースもあったためです。患者さまにこの説明をしていることもあり、当クリニックで再生医療を行った方のほとんどがリハビリ治療に取り組んでいます。
――関節痛にお悩みの方に向けてメッセージをお願いします。
私たちは関節痛の原因の把握に努めるべく、MRIやエコーといった医療機器を揃えています。例えば、膝の痛みの場合、その原因が関節か神経かで必要な治療が異なります。そのため、当クリニックではMRIやエコーを用いて原因を可視化し、それにもとづいて治療方針をご提案しています。患者さまの早期診断、早期治療にもつながりますので、膝や肩などでお悩みを抱えている方はお気軽にご相談ください。

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