2002年、愛知医科大学医学部を卒業後、岡崎市民病院に入職。その後、名古屋大学の整形外科教室、中津川市民病院を経て、2014年に医療法人 ひじかた整形外科を開院。同院の理念は、「地域の方が気軽にかかれる整形外科」「患者さんが効果を実感できる治療を」。日本専門医機構から整形外科専門医、日本整形外科学会からはリウマチ医、スポーツ医、リハビリ医として認定を受けている。
医師・専門家インタビュー
最新の検査機器と再生医療を、人口約35,000人の町に

日本の課題のひとつになっている都市部と地方の医療格差。この解消を目指すべく、「ひじかた整形外科」の土方康三院長は、愛知県丹波郡扶桑町という人口約35,000人の町で、MRIでの検査や再生医療による治療など先端医療を提供している。彼に、これらのメリットや効果などについて話を伺った。
目次
魅力的な整形外科医との出会いが、私の診療科目を決めた原点

――医師を目指したきっかけを教えてください。
私の両親は、内科医と皮膚科医です。幼い頃から、その背中を見て育ったことから、自然と医師の道を志すようになりました。しかし、最初から整形外科医になろうと決めていたわけではありません。
――整形外科医になろうと思ったのは、いつでしょうか?
整形外科医を目指すようになったのは、2つの出来事がきっかけでした。
ひとつは、大学5年生から6年生の頃です。祖母が自宅で転倒し、大腿骨を骨折。その治療のための手術は成功したものの、その後、肺炎を発症してしまい、寝たきりのまま亡くなってしまいました。その状況を間近に見ていた私は、「家族がケガをした際、直接診療して助けてあげたい」という思いが芽生えたのです。
もうひとつは、研修医時代。スーパーローテーションという研修制度の一環で、さまざまな診療科を巡る中、整形外科で医師としてはもちろん、人間としても魅力的な方に出会いました。これをきっかけに、整形外科に関心を持ち、その良さにも気づいたことから、整形外科医になろうと決めました。
――土方先生の専門分野についてお教えください。
私の専門分野は、膝と手、外傷です。これらの知見を深めたのは、大学病院や市民病院の勤務医時代。そこで、膝や股関節の人工関節置換術、骨折などの外傷手術を数多く経験しました。加えて、顕微鏡下手術も求められたことで、指の再接着や神経縫合なども行っていたためです。
患者さまの症状を迅速に診断、治療をするためにMRIを導入
――貴院では検査機器のひとつとしてMRIを導入されています。その理由についてお教えください。
最大の理由は、迅速に診断や治療を行えること。当院にMRIがあることで、必要に応じて、即日で精密な検査が可能です。その検査結果も数日以内にフィードバックできます。これらによって、早期に原因を特定でき、適切な治療もすぐに始められます。
反対に、当院にMRIがなかった場合、それを備えている医師会や大病院を紹介することになるでしょう。それでは、患者さまが検査を受けたり、その結果を受け取るまでに時間を要してしまい、診断はもちろん、治療の遅れにもつながってしまいます。
また、MRIを用いた場合、レントゲンや超音波診断機器(エコー)では捉えきれない軟骨や靭帯の炎症、損傷などを把握しやすいことから、より精度の高い診断を行えるのも特徴です。
――貴院のMRIは、オープン型ですね。そのメリットは何でしょうか?
患者さまのメリットとしては、トンネル型MRIとは異なり開放感があるため、狭い空間が苦手な方でも安心して検査を受けられることです。一方、医師や診療放射線技師にとってのメリットもあり、検査中に患者さまの表情を直接確認できるため、安全に運用できます。
――MRI検査でもっとも重要なことをお教えください。
MRI検査でもっとも重要なのは読影力です。読影力と言うとMRI検査による画像だけで診断すると思われがちですが、私たちは「どこが、どのように痛むか」「関節の動きはどうなっているか」など患者さまへの身体所見から得た情報と照合し、総合的に判断することで、診断を誤らないようにしています。
――貴院では、超音波診断機器を用いた検査も行っていますね。
はい、超音波診断機器を用いた検査も積極的に行っています。最大の理由は、レントゲンやMRIとは異なり、患者さまが被ばくすることなく検査をできるためです。
また、患者さまが患部を動かした際、その様子をリアルタイムに確認できることも理由のひとつ。これによって、超音波診断機器の画面を見せながら、異常な箇所を指摘できることや、症状に対する患者さまの解像度を高められることから、私たちからの治療提案に納得を得られやすくなりました。
再生医療によって、従来よりパフォーマンスが向上した事例も
――貴院で再生医療を始めた経緯についてお教えください。
5年前、ある企業からの提案があったことがきっかけです。当初は、「再生医療は効果があるのか」と半信半疑だったのが本音でした。
しかし、別の企業から打診があった際、治療効果を示したデータを目にしたことで関心を持ちました。加えて、最小限の初期投資で始められる環境があったことや、再生医療を行うための各種申請も代行してもらえることから、再生医療の提供を決めました。
――これまでの再生医療の治療実績はどれくらいでしょうか?
2026年1月時点で、当院の治療実績は約680例です。とくに印象に残っているのが、60代の現役バイクレーサー。この患者さまは、膝の半月板損傷と変形性関節症からの痛みで、バイクレースへの出場を諦めかけていました。
そこで、私たちが再生医療を提案、実施したところ、症状が改善。バイクレースに復帰しただけでなく、自己ベストタイムも更新しました。再生医療によって、従来よりもパフォーマンスが向上したと言えるでしょう。
また、40代の患者さまはステロイド薬の副作用から軟骨が壊死してしまい、日常生活に影響が及んでいましたが、再生医療を受けたことで職場に復帰できるほどに回復しました。
もちろん、すべての患者さまが再生医療で効果を得られるわけではありませんが、現在の治療で症状の改善、解消を感じられない方にとっては、新たな選択肢になると思います。
――再生医療を行う際、リハビリテーションにも注力されているようですね。
はい、再生医療とリハビリテーションを組み合わせることで、治療効果をより高められると言われているためです。私たちは治療前に自宅で取り組めるエクササイズを指導し、治療後に理学療法士との筋力アップや関節可動域訓練を勧めています。
――再生医療を行ったあと、どのように経過観察をしていますか?
レントゲンとオープン型MRIを用いて経過を観察しています。MRIは、骨髄内の炎症や浮腫などの異常を見つけるのに有効なことから、活用しています。
患者さまから拒まれない限り、治療前と治療後6ヶ月、そして1年の計3回撮影するのが通常です。これらの画像を患者さまと見ながら、治療後の変化を共有することで、意思疎通を図るようにしています。
――患者さまが再生医療の効果を感じるまで、どれくらいの期間がかかりますか?
私見になりますが、患者さまの症状やその度合によって、1ヶ月程度と6ヶ月程度の2つに大別されます。例えば、テニス肘などの腱鞘炎で再生医療を行った場合、腱の修復が主体になるため、効果が表れるまでの期間は6ヶ月程度です。そのため、治療前に患者さまには即時効果が見られないことをしっかりと説明するようにしています。
▼ 再生医療については、以下の記事で解説しています。
【医師監修】再生医療とはどんな治療?種類やメリットを詳しくご紹介
【医師監修】再生医療のメリット・デメリットとは?関節痛に対する再生医療についても解説
【医師監修】再生医療は保険適用で受けられる?対象となる疾患をご紹介【2025年最新版】


再生医療の治療効果を高めるために、メディカルフィットネスを開業
――これからの展望についてお聞かせください。
2026年6月、当院の隣にメディカルフィットネスジムをオープンする予定です。前述の通り、再生医療はリハビリテーションとの併用を推奨している中で、患者さまの通院頻度が限られたり、セルフトレーニングに頼りがちだったりする実情があります。これらを改善すれば治療効果をもっと高められるのではないか。そう考えて、メディカルフィットネスジムを開業することにしました。
ここでは、マシンを用いたトレーニングをはじめ、整骨や鍼灸など東洋医学からのアプローチも取り入れながら、一人ひとりの身体の状態に合わせて適切なサポートをしていきたいと考えています。
――最後に、関節痛にお悩みの方へメッセージをお願いします。
私たちの理念は、地域医療です。だからこそ、愛知県丹波郡扶桑町という人口約35,000人(2024年12月末時点)の町に開業した中でも、名古屋にある整形外科医院と変わらない最新の検査や治療を行うことで、医療格差をなくしたいと考えています。
また、今は自身に合った治療を選択できる時代です。この記事を通じて、関節痛を改善、解消するための選択肢のひとつとして、再生医療があることを知っていただければと思います。
インタビューした医師・専門家


